「私としては一向に構わない、もとより私は
私の懸念通り、プラントでの指導的立ち位置が変わっていくに連れ、私という存在に対して疑念を持つものが増えていった。
それは、私という存在そのものに対するものか、ナチュラルというものに対してというものか?
それは定かではないが、私はどうやら邪魔者らしい事は確かだ。
「済まないな、皆君の事を不気味がっているのだ。」
「致し方の無いことだよ、どんな物事も無償で行おうとするものほど、恐ろしいものはないさ。」
決して私は無償で仕事を請け負っていたわけではない、衣食住を提供されているのだ、それ以上を無理強いする訳にも行くまい。
「私は傍観に徹するとするよ、衣食住だけで良い。それだけ貰えれば、私は何もせずに暮らそう。餓死しろと言うならばそれも甘んじて受け入れる。」
もとより死んだ身だ、アムロに裁かれたいという思い以外未練はない。アムロに裁かれなければ、ララァのもとに行くことも出来ないだろうからな。
地球上に存在するザフトの勢力はアラスカ本部の自爆という、非道な行為によってその数を激減させた。
ザフトという組織が、何故アラスカを攻撃したのか俺はその行為に疑念を抱いてる。
確かにアラスカは地球連合軍の本部という最重要拠点だった、だが所詮は拠点に過ぎない。
アラスカ本部を落としたところで、連合という巨大な組織を維持するにはそんなもの必要ですら無い。
彼等はというよりも、この攻撃目標を選定した人物は素人では無いだろうか?連合本部はあくまでも戦術目標であって、戦略上重要拠点ではない。
狙うのならば、例えばココパナマだろう。
今このパナマには連合の宇宙に対する反撃の為に戦力が集結しつつある、勿論地下にはサイクロプスが埋設してあって最悪の場合を想定しているのだろう。
だが、現状のザフトにココを落とすだけの戦力があるか?いや、特殊な方法を使用しなければ無理だろう。
そんな疑問にも似たものを抱え、5月25日を迎えた。
事態は急を要する、突如として宇宙空間より飛来したザフトの降下部隊によって、パナマは混乱状態へと至り軍施設は次々と破壊されていった。
何かしら良くわからない兵器をザフトは使用していたのだろう、連合軍は強力なEMP攻撃によってその軍機能を停止し、新鋭のストライクダガーをもその毒牙によってあえなく機能停止する。
そんな中俺達は急ピッチで艦のエンジンを始動していた。
まだ、軍港は落とされていない。だが、予断の許されない状況に刻一刻と時が進んでいく。
俺は艦内に収容し、試験作業の為に機体をアイドリング状態にしていた事に安堵した。
「CIC、艦の火器管制は大丈夫か!」
「はい、この艦の耐EMPは完璧です!こんな物屁でもありませんぜ。」
俺達の艦はだけでなく、俺達の操る機体は非常に特殊な事例となっていた。
元々何を想定していたのか、非常に高いEMP耐性を持っていたのだろう。
いや、これは恐らく〘ミノフスキー粒子〙と関係があるに違いない。
「艦を出せるか?このままだとコイツは120人の棺桶だぞ!」
「はい、ばっちしです。ただ、レーダーが完全に使えなくなる事は覚悟してくださいよ。」
もとよりEMP攻撃でレーダーなんて使用できないだろうに、そんなものどうだって良い。
レーダーに頼った事など一度もないからな。
ジェネレーターをアイドリング状態から、戦闘モードに移行する。
正面のメインモニターが艦内の状態を映し出し、俺は機体を一歩歩かせる。
スタビライザーにかかる重量は、いつもよりも重いはずだ。だが、そんなものどうとでもなると言わんばかりの足取りだ。
「武装が……ビームライフルがまだ搬入中ですし、盾もまだです。突撃銃だけはありますが。」
「無いもの強請りはいい、あるもので行くぞ。」
それにビーム兵装はウィングユニットにあると言っていたしな。
今はそれよりも一刻も早く出撃し、周囲の安全を確保しなくては。
「垂直エレベーターが使えますが、羽を上手く畳んだりなんだりしてやってください。まだデータが入ってないので、誘導は出来ませんから。」
「了解した、パイロット各員に通達。乗り込んだものから出撃を開始しろ、でなければ死ぬぞ。」
エレベーターに機体を留め上部ハッチがスライドして機体が外に出る。
黒煙と炎が彩る空は、正しく混沌という言葉が適当だろう。
ジェネレーター出力は安定している、周囲の空気を取り入れて核ジェットが急速に回転し始める。
行けるか!
