最近俺の、いや俺達の家のコンピューターに侵入しようとする輩がいる。
どんな存在が相手か知らないが、俺はそれに対してカウンター攻撃を用意しているといった現状だ。
この信号データとパターンから相手はプラントから攻撃をかけていると推測される。
我が家のコンピューター内部には、あまり重要なアイテムは入っていないが、家族写真は入っているからそれに対してある種の防御策として、ダミーを1台用意した。
そして相手はまんまとそれに引っ掛かったので、カウンター攻撃として相手へのウィルスを添付し敵のコンピュータ内部のデータの完全破壊を実行した。
成功したかどうかは解らないが、それ以降攻撃が来ないことを考えるとおそらくは成功したのだろう。
青々と光り輝く地球を眼下に納めつつ、俺達は宇宙という暗い世界へと足を伸ばす。
俺達はオーブから飛び去ったドミニオン以下の艦艇の追撃を開始した。手始めに、地球衛星軌道上を周回し辺りの捜索をしていく、勿論彼等がそんな近くに居るはずがない早々にその探索を切り上げL4へと移動をしようとしていた。
カオシュン陥落、その報せがプラントに到達したのはおそらく昨日だろう事は確実だ。地球低軌道上にはその報せを受けて、複数のザフト艦艇が出没し、小規模艦隊を形成しつつあった。
もっとも、その数はお世辞にも多いとは言えず、精々が俺達と同じ数。
主力艦艇三隻程度の艦隊は、MS格納数、砲戦能力、共に俺達の艦隊よりも遥かに少ない。もし2つの艦隊が激突した場合、俺達の勝利は確実となるほどだ。
「敵艦ローラシア級2、ナスカ級1の戦力です。
相対距離、徐々に近づく。敵も我々に気がついているようです。」
「MS即応隊発進、その後主砲援護射撃開始30秒後MS準備出来次第発進、精密砲戦距離に入り次第に精密砲撃を開始せよ。敵目標、ナスカ級をαローラシア級1をβ、2をγとする。エポナはαをクリーブランドとルーカスにはβを集中攻撃させろ。悪いが敵よりも此方のほうが射程は長い。
MS隊スターシャ、今回俺は出ない、隊の運用を任せる。」
『了解。』
俺達の艦隊は乱雑に砲撃を開始する、当たるかどうかも解らないが、先制出来れば敵に回避を強いることが出来る。そうすればザフト艦艇はその少ない砲戦能力を活かす事ができない。
彼等には悪いが、救援にここにまで来てもらっておいそれと帰すわけには行かない。
このまま情報を本国に通信する前にやらせてもらう、そうすれば連合も幾許か楽にヴィクトリアを奪還できるだろう。
既にカオシュンのマスドライバーの復旧作業も行われているし、遅くとも数日以内に宇宙軍の増強が図られる。
これにオーブ、ヴィクトリアも加われば地球軍宇宙方面部隊の戦力は数倍するからな。
それまではザフトには慌てず、後手後手に回ってもらう。
「敵艦よりMS発進を確認、編隊を組まずバラバラに進んでいます。即応隊との接触まで2分。」
「機動兵器全機発進しました。直掩はどうします?」
「無いとは思うが直掩に6機、艦隊の護衛とする。MAはMSと共に2&1フォーメーション(MS2MA1)で事に当たれ。
全機の無事の帰還を祈る。」
敵の主力は改修されたジンか、プラントの生産能力は既に底を尽きつつあるのか、旧式機の改修機ばかりが目立つ。
向こうも苦しいんだろうな。
そうしている内に敵艦とのちょうど中間距離でMS同士の戦闘が開始される。
盾の無い機体も多いザフトのMSでは、俺達のそれよりも損耗は大きいだろうな。
「MS隊敵と交戦状態に入りました。……精密砲戦距離に入りました。メガ粒子砲、精密射撃に入ります。」
射撃間隔が長くなる、ナスカ級以下ザフトの艦艇はは船腹をこちらに向け回避行動を取っている、彼等の砲戦能力は船体構造から3分の1に低下している。
艦首をこちらに向けなければ、砲撃が出来ないというのは欠陥だな。
「敵MS隊数機正面を突破して来ます。正面やや下、我が艦の死角から攻撃するつもりのようです。」
「直掩隊で持たせろ、クリーブランドとルーカスは上下反転し、艦隊防空能力を分散させろ。」
強襲揚陸艦であるからこその死角は、俺達にとっての致命的な隙だな。敵も良く見て、臨機応変に戦っている練度は低くはないな。
「MS隊損耗無し、敵艦へ攻撃に入ります。」
「主砲、発射間隔を更に開け。更に精密力を上げろ、MS隊に誤射なんかしたら目も当てられない。」
