その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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進む道

結局のところあのジョージ・グレンと言う男は私の命を救った命の恩人らしい。

尤も私にとっては迷惑千万な事ではあったが、このまま自殺したとしてララァが私を赦してくれるのか?と言う思いもあり、私は自殺する事を辞めた。

 

それからというもの、このジョージ・グレンと言う男は私に度々話を聞きに来る。

色々な話をした、まずは宇宙人談義から始まり、人の可能性、人の進む未知の話を。

 

私の話を聞いて本当に信じたのか、

〘コロニーを建設しているから手伝ってほしい〙

という彼に、私は渋々ながら手を差し伸べた。

一宿一飯の恩義という建前で、私は彼のコロニー建設を手伝ったのだ。

 

しかし、そこで様々な問題が立ちはだかった。

 

 

 


 


 

 

艦隊が近付き、俺達の艦を飲み込んで周囲に護衛艦艇を配置する。彼等は太平洋の遥か東から俺達を助けに来たのだ。

彼等が来なければ危なかっただろう事は明白で、実際俺達の部隊でも数名戦死者が出た。

 

俺は今回の戦闘で実感した、数の暴力の前では個の力は風前の灯であると。

特に重力下において、数の暴力というものは侮れない。

縦横無尽に駆け巡ることが出来ない制約の中、被弾は増える一方だからな。

 

近くでまた、海から白い柱が立ち昇り掃討戦に移行した部隊によって、ザフトのMSは少しずつ狩られている。

防空戦闘によって幾つか煤けている船体を艦内から確認して、その柱に出て来るMAを目で確認した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

シータートルと言うまんまの名前のMAだ。何処となく海亀に見えなくもない。

 

「MAでMSを撃破したのか、しかしよく動くものを創り出したな。」

 

「そうでしょう、いやぁ本来はMSと共に出すつもりだったんですが、一刻の猶予も無いですし。

今そこに大量にあるものを使わないのは、戦争ではもったいないですからな。」

 

俺の艦に移乗してきた艦隊付きの大佐が、そう言い放つ。戦力は必要なときに必要な分だけそこになければならない、それは戦争として当たり前の事だ。

当たり前の事が当たり前にできる軍隊ほど強い物はない。

 

「遅くなってすいませんね、こいつ等を積み込んでいたのです。長大な航続力と対艦戦闘も可能な戦力であり、数の暴力でMSに対抗する。

当に我々にピッタリだった、完熟訓練も簡単ですしね。」

 

「ありがとう、と素直に言いますよ。俺達だけでは限度があった。俺も一機のMSに梃子摺らされましたから。」

 

あの赤い機体が脳裏をよぎる、俺と寸分違わぬ程の反応速度を表す機体、今までにいなかったような優しく戦場の壁になる程の圧迫感を創り出す存在感。

どれをとっても、今までの敵の遥か上を行く相手だった。

俺達には数が無いばかりに、あと一歩でやられていただろう。

 

「あの状況であれ程耐えたのです、敵の撤退も鮮やかなものだったと聞いていますから、耐え抜いた方が奇跡ですよ。」

 

「そうですか、そう言われると安心します。

ところで、そんな世間話をする為にこの艦に移乗してきた訳ではないでしょう?」

 

この男はニィと口を歪ませて、目を逸らしながら話を始めた。

 

「という事はつまり、俺達には艦隊に随伴して赤道連合に行けと、そういう事か?

外交カードとして、俺達はそれ程に便利か?」

 

「そう邪険にしないで下さい、我々も任務なのです。

赤道連合は先の低軌道会戦での連合の動きを見ていたらしく、政治的方向を変更し中立から、連合へと加盟すると向こうから打診があったのですよ。」

 

中立国が何の見返りも求めずに加盟する事などありえない、だとすれば。

 

「MSがあれば、大西洋連邦と言えどおいそれと手出しできない、だからですか。

確かにそうですね、手っ取り早くザフトよりも優秀なMSを手に入れて。

ナチュラルでもパイロットになれると言うブルーコスモスの宣伝の効果でもあると。」

 

「その通り、そこであの低軌道会戦で戦果を上げた貴方方を随伴艦とした。という事ですよ、まったく嫌な役回りですよ。」

 

皮肉を言うにしては嬉しそうに話すこの男は、バックにハルバートン提督の影が見える。

提督はブルーコスモスとの関係はあまり深くしなかったが、どういう風の吹き回しだ?いや、戦後を見据えた政治的動きか。

いや〘月派閥〙とでも言えるか。

 

「だが本当に良いのか?アークエンジェルを単独でアラスカに向かわせるというのは、余りにも危険すぎる」

 

