その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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さようならを言わないで

日がな1日、私はこのプラントというコロニーの内部情報を仕入れる為に、私の信徒という者達を集めた。

私という存在への熱狂的なファンのようなものだが、彼等が思い描くものを私は持っているのだろう。

 

seedという因子を持っているのではないかと、私の事を勘ぐる者達だ。

直ぐに手を切った、私が欲しいのは部下であって宗教団体ではない。

 

そんな御伽噺のようなもの私は持ってなどいない、そんなもので人を導けるものなら、戦争などこの世に存在すらしていないだろうな。

 

結局のところ人とは自分の見たい物しか見ることの出来ない動物だ。自らの作り出した虚像に崇拝し酔いしれる、哀れな動物だ。ニュータイプというものに希望を見出し、それを実際に目にした私にはそう言う権利がある。

 

だが、この世界にはそんなものいないのではないか?

 

 

 

 


 


 

 

次々と着弾していく砲弾やミサイル群、大地が耕されていく様はこの世の地獄を創り上げているみたいで、たった一機のMSでどうこうできる様なそんな戦局じゃない。

戦争は数だと、私はそうやって教えられてきた。

 

もし、戦争が始まってオーブに戦火が飛び火した時私達は専守防衛に則って戦うことになると、そうやって教えられてきた。

覚悟はしていた、この状況をこの地獄をだけど、何もできずにただ蹂躙されていく国土が国民の創り上げたこの宝のような島が破壊されていく……。

 

キラの機体が迎撃戦闘を開始しているが、フリーダムの砲弾だって無限ではない。

ハイマットで迎撃したとして、一体何割がカバー出来るのか?旧態依然のイージス・システムでも近接防空システムでもその数に物を言わせた戦いに、初撃でシステムの3割を持って行かれる。

 

これが物量という恐怖だという。

オーブは島嶼内が要塞のようにくり貫いてある、その為に部隊の損耗はほぼ0で防衛の為の戦力にその砲爆撃は一切届いていないけれど、揚陸地の反対側面には未だに避難が終わっていない住民が取り残されている。

 

順番と言って、家の中から出ないように誘導したがそれでも、こんなにも戦争が激しいものなんて。たった2日で島の人間を全て逃がすなど不可能だ!!

私はザフトによる戦いを見ていたけれど、本当の戦争というものが何なのか、これで始めて目にする。

 

ザフトは基本的に奇襲効果の中で戦争をしていた。正規の殴り合いを経験したことの無い軍隊で、こんなにも高密度な攻撃をしてこない。

次々と消えていく火点をゆっくりと進んでいく時間の中眺めている。

 

「初撃と第二次攻撃で島嶼部防衛システムの半数を持っていかれました、このまま進捗しますと後40分で正規防衛システムは崩壊します。

向こうは反撃の無いことを確認した後に揚陸戦に切り替えてくることでしょう。

 

そこが我々に残された最初で最後の防衛線となります。

オノゴロ島内に侵入を許しつつ山間部からの砲撃を開始し、敵の進入路を中央にのみ集中させ、そこに対してMS部隊を展開し島内戦闘に入ります。」

 

絶望的な状況だ、このまま行くと1日持つかどうかとそういう話が国防軍の中での話だ。

連合がこれほどの力を持っているのなら、今までザフトに押されていたのは何だったのか?いや、それこそ奇襲効果なんだろうな。

 

「私に出来ることなど、そんなには無いということか。」

 

私の呟きは無為な空気へと消えていき、私という存在そのものの矮小さをよく表すかのように広がっていく。

 

……いや、私が諦めてはいけない。私が諦めればオーブという国がその戦う意義すら失ってしまう。

オーブの兵士は私達氏族の命令によって戦わされているという理由付けになるのだ、たとえ忠誠を誓っていたとしても、負けた時はその様に彼等に噺をさせなければならない。

 

「キラが持ち受けている戦線の状況は芳しく無いな。」

 

「はい、彼の持っている戦区は連合のMS部隊の集結が著しいと、予想されている場所です。いかに彼と言えど苦戦は免れないかと。」

 

敵のMSの性能は思ったよりも高い。あの13部隊のそれとは劣ると言えど、ザフトの機体を一方的に屠ったフルバースト射撃をまるでエースパイロットが駆るかのような動きで持って回避していく。

