その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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追跡者(追わぬもの)

丸いサッカーボールサイズの固まり自由意志を持つように跳ねたり、足を出したりして動き回っている。

時折羽のようなものをパタパタと開き、電子音で〘アムロ元気か?〙等と言っている。

 

プログラミングはバッチリだ、こちらの世界の部品で作れるか疑問もあったが、正直半信半疑だったが、これで確信できた。

MSもこの世界では作れるのだと。

 

今現在ここではコロニーが建造されていると言う、目にする事も出来ないから確認のしようがないが、可能ならば最悪の事態は避けたいが、俺にはどうしようもない。

 

あの老人の言っている事が正しければ、この世界の戦争というものは一部の人間が関与しそして戦争を起こしていることとなる。問題はそれが制御出来ていると錯覚していることだろう。

有史以来、戦争をコントロール出来るものなどいない、出来ていると錯覚する事の方が多いだろう。

一つでも不確定要素があるならば、そうと言える筈だ。

 

決心のときだろうな、俺のある全てを誰に教えるべきか、それを俺が判断すべき時か。

 

 

 


 


 

静かな艦内、空気清浄機が周り私の周囲の空間には精錬な空気が漂っている事だろう。

こんな物が艦長室に必要だろうか?軍艦に必要なのだろうか?と言う、なんとも場違いな疑問を持ちながら私は出撃を出港を待ちに待っている。

 

アークエンジェルのクルーと共に撮らされた写真には、笑みを浮かべた私とフレイ・アルスターが写っている。

大変な時期だったにも拘らず、いい思い出と思える程にあの時が懐かしい。

 

刻一刻と過ぎていく時間がもどかしい。いっその事直ぐにでも出撃命令が出ないだろうか、そうしたら私は間髪入れず割り切って、仕事としてオーブに行けると言うのに……。

 

「私は、未だに迷っているという事か…。もしも、艦長達が生きていればこんな決断せずに済んだと言うのに…。」

 

嘘であってほしかった、私のような若輩ものがこんな重要な新鋭艦の艦長だと?冗談にも程がある。

こういう艦こそ、私等よりも歳上でそれでいて油の乗っている30代の佐官がするものだろうに、私等無理矢理(・・・・)やらされているだけだ。

こんな私に適任だと思えという方がおかしいのではないか……。

 

「はぁ、考え過ぎか。私も疲れているのか、いや負い目があるのだろうな。」

 

艦長達には達者な口で、威張り散らす様に物事を言ったりしたものだが、だが現実を見ろ。

こんなにも緊張し、物事を見るのにも遥かに猶予が必要であるにも拘らず、私は周囲を見れていないのではないか?

 

「この部屋にはウォーターサーバーも無いのか、仕方ない少し艦内を…。なんだ?」

 

大人数の乗員が艦橋へと向かっているのが見える、そして戦闘には見慣れない格好をした人物もいて、私はそれを訝しんだ。

こんな夜更けに何をそんな人数で歩く必要があるのか、だいたい今日は出向前の休息のはずではないのか?

 

「おい、お前達。こんな時間に何をしている!」

 

足を止めたな、何者だ?

 

「おや?これはこれは艦長さんではありませんか?」

 

「お前は……ムルタ・アズラエル!!何故こんなところに、それにその服はなんだ!それに、アルスター少尉!君まで何故こんな男に付き従っているのか!」

 

大声が出た、気の入り方が普段のそれとは違いしっかりしなければという気持ちが勝って声にも反映されている。

だが、それよりも何故アズラエルがこの様な場所にいるのか、確か軍事産業理事を解任になったと聞いたばかりだぞ!

 

そんな存在にアルスター少尉が袖を引き、何やら私の眼の前で耳打ちする。人前で見せつけるようにするとは、いったい何を企んでいるのだ!だいたい、こんなところにいて良い人間ではないだろう!

 

「ゔん!はじめまして、私はジョン・ジェリコー宇宙軍大将です。艦長、折行ってお願いごとがありまして、共に艦橋の方へ来て頂いても宜しいかな?」

 

「見え透いた嘘を、だいたいなんだ!こんなところに民間人が勝手に入ってきていいはずないだろう!」

 

直ぐにでも海兵に連絡するべきだ、これは由々しき事態だ!

