その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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宣伝

子供の教育はどうやれば正解なのだろうか?

幼い頃の自分の記憶を辿りながら、アムロ・レイが辿るだろう行動を予測しその行動をコントロールしようとすればするほど空回りする自分に、好奇心という欲の恐ろしさを痛感する。

 

「ふぅ…、俺は小さい頃こんなにもヤンチャだったか?」

 

3歳4歳の頃の記憶など、殆どの人はもっていないものだ。持っていたとしてもそれは途轍もないインパクトのある出来事が起きたものだろう。

 

「子育てなんかこういうものだそうよ?二人でこうやって子育てするの、小さい頃の叶えられない夢だと思っていたの。」

 

彼女はご満悦だ。

 

子供の為か…、そうだな、ならアイツを造れば多少喜んでくれるだろうか?子供は丸いものが好きだと言うしな。

 

設計図なんて物はない、アイツなら図面がなくてもできるだろう。散々作ったからな。

 

 

 

 


 


 

〘アンタ達の事なんて大嫌いよ!!〙

 

アークエンジェルを離れる時、そんな事を言っちゃったなぁ。

私って元々こんな感じだったのかな。

でもしょうが無いじゃない、だってキラの事を皆して忘れようとするなんて、何でそんな事(おもう)う事が出来るのかしら。

 

移動中のこんな狭い船室の中で、私の事をクスクスと笑う声だって聞こえる。

誰の口も動いていないのに、幻聴のように私の事を馬鹿にしてるの?

 

「……、!」アルスター少尉、隣良いかな?」

 

そんな時に、聞き知った声に出会えた。いつも怒った感じで、私達の事を叱咤激励しアークエンジェルを支えてくれた人の声。

 

「バジルール中尉…、一緒に乗ってたんですか?」

 

「バジルール少佐だ。大尉を通り越して、少佐だぞ?凄いものだろう?」

 

少佐か…そうやって偉くなって、今度は落ち込んでる私に何か怒ったりするのかな?

 

「ヤマト少尉の事を聞いた。アルスター少尉、済まなかった。」

 

謝られた、バジルール少佐は何も悪くないのに、ただ護れなかった私が悪いだけなのに。

 

「周囲の連中がどう思っているかは知らないが、二人は良くやっていたと思う。私も焦りと動揺で正直な話、大人気ない態度で君達を不当に扱っていたと思う。

それでも、いつも戦ってくれていたお前達に感謝していたんだ。」

 

「なんですか……今更、今更言ったってキラは、彼はもういないんですよ!」

 

私がそう言って激情のままに振り返ると、顔全体を影が覆う。それどころか、頭も優しく包まれていてとても安心する。

 

「泣きたければ泣けば良い。

こんな場所だが、お前はまだ16なのだぞ?悲しいことが有れば泣けば良い、それが子供の特権だぞ?」

 

私は人がいるのも構わずに涙を流し、ナタルさんの腕の中で泣いた。ここがどこだろうと構わない、今は今だけは子供に戻ろう。

 

「なんだ、子供が泣いて何が悪い。」

 

「いや……こんな子供に戦争させてるって思ったらな、居た堪れなくなったってだけだよ。

お嬢ちゃん、こんな戦争早く終わらせてぇよな。」

 

周囲の笑い声は段々と聞こえなくなってくる、偶に子供は戦争せずに家に居れば良いのにという、真っ当な事が聞こえてくるような感覚もあるけれど。

 

「フレイ・アルスター。お前に朗報がある、お前は私の受け持つ艦に配属されるそうだ、お前が一番上手くMSを扱えるんだ。共に頑張っていこう。」

 

うんうんと頷く私に、彼女は子供をあやすようにそう言った。

 

それから数日後アークエンジェルがアラスカで撃沈したという情報が私の下に入ってくる。

真偽は定かじゃなかったけれど、私の復讐の炎は更に燃え上がった。

 

戦場に現れた青い翼を持った機体によって蹂躙されていく基地施設が映っていた映像を信じるのなら、私は私の大切なものを何もかも奪い去っていったあの機体を、落とさなきゃならない。

 

 


 

 

戦時の映像作品には宣伝工作が当たり前のように入り乱れており、まるでそれがあたかも真実であるかの様に映し出されている。

もっとも、その作品が実際に記録された映像を使用しているがために、余計に腹が立つ。

 

完熟訓練の合間に起きたアラスカ基地の消滅、その事を大西洋連邦、つまり俺の祖国は利用するべきところを利用し、国民の支持を得ようと画策しているという事だろう。

人の死を宣伝の道具としか見ていない、そんな軍部に嫌気が差す。

 

「酷いですね、どうしてこんな事出来るんでしょうか…。」

 

「そう思ってことは、君がまだ正常だって事だ。良いことだよ、その気持ちを忘れないようにしないと、いずれ戦争に飲み込まれてしまう。」

 

ニコル君は非常に優等生で、新しく支給されたブリッツVer2.0という機体を良くも乗りこなしている。

まあ、Ver.2.0っていうのは俺の回避プログラムがインストールされた機体、という意味だから性能は変わっていない。

 

「プラントも似たようなものだよ?