当たったとして、敵の腕や足が吹き飛ぶだけで継戦能力が喪われるようなことも無い、その回避機動は最近MSを操縦し始めた者達の動きではない。決められた回避パターンが無いのだ。

 

「あの動きは何だ、アレではまるで」

 

「キラ・ヤマトの動きに対応していると言ったところか、このままでは突破されるのも時間の問題だな。

連合の機体には自己学習するOSの簡略版が備わっていると聞く、あの動きはフレイ・アルスターがこれまで培ってきた、地上戦での記録から取られているのだろう。」

 

コトーサハクが、私の隣でそう言う。アレがフレイの動き、だが私が見てきた動きよりも少しゆったりとしていると言うか遅いような気もする。

 

フレイの動きに似ているけれど、彼女のほうが遥かに速いし鋭く無駄の無い動きをする。

だからだろうか、キラはそれに対応していっている。

それでも、敵は遥かに多くまるで雲蚊の様に群がっている。

戦いはまだ始まったばかりだ。

 

 


 

カオシュンへの強襲の序に、低軌道でのドミニオンの捜索を敢行していると、ゆっくりと進むこちらよりも巨大な艦影が光学カメラで確認がとれた。

ミノフスキー粒子の濃度が異様に高く、レーダーは使用不能どころか全く役に立たない。

宇宙空間ですら40Kmが精々で、光学カメラでの撮影の方がよっぽど効率的だ。

 

俺達の艦のように引力圏を付かず離れず飛行できるからこそ、長時間この狭間の世界でいられたのだろう。

ドミニオンは大気圏上層で大気利用軌道変更を行いつつ、推進剤の節約をしながらオーブ上空へ向かっている。

 

地球の自転とほぼ同じ速度であるからちょうどオーブ侵攻の時間に間に合う計算だろうな。この軌道だと、20分後にはすれ違うな。

こちらもランデブーポイントまであと少しなのだ、彼女に構っていられる時間はない。

 

「どうします?このまま追跡して鹵獲でもしますか?」

 

「いや、予定通り俺達はランデブーポイントに到着時刻艦隊編成後速やかにカオシュンに向けて降下を開始する。ドミニオンには発光信号で連絡をしてくれ、一応念の為にな。

文章は〘武運長久を願う〙とだけでいい。向こうもこちらを認識しているだろうからな。」

 

相対距離が徐々に縮まり、上下で交差するようにすれ違う。ドミニオンは降下し始めたようだ。俺達よりも幾分か早い戦闘になるかな、それならそれでいい。

どうせ連合は物量に物を言わせて攻撃するだろうから、最悪オーブは陥落するだろうな。

 

「ランデブーポイントが見えてきました。いますね、2隻。私達の艦より小型ですけど、エンジンの数は同じです。足が早いんですかね?」

 

ノッペリとした艦だ、船体の殆どがMS用の格納庫で、中心線上前方部に主兵装を集中しているところに、中途半端な部分が詰まっているな。

これならまだ、エポナ級をもう一隻くれた方が戦力になるんじゃないか?

 

 

【挿絵表示】

 

 

「通信です。映しますか?」

 

「あぁ、大方の予想はついているよ。」

 

艦橋の画面に映し出されたのは寡黙な女性、珍しくも慎ましい胸を持った人物。

 

「こちらアムロ・レイ大佐だ、モーガンは来ていないみたいだな。」

 

「なんでそんな事を知ってるんですか!……ゔん、ええと申し遅れました!エクスデロ・アデイン少佐です!

あの、モーガンさんは……モーガン大尉は月面にて基地の防衛に従事しております!

我々は月より旗艦の護衛を仰せつかりました!」

 

 

若い、若すぎるくらいに若い。たぶんまだ20代前半だ、それほどまでに連合の人材は払底しているのか?

