その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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集結

コンコンというノックの後に扉が開かれるだろう……。

 

コンコン

 

「入るわよ〜」

 

机に座りながら、図面を引いている。思えばこの作業も長くやっているな、趣味と実益を兼ねてやった割には上手く行っている方だろう。

 

「客人かい?宗教家なら帰ってもらいたいんだが。」

 

俺は振り向かずただそう云う、振り向か無くても聞くことは出来るから。

 

「ええ、マルキオっていう方よ。何か話したいことがあるらしいわ。」

 

「はぁ、俺は最近宗教家に認知されているみたいなんだが、何処から情報が漏れているんだ?」 

 

「孤児院のネットワークだと思うわ。あの方が死ぬまでに、私達の情報の偽造を偽造に重ねて普通にこうやって暮らして行けているって、何よりの証拠よ?」

 

なら断るわけにはいかないかもな、どういう人物なのだろうか?

 

「どんな人なんだ?正直興味ないからさ」

 

「seedとか言う何か良くわからない、人の革新めいた事を言う人よ?」

 

人の革新ね…またぞろニュータイプか、こんなもの特別でもなんでもないのにな、ただ人より勘が鋭い程度で。

 

階段を降り、玄関まで行く。

その姿はまさに宗教家だが、やけに達観として何かに一区切りつけた後のような、そんな雰囲気を持つ男だ。

隣には付き人なのだろう、青年がいる。

 

「はじめまして、とりあえず中に」

 

「いえ…私はここでも結構ですよ。」

 

「目が見えないのでしょう?なら、座って話したほうが安全だと、俺は思うが?」

 

俺と同じだな、違いは感覚が有るか無いか位の差でしか無いが。

 

「いえ…ですが。私は、ここに寛ぎに来た訳ではありませんので。」

 

謙虚なんだが察しが良くないな、いや態とだな。何かを見極めようとしているだけか、表は清廉潔白だが腹の中は得体のしれない重要な事柄ばかりか、だから無意識に謙虚を演じる。

 

「俺も貴方と同じく目が見えないんですよ、だから座って頂けませんか?」

 

せめて、本心を聞き出したいものだな。宗教に呆れた宗教家がどんなものなのかを。

 

 


 


 

ごちゃごちゃとした同窓会めいた再会を経て僕達は、そんな状態から一段落ついた。

今2つの席に分かれて正式に自己紹介というか、そういう事をしているのだ。

 

中でも特に驚いたのは、ここにいる面々が嘗ては比喩でも誇張でもなく顔もわからないのに殺し合いをした間柄というのが、この場の奇妙と言えるだろう。

 

 

「こうやって俺達も並んでいるが、俺はディアッカが生きていたことも知らなかった。

それに、イザークとは途中で合流してここまで来た。だからまだ、現状の把握が、上手く言っているわけじゃないんだ。」

 

銀髪の彼、顔にある傷を態と消していないという彼が、デュエルのパイロット、イザーク・ジュール。僕等と同じ年齢で、プラントの議員の息子でもあるという。そんな人物でも戦場に行かなければならない、正直言って可笑しい話だ。

 

「イザーク、何故お前までクライン議長達とここに…エザリアさんはザラ派だったはずだろ?」

 

「母上は……投獄された。俺も…、そして俺達も今や追われる立場だ。戦争に勝利するためと、邪魔な人材は全て切り捨て全権を一人に掌握するのだと言ってな!」

 

ここ数日の間プラントでも目まぐるしい程迄の出来事があったそうだ。

アスランとラクスが消えた後、プラントは更に混乱状態となって、その間にいろいろな人が投獄されたり処刑されたりした…。

それこそ、政変だとか言われる程度には。

 

「全てあのシャアだとか、ダイクンだとかそう言われている男のせいだ。

お前のお父上である議長は、あの男のマリオネットのように、言う事を聞いている。」

 

曰く、戦争に勝つためには為政者はありとあらゆる方策を成さねばならない。そのためには、障壁となる存在は少いほうが良い、議会を通している間に戦争に負けることもある。

なら、強い指導者が1人いれば戦争指導も簡単に行える。そんな感じだ。

 

「何もかも狂ってしまった。今や、議長の周囲には議長とあの男のシンパしか残っていない。こんなもの、俺達の知っているプラントではない!」

 

「イザーク……お前…。」

 

イザークと言う彼がアスランの首元を掴み、怒り狂う。

どれ程悔しいのだろう、どれ程の恐怖を味わったのだろう。

 

僕等は戦争を通して色々な物を目にしてきた。

戦時統治下の敵の街を、利用するためによく見せるために真面目に内政をする、軍人。バルトフェルドさん。

 

でも、それを良しとしないタッシルの明けの砂漠の人々。

 

利用する武器商人という職業、普通の町並みに潜むパルチザン。

 

そんなものとオーブを比べ今までの自分の生活を顧みたり、そんなオーブが焼かれる景色を目の前で見ていたり。

そして、今度はそんなオーブを焼いた人と同じ立場の人間が、こうやってプラント連合オーブ問わずに人を集めたり。

 