戦闘開始から10分、敵艦に火の手が上がる。エンジン部分からの爆発だ。
「敵目標γ速力6割減、……爆沈しました。」
閃光と共に断末魔が宇宙に木霊する。
「本艦の砲撃敵艦に命中、α戦闘続行不可能と断定目標βに切り替えます。」
「機動兵器群の損耗は?」
「未だありません……いえ、一機被弾するも軽微との事です。」
「帰投させろ、こんな戦闘で死なすわけには行かないからな。」
一方的な戦いだ、MSの性能の差は戦力の決定的な差では無いが、同等以上の戦力と技量のパイロットが相対した時、その時点で性能差が上の方が勝つのが世の理だ。
「敵MS殲滅を確認、敵β目標沈黙。全艦の無力化を確認しました。」
「MS隊に敵の武装を全て破壊させろ、完全に無力化するまで攻撃の手を緩めるな。敵は降伏信号を出していないからな。
それと、長距離通信用アンテナを破壊しておけ。」
国際法上、敵艦が航行を続けていて砲をこちらに向けている以上、こちらは攻撃を続行しなければならない。
さもなくば騙し討で死ぬのはこちらだからな。
その後に目標βが爆沈する。
「敵艦、機関を停止並びに逆噴射を確認。MS隊敵艦の武装破壊確認しました。降伏信号受信しました。」
「良し。敵の所属を聞け、今向こうでは政変が起きていると聞く、もしかするともしかするかもしれない。」
ザラ派か元クライン派か、ザラ派ならば徹底抗戦をすると思うが。
「シーゲル・クライン元隷下の部隊だそうです…、どうします?」
「月面艦隊にレーザー通信。
ザフト艦艇2隻の無力化に成功、敵艦隊をそちらへと廻航する。
再度武装解除の確認を行い後に、捕獲せよ。
以上打電後、速やかに敵艦を月方面へと発進させろ、俺達はこんな事をやっている場合じゃないからな、敵も死にたくはないだろう。
後損傷した機体のパイロットの名前は?……、解った帰投後ブリッジに来るように。不慣れな宇宙でのMS戦だ、感想を聞きたい。」
死ぬよりも生きて返ってきたほうが価値がある。なにせそう云うやつほど次こそは周囲を良く見て行動出来るようになるからだ。
………
被弾したパイロットはやはり、この前配属されたばかりの新米だった。決して腕は悪くなく、どちらかと言えば良いほうだが、どうやらカオシュンでは実戦の空気を味合わなかったようだ。
それによって敵を侮った、だが同時に今回生き残ったことで彼の腕は更に磨きがかかるだろう。
パイロットとの質疑応答も終わり、俺達は進行方向を改めてL4へと艦を進める。
道中何事もなく、ただ広い宇宙だけが広がり敵も味方もあまり見えない。
だが、ドミニオンの航跡はきちんと解る。
「レーダーの効きが悪いですね、NJよりも電波撹乱が酷いですので間違いありません。ですが、良くこんな手を思いつきましたね。」
「この艦隊と同じ特徴を持っているのだとすれば、痕跡も似たようなものになるだろうと思ってね。
尤も、探知出来るのは数日が関の山だろうが。」
それを超えればNJとも大差がない電波障害レベルにまで落ち着くわけだから、この手はあまり常套出来ない。
「このまま進んだ道を逆算していきますと、未来予測地点はL4中域に存在するメンデルという実験コロニーになります。
あそこは昔、バイオハザードがあったことで有名ですよ。
付近にはコロニーもありませんし、なるほど集結地にはピッタリな訳ですか…。」
誰しも嫌なところに行きたくはない、ただジャンク屋は例外だろうが。
「非番のパイロットはしっかりと休息させておけ、不測の事態が発生した時は全力展開も可能にしてな。」
クライン派の船がどの程度の船足かは解らないが、もしもの場合はザラ派の艦隊と正面切って戦闘もあり得るからな。
メンデル、ラウの故郷か…遺伝子実験のメッカだ、色々と危ない研究が眠っているに違いない。
僕達がオーブから出発してから2週間という時間が流れた。食事量を制限しつつ、この長い船旅の間気持ちの整理をしつつ、僕等と共に航行しているクサナギとドミニオンは互いに牽制し合いながらも、順調に航海をしている。
カガリとフレイは僕と一緒にアークエンジェルに乗っていた。
「だから教えてくれって何度も行ってるだろ!何でお前はナチュラルなのにキラみたいに強いんだって。フラガ少佐もそうだけどさ特にお前なんて、パイロットじゃなかったんだろ!
