日課になった宇宙を仰ぐ行為も程々に食卓へと歩いていく、到着すれば孤児院の子達と一緒に朝食を食べ、自分の作業をする為に自室へ行き、2時間で切り上げてその後は子供達と戯れていく。
事務仕事だけじゃなく、多少の力仕事。
専ら、孤児院での食料野菜の調達の為に広大な畑を管理する。
慣れたものだ、目が見えなくともこうやって作業できる事に、自分のこの力に感謝するときが来ようとはな。
そうやって、いつも通り一日を終え家族だけで就寝を取る。
孤児院の子達は流石に俺達だけでは面倒を見きれないから、そこら辺の教会からボランティアを募って定住してもらっている。
「ねぇ、いつも思うんだけどね?貴方には空ってどう見えてるの?」
妻がそうやって質問してくる、そう言えば行ってなかったな。
「そうだな良く空は青色というけれど、どちらかと言えば俺には蒼色に見えるな。」
「緑色みたいな色ね?」
「そうだ、尤も感覚的なものだから人それぞれだろうけどね?」
そう、蒼色の中に一際目立つ赤い光点が光って見える。ココ数年ずっとそうだ。奴は俺を認識しているか解らないが、今ではその為に宇宙を見ているんだ。
空にふわりと浮かんで宇宙への道を進んでいくイリスを眺めながら、後ろを振り向けば残骸だらけのマスドライバーポルタ・パナマが目に映る。
EMP攻撃に耐えられなかったのだろう、あちこちから火の手が上がっている。アルミ類が燃焼しているのか、消える様にも見えない。アレでは新造したほうが早いだろうな。
その他の軍施設は軍港を除いて穴だらけ、これは基地機能の回復まで時間がかかるな。
「それにしても、本当にフワフワと浮いてますね、いつも私達これに乗ってるんだから驚きですよ。どうやって浮いてるんです?」
「ミノフスキー・クラフトというものだそうだ。原理的に言えば、階段を登っているようなものだよ。
なんだ?クラウス少尉までそんな顔をして、詳しく説明したところで量子力学とかそう言うのを理解出来ないと、あまり良く解らないぞ?」
「いえ……、大佐はその話を短時間で覚えたんですか?」
そうでもない、いやどうだろうな。覚えたと言うよりも、そのものの性質が解ってしまったと言った方が良いのかもしれない。
予測とも違う、それこそ答えが急に現れるように。
「いや、資料をざっと読んだだけだよ。」
その答えに、笑いが溢れる。どうやら皆俺の言葉を冗談の類だと受け取ったようだ。スターシャを除いて。
彼女の俺を見る目は少し違うようだ、俺がクローンという事を知っているからだろう。俺が親父〘アムロ・レイ〙となっているのではないか?と、心配してくれていると言うべきだな。
体細胞が同じだからといって、脳細胞が記憶を司る以上そんな事は無いのだが。意外とロマンチストなのかもしれない。
「イリスは俺達に先行して月で完全換装するらしい、道中なにもない事を祈ろう。」
壊れたパナマでは、調整も出来ないからな。
そんな俺達パイロット組の会話の横で、パシャパシャと写真を撮っている若者がいる。
興味津々でその様子を見ているのだから、完全に部外者だ。
一応この施設にいるのだから、許可は取っているのだろう。
撮り終えるとそのままこちらに近づいてくる。
「あの〜、ここら辺にアムロ・レイ大佐がいらっしゃると聞きまして。」
「自分がそうだが、君は?」
「俺はジェス・リブルです、フリーでジャーナリストやってるんですけど、連合への取材を回ってまして。
取材許可はもらってるんで、インタビュー良いですか?」
服装は少し、いやかなりラフに見えるがジャーナリストとはそういうものか?
特に戦場を回っているのなら、身軽な方が死に遠くはなるか。
「あの〜」
「良いぞ、但しここで記念撮影をしたいんだ。それが交換条件だ。」
「え!?ちょっと待ってくださいよ、僕は写ったらまずいんじゃないですか!」
「おうおう、大佐のご命令とあらば。ほら坊っちゃん一緒に並ぼうぜ。」
嫌々ながらも大人達に引き摺られて並ばされるニコル君、それに対して呆れてため息を吐くスターシャ、俺はそんな者達を見て若干顔がニヤけている事だろう。
「仲が良いですね、真ん中の彼が最年少ですか?」
「あぁ、新人パイロットでね。まだ周囲から少し浮いているんだ。
だが、艦が変わるから乗員も増える。パイロットも増えるからそうは言ってられないだろ?
