その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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安寧

また、俺のマスベースにトライしているな、拙いプログラミング技術だが磨きがいのある腕だな。

 

「親父何してるんだ?」

 

「ああ最近な、少し家のコンピューターにハッキングしてくるやつがいるんだが、その成長を見るのが楽しくてな。」

 

俺の息子はスクスクと成長し、今じゃ大学にも行っている。俺は子供の頃それほど優秀ではなかったと思うんだが、18で卒業論文まで行っていることを考えると、そのポテンシャルはあったのかもしれない。コーディネイター全盛の時代だ、飛び級なんて珍しくもない。

 

「あのさぁ、そんな危ない奴相手に良くやるよ。」

 

「悪意が無いからね、無邪気なものだよハロの攻勢防御に負けるくらいだからまだまだだな。

そう言えば、お前ラウとはまだ連絡取り合っているのか?」

 

ラウは彼の親であるアルが亡くなってからというもの少しずつ疎遠になっていった。それもうそうだろう、彼の本当の息子であるムウがいるのだ、クローンは世間体を考えて隠す方が良い。

 

「ああ、週に数度。それでさ、今度プラントに短期留学することになったんだ。

それとさ、大学出た後の話なんだけど俺、軍に入りたいんだ。」

 

そんな話聞いていないが、いやなんとなく解ってはいたが。

 

「母さんには話したのか?それに、入ってどうする?MA(実際はMS)シミュレーションで俺に一度も勝った事がないんだ、そんな奴が軍のそれも宇宙軍で役に立つのか?」

 

「親父も俺の力を知ってるだろ?皆俺には勝てないから、だから…。」

 

傲慢だな、そういう育て方に成るのか失敗か?いや自信をつけさせ過ぎただけか……。

 

「シミュレーションで、1度でも良い。俺に一発入れられたら考えてやる。」

 

せめてまともに戦えるように成れるなら、この程度簡単な話だろう。

 

 

 


 


 

僕は……、いったいどういう人間なのだろうか。

良く、自分の家の事を小学生の頃宿題に出されたりしたとき、自分の親の仕事や家族構成を父さんや母さんに聞いたものだ。

そういう時は大概、決まった話しかしてくれなかった。

僕が産まれた時はどうだったとか、育児はどう大変だったとか。

 

もし、その言葉が嘘だったらどうなるだろうか?

僕の事を両親は愛してくれていたのだろうか、僕の父さんも母さんも赤の他人だったらとか……考えてもきりがない事ばかり頭に流れてくる。

 

そういう時に限って、1人で抱えてなんとかしようとするのが僕の悪いところなのかもしれない、だってしょうがないだろ?

自分が人工子宮を使って生み出された存在だなんて、誰かに相談なんて出来るはずもないのだから。食堂とモソモソと1人何かを食べる。気分は晴れないけれど、それが僕の今の仕事だから。

 

フレイはあの後気分が悪くなっちゃって、医務室に運ばれていったし、カガリはその付き添いに行った。ムルタさんに至ってはどうでも良さそうに後は知らん顔で、この研究施設を戦後リユースする事を考えている。

 

「あぁ、こんな事人に言えるわけ無いのに……。」

 

「なぁにが人に言えるわけ無いのに、なんだ?キラ君よ…。」

 

今の独り言を聞かれていたのだろう、ムウさんが目の前に座っていた。それどころか、僕のよく知った顔の男女の青年がアークエンジェルの食堂にいる、どうしているのか…?

 

「お前等がコロニーの中を探索している間にな、ちょっと合流して、パーティーが豪華になったんだ。」

 

「アス……ラン、それにラクスまでどうしてここに。」

 

「お久しぶりですわねキラ、この数日間どれ程貴方にお会いしたかったか…。

アスランがもう出撃してしまいそうなのを抑えるので大変でしたのよ?」

 

「は?…いやいや、私はそれ程取り乱したりなんて…。」

 

いきなりそんな状態になってしまって、僕の思考は一時的に停止する。今日はちょっと色々とありすぎて頭が痛くなってくるよ、だいたいどうしてこのタイミングで?

 

「いや、ちょっとな。お前のその精神状態をフレイの嬢ちゃんが心配しててな、それで急いで来てもらったって奴だよ。ほら、身近過ぎる相手だと逆に話し辛い事もあるだろうってね。」

 

アレからそれ程時間が経っていないけれど、ムウさんいつの間にフレイと話をしたんだろう?