いや、彼女が優秀なのか…、コーディネイターだなしかもなるほどな。

 

「その訛方、君はプラントの出身かい?プラントでブルーコスモスに所属するコーディネイターがいるとは聞いたことがあるが、君みたいな人がそういう人とはとても見えないが…ザフトで訓練を受けたか?」

 

「………はい、私は嘗てはプラントでザフトの準備部隊に所属しておりましたが、戦争前に恋人と共に地球へと降りました。

そこで、エイプリルフール・クライシスに会い、連合に参加しました。彼の無念を晴らしたくて…。」

 

なるほどな、被害に会い故郷であるはずのプラントを憎んだコーディネイターか。そいつ等を中心に作り出した部隊だな。

確かに扱い辛いな、普通の部隊なら艦長になんて出来ない。だけど、それ程の腕があるということは確かなのだろう。

そうなると逆に信頼できるな。、

 

「ありがとう、辛い過去を思い出させたね。今後とも宜しく頼む、もう一隻の艦長はドレン・パーティカルであっているかな?」

 

「御名答です、今は大佐…でしたかな。私も今は名実ともに少佐ですよ、お互い出世したものですなぁ。」

 

嘗て俺の所属していたL1駐留艦隊の時のドレイク級の副官だった男だ。あの時は俺の方が階級が下だったが逆転現象が起きている。嫉妬されるのが一番怖いからな、コイツは要注意だな。

 

「二人共挨拶はそれぐらいにしてブリーフィングに入ろうと思う。

 

これより本艦隊は大気圏再突入を行いつつカオシュンに向けて、航行を開始する。

敵の基地に対する強襲揚陸戦となる、陸戦隊は我々の艦に一個歩兵大隊が乗り込んでいるが、東アジアの日本列島から増援として一個軍の揚陸が計画されている。

 

俺達の攻撃後、早期に派遣されてくるそれらの部隊と連携を取りつつ、台湾島北部を早期に無力化し、カオシュンの奪還を行う。

またそれに伴い我々の目標は、敵基地の防衛設備の破壊。並びにマスドライバーの確保が最重要目標である。 

 

ミノフスキー粒子による撹乱によって敵はパニック状態になると予想されるが、こちらも同様にレーダーが一切使えなくなる。よってくれぐれも誤射には注意されたい。

 

また、MS部隊は艦艇が安全高度に到着した場合空挺降下を開始し安定高度に到達後、グラスパー隊を出撃させグラスパーによる航空優勢を確保せよ。

 

その後、東アジア軍による揚陸作戦が開始される。東アジア軍の主力は通常兵器である、よって我々は出来うる限り敵のMS部隊の誘引を行う。

敵の歩兵戦力はMSに依存しており、防衛線は通常戦闘を想定しているものではない。

よって内部まで浸透した後、我々はMS部隊の掃討に入る。

 

質問は?無いな。

 

それでは時計合わせを始める、30分後降下を開始する以上だ。」

 

戦争だ、奇襲効果は数倍の敵にも効果は期待できる。更に無線が完全に不可能な状態を想定していない敵は、戦術単位での包囲殲滅が可能だろう。後は、時の運次第だ。

 

地球は青い、この青い星に赤い血が流れるのは少ない方が良い。

 

 

 

 

 


 

深い闇の中、私はドレッドノートを運搬するプレア・レヴェリーという少年と共に、地球へと向け移動していた。

いつかこの時が来るとそう思いつつ、そしてまさか本当に来るとは夢にも思わなかった地球への帰還という事態に、内心とても興奮している。

 

二人は匿った、今頃奴の手の届かないところだろう。後は私の行く道のみか……

アムロと合流するも良し、キラ・ヤマトと合流するも良し、どちらにせよ最早プラントは止めなければならないものだ。

 

このまま何もなく、この艦がマルキオの手に渡るまで行けば良いと思いつつ、私はどこかそのようなことはあり得ないという不吉な未来を見る。

 

私の最後はフリーダムに殺されるという事だ、つまり私はキラ・ヤマトと戦いそして死ぬのだろう。

だが、地球へ向け今こうしているのにもかかわらず、どうして再びザフトへと戻る事になろうか?

 

私は艦にゲイツを固定し、ゆっくりと進んでいくその宇宙を眺めながら、プレアと言う少年と自らの出自に対し話し、そして徐々に打ち解けていた。

 

彼は恐らく、ムウのクローンではないか?顔貌が何処となく私に似ている、それこそレイよりも少しアルの妻に似ているのだ。こんなところで擬似的な家族と出会えるとは思いもしなかった。

 

だが、どうやらそんな幸せも長くは続かないようだな。

 

「プレア、解るか?あの気配が。」

 

「はい!何か得体のしれない存在が来ます!これは、これは途轍もない執着です!」

 

我々を追う任務はサーペントテールが負うのではないのか?契約上は確かにそうなっていたはずだ。

それに、俄にだが気付くには早すぎる!