だから今日で、この人員が最後なのさ。共に死線を潜ってきた仲間としてね。」
へぇ〜と言う声を出しながらカメラを弄りながら、俺には中に入るように下してくる。
その行動に動いて対応し、俺は中央に胡座をかいて座る。その横に膝を曲げてスターシャが座る。
「偶にはこういうのも良いだろ?」
「彼を呼んだのはアムロさんですよね、解ってますよ。」
親睦を深めるのはなにも死線を潜る以外にだって方法はあるからな。
俺は無言でそれに手を握る事で答えた。
予備員を含め総勢12名のパイロット、明日からはこの人数は倍増する。
そう、今日がこの人数でいられる最後の日なのだから。
………
機体の搬入が進んで、格納庫に並んでいく。
3機で一個の小隊が4つ、よってこの一隻で1個中隊を瀕するMS部隊と、立体駐機されたグラスパー6機
アークエンジェルの様なストライカーパックの換装システムが無いのがデッドスペースを無くすという意味では良い効果だな。
リベレーターは、低出力核融合炉を搭載したようだ。俺のよりも低出力だから、メガ粒子ライフルを使用できないし、出力自体はバッテリー駆動の頃とそうは変わらないが、これによって滞空時間が向上しエールストライカー程度には空中戦が出来るだろう。
そんな感想を抱きつつジェス・リブルとの問答を行っていた。
「アラスカに対するザフトの大量破壊兵器の使用は無かったと?ここパナマでも実際に使用されたと聞いています。」
「君はジャーナリストになって日が浅いと思うが、アラスカの被害写真とここを見比べて疑問は抱かなかったのかい?」
記者であるからこそ、疑問を抱きつつも長いものに巻かれなければ生きていけない現状を彼はどう思っているのか?
「いや、自分は疑っていたので連合兵士のしかも大佐がそんな事を言うとは思わなかっただけです。
では、どの様な措置を行ったと?」
「あぁ、サイクロプスを使ったんだろう。巨大な電子レンジさ。
体内の水分が沸騰し、あらゆる機材にも影響が出る。
終いには地中の物体が爆発的に沸騰し、大規模な蒸気爆発が起こる。
それがこのクレーターの正体だ。」
正直者には正直に話してやっても良いだろう。
俺は連合の駒ではあるが、それ以前の問題だ。味方を囮に大量破壊兵器を使用する事は流石に許容出来ない。
「では、ユーラシアの発表を支持なさると?」
「一応は大西洋連邦の人間だが俺の所属は宇宙軍だ。地上軍との派閥争いだとでも思ってくれると助かるよ。」
嫌いな人間ではないな、格好はともかくその思想はまともな部類だ。
必死に記録していく彼を見ると、人も捨てたものじゃないと感心する。やはり、ラウの行いは性急すぎるのだ、あの思想は何処かの誰かに似ていると錯覚する。俺にはそんな記憶存在しないのに。
「あの……、大佐はコーディネイターパイロットと共に戦うと言う行為についてどう考えていますか?」
「…?寝食をともにする者達との不和を作り出すと思うかい?元々俺はコーディネイターとかナチュラルだとかそういうものに対しては、あまり括りは無いと自覚しているよ。
ただ、自らを新人類という様な奴や、コーディネイターだというだけで蔑視し内面を見ようともしない者達は、良くはない。
嫌いだとも言えるな。」
「では、ブルーコスモスと言われてる現状については?」
彼としては、俺の地雷原を歩いているような感覚なのだろうな。人は階級が上がれば傲慢になることもある、俺だって何処かしらそういうものもあるだろう。
「別になんとも思っていない、ブルーコスモスも本当に地球環境の為と思っているものもいれば、逆にコーディネイターのみ蔑視しているものもいる。
どんなところでも、意見を持つ中で居場所としている人はいるものだ。
そういう奴が、俺の事をブルーコスモスだとかそういうものだと断定したとして、俺は関知しない。
流石に悪評は別だけどな?」
「では最後に、この戦争に終わりは来ると思いますか?」
そんな物愚問も良いとこだ。
「始まったものには終わりは付き物だ、一番の問題はその結果がどういうものになるかという事だよ。