正直色々な事が起こりすぎて、何をどう整理すれば良いのか解らないくらいに、戦争は複雑に絡み合った一方的な正義のないものだって事が解る。

きっと、プラントのアスランのお父さんもプラントが戦争に勝つために何でもしようとしているだけで、その一番の下地にはレノアさんの復讐とかもあるんだろう。

 

そんな事を考えていると自分の問題がちっぽけなものに感じる、実際どうなのかは置いておいて。考えるのはいくらでも出来る、戦争が終わればいくらでも。

 

「あの…、」

 

「何だ!今俺はアスランと!」

 

彼の顔には焦りがある、自分の親の心配をする子どもとしては孝行息子というやつなのかもしれない。

 

「アスランを殴ってもそれは解決しません。でも、気持ちはわかります。理不尽な力で全てを失うという結果を、だけど僕達はも貴方がたの手によって平穏を失った。

だから、今はこんな事やっているよりも、親睦を深めたほうが懸命だと僕は思う。

これから一緒にそんな存在に立ち向かうんだから。

 

改めまして、僕はフリーダムのパイロットのキラ・ヤマト。前までは白い方のストライクのパイロットをやってました。」

 

「それじゃあ、私も。私は赤い方のストライクをやってた、フレイ・アルスター。アンタ、デュエルのパイロットだったんだって?なら、結構長い付き合いじゃない?」

 

「お前のような女がニコルを!?」

 

今は蟠りがあるのかもしれない、これからの戦いはそんなもの持っていたらきっと後悔する。

 

 

 


 

数日間の航海も今日が最後か、俺達はメンデルまで目と鼻の先程の位置まで到着していた。

 

「動体感知システムに異常ありません、レーダーにも影ありません。」

 

「良し、皆長旅ご苦労。今日から数日間は、重力空間で生活できると思う。」

 

眼前にある巨大構造物、コロニーメンデル。ラウの故郷、そして遺伝子工学の中心地と言われた場所が横たわり、内部から少しだけ光を発している。

居住区画にその反応があるとこから、今現在あそこに集結しているのだろう。

 

「通信繋がります。」

 

「こちらコロニーメンデル、保守主任のアウレリウス・クラウン(シーゲル・クライン)です。

当コロニーにどういったご要件でしょうか。」

 

「こちら地球連合軍第13独立機動艦隊司令、アムロ・レイ大佐だ。ここ近辺に逃亡中のドミニオンという艦船に心当たりは…………?

全艦第3種戦闘配置!」

 

つけられた?いや、俺達じゃないどうやら随分と前からここにいるようだ。

 

「!?ぜ、全艦第3種戦闘配置」

 

「どうしたんですか司令!」

 

(この圧力は何だ、いやこれは監視されている?場所は…?)

 

俺は首をメンデルの格納庫ゲートから斜め左上40度程の、コロニーを超えた中域の方へと意識した。

 

「MS隊準備が出来次第発艦はじめ、これは演習ではない。目標11時、仰角34度の方向、メンデルの反対側にいるぞ!

これより本艦は逆進し、射線を確保次第敵艦に対して砲撃を敢行する。」

 

レーダーには映っていない、それどころか動体センサーにもか、ならば。

 

「敵艦はミラージュコロイドを使用している。イーゲルシュテルンでも良い。指定した方位に向けてバラ撒け!」

 

半信半疑の中、俺の部下達はよく動いてくれる。

 

「済まないがコロニーに入るのは少し後になりそうです、出来ることなら直ぐにでも入りたいのですが、今は少々危険な状態です。

そのままご観覧のほどよろしくお願いします。

 

副長!俺も機体で出る、どうやら敵はそれなりの相手のようだ。」

 

「了解しました。本艦はこれより攻撃行動に出る、指定空域に対して攻撃し、敵を黙らせろ。」

 

急がなくてはな、敵は何かを待っているようだ。

 

 

………

 

機体に乗り込み、砲撃の効果をいちいち伝えてくる管制に苛立ちを覚えながら、俺はカタパルトに進む。

 

「不可視のシールドに守られているようです。

メガ粒子砲効果無いです!

実弾兵装は的確に撃ち落とされています!

 

ミラージュコロイドが剥がれ、姿を表したのはドレイク級ではあるが、通常のそれとはまるで色が違う。

寧ろ白色に近い。

 

「敵艦、このままでは索敵範囲外にでます!」

 

一か八かやってみるか。

 

「主砲管制を俺の機体に回せ!」

 

「ですが、演算能力はこちらが!」

 

「御託は良い!さっさとしろ!!」

 

なんだ、偵察にしては余りにもあっさりと引いていく、ならばこのまま返すわけにはいかないだろう。

 

機体を中央エレベーターから出し、主砲とのデータリンクを行いマニュアルで奴を狙う。

もしアレがIフィールドというものならば、エンジン周辺は濃度が薄くなっているはずだ。そこを狙えば!