例えば……これなんてどうだ?」

 

映像にはニコル君の死を痛むと共に、これ以上の戦争の長期化を望まないと言っているが、その為により多くの戦力が必要だと、声高々に演説する姿が見える。

お世辞にも追悼式には見えない。

 

「こんなことの為に僕は志願したわけじゃないんです。

本当は死んでいった人達の事を思って、それで参加したはずなんです。

これでは、戦争は益々拡大してしまいます。」

 

「そうさ、本当は辞めなければならない事だが、有史以来人間の間に争いが消えたことは無い。

いつか、人がこれを乗り越えられると信じてはいるが、それが何時になるかと言われれば……自信がない。」

 

彼は色々と考えているようだ、でも彼が今だけはやらなければならないことは、自分が死なないようにMSを操縦するくらいだろう。

 

「フレイ・アルスター。彼女も利用されているのか、アルスター事務次官が嫌がっている筈だが、そうも言っていられないか…。

そう言えば、君は朱いストライクに撃たれたんだったか?」

 

「え?はい、そうです。まさか彼女が?」

 

「あぁ、因みに言うが彼女はナチュラルだ。君は学校では上位だったそうだが、だとすると彼女は君よりも操縦が上手いのか?」

 

渋い顔をしてしまった。少々心に来ることがあったんだろう、アカデミー上位でも、戦場では何があるか解らないということだ。

 

「さて、そろそろ休憩終了だ。

そんなに彼女に負けたくないのなら、基礎からなんてどうだ?」

 

「いえ、彼女と僕では決定的な違いははっきりしています。単に反応速度の差ですから、僕は肉体の性能で負けているという事です。

ですから、僕は逆に戦術で倒すしか無いと思います。」

 

前向きなのは良い事だ、だがそれに固執してしまったら臨機応変な対応もできなくなる。

 

「リハビリ何だから、そんなに気を詰める必要はないよ?

ゆっくりで良い、まだ時間はある筈さ。」

 

「あの、大佐の機体に一度乗らせていただいても良いですか?」

 

あまりオススメしたくはないがな、たぶん直ぐにギブアップすると思うが。

 

「正直に言って危険だ、あまり乗せたくはないな。それに、俺の機体は今オーバーホール。いや、換装中と言った方が良いかもな。」

 

「換装中?ストライカーパックのようにですか?」

 

フレームごと弄っているのだから、既に原型はないかもしれない。

 

「もっと大掛かりさ、さて。スターシャ!

クラウス少尉に稽古を付けてやってくれ、俺もダガーを使うが俺が使うと直ぐに関節が駄目になるから、君が適任だ!」

 

スターシャの乗ったリベレーターが、サムズアップをして俺の言葉に返してくれる。

実力が近いもの同士でやった方が、本来の力は出るってものだものな。

 

「さて、少し見に行くか…。自分で機体を見極めたいしな。

スターシャ、後は頼む。俺は俺でやるべき事があるからな。」

 

俺の愛機の無惨なる姿を拝みに、俺は試験場へと足を踏み入れた。

 

 

………

 

横たわる機体、異常が出ている箇所は複数。

オーバーホールと言う部品一つ一つを分解して、機体そのものの総点検を行っている。

艦内の施設と違い、ここは汎ゆるものが揃っているから原因を究明してもらうためにも、こうしているんだが芳しくなさそうだな。

 

「どうです?進み具合は。」

 

「なんとも言えないね、こんな物は初めてだから。

フィールドモーターはまだ理論上理解出来るが、マグネットコートと言うものがね、いまいち掴めない。」

 

マグネットコーティング、機体関節部の摩擦抵抗を0にする事によって、機体そのものの追従性と関節駆動系の摩耗を防ぐための技術……らしい。

解らないことが多い技術だ、コペルニクスから送られてきた資料を元にやっているそうだが俺にもさっぱりだ。

 

そもそも、最近発表されたこの〘ミノフスキー粒子〙や〘ミノフスキー物理学〙なんてもの初めて聞いたからな。

どうしてこんな事が出来るのか、コペルニクスからすれば当たり前の事なのかもしれないが、素人が口出しを出来る問題じゃない。

 

頭の中でそう言う問題に対して蹴りをつけ周囲を良く見渡してみると、鎖とワイヤーによって吊るされている部材、何やら見慣れないものまである。

 

「バックパックも軒並み変更ですか、これは重大ですね。」

 

「バックパックだけじゃない、ブラックボックスはヤバい代物だ。

コペルニクスの科学技術はどうなってんだ?入れるだけなら良いんだが、熱効率だとかそう言うのも勘案しなきゃならんのだぞ?」

 