 

「俺も……色々とアズラエルに言われたからねぇ、まあお互い頑張ろうや。」

 

「僕のこと…、怖くないんですか?あんなものから産まれた僕が。」

 

卑屈になっても良いじゃないか、あんな話聞かせたら。それこそ、僕が人間じゃなくて製品として産まれてきたかもしれないのに…。

 

「はぁ?お前が怖かったらアムロはどうなるんだよ、アイツなんかもっと得体のしれない化け物か?努力とかそういうのしなきゃ、身体だって普通だろう?そんな奴が怖いわけあるかよ。」

 

ムウさんがムルタさんから聞いたことも聞きたいけれど、きっと僕を励ましているんだと思う。

でも、それでも悩みは尽きない。

 

「キラ、久し振りだな。」

 

「アスラン…、それにラクスなんでここに来たの?」

 

「私達も今のザフトに追われてここに来ました。

元凶を作ったのは私ですが、それでもいずれこうなっていた筈です。現に、クライン派だけでなくザラ派の一部良識派とすら言われる方々ですら、粛清が始まりました。」

 

僕の知らない間に、世界は回っている。それも悪い方向に。

 

「それじゃ、後は3人でお話でもしてくれよ。それと、キラ。気負い過ぎるんじゃねぇぞ。」

 

そう言って離れて行く背中、僕がその背中を見送った後。二人の方へ向いていくと…

振り向いた直後に、アスランの拳が顔にめり込んだ。

 

 


 

俺は眼の前にいるキラを殴った、何故殴ったのかそれは別にムシャクシャしていたというわけではない…はずだ。

眼の前でウジウジと、理由のわからないことを考えている親友に対して、俺は自分を見ているみたいに感じたのだ。

決断もできず、どちらに転ぼうともせず周囲の流れに身を任せ、自ら考えて動こうともしないそんな自分と重ねたんだ。

 

「どうしたキラ、立て。立って俺を殴って倒してみろよ!お前は自分の事を怪物だと思っているんだろ、なら俺にだって勝てるはずだろ!」

 

「アスラン!少しやり過ぎですわ!キラ、大丈夫ですの?」

 

ラクスは、キラの傍らに行く。俺なんかよりも遥かに気があるのだろう、父とシーゲル氏の間に成された婚約は完全に解消されているから、もう赤の他人ということになる。

 

「ラクスありがとう…。

アスラン、いきなり殴るなんて酷いじゃないか。」

 

「フンッ、自分に自惚れている奴を殴ったに過ぎな…グッ!」

 

喋っている間にキラは立ち上がり、俺を殴ってきた。

 

「今のはお返しだよ、殴ってくれてありがとう。確かに僕は怪物なんてものよりは弱いよ、でも僕は皆みたいに普通に産まれてない。だから僕は商品みたいなものなんだ、だから二人とも違う。」

 

「そんな事ありませんわ!キラは、キラは色んな事に傷ついてそれでもこうやってここに来てくださいました。

そんなロボットみたいな感情もないものなんかじゃありません!

でなければ私は、キラをキラのことに興味なんて抱きません!」

 

正直言って今の発言はここで言うものだろうか、いや確かにそれで思い留まってくれれば良いのだが、仮にも元婚約者の前でそれを言うのはどうかと思う。

 

「キラ、俺は迷っている。この戦争の行く先とか、プラントは本当に正しいのか、とか。

だがな、お前の義母上のカリダさんはお前をそこまで立派に、しかも戦争の道具にするために育てたわけじゃないだろ?

 

きっと、お前の出自も全て知った上で育てたに決まってる。

それなのに、お前はそんな自分の事を悪く言う。それこそご両親に失礼じゃないのか?」

 

「それじゃあ、なんで僕の事を皆黙ってたんだ!少しくらい教えてくれたって。」

 

「さっきから聞いてれば、僕は僕はと煩いわねキラ。」

 

声が聞こえた方を振り向けば、赤い髪をした気の強そうな女が立っていた。

しかも、連合の士官服まで着込んでさもキラと親しげに呼んだぞ!?

 

「フレイ……、駄目じゃないか!体調崩したんだから医務室にいなきゃ!」

 

フレイと言ったか?じゃあこの女が鮮血のアルスターか!

ニコルを殺した女が、この女なのか?

連合の写真ではもっとこう…、男勝りな感じでこれでは俺達とそう変わらない…。

 

「フレイ様、お久しぶりですわね。お元気そうで何よりです。」

 

「アンタは大変そうね歌姫様(・・・)、こんな事になるなんて、思いもしなかったもの。」

 

どうやら二人も知り合いのようだ、というか俺だけ場違い感があるのは気の所為ではないだろう。

 

「キラ…あのね。私は貴方の彼女で、私は貴方を愛したいの。良い?もう一度言うけど私はアンタの彼女なの、そういう優柔不断というか、意気地のないところも嫌いじゃないのだけれど、もっとシャッキリしなさいよ。」

 

「でも、フレイだって僕の出自を」

 

「聞いてたわよ、というかだから何?って話、良い?アンタはキラ・ヤマト、私はフレイ・アルスター。アンタは、私の彼氏で私はアンタの彼女この事実は変わらないの、だからアンタはもっと自分に自信持ちなさいよ!」

 

「フレイ様、そんなに怒らなくても。」

 

完全に蚊帳の外だ、というか俺はなんでこんなところに来てしまったのか…?

 

「ラクス、アンタもアンタよ。なに?プラントで意識不明になって傷付いてたキラを介抱しました?ふ〜ん、人の彼氏に手を出そうとしたってことでいいのかしら?