「アムロ・レイ、ガンダム出るぞ!」
バーニアを噴出し機体が浮上するとそのまま推力のままに加速をし始める。
「後は空間戦闘と同じ要領か。」
自由落下戦闘とはまたわけが違うが、やって見せるさ。
意志が聞こえる…これは、弄んでいるのか?
人の事をなんだと思っているのか、人の命はそんな風に使用して良いものではない。
動けなくなっているダガーに、銃を撃ちつけ手当たり次第に人を殺し回るザフトの機体達、虐殺をなんとも思っていないのか。
感覚が麻痺している、というよりも楽しんでいるのか。
「おい、ナチュラルの機体だ。なんで動いてんだよ。」
ふざけるな。
銃を構えてくるのを無視し、機体を急激に加速していく。バーニアの耐熱許容温度を気にしつつも、その速度は亜音速に達した。腕部マウント式のビームサーベルを抜くと、その刀身に赤い光が宿り、プラズマを帯びる。
駆け抜けるように機体の合間を縫っていくと、今まで使用していたそれよりも遥かに深く溶断し、切り口を完全に融解させている。
関節部の駆動速度も良好だ。
この座席の下にあるという機材が俺の脳波を読み取り、機体に最適な動きを補助するという。
これほど潤滑な動きができるようになるとは、我ながら感心してしまう程だな。
一瞬の閃きが脳裏をよぎり、敵の攻撃を避ける。長距離武器は…背面ウィングがあったな。
付け根の近くにある関節が駆動し銃口が前を向く、引き金を引く感覚が脳を通って指先に来るようだ。
反動のあるビームが射出され、それに対応して機体を動かしていく。翼からビームが出るというのなら、後ろからの殺気に対して翼を逆に曲げて反撃する。
「機体に無茶な挙動をさせ無くて良い分戦いやすいか、だが余計に感覚を研ぎ澄まさなければならないな。」
そうやって敵を潰していくと、俺が出撃した艦から味方が出て来る。
全機健在だな、量産用ジェネレーターを搭載した機体群が姿を表すと周囲に展開していたザフトのMS部隊へ反抗を開始する。
やがて、大規模な土埃と共に艦艇がふわりと姿を表す。
完全な反重力航法を行う為に、着地以外の全ての行動を考えなくても言いように設計された艦が、対MS戦闘の指揮を開始する。
俺から送られたレーザー通信を全周囲に向け発信する用意が出来たということでもある。
「こちら第13独立機動艦隊、艦隊司令アムロ・レイ大佐だ。
これを聞いている連合軍の将兵たち、我が指揮の下戦闘行動を開始せよ!」
粉塵が巻き起こる戦場に、俺の声は響くのだろうか。
パナマの英雄
そんな見出しから始まる記事に目を通し、今まで起きた事を洗いざらい思い出している。
今、私がこうしてエターナルの艦橋で娘共々プラントから脱出出来た事はまさに奇跡としか言いようが無い。
きっかけはラウ・ル・クルーゼの告発からだった。
彼の素性は意外な程に知られていない、コーディネイターいやプラントと言うコロニー群に住まうコーディネイターと言う但し書きが付くが、我々は全員健全な理由で産まれた存在ではない。
特に私のような初期の第一世代コーディネイターは、秘密裏に遺伝子を改変させて強化したり、人体実験的な側面をたぶんに含んでいたものが多かった。
身を隠すにも地球ではその出生から定住出来ないと言う事も多くあり、途方に暮れるものもいた。
だからだろう、その人物に疚しい事があれば詮索をしないという暗黙の了解が出来ていた。
ラウ・ル・クルーゼの素性もそれによってひた隠されてきた。
私が議長の席から追われて直ぐに、彼が私を訪ねてきた。表向きは監視という名目で、私はザラ派からは目の上のたんこぶのようなものであったろう。
彼は、自らを〘アル・ダ・フラガ〙の〘クローン〙であるとのたまった。
私はその事実に面食らった、なんと言えば良いか。
コーディネイターであるからこそ、〘自らよりも優秀な人間をナチュラルであるなどと思わない〙と言う、ある種の驕りある種の信頼が彼をナチュラルでありながら、コーディネイターであると偽りを通してきた。
そんな素性を隠してきた人物が、私に告白してきた事に何かしらの意図をかんじられずにいられなかった。
彼は話す、自らの護るべき者のために私に協力するのだと。
