その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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フレイ・アルスターのエンブレム

【挿絵表示】

アルスターはケルト神話系列の名字なので、それとフレイの頭文字を入れた感じかなぁ。


五十歩百歩

俺の息子はすくすくと育っている。

もう言葉も話せるし、何より俺がなにかやっていることを解っているようだ。

ハロとも仲良く遊んでいるし、こんな日常が一生続いて欲しいと願うとは裏腹にある種の現実を直視しなければならない。

 

小さい頃から何かにつけて体力をつけさせ、健康な身体にしていく。クローンというものは通常の人間とは少し違う可能性があるからだ。

いやいややったところで継続はしない、ならばと俺は色んな機材を買って与えている。

 

ここ最近は肉体の反応速度を競うゲームをして、世界ランカーと渡り合っている。正直言って驚きだ。俺が子供の頃もしやっていたらこんな感じになっていたのだろうか?

 

 

 


 


 

いったい何機を落としたのだろうか、いったいどれ程の時間が流れたのだろうか?

僕は目の前に横たわる四肢を全損したダガーを見てそう勝手に、思考する。

 

彼等は何処かおかしかった、回避する速度は対応できるようになって相手を落とせると思った束の間、腕を失い継戦能力が著しく低下した機体達が、まるで群がるように僕へと襲いかかる。

その姿と言ったら、昔アスランと見たゾンビ映画のようだ。

 

1機だけじゃなく、僕が相手をしている機体の殆どがその行動をするのだ。

まるでとち狂った様に、我武者羅に僕へと物量を使ってにじり寄ってくるその姿と言ったら恐怖でしか無い。

 

そのせいで余計に時間がかかり、今度は防衛にも影響が出てしまうのでは?と危惧していた。

 

「いったい……なんなんだこれは。」

 

そうつぶやいた瞬間、僕が倒した機体達は各々が自爆していく。

 

まるでその存在がなかったかのように、存在を抹消するように。僕が態と敵の中枢を攻撃していない事を知っていたのだろうか?僕がやった事は全くの無意味なことになってしまった。

 

「まだ……覚悟が足りないんだね。解ったよ、次は必ず殺るから、だから来ればいいさ。」

 

相手が最後には自爆するのなら、死にたいっていうのなら僕はこの手が汚れてでもお前等を倒す。

 

「IFFに反応?でもこんな信号………いや、これはフレイだね?僕の眼の前に現れるんだ……、君を殺したくなんて無いのに。」

 

ちょうど第二波が来た、そうか第二波の先鋒なんだね?フレイは、皆が僕を倒せないから僕を倒す可能性が一番高いフレイを使って!!

ギリッ、と歯が撓る。本当に最悪な相手だ、せめて苦しませない為にも……?

 

あれ?見慣れない配色のストライクがダガーと交戦している、そしてそれにIFFが反応しているって事は、フレイは僕達の為に戦っているの?

なんで、僕達は敵味方になってしまったんじゃ……、いや。

落ち着け、こんなところで錯乱とかしちゃ駄目だ、フレイ待っていて、僕が今助けるから!

 

フルバーストの為に敵をロックオンする、あいも変わらず意志のない様な動きをするダガーと、それを相手にするフレイの背中が見える。

お願いだ、フレイ!

 

避けろー!!!

 

フレイの機体は僕の攻撃を振り向きもしないまま、避けていく。

そして、僕の攻撃は寸分違わずダガーを蜂の巣にしていって、多くの人の命を僕が、刈り取っていく。

 

そう思ったのも束の間、今度はムウさん達のところでインパルス砲の閃光が走る。しかもそれは湾曲して、次々とミサイルに命中していく。

一体何がどうなって…!フレイ!

 

「キラッ!!キラッ!!生きてて…本当に良かった。でも、まだ会えない戦いが終わったら顔を見せて?

私、キラを確かめたいの。」

 

フレイの機体が見慣れたエンブレムが、僕の目の前に降り立ってそんな通信を出しながら僕のコックピットの中に声が響く。

 

「僕も、僕もフレイを確かめたい。だから、やろう!僕達がここを守るんだ!」

 

僕は君の下に帰ってきた、君も僕の下に帰ってきた。だから、今ここは僕達のいつもの戦場、君の背中は僕が守るだから、僕の背中を守ってほしい。 

 

僕が範囲攻撃をし、その合間を縫う敵を的確に処理していくフレイ。

時折垣間見えるその回避は、たぶん僕よりも上だろう。

遮二無二、敵を落としていく。

 

明らかに動きの良い敵が来るなら二人で共同で戦い、無力化していく。

フレイの動きは僕が彼女を最後に見たときよりもはるかに良くなっていて、こんな姿想像できなかった。

彼女は確かに、戦士になってしまったのだろう。

 

そんな時、何処からか攻撃が飛んできて僕達の戦う場所に着弾する。それに対して素早く反応した彼女は、盾を何処へともつかない方へ投げて僕はそれに困惑した。

 

「どうしたの急に!」

 

「なんか、誰かがいたような気がしただけ!」

 