俺は、俺が所属している場所、俺が貢献したいと思う場所に対して最大限善くなるように努力していきたい、そう思っている。」
月面がどういう判断を下すにせよ、俺はそれに最大限協力しよう。
「矢面に立つのは僕なんですけどね、解っていますか?ロゴスと表の繋をやっているのは僕なんですよ、貴方方はそうやって踏ん反り返っているだけで、現状尤も利益の出るものは早期の終結です。
良いですか?オーブを攻撃したところでマスドライバーは手に入りませんよ、彼等は自爆してでもあの施設を護るでしょうからね。」
一部の資産家が一同に会するここに、話の通じない者たちがいる。
正直に言って、彼等の威光は連合内部。
特に、大西洋連邦においては一際目立つ光でしょうね。
でもね、こんな採算度外視な作戦僕個人としては認めたくないですがねぇ。
「君も言っていたではないか、早期終結する為と。
ならば最も身近なマスドライバーは、オーブにある。
あそこならばザフトですら手出し出来ないだろう、武装中立国だからな。」
大西洋連邦には、南アメリカ合衆国を武力によって屈伏させた前例がありますから、中立国と言えど攻撃することなど屁でもないでしょうが、ですがねぇ提案するのは僕なんですよ。
「いいでしょう、百歩譲ってこれを大西洋連邦に承諾させたとしましょう。
パテントはどの程度こちらに色をつけてもらえるんですか?まさか、僕にタダ働きしろとおっしゃるので?」
解任要求をされても僕は困るんですから、下手に出るしか無い現状にこちらとしては文句も言いたくなりますよ。
これ以上敵を作った場合、我が社の利益は無くなりますからね。戦後、何処からも相手してもらえなくなりますし、勝ったとしても、約束を破る商人は仕事などさせてもらえないですからね。
「結局は平行線という訳だな、もう君には頼まんよ。」
「そうですか…、解りました。ですが、僕は僕なりのやり方でこの戦争をやってみせますよ。」
さて、武器商人は武器商人らしく立ち回って見せましょうか?
幸い、僕はブルーコスモスの盟主ですからね、世界中に僕の手足耳目口はあります。
ロゴスの皆さん、全面戦争と行こうではありませんか。
「こんにちは皆さん、パイロットの養成ご苦労さまです。」
私が所属するドミニオンのMS隊に、見知った顔の人が現れた。
ムルタ・アズラエル。
最近良く目にするブルーコスモスの宣伝に必ずと言っていい程写真が乗っている人物。
ブルーコスモスの盟主と言うんだから、もっと暗殺者とかの対策に身を隠すとかしてもおかしくないのに、必ずと言っていい程現場に顔を出す人物だ。
このドミニオンと言う、アークエンジェルの同型艦が戦力としてオーブを攻撃する……と言う事を聞いてから、初めてこの現場に来たらしい。いつもは持っていない手持ち鞄を持っている。
「お、大将だ。」
「良いよなぁ、こうやって俺達の事見に来てくれるんだから、将校よりも余っ程俺達の事知ってるんだぜ?この前、名前で呼ばれたぜ?」
正直言って現場からの評判は、軍のお偉いさん達よりも遥かに良い。
だってこうやって、偶に私達の下に来てくれるだけでも現状を把握しようとしている、と思われて支持を得やすいんだ。
本心は兎も角として。
今日はあの三人組との模擬戦をやった後だったから、汗臭いというかシャワーを浴びる前だったから、正直失礼かもしれない。
それでも、顔色一つ変えずに三人組の健康状態を聞いて回っている。
クロト、シャニ、オルガ、の3人は元々ブーステッドマンという、薬物投与で身体強化された所謂生態CPUというものだったらしい。
だったらしいというのも、アムロ大佐の一言で彼等の調整を取り止めて、薬物投与料を減らし自己判断力を元に戻したという。
確かに、3人共凸凹コンビというか足りない部分を互いに埋め合うような連携プレイが取り柄で、反応速度こそ私や……キラ程ではないにせよ、普通のコーディネイター以上なんだから判断力奪っちゃったら意味ないよね?