 

「あぁ、海兵に連絡しようとしても無駄ですよ?この艦は既に我々の手中にあります。ですから、艦橋へ来て頂きたいのですよ。」

 

既に掌の上という事か、私は何をされるのだろうか?決して屈することはないぞ、たとえ殺されたとしても職務は全うして見せる!

 

 

………

 

「こっ…、これは一体どういう事ですか!アークエンジェルが堕ちていないと?

あの青い翼の機体にキラ・ヤマトが搭乗していたと?

どうして我々将兵にこの情報が共有されていないのか!!

ムルタ・アズラエル!これはいったいどういう事か!」

 

半狂乱に近い精神をなんとか抑え込んで、そう質問する。

私はいったい何を信じれば良いというのだ、今まで信じていた軍という構造への不信、それすら甘いとすら言えるこの情報に頭が痛くなりそうだ。

 

「そんなもの情報操作の一環に過ぎませんよ?ユーラシアの方ではこの事実は既に公となっています。

勿論キラ・ヤマトの顔写真だとかは一切のNGで使用していませんが。

本人の許諾もなくそれを使って良いはずがありませんから、彼は未成年ですからね。

保護者の了解が無いメディアへの使用という犯罪は犯したくありません。」

 

何故こんなにも常識を持っているものがあんな、ブルーコスモスの盟主等やっているのか?本当にコイツは、ブルーコスモスの盟主なのか?

ヤマト少尉が件の機体に搭乗しているという事を知っているのなら、彼がコーディネイターである事も既に知っているだろうに!

 

「それでですね?こんな事を僕が言うのもなんですが、このオーブ侵攻作戦を止めることがもう出来ないと思いまして、この艦を使ってオーブの民間人だけでも救出しようかなと思いまして…。

どうです?この話乗りますか?

乗らなくても、我々はオーブへと向かいますが?」

 

こんなもの最早考えるべきもない、人道的に許容出来ない事を行った大西洋連邦に正義はない。

だが、私は……大西洋連邦の士官なのだ…。

 

「貴女面倒くさい人ですね、ウジウジと決断力が落ちているんじゃないですか?

大丈夫ですよ、貴女大西洋連邦の軍人以前に地球軍月方面軍の軍人です。

ユーラシアも大西洋連邦も関係ない、我々は一蓮托生。

もしもの時は、僕が責任を持ちます。

これでも無理だというのなら、退艦願いますよ?

でも、そういうところ嫌いじゃありませんよ。」

 

私は堅物か、なら堅物は堅物らしく振る舞うしか無いのか。

 

「解りました。命令というのならば、従います。アズラエル閣下。」

 

「ジェリコー大将です。」

 

面倒くさい人だ。

 

 

 

 


 

「ドミニオンが行方知れずか…動き出したという事だな。」

 

大西洋連邦によるオーブ侵攻作戦の決行、艦隊出撃の二日前突如として連合新鋭戦艦であるドミニオンが出港しその後行方不明となる。

と言う事件が俺の場所に内々に通達されてきた。

突如としたホワイト・アウトしたレーダー群だけでなく、一時各種施設の電源がダウンするという途轍もない事態が発生した後に、ドミニオンは静かにいなくなっていたらしい。

 

大佐以上の将官のみに伝えられたこの事態に、一兵士が対応できる訳もなく、大混乱が予想されていたが為に周囲への周知と一部隠蔽の意味も兼ねたというところだろう。大西洋連邦の威信に関わる事態に、上層部は対処に困っていると言ったところか。

 

いや、特務という詭弁があるのだ。だからこそ、俺達に鹵獲命令やらが来るというものか。

 

しかし、そんな事態が起こったとしても事態に変化はなく、大西洋連邦は規定通りオーブへの侵攻を開始する事が決定されている。

たった一隻いなくなったところで、戦局はそれほど変わることもなく、この熱も次第に冷めていくことだろう。

 

「それで、この命令受けるんですか?」

 

「いや、受けると思うかい?俺ならこんな無駄な戦闘やらないよ。

この基地の連中だってサイクロプスの餌食になる可能性があったんだから、大西洋連邦に従うとも思えない。

特にユーラシアの出身者は嫌がるだろうな。

それに、復旧作業で忙しいからな。」

 

現地住民を使っての昼夜問わずの急ピッチなマスドライバー再建はこの地域を潤すと共に、代えがたい格差を産むことだろう。

決して栄えているとは言えない地域だ、一地方都市としては良いが。エイプリルフールクライシスからこの一年間で失業率は鰻登りだから、住民としては食い扶持が出来て良いのだろうか?