だからその秘訣をだな!」
「そんな事言ったって教えられないからしょうがないでしょ!
だいたい大将が前線に出てきて落とされたらどうするのよ、アンタは椅子の上で踏ん反り返ってればいいの!」
こうやって毎日喧嘩している。
カガリは塞ぎ込んだ状態から立ち直って前向きに物を考えてきて、フレイはそんなカガリを見てどんどん毒舌になっていく。
「「キラもこの娘(こいつ)になんとか言って(くれ)よ!」」
どっちの味方をすればいいんだ、誰か助けて。
視線をトールやサイ、ミリアリアに向けても変にニヤけてどうとも取れない顔をしている。
僕はこまってるんだけどぉ?
「ハハハ、青春だねぇ。モテるのも良いけどよ後ろから刺されない程度にしとけよ。」
ムウさんがそう茶化す、こんな日常望んじゃいないよ。
「わっ…私はただ、二人だけの血縁って言われて、家族だからその別に恋人とかそういうんじゃ!」
「へぇ…、何?近親で恋しちゃってるの、別にいいけど?戸籍上は家族じゃないんでしょ?二番目なら私も考慮して挙げなくもないけど?」
キャットファイトが始まる、カガリは体術の心得があるからフレイは不利のはずなんだけど、宇宙空間だからだろうかスルスルと避けていく。
「怒るって事は図星?まさかねぇ……?解ってるわよ、そんな怒らないでよからかっただけじゃない。」
「お前なぁ!」
こうやって喧嘩し会えるようになってくれて、僕は嬉しい。カガリも、表面上は気持ちの切り替えを出来ているみたいだし、何よりフレイがいるおかげで、普段のカガリになれているようで。
「何よキラ、さっきからカガリ、カガリって彼女は私よ?それとも、やっぱりそっちの気が…?」
「いやいや、僕はフレイが好きだよ!でも、カガリも嫌いって訳じゃなくて、家族として好きっていうか。」
そんな他愛のない話というものがどれ程心の助けになるんだろうか、このままこんな時間が続けば良いのに…なんて思っていた。
………
僕達はメンデルに到着し、そこに降り立った。
水源の無い僕達の当面の間の拠点となるコロニー、ここは昔バイオハザードが発生して放棄された曰く付きのコロニーらしい、正直言って嫌な気分だ。
内部にはそれなりの規模の建物があって、数多くの研究者がここに暮らしていた名残がそこかしこにある。
そんなメンデルで、僕達は束の間の休息に入った……筈だった。
ブルーコスモスのムルタさんに連れられていくまでは。
「あの……何でこんなところに行くんですか?」
「ここメンデルは嘗て遺伝子工学のメッカと言われた研究所だった、という話は聞いたでしょう?」
カガリとフレイを連れてこっちに来なさいなんてこんなところに用は無いと、そう思っていた。
ここでどんな研究がされていたとしても、そんな事がいったい僕に何の関係があるのか?