「こちらにフレイ・アルスター少尉がいると聞いていたのですが……あぁ君がフレイ・アルスター少尉ですか。」
「はい、フレイ・アルスター少尉は私です。何か御用ですか?」
多少の化粧をしているのだろう、本来ビジネスマンだと言うから普通に身だしなみの為なんだろうけど…、なんだろう隈?隠してるのかな?
「突然で申し訳ない、内密に話をしたいことがあるんですが、お時間良いでしょうか?」
「えっと……急ぎでしょうか?シャワーを浴びてきたいなぁと思いまして……?」
構いませんよと物腰やわらに言う辺り、変な人では無いのは確かだ。
というか、ブルーコスモスの盟主って言うから結構過激な人だと思っていたんだけど、艦内のコーディネイターの人達のことを別に目の敵にするような感じじゃないから、悪い人では無いね。
……
「お待たせしました。それで、要件は何でしょうか?」
「お一人ですか?監視カメラも止めてもらっています。実はですね、貴女にとって朗報があります。
キラ・ヤマト彼についての情報です。聞きますか?」
「聞きます!」
彼を殺した奴の居場所とかとっっっても興味があるから、聞き逃しちゃうと嫌よね!
「彼、キラ・ヤマトは生きています。それも、この地球上にいるのです。」
「へ……?そんな冗談みたいな。」
悪い冗談は辞めて欲しい、だってキラは私の眼の前で爆発に巻き込まれて、音信不通になって私はその後赤い奴にやられて……。
そんなの絶対に嘘よ。
「残念?いや、喜ばしい事にここに居場所が記されています。読みましょうか?」
私は彼が取り出した便箋を引っ手繰り、中身を直様目を通していく。
フリーダム、アラスカを襲ったザフトの新鋭機が堂々と艦内に、収められている写真。いや、このハンガー見たことがある。
それも、ここのドミニオンと同じでもっと薄汚れた感じ…アークエンジェルの艦内だ。
でも、合成写真とかも考えられるし…。
「これを何処で?いったい何故?」
「これは数日前オーブで撮られたものです。別の写真にも目を通してください。」
数枚の写真が添付されていて、中には私が見知った人もいたけれど、一番気になったのは。
キラの写真、それも一度も写真で撮ったことのない私の指輪を首に掛けている写真だ。
どうしてだろうか、嬉しいのに……涙が自然と溢れてくる。
感謝したほうが良いのか、直ぐにでも彼のそばへと行きたいと思っていたけれど、私達が今から行く場所の事を思い出した。
「ねぇ、オーブへの侵攻作戦って何時発動なんですか?」
「6月13日、西進後艦隊はオーブを目指す予定になっています。このまま、オーブが我々の要求である連合加盟を蹴るのなら、全面戦闘へと突入します。」
顔の血の気が引くのを感じる、このままだと私はキラと殺し合う事になる。そんな事は嫌だ!
「ねぇ止められないの?貴男偉いんでしょ?」
「ふふ、面白い事を聞きますね。今の僕は何の権限も持たない、単なる商社マンですよ。ここには、僕なりのケジメをつけに来ただけです。
ですから、もしもこの艦が連合をぬけて彼等と合流しても、僕は関知しませんし、そんな事は知りません。
この艦の乗員が月艦隊からの派遣員で構成されていると言う事も知らなければ、第13独立機動艦隊への編入が行われたと言う事も知りません。
このドミニオンが単独で大気圏を離脱できるという事も一部の人間しか知りません!」
この人は何を言っているのだろうか?
いや、もしかしてケジメってそういう事?
「だから、僕がここにいるという事も無ければ、一緒に宇宙に上がるという事もそんな事は一切無いという事です。
僕はこれから半年の間、病気で療養中という事になるでしょう。どうせいま会社に戻ったとして、戦争が終わるまで株価が良くなることは無いですしね。」
彼は首から下げていたカードを取ると、徐ろにゴミ箱に入れる。
そして、鞄から出てきた物は
大将の階級が付いた
連合軍の制服だった。
盟主は勇者
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