 

「それは建前で、何処を襲撃するつもりなんですか?まさかと思いますが…、カオシュンでもやるつもりですか?」

 

「あぁ、2度目だ。敵もまさか自分達と同じ方法で演られるとは思わないだろう。

幸いこの艦にはそれを行える機材が揃っている。

味方がいない状況だからこそ、輝くという皮肉のようなものだがな。ドミニオンが何故消えたのかというのもこの原理さ。」

 

ドミニオンの行った行動は俺達の艦に搭載されている、〘ミノフスキー粒子散布攻撃〙とでも言えば良い方法だ。

この方法の利点が判明した以上、使わない手は無いだろう。

小規模部隊だからこそ出来る戦闘方法だ、せめて基地機能だけでも破壊する意気込みでやる。

 

オーブ攻撃の後背を突こうとするザフトの部隊に対する牽制を兼ねて、同時に行えば良いだろう。本部の方も文句は言うまい。

オーブですり減った戦力に対して、カオシュンを落とせば地上での優位は揺るがないからな。

 

それに宇宙空間からなら、俺達の場所を正確に把握して支援も出来る事だろうからな。

 

「それを兼ねて一度宇宙へと上がる、宇宙で2隻の艦と合流後カオシュンにその脚で降下する予定だ。」

 

俺達と中型艦艇2隻の戦力での強襲揚陸戦だ、いまのカオシュンには防衛出来るだけの戦力は残っていない、アラスカの自爆がここで生きてくるか。

小規模部隊の迎撃なんて、態々大艦隊で行うものじゃないからな。ザフトも目を向けてこないだろう。

 

「独立機動艦隊としての初仕事…ですか、腕が鳴りますね。僚艦との通信は大丈夫なんですか?」

 

「地球と月の間だからね、レーザー通信はこういう時に便利だよ。殆ど誤差が無いからね。」

 

「本部が開発した量子通信とかもあるらしいですから、やっと情報に飢えない戦い方が出来ますね!」

 

「実はそうとも言えないんだがな?難しい話になるぞ?」

 

どんとこいと言う態度で彼女は、胸を張る。勉強してきたんだろうな?

 

「ミノフスキー粒子は四つの力を統一した画期的な存在だ、それは素粒子に干渉するから空間に歪みを産む。そうすると座標が僅かにずれるから、量子通信で言う量子テレポーテーションが行えないんだ。だから……」

 

「すいません、出直して来ます。

というか、良くそんな難しい事スラスラと頭に入りますよね、女の子に嫌われちゃいますよ?」

 

「だが君は俺が良いんだろ?」

 

顔を少し赤くさせている、難しい話なんて置いておいて、今は眼の前の事案を片付けて行くとするか?

 

「既に乗員は乗り込んでいる訳だ、なら鉄は早い内に叩いたほうが良い。」

 

その言葉を聞くと、頬を染めていた彼女はすぐに切り替わり軍人然とした、キリッとした表情に変わる。切り替えが早いことは良いことだな、有事でも良い対応が出来る。

 

「解りました。では、今から出港でよろしいんですね?」

 

「勿論、そのつもりだ。」

 

リベンジマッチだ、数は前回の比ではないぞ?勿論こちらも新兵がいるが、そいつ等を上手く扱って見せるさ。

艦隊の指揮は俺が前線に出ている間は参謀にやってもらうか、アイツは器用だからな。今度慰労会か何かやってやらねばな。

 

 


 

「こんにちは!久し振りね!お兄ちゃん!」

 

「こらこら困らせちゃ駄目よ、あの時は本当に護ってくれてありがとうございました。

ほら、行くわよそろそろ船が出ちゃうから。]

 