もしもその誰かがいたのなら、僕達の戦いに巻き込まれていない事を祈りたい。

 

 

暫くの交戦の末、連合の部隊は一時的に引き上げを始める。

何かに駆られるように慌てて引き上げていく彼等、潮が引くように一気にいなくなった。

艦隊そのものの姿も、目視できる距離から離れて行く。

 

第二次攻撃は必ずあると、そう言われて。

ならばと思い、防御線の再構築を進めていこうと、少しでも抗おうと。

途轍もない火力を投射したのだと、辺り一面街だった痕跡は殆ど無くて瓦礫だけがそれを、湛えていた。

護ろうとしたものを守れなかった、この喪失感は僕は絶対に忘れちゃ駄目だ。

 

そんな僕を横目に、フレイは撃破した機体達の中でまだコックピットが無事な機体が無いかと探し回る。

 

「危険だよ。」

 

「大丈夫……確実に死んでるから。」

 

彼女は何かを感じ取っているみたいに、僕等と戦っていた機体を物色して見つけた。

コックピットが無事で、なおかつパイロットが死んでいる機体を。

 

それの中身(・・)を引きずり出して、僕等は驚愕した。

 

 

………

 

遺体をオノゴロ島の国防総省にまで運び、検死に回す。どう見ても外傷はないのに、彼等の頭皮には縫い目の様なものがあったから、最低でも2つの遺体をと言われ僕等はそれを聞いて、また探した。

 

今度はムウさんが見つけ、僕等二人が戦った人達だけがおかしい事に気が付いた。

やはり遺体には頭皮に縫い目があった。

 

ちょうどその頃だろう、瓦礫に変わった街の上にドミニオンが表れた。

現れると同時に、レーダー施設がホワイト・アウトする。それに国防総省の人達は一瞬パニックに陥りそうになるのだけれど、とある人物の一言でそれは収まる。

カガリの声だった。

 

「それでどうだったの?連合のパイロットの死因、もしかしてしなくても…。?」

 

カガリは僕達が何かをやって遺体を持ってきたと聞いて、跳んできたそして検死の結果を見てこれを世界に公表しようと決意していた。

酷く冷静に、沈痛な面持ちでその報告書を読む姿は怒りに満ちていながらも、一周回っているのだろうか。

 

「奴等……、最悪な行為をしてるんだ。この遺体の頭部の縫い目には、頭蓋骨を切り開いた跡があったそうだ。

それで………、遺体の」遺体の前頭皮質大脳辺縁系並びに大脳前頭葉前頭前野にある神経線維が切除されていた……、違いますか?」

 

カガリの言葉を遮るように、その男は現れた。3人のパイロットを引き連れて。

そんな男の方に、フレイは歩いて行き憎しみのこもる瞳で彼を射貫く。

そんな眼光を見ても、努めて冷静にその男は僕等を無視してカガリの眼の前に立ち、場違いがモーニング・コートで決めた男が深々とした礼をカガリ個人に行う。場違いな程に洗練されたその動きに、一同唖然とするとともに

 

ムルタ・アズラエル、僕等が戦っている筈の相手が眼の前にいる。

 

「これは……、これはいったい何だ!お前達連合は、人を道具として見いないのか!

 

そんなカガリの激情を冷めた目で見ながらも、努めて冷静な態度を崩さない。

そんな姿をしているけれど、僕にはそれが目の端にしか映らない。

フレイは黙って彼の後ろについた、どうしてそんな奴の方に行くんだい?

 

「こんなところで押し問答はどうかと思いますが……、一応疑問にはお答えしましょう。

エクステンデッド計画、その成れの果ての一つとでも言いましょうか。精神を弄くるのに脳ごとやるのが手っ取り早いですからね。

僕の援助しているものとは別口の計画ですので深くは知りませんが。

それよりも、僕はウズミさんとお話があるんです。どいてもらえませんか?」

 

「もう一つだ、なんで連合は引いた。あのまま行けば正直オーブは落ちてたと思う、どうしてだ!」

 

確かにそうだ、どれだけこっちが落とそうとも正規の軍相手に数の暴力で勝てる通りはない。僕等の護っていたここは確かに落ちていないけれど、いくつかの島では既に制圧されたと聞く。

詰将棋のように、僕等は包囲されていっているいずれ補給も尽きて殺られるのが落ちだ。

 

「アムロ君達がなにかやったのでしょう、僕も知りたいですよ。どうやったらそんなに早く、敵の基地を制圧できるのかとね。」

 

僕らを無視して歩く彼の後ろを、フレイ僕に向かって

 

「ごめん、今は説明している時間がないから」

 

と言って去っていく、敵が敵じゃないのならいったい僕等は何と戦っているんだ。

 

 

 


 

焼けた大地に黒いビニールがずらりと並び、その異様さを醸し出している。

これは戦闘員のものではない、周囲に塹壕を掘ろうとした上陸部隊が発見したものだ。

 