このままでは無理か、だがなんとか彼だけでも逃す事が出来れば、戦略兵器を地球軍へと提供できる。

 

「ラウさん、駄目ですからね1人で行くなんて!それにこれは平和のために使うんです。」

 

「プレア、だがここで誰かが立ち向かわなければ奴は必ずこの艦を沈めるだろう。そうなれば、地球軍へと向かうにせよ、マルキオに届けるにせよどちらにも行けない。」

 

段々と近付いてくる気配、これはまさしく奴の気配だ。だが、奴の機動データよりも遥かに速い動きだ!

 

「行けプレア!!そして伝えろ、私はこうして戦ったという事をな!!」

 

私はプレアに乗る船のバーニアを外部から操作し一気に吹かせ

船を加速させる。

 

「絶対に、絶対にに生きてください!!絶対にさよならなんて言わないですから!!」

 

「さようならだ、プレア。」

 

 

 

………

 

………

 

………

 

 

 

後ろに徐々に小さくなっていく彼の船、それと同じく徐々に近付いてくる奴の機体は、真っ赤に塗られておりそれはあたかも誰かの返り血で染まったようなものだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

私はフットレバーを脚で踏み抜き、機体を一挙に加速させ機体に外付けしたバッテリーをパージする。

私の動きに呼応するように、跳ね私を高速で追従してくる。

背面バーニアの性能差か徐々に機体の距離は近付いてくる、撃てる距離だろうにまだ撃たないだと?ならば

 

「こちらから仕掛けさせてもらう!」

 

機体をAMBACで自転させ、バーニアを最大出力で吹かすことによって、機体が急制動に悲鳴を上げるも、それを己の勘と経験でなんとか制しながら速度を全く落とさない奴に今度は一直線で向かっていく。

 

盾を進行方向に構えながらビームライフルで牽制しつつビームクロウを展開し、急激に近ずいて行く距離から奴の隙をなんとか作り出そうとする。

そして、その攻撃を機体をわずかに傾け回避して行く姿に舌を巻く。

 

距離がほぼ0になるタイミングでクロウを横薙ぎにやると、奴はビームサーベルでそれを防ごうとする。

だがそれは防げない………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

交差するビームが辺り一面に、スパークを発生させそれは反発するように互いをはじき飛ばす。

耐ビームコーティングを施され盾のように反発するそれは、従来のそれとは比べ物にならない出力のように思えた。

二度三度とまじ合わせていくと機体性能の差か、私は徐々に押されていった。

 

「ラウ・ル・クルーゼ、アル・ダ・フラガのクローンよ。私と共に来れば命だけは助けよう、君という存在は私にとってはとても貴重なものなのだ。」

 

回線がショートするかのような振動が機体を襲ってきている間も、奴は余裕を崩すこと無く私を追い詰めていく。喋る余裕すらあると言うのか。

 

「このヴァルナ、機体の調整にも手伝ってくれるとは、ありがたいものだな!」

 

ほざくな!!

 

弾かれた瞬間にライフルを斬られる、奴はライフルすら未だに使うこともなく、私を翻弄していく。

微調整、微妙なスラスターの動きによって格闘戦を仕掛ける、機体限界のその先、肉体の限界に挑む速度。

 

光跡が辿るように、粒子が辺を覆い機体に負荷をかける。

再び剣が混じり合う。

 

「ラウ・ラ・フラガよ、もう一度問おう私とともに来い、そうすれば生命は助けてやろう。」

 

「ラウ・ラ・フラガだと?それは、アムロ・レイだけが呼んでいい名だ!

 

怒りが上がる、赤くなる景色。隙が産まれた、そこへ吸い込まれるようにクロウを入れようとした瞬間、機体に途轍もない振動がかかる。思い切り蹴られたのだと瞬間的に把握する、一瞬の隙を態と作り出し私を誘うとは。

 

薬の効き目が切れてきたか、痛みに意識を失いそうになりながらも、私は目の前の存在に立ち向かおうとスロットルを入れた。

あの日を思い出す、走馬灯のように。彼にであったあの日の事を………。

 

……

 

光が消えた。

 

 

 

 

 

 

 




新機体と艦船の解説に追加しておきます。
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