「最早制海権は我々の物です。ザフトはカーペンタリアとカオシュンに分断され、アフリカ共同体への攻撃の準備も着々と進んでいます。

戦争は第2フェイズに入ったのですよ、単艦の為に戦力を割くことは出来ないのです。」

 

「俺達にはそう言わなかったのは気に入らないな。」 

 

「気に入らなくて結構、事実ですのでね。」

 

俺は艦橋から見えるアークエンジェルの姿を目に入れ、済まないと1人謝った。

 

 

……

 

 

アークエンジェルにも同様の話があったのだろう、直ぐにも艦隊は動き出し互い違いの目的地へと向かっていく。

 

アークエンジェル隊が段々と離れていく、暗闇の中一方は北東へ一方は道を逆走しオーブを超え赤道連合へと向う。

 

「今襲撃されたら最悪ですね、駆動機体は艦長の一機のみ。

それも関節駆動系に負荷が掛かっている奴が。」

 

「確かにそうだな、だが嫌な予感はしないから。まだ大丈夫だろう。」

 

その途中だ、戻ったところにある無人島に俺は何かを感じ取った。

 

「少し良いかな、もしかするとまだ生存者がいるかもしれない。」

 

「敵地ですよ?そんな余裕無いですよ。」

 

「大丈夫だ、敵もこの艦隊を落とせる程強くはないし、カーペンタリアからは来るのなら少し遠い位置だ。どうしてもやり合うなら、相応の損害を覚悟するだろう。」

 

そう言って軽装のまま俺は機体を翻し、索敵という名の下にその島へと機体を入れた。

弱々しい声が聞こえる、助けてくれと叫ぶ弱々しい声が頭に響いてくる。まだ年若い、そんな声だ。

 

炎の光が差し込み、キラ達の戦闘があった場所へとたどり着く。そこには破壊されたブリッツの残骸と、近くに横たわる足の欠損したパイロットが横たわる。ひどく衰弱し今にも死にゆくだろう。

 

1人の人間の小さな灯火が、今にも消えそうなその命が。

いつも俺が刈り取ってきたもの、それを今度は救おうとしている自己矛盾。

だが、そんな償いにも似た行為をしていけないということも無いだろう。

 

「こちらアムロ、捕虜を見つけた救助機を要請する。」

 

 

この状態の人間にMSの振動は最悪死を意味する、せっかく止血されているのに、傷口が開いたらまずいだろう。

掬い上げたそれがこぼれ落ちないように、救助が来るまで俺はそれを見張り続けた。

 

 

 


 

ニコルが死んだ…誰のせいだ?

俺が、俺がキラを殺すのを躊躇していつも中途半端な作戦を出して、そのせいで脚付きの朱いストライクにコックピットを潰されて死んだんだ。

 

フェイズシフトダウンを起こしたとき、撤退すれば良かった筈だった。

俺はそれでも周囲を見れず、戦況が覆る瞬間を見逃し同胞が載っているはずの朱いストライクとニコルの戦闘が佳境に差し掛かった事が解らなかった。

 

俺達はストライクを撃たなければならない、白も朱も両方のストライクを!

憎しみだけで戦争をするのは駄目だと、頭で解っていたがこれはもう限界かもしれない。

 

「アスラン君、私を呼んでどうしたかな?」

 

「貴方に協力していただきたい事があります。」

 

このシャアという男はあの戦闘時、白い悪魔をして互角に戦い味方の損害を最小限度に抑えながら、後退の指揮すら行った傑物だ。

俺なんかよりも遥かに指揮官として優れている、それどころか艦隊のMS部隊はこの男の事を信頼して殿すらやりきった。

 

お陰でこの男の機体はズタボロになったが、このボズゴロフ級には載る人間のいないジンが一機予備機として残っている。

それを彼に操縦してもらえば、あの悪魔と殺し会える人だもう一機くらいならどうとでもなるだろう。

 

「1つ聞こう、君は復讐をして何を成したい?」

 

その疑問を投げかけてきた時、彼の瞳は今までに無い程輝いているように見える。

まるで自分が何かの復讐を成し遂げたことがあるかの様に、俺に何かを諭すように俺の瞳を覗き込んでくる。

 

「俺は……!」

 

「言わなくて良い、それを言ってしまったら君は後戻りできなくなる。

人とは、失敗するものだよ。

だが君はまだ若い、その過ちを糧にすることが出来るのが若者の特権だ。」

 

これは、殺れと言っているのか?それとも、殺るなと言っているのか。

 

「復讐に身をやつした後、君に待っているのは何か私はその結果の1つを知っている。もう覚悟は出来ているのだろう?」

 

聞くまでもない言うまでもない、キラ!