小型化した核融合ジェネレーター、こんなものを作り出せる連中の顔を見てみたい。

意外なことだが、イリスも外に置かれている大型艦も技術はコペルニクスからと言うんだから、驚きだよ。

 

「アレはなんです?」

 

「ああ?アレか、アレはウィングユニットって言うけれどな、一応の飛行能力を付与するらしい。実際は多関節ビーム砲みたいなものだな。

小型化したメガ粒子砲を翼の先端の銃口から発射する、らしい(・・・)。」

 

またミノフスキー関連か、メガ粒子砲っていうのは要するに家の艦船の新型主砲の事だ。

アレは口径に対する貫通力はゴットフリートの比ではない、貫通力だけならローエングリンに匹敵するな。

 

それをMSに直にとはいえ、こんな小型にすることができるのか?

 

 

「アレはな脳波で動かすらしいんだが、アンタ出来るのか?」

 

脳波か、ガンバレルと同じ様に使えるのだとしたら、宇宙空間ではマウントから外せるのか…。

だとすると、マウント状態から多関節を利用した照準で後方にも振り向かずに射撃できるのか。

 

「機体自体の組み上がりは、だいたい24日くらいですか?駆動試験も入れると5月いっぱいかかるか…、楽しみに待ってますよ。」

 

装甲を剥がされた愛機を見ながら、それが組み上がるのが楽しみな自分がいる。

 

記録映像でアラスカ基地の情報の中で、要注意事項がある。

アラスカで確認された機体との戦闘には間に合わせたい、相手が誰であれアレのせいでJOSH-Aが落とされて、サイクロプスが発動した可能性が高いと、そう言われているんだ。

用心に越したことはない。

 

 

 

 


 

アークエンジェルの中は先の戦闘からの余韻が未だに抜けきっていなくて、緊張状態にある。

特に僕の機体周りには人だかりが出来るくらいには…、正直悪い気はしない。

 

「キラ君……アルスターさんは…。」

 

「解ってます、別の場所に移動になったんでしたっけ?まさか、アークエンジェルから引き離されるなんて、正直思いませんでしたけど。」

 

ナタルさんもいない、たぶんこのまま行くと良くない事が起こるんだと思う。

僕達はオーブに向けて移動している、アークエンジェルは目立つから隠れる場所には一苦労だ。

 

「オーブに到着したらどうするつもりなの?」

 

「今の僕は、地球軍でもザフトでもない。一人のキラ・ヤマトとしてここにいます。

もしも、オーブに何か有れば僕は戦うでしょうね。」

 

「そう…。」

 

ラクスから貰ったこの機体、NJCというNJの効果を上書きする装置によって核分裂炉を搭載していると言う。

僕には過ぎた力なのかも知れないけれど、ラクスは良かったのだろうか?

 

「何にせよ、このままという訳にもいかないわよね。私達も決断の時だと言うこと、オーブに亡命するにせよそれ相応の報いだとかがあるかもしれない。」

 

「その時は、お供しますよ。僕の手は血塗られてるから、頑張ったところで争いは無くならない、ならせめて目の前だけでも無くせるようにする努力をします。」

 

手の届く範囲での正義、僕個人のエゴの押し付けだけれど押し付けなければ争いを止められないのなら、僕はどんな暴力装置にだってなって見せる。

その時に、フレイが敵として現れたとしてフレイは僕のことを信じてくれるか解らないけれど、きっと戦わなくて良いって言ってくれると信じてる。

 

………

 

マリューさんと別れた後、機体の調整も程々に休憩室でTVを見ていた。

ちょうどニュース番組だ、全世界同時配信。つい最近建設が終わった大西洋連邦の新技術マイクロウェーブ通信、それによって大西洋連邦(・・・・・)のニュースが全世界に対して放送される。

 

そう、大西洋連邦のプロパガンダが世界に放出されるんだ。

とても耳障りの良い事を喋りながら、あのJOSH-Aでの出来事が報道されると、僕は耳を疑った。

 

僕がザフトとして、地球軍の施設を破壊して回っている映像だ。僕はそんな事していないのに、彼等はそれがさも当たり前のように報道し、映像の中での僕の行いを非難している。

 

しかもそれが世界中の汎ゆる人達に届くとしたら、いったいどれ程の人がこの報道を信じるだろう。

たぶん為政者程、口車に惑わされないと思う。もっと根本的な部分、民衆はどうだろうか?

 

情報を何も知らない施設の子供達はどうだろうか?

きっとこの出来事をさも僕がやったかのように思うだろう、だってその方が分かり易いから。

 

〘ザフトの新型機が、地球軍の施設を破壊してザフトが新型の大量破壊兵器を使って、未だに抵抗していた施設の人達を軍民問わず殺戮した〙

 

という事実がそこには映し出されている。

たぶん、フリーダムのパイロットとして自由はこの世界にはもう無いのかもしれない。

だから僕は、キラ・ヤマトとして世界の表舞台には立たなくちゃならなくなった。

 




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