でだったらなに?キラは不倫したってわけ、まさかと思うけど。」

 

「フレイ?!誤解だってラクスはただ、」

 

「介抱しましたわ?でも、確かに私キラのことを好いています、愛というものは収奪し合うもの、そうではなくて?」

 

あぁ、もうめちゃくちゃだな。言葉を間に割り入れたら最後、二人から猛攻撃を受けそうだ。

キラも、俺のことを頼ろうとしないでくれ、この空気間に入ったら終わりだぞ?

 

「おい!!フレイ!お前倒れたんだから医務室に!…!おい、なんでラクス・クラインとアスラン…ザラがいるんだよ!」

 

「カガリ、撒いたと思ったのに。どうして肝心な時に来るのよ!」

 

これは本当にどうすれば良いんだ?

あたりを見渡すと、俺達をキラに合わせた張本人ムウ・ラ・フラガが俺達の状況を影で見ながら、腕を組んでサムズアップをする姿が、この状況を見て楽しんでいる?だと!!

そうして消えていく。

 

「おいおいキラ、痴話喧嘩か?お、ラクスさんじゃん、それにそっちは」

 

キラお前はこんなにも友人がいたのか。

それに混じってディアッカが……ディアッカ!?更にその隣にはイザークがいる、なんだか話が纏まった様な雰囲気を出しているが、何なんだこの状況は。

 

 

 


 

ムウったら、何処に行ったのかしら。これから幹部会議やるって言うのに、あの人そういうところ直したほうが良いと思うのよね。

 

「お待たせしましたぁ。あっと、俺が最後かな。」

 

「フラガ少佐、随分と遅い出勤ですね。会議の開始は10分前とお伝えしていた筈ですが?何故遅刻を?」

 

いやぁ〜面目ないとでも言いながらその席に座る。

 

「一応申開きをさせていただきますと、子供は同じ年齢同士で話し合いをすれば、メンタル的にも良いかなと思いまして。」

 

アズラエルもシーゲルさんはその言葉に感心するように首を縦に振る。この二人意外と相性がいいのでは?

 

私の場違い感はなんだろうか、ここにいるのは皆文官武官問わずプロの集まりだ。

私は単なる技術士官に過ぎなかったのに、いつの間にかこんな席に座ることになって……、昔の自分に言えたら言ってみたいものね。

 

「それでは改めまして、Mr.シーゲル・クライン。こうやって直接お話するのははじめましてですね、私はムルタ・アズラエル。しがない投資家とでも言っておきましょう。元議長様。」

 

「それはそれは、私もしがない宇宙工学家ですよ元専務理事殿。」

 

眼の前で繰り広げられるバチバチとした挨拶を皮切りに、これからの方針を決めていく。正直な話、軍事的なプロセスに関して言えば、私よりもナタルの方が詳しい、だから私にできることなど、機械工学から導き出す。燃料等の消耗品の見積もりくらいだ。

 

話を進めていくと徐々にであるが必要戦力だとか、要注意事項等も出てくる。そこには補給線まで、長期的なもの短期的なもの様々だ。

 

「そう言えば、もう3隻こちらに向かっているのですが、そろそろ来てもおかしくはないんですけどね。」

 

「例の彼ですな、1度あってみたいですな。ニュータイプという存在に……。」

 

「………?ニュータイプ?」

 

ニュータイプ?それは一体どういうものなんだ?新しい形?新型?いや、そのままの意味とはまた違うのだろうけれど…。

 

「ニュータイプとはなんですか?」

 

「……?ニュータイプを知らないと、いや確かにあの男はそう言っていたのだがな。

アムロ・レイ等のニュータイプを上手く戦力化していたなぁと、感心していたのだが、まさか連合は知らないのか?」

 

プラントと私達の間で知識の齟齬がある、そもそもニュータイプが何を指しているのか、人とかであるのだろう。アムロ・レイの名前が出てくるのだから。

 

「例えばホラ、そこのエンデュミオンの鷹。彼もそれだろう?我々とは違うもう一つの可能性の形。」

 

「まさか、特殊な空間認識能力者の事を行っているのでしょうか?いや、だとしてもその名前はどうなんです?余りにも安易な。」

 

確かにニュータイプなんて言ったら、まるでそれ以外が古い存在のようになってしまうではないか。

 

「説明は難しい、我々の敵対する相手。キャスバルが言っていた事であるからな。今、奴はパトリックを裏で操っていると言っても過言ではない、ソイツがニュータイプという存在を昔喋っていたといったところだ。」

 

「その…キャスバルとはいったい何者なのですか、我々の情報網にも引っかからずに、貴方の言葉通りの事をやっているのならば、どれ程厄介な相手か。」

 

正直気になるところだ、プラントそれも最高評議会議長をも手玉にとるそんな男がいるのだ、きっと恐ろしい存在なのだろう。

 

「キャスバルは…、信じてもらえないかもしれないが、恐らく。我々とは違う文明から来たのだと思う。無論科学的な意味でだ。」

 

「荒唐無稽ですね、信じる証拠は?」

 

そしてその言葉の後に、クライン氏はデータを展開した。古いデータ、それもプラント建設当時の。

赤い…球体が写った写真や、金髪の男の顔。そのすべてが。

 

 




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