文句を言いながら船で島を離れていくのは、ヘリオポリスで救ったあの女の子だ。

ヘリオポリスに暮らしていたのが一転して本土に戻ってきたと思ったら今度は疎開しなきゃならない。

こんな嫌な時代になっちゃったっていうのはどうしようもない事実で、僕のせいでもあるかもしれない。

 

大西洋連邦は、マスドライバーを使いたいとオーブに脅して、数日後までに回答をしろという。

ウズミ様はオーブではとても人気で、大西洋連邦の強い主張とかを毎度毎度の事跳ね除けてきた。

 

この間まで停泊していた軍の艦隊がここに来て、この国を焼くなんてと考える人がいるかもしれない。

だけど、これが現実なんだ。

 

もしも、連合の話を呑んだらカーペンタリアの近いこのオーブは真っ先に狙われる。

近くには最近地球連合に加盟した赤道連合もいるけれど、まだまだ武装もされていないから、彼等が助けに来るなんてこともない。

 

だからこの要求を呑んでも呑まなくても、オーブは否応無しに戦火に巻き込まれて、多くの人が死ぬ。

 

どうすれば回避できたのだろうか?

初めから連合に入っていれば良かった?でも、それじゃあマスドライバーがあるオーブは真っ先に攻撃対象になる。

ウズミ様の判断は今このときまでは正しかったという事だ。

 

でも、もうそれも意味が無い。オーブは今まで戦う力を温存してきた、そして今こそその力を使うべき時なんだろう。

僕はフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトとして前線に立って皆を護らなくちゃならない。

護りたい世界は今、僕の背の後ろにある。

 

「どうしたんだ、こんなところで。1人でいるのは楽しいのか?」

 

ラフな格好をした男勝りな女の子…カガリが僕のすぐ近くに寄ってきた。

彼女も色々と悩んでいるらしい、今の自分の立場の弱さだとか、この国を護ると言う義務に対して。

前線で戦う為に、色々と準備もしてきているという。

 

「カガリこそどうしたの?まさか、またお屋敷を抜け出してきたの?」

 

「そんな訳無いだろ!!いや、こうやってこの国を離れて行く人達を見送っていたんだ。

戦争が終わったら必ず帰ってくると言ってくれてはいるが、もしも終わった後オーブという国が無くなっていたら、どうするんだろうと、そう思ってしまったからな。」

 

沈痛な顔で僕にそう話す姿は、元気溌剌な彼女とは思えないほどしおらしく見えて、何処か可愛いとすら思える。

でもなんでだろう、とても親近感が湧いてそう言う思考にならないんだよね。

 

「なあ、もしも。もしもの話だが、この国を護りきれなくて私が奴等に捕えられそうになったら……、私を殺してくれないか?」

 

「嫌だよ、絶対に嫌だ。どんな状態になっていたとしても、カガリには生きていて欲しいんだ。」

 

「私は!私は、もし捕まれば国民を盾に奴等の言いなりになる未来しか見えないんだ。そうなれば、お父様が護ろうとしたこのオーブも、国民が好きなこの国も。私の手で壊してしまうかもしれない!

私は!そんなもの耐えられない……。」

 

ナイーブになるのも解る、オーブの五大氏族は全員がその名の通りの職責を持っているらしいから。優しい彼女は、そんな事嫌なんだろう。

 

「それでもカガリは生きなきゃ、僕と違ってカガリには色々な責任があるから。

皆それを解って戦うんだ、そんな気持ちを僕たちのそれを無碍にしたくないんだ。」

 

「そんなの解っている!だけどな、そうなったらどう生きれば良いのか解らないんだ。

だからキラッ!絶対に死ぬなよ!お前みたいな相談相手がいなくなったら、私はどうにかなってしまうからな!」

 

僕の考えていることなんて、カガリからすればちっぽけな事だ。大きい責任を持ったカガリと、そんな責任の中で生きている僕は同じものを見ていられる。

 

「解ってるよ、大丈夫。僕達は死なないよ、絶対に生きて帰ってくるから。」

 

夕焼けに染まる水平線。それとは逆に、陽も見えなくなった暗闇の中に光る小さな星々の、それと一緒に輝いているオーブの景色。

こんな綺麗なものを壊させたくない。

 

フレイ、僕は君と戦いたくない。だけどもし、もしも君がここを撃とうとするのなら僕は!君を撃つしか無い。

 

 




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