その殆どが何処かしらに損傷を抱え、その外傷は治癒する様なそんな様子もなく黒ぐろと何かが垂れていた。

抵抗した跡すらない、防御痕も無ければ腕を何かで縛られた跡のようなものがくっきりと残るものもある。

 

「ザフトは……死者への冒涜とかものともしないんですしょうか。」

 

「どうだろうな、確かに宗教というものに関して彼等は無知だろうが、流石にここまでやるとは思わなかったよ。」

 

そんな現状に対して、緑髪の少年。ニコル・アマルフィは動揺している。

自分が所属している場所が、こんなにも惨たらしく人を殺す事ができ、死んでもなお死者の尊厳を壊すようなそんな行いをしている事に対して、彼は涙を流す。

 

これは彼のせいではない、この戦争が悪いのだ。

戦争が長引き互いに理性の箍が緩んできている、このまま進めばどんな事だってやるのだろう。

人という生き物の残虐性は、ホモサピエンスとネアンデルタールの生存競争でも見られた。それが俺達の本来の姿だ。

容赦のない、あらゆるものを殺し尽くす。

 

それを人間は、理性というもので互いに殺し合わないように、共通の神を持って思いとどまることが出来るように、宗教というものは生まれたのだ。

それが今、牙を向いている

 

理性に侵された宗教が、コーディネイターとナチュラル。プラントと連合というものに置き換わり、互いに理性を持って殺し合いをしている。

もしもそれが消えたならどうなるだろうか?

 

どちらかが世界から消えるまで殺し合いを続けるだろう、それでは動物としてのホモサピエンスではないか?

人間とは、理性で生まれるのではないか?

 

「連合本部へは通達されたのか?」

 

「はい、既に連絡はされています。以後の行動は追って指示すると……、ですが我々にオーブを撃てと再度言う可能性も。」

 

「突っぱねてやるさ、まさか海上戦力の総力で落とせないとは言わないだろう。

第1、そんなことしてみろ連中の面目は丸潰れだ。

俺を呼ぶ前に、確実に物量で殺しにかかるだろうよ。」

 

ゲリラ戦に徹すればオーブは数日は持つだろう、だがウズミはそこまでして国民をすり潰す人では無いはずだ。

人格者ではある、強硬な存在でもある。だが、それ故に自らが死ななければオーブは降伏しないと知っている。

 

戦時でなければ、どれほど国民の信頼を糧に世界に貢献しただろうか、そういう意味では悲劇だな。

 

 

「各員に通達してくれ、休憩後残敵掃討に入る。補給したい奴は今のうちに済ましておけと。」

 

「了解しました。アムロさんもちゃんと休んでくださいね、一番疲れてないとおかしいですから。」

 

「解っているよ。」

 

これで、連合は宇宙への足掛かりを手に入れた。

大西洋の連中は意気地になってオーブを更に蹂躙するだろう。なにせ、もうマスドライバーはあるのだ。

憂さ晴らしになるだろうか…。

アズラエル、上手くやれよ?さもなくば、アークエンジェル、ドミニオン共々お前も死ぬぞ?

 

 


 

バシャッと、冷たい何かが顔を撃つ。

あぁ、ここはどこであろうか私は椅子に据わっているいや、座らせられているのか?

腕が自由に動かない、縛られているか……。

 

「起きたかね?あれから既に1日が経過したのだが、元気にしているかね?」

 

「この状態にした本人がよく言うな、私をどうするつもりだ。」

 

眼の前にはあのダイクンがいる、私を見下すように自分が上だと誇示するように私を見ている。

それと隣りにいるのは見覚えがある奴、パトリック・ザラ精神異常者が雁首揃ってお出ましとはな。

 

「ほぉ…、まさかと思っていたが、ラウ・ル・クルーゼ君がナチュラルだったとはな、ネビュラ勲章も全て偽りだったというわけだ。何か申開きは無いか?」

 

「フフ、ハハハ。実に滑稽だった、新人類と宣う貴様らが、私のようなナチュラルに懸命に追い付こうと努力する姿、退屈な人生に花が咲く思いだったよ。」

 

煽れ、パトリック・ザラはそれ程気が長い人物ではない。ここで私を殺してしまえば、目の前の二人にに情報が流れる事は無くなるのだ。さっさと私を殺せるようにすれば、奴等の動きを止められる。

 

「ほぉ…、貴様のその減らず口を息の根を止めて見せないものだな、小汚いナチュラルがコソコソと……。」

 

「待ちなさい、今彼を殺せば情報を聞き出すどころか彼を利用する事も出来なくなる。

ならば最も良い方法があるのですよ。

おい、こちらへ。」

 

私の眼の前に持ってきたものは何か、これは思想改造という手段に用いるものだろう。

どうやら、幸いにもダイクンの目には私は道具に見えているらしい。死ぬことはないであろう、いや〘私〙という存在を殺そうという事だな。

 

「どうする、今ならばまだ自白で済まされるぞ?」

 

「喋ると思うか?」

 

はぁ、という溜め息から私への責め苦は始まった。

 

 

 

 

 

 




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