正直言って、遺伝子とかそういうのはコーディネイターだから少なからずあるだろうけれど、この研究所とは何の関係も……。
「ここは、僕がブルーコスモスの盟主になる以前、ブルーコスモスの手によって攻撃を受け、廃棄されることになったコロニー。
ですが、ただの研究所を僕たちが攻撃するような事はしないんですよ。」
「はぁ?お前達ブルーコスモスは平然と街中でテロとかやってるじゃないか、何を今更。」
「カガリちょっと黙ってなさい、たぶん大事な話だから。」
暫く進んでいくと寂れた研究所に到着する。でも、まだ施設としての機能は生きているみたいで、時折水の流れる音が聞こえるような気がする。
「僕自身もまた聞きですから、何と言えば良いのか解らないですが……、どうやらここのようですね。」
「この部屋が一体何……?おい、フレイどうしたんだよ。」
「気持ち悪い、何ここ。まるで、大勢の命が亡くなった場所みたいに……、赤ん坊の泣き声?」
「フレイ?フレイ!大丈夫!?」
フレイの様子がおかしい、まるでなにかが見えているみたいに肩を抱いて怯えるみたいに。
「こ、こっち!」
彼女は何かに突き動かされるみたいに、何かを探すように動き始めた。こんな寂れて、何が起きても解らない廃墟で彼女は探す。そして、彼女が手にしたものは一つの写真立てだった。
母親に抱かれた子供が二人、たぶん双子なんだろうでもこれって……、僕とカガリの写真と同じだ。なんで、こんなところに?
「どうやら、クルーゼさんはそれを君に話したかったようですね。君がどんな選択をするのか、復讐かそれとも事実を受け入れて前に進むのか。」
「キラ・ヒビキ、カガリ・ヒビキ。それが君達の本当の名字のようです。
そして、君はここで生み出されたコーディネイターのようですね。」
ここが僕等の故郷?全くピンとこない事実に、僕の頭は?マークだらけだ。
「これをやって彼が君達に何を伝えたかったかなんて解りませんが、そういう事だと思っておいてください。
君はスーパーコーディネイター計画の生き残り、らしいですよ?資料としてはね?
僕としては最早何の興味も抱かない、君が生み出された経緯なんてどうでもいいんです。人の産まれは選択できませんので。」
僕はそう言って僕の方に投げ渡された研究資料に目を通す、読み進めていくうちに僕はその文章に釘付けになり、手が震えた。
僕は、作られた存在なの?
「でもどうやら、君だけではないようですよ。クローンの研究まで、嫌ですねぇ。実に正常ではない、これはテロを起こされる訳ですよ。」
そんな言葉耳に入らない程に僕は混乱していた。
私達はメンデルでの休息を取りながらも、これからの方針を議論するために1度一隻の艦に幹部を含めた数人で集結していた。
ドミニオンからはナタルが、クサナギからはキサカ一佐がそれぞれアークエンジェルへと集結し会議を開いていた。
久し振りに見るナタルの顔は少し疲れ気味で、彼女も色々と苦労をしながら艦長職を全うしているようで何よりだ。
互いに積もる話もあるが、それよりも今後の展開をどうするかが優先事項であった。そんな時だ
「センサーに感あり、これは……数3艦影該当艦ナスカ級2、それと該当無しの新型艦が1隻です。」
ザフトの艦隊が現れた、それもナスカ級が3隻も。それに対して私達は緊張感を持たずにはいられなかった。
これは…私達を追ってきたということ?それとも、キラ君の手引なの?
「……いや、なるほど。アズラエル氏の言っていたザフトの新型艦とはアレのことですか、確かに鳥のような形をしていますね。」
ナタルはそう言って冷静に事態を受け入れている。アークエンジェルにいたときよりも、不測の事態に対する耐性がついているのか?
「ナタル…いえ、貴女の言葉を信じるとしてザフトも合流対象というのは俄に信じられないの。」
「私としても正直どうかとは思いますが、アズラエル氏としては少しでも戦力が欲しいそうですので、しょうがないと。」
彼等、アズラエルが戦力としたグループはブルーコスモスだけじゃなく、ザフトにまで足をかけていると成ると、相当に巨大な組織なのかもしれない。
「通信来ました、映像映します。」
「こちら、エターナル並びにクライン派艦隊だ。ムルタ・アズラエルはそちらにいるか?」
「はい、いいえ。現在、このメンデルの内部の探索をすると留守にしています。
私達に何かできることがありましたら、お伝えしますが?」
映像の男はシーゲル・クライン、クライン派を纏める元締めたる人物。
プラント内の重鎮の1人のはずだけれど、あの噂は本当だったのか。
「いや、別に大した事では無い。ただ、我々の艦艇がこのコロニーに納まるかと思ってね。外で待つことになるのは些か娘の方に怒られてしまいそうでね。」
「現在我々の3隻だけですので、可能ではあります。ですが、我々を攻撃しないという保証がありません。」
「その心配はいらんよ、我々も流浪の民なのだから。」
どうやら私達は、本当の意味で多国籍部隊になるようだ。
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