俺は奴を撃つ、そしてあのもう一機の名も無いパイロット。奴も生かしては置けない。

 

「殺るのならば今が好機だろう、夜明け前が尤も暗い。

ならば、単艦行動している今が好機だろう、どうするね?」

 

「今から襲撃の準備をします。シャアさん、貴方はもう一機をお願いします。」

 

このシャアという人は信頼する事は出来ない、でも今は信用しようと思う。この戦いが終わるまで、俺達の任務が終わるまでは…!

 

……

 

 

木々が燃え、煙が暗黒の中へと流れていく。

煩い戦闘機も、例のもう一機はあのシャアという男が相手をしている。機体の性能差をかんじさせない戦い方で、脚付きとMS隊を分断している。

 

イザークは機体が損傷して離脱、ディアッカは脚付きを沈める事に終止している。

これだけお膳立てしたんだ、キラ今度こそ決着を付ける。

 

一対一、一進一退の攻防は続き互いに致命傷ギリギリのラインの戦い。

キラ、お前は戦争がしたくなかった筈だった、だけど俺の前にいつも立ちはだかり邪魔をする。だから俺はお前を

 

「キラ!俺はお前を撃つ!!」

 

意表を突く攻撃を、予想もつかない動きを!

 

 

 


 

微睡み、鼻をツンと付く匂いが拡がっている。

ここはどこだろう、頭が痛い。

猛烈に何かが入ってくるみたいに、私の頭を掻き乱す。

 

「フレイ、フレイ!良かった、意識があるって貴女まで失うところだった!」

 

「どうしたの、いったい…。痛っい、ねぇどうしたのよ。」

 

ヘリオポリス組が雁首揃えて私の眼の前にいる、見覚えのある天井。ここは、アークエンジェルの医務室?

 

「フレイ……僕たち生きて帰ってきたんだよ。」

 

私の近くのベッドに横たわっているトールがそう言う、そんな事は良いのよ。それよりも、もっと大事な事があるじゃない。

 

「ねぇどうしたのよ、それよりキラは何処にいるの?」

 

どうしたのよ…どうして皆下を向いて。

痛い、頭が、なんで何を忘れてるの?

そうだ、艦隊と離れてマーシャル諸島を横切っている時に攻撃があって…私は、あのおかしな気配をした奴が来て、私はそいつと戦って……。

 

キラはその間あの3機とたった1人で戦ってたんだ!

 

「行かなくちゃ、ねぇキラはまだ戦っているのよね。なら私が援軍に……!ねぇ、ミリィ離してよなんでなんで!」

 

目から止め処なく涙が溢れてくる、解ってる解ってるわよ。だって私の眼の前で、キラのストライクがイージスに殺られて私は激情に駆られて、でもジンが前に立ちはだかって私は何も出来なくて、弄ばれてそれで、負けたんだ。

 

「私……私キラを…キラを護れなかった。一緒に戦おうって、一緒になろうってそう約束したのに、なのに…」

 

思い出す、あのジンの動き。

私はあの中の人を知らない、でも良くわからないけれどあの人の動きが見え始めてた。誰か良くわからなかったけど、金髪のビジョンが見えた。

見えてどうこうできる問題じゃなかったけど、それでも戦い方が解ってきたと思ってた。

 

それが、赤子の手をひねるみたいに私は何の役にもたたなかった。

 

〘この娘には可能性がある、ここで死なすのは惜しいな。〙

 

そういう様にあのパイロットは私に手心を加えた、最後の最後までとどめを刺さず私を泳がした。

泣いているのに、シーツを掴む手に力が入るキラを殺したイージス…アスラン・ザラが憎い、デュエルが憎い、ジンのパイロット

が憎い………。

 

「ねえ、バスターのパイロットは何処にいるの?隠さなくても解るわ、独房に入れてるのよね?場所教えてくれない?」

 

私の目を見たのかミリィは私にそれを教えたくないみたい。

私がバスターのパイロットを殺すとでも思ってるのかしら、なら残念そんな事は絶対にしない。

 

「ねぇ皆、教えてくれない?そいつから色々聞かなきゃならないの、Gのパイロットならわかる筈よ?キラを殺したアスラン・ザラって奴の癖とか、デュエルのパイロットの弱点とかそういうのを!

 

それで私は敵を討つのだ、悲しんでなんかいられない私はやっとこの力の糸口を掴んだんだ。

だから、アスラン・ザラを殺してデュエルのパイロットも殺してそして最後にバスターのパイロットも殺して、あのジンのパイロットも殺すんだ。

 

だから、この艦にはいられないかもね。

あいつ等を一番効率良く殺すには、手助けがいる。誰を頼るかなんてもう決まってる。私はあの流星に力を借りるんだ。

 

「ねぇ、だからバスターのパイロットを教えてよ!!」

 

キラ、見ていて必ず貴方のもとに行くから。

 




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