その見返りに、私が彼の護るべきものを護る事を協力して欲しいと言う事も。
彼の提案は非常に魅力的であった、彼のナチュラルとしての〘ラウ・ラ・フラガ〙としての名義の強さによって連合の非戦派、ブルーコスモスも問わない多くの存在との連携が取れるようネットワーク形成の足掛かりが掴めたところだった。
〘戦争を終わらせたい商人〙
〘中立国の獅子〙
〘月の連合穏健派〙
そして、私が率いる〘プラントのクライン派〙
対するは
〘戦争を継続したい商人〙
〘暴走した連合〙
〘プラントのザラ派〙
そして〘ダイクン〙
それぞれがそれぞれが所属している組織に対して、ある種の講話構想を提出したりするなど、バラバラに行動しているが専らの問題は、〘ダイクン〙であろう。
アレは、ザラ派にどうやってか干渉し大量破壊兵器投入に対するセーフティを軽くしている。
ユニウスセブンすら地球に落とす事を示唆するなど、何をするから解らない。
そして、その作戦に賛同するものもいるという。実際ユニウスセブンが地球に落着すれば、核の冬に近い被害を齎すだろうことは、科学者であれば容易に判断出来る。
私はこの歳になってもあの男の行動原理が解らなかったが、クルーゼによって得られた情報から〘自らが死ぬ為に動いている〙
という余りにも〘1人で勝手にやってくれ〙と言うことを、やってのけている。
あの男と言うパンドラの箱を開けた私が言うのもなんだがな。
「お父様、そんな顔をしてどうしたのですか?」
「うん?今後の身の振り方を考えていたんだ、戦後汎ゆる罪を私は償わなければならないとな。良くて死刑だとね。」
この混乱を作り上げたものの一人としてではあるが、連合の内部ではあの〘アムロ・レイ〙の手によって、コーディネイターとナチュラルの団結が深まりつつある。
私は必要悪として、断罪されるだろう。
「ラクス、もしもの事があれば皆の事を頼む。」
「解っていますわ、ですが悪い様に考えないでください。
お父様は私にとってはたった1人の身内なのですから。」
聡い子だ、行方不明になるまでこれ程までに政治を勉強することも無かったのに、気がつけば私以上に物事をよく理解する。
私も歳をとったという事か。
「実に有意義な時間であった、私も自分の実力に自信がもてたというものだ。
これで、奴が宇宙へ上がったときは私が奴の相手をしても良いだろう?
パトリック君。」
「約束は約束だ。如何にお前がナチュラルであろうが、私は約束事は守るべきものと心得ているからな、貴様の機体も用意しよう。」
「お心遣い感謝する。」
眼の前のこのダイクンという男は、3つの名前を巧みに使い訳様々な場所に出入りしている。
最初このナチュラルの男の実力などたかが知れていると豪語したが撤回しよう、天然者の天才というものはいるのだと。
我々が行った作戦は尽く連合の手によって阻まれ、アラスカではサイクロプスを使い、太平洋戦線は縮小せざる終えず。
ポルタ・パナマの破壊には成功した物の、こちらも戦力をすり潰される自体になった。
誰かしらから情報がリークされていなければおかしい程のタイミングで、それが行われている…。
シーゲルの手のものだけではない、もっと深い部分にある者が原因だろう。
だが確実に言えることは、この眼の前の男は絶対にあり得ないという事だ。
この男の助言は我が国が短期的に理する行為を簡潔に提案してくる。
中立国や宇宙に準ずる者達との関係など、戦後幾らでも変化させられると言うのに、この男以外の者はナチュラルや裏切り者共に気を使いすぎだ。
まあ良い、ジェネシスの建造もすぐに終わる。
連合はこのような兵器を所持する事すらできずに、正攻法でこちらを攻撃するしか無いだろう。
そして、極めつけは保険としてこの我が妻の墓標を地球に向けて流すだけで事足りる。
なんとも脆いな、地球というものは。地を這う虫のように生きていくしか無い者達など、滅びてしまっても心も傷まない。
結局ハイニューガンダムになってしまうと、機体解説に追加しましたので、気になる方はどうぞ。
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