一撃必殺、一撃だけで良いそれだけでエンジンを壊せれば構わない!!

 

「頂く!!」

 

撃つ瞬間、一機のMSが何か大型のビームライフルのようなものを構えてこちらを見ている光景が見えた。

俺の照準で放たれた攻撃は、敵に吸い込まれるように直進し赤いビーム。つまりはメガ粒子砲によって掻き消された。

アレを撃ち落とすだと?バカな、ビームを相殺したか!!

 

敵艦は全速力で退避していく、その後ろ姿は鮮やかで尚且つ颯爽としたものだった。

だが何故だろうか、不快感は感じない寧ろ懐かしさを感じる。俺の気のせいか?

 

「深追いは良い、それよりもメンデルにすぐに合流する。」

 

嫌な予感はしないが、俺はこの時コイツがザフトではないと、次の襲撃はないと、確信めいた感情を抱いていた。

目の端のメンデルから何機かのMSが発進してくるのが見える。代表的なあの青い機体とルビー色の機体、そしてフレイアルスターの感覚がある機体。

更にはデュエル、バスターの姿まで確認出来る。

 

「今更でたところで遅いが、今言ってもしょうがない。だが、きちんと説明してもらわないとな。」

 

ある種の怒りに似た感覚を覚えながら、俺は機体をメンデルへと直行させた。

 

 


 

私達の索敵は無駄だったのか、彼等が到着したすぐに私達を監視する何者かの存在に気が付き即座に対応をした。

私は迂闊だったのだ、自分が手掛けたGの性能それを備えた艦艇が存在しないという保証は無いという事実を。

 

彼がメンデルの格納庫に機体を置いたのを映像を確認しながら、案内を送ろうとする。

 

「いや、案内役なんていらねぇよ。ここに真っ直ぐ来るだろうからな。」

 

確かに、こちらへと迷いなく道順を移動してきているようだ。メンデルの重力区画に入った瞬間など、見事なほどの対応力で歩いている。だけれど、その形相はとてもではないが穏やかなものではない。

怒り狂っていると言うか、誰かに大して怒りに来るという感じだ。

 

「皆さん、彼が怒っていたとしても。例え俺が殴られたりしたとしても止めないでくれよ?これは俺とアイツの問題だから。」

 

ムウが殴られる…。何故だろうか?私達全員が言われるのはまだ解る、ムウだけというのが納得出来ない。

あの正体不明の敵を索敵出来なかったのは、私達艦船のクルーのせいだし、即応出来なかったのも私達の警戒心の無さから来るものだ。

特に、コロニーの索敵装置が生きていたばかりに、それに期待を寄せて使用していたのが災いしたというのに。

私はそれを説明しようと、心に決めた。

 

……

 

彼が部屋のドアから現れる、そしてムウの方へと一直線に進んでいく。

私はそれに対して言葉を紡ごうとするも、そんなもの聞き入れようとすらせず、ムウの襟首を掴み詰め寄る。

 

「貴様程の男がアレを見逃すか?なんだその体たらくは、気が弛んでるんじゃないのか、やる気が無いのか?それともわざとか?アレが敵対的でなかったから良かったものを、もしものことがあったらどうするつもりだったんだ!」

 

「おいおい、態となわけないだろう?ちょっとな、敵意も感じないし余り周囲に迷惑が伝播するのも悪いと思ってな。

それに、俺を買い被り過ぎだぜ?あんな存在、感知出来てると思うか?目で見えてないんだ、勘違いだってあるかもしれないだろ?」

 

目で見えない存在を感じ取れというのは無理難題じゃないのだろうか、私には出来るわけが無い。何より普通の人がそんな感覚を持っているわけがない。

それを思うと、シーゲル閣下の言っていた事もある程度理解できる。

 

「ムウ、昔からそうだがお前は自分に自信が無いんだろう?もっと自信を持って自分の感覚を信じろ、お前はあのアル・ダ・フラガよりも遥かに優れていると、俺はそう思ってる。

お前みたいに、人の事を心配できる奴が自分に自信がないようでは、世の中悪いことばかりになる。」

 

「それは壮大になりすぎじゃないかねぇ…。俺は見世物じゃないんだがなぁ。」

 

ムウがそう言うとハッとしたのか、彼は周囲を見渡しバツの悪そうな顔をして、済まなかったと謝った。

どうやら私達の事が見えていなかったらしい、というよりもムウの事だけが見えていたようだ。

 

「ニュータイプって…そういうものなんですか?」

 

緊張感もなしに言うのはアズラエルだ。彼にとってそれは興味でしか無い、人の感覚を超えた人類の先を行く存在。そんなものが目の前にいるのなら、ブルーコスモスとして黙ってみておくわけがない。

 

「俺はニュータイプとかそんなのはどうでもいいが、実際にこんな力があるのは確かだ。だがな、俺達は別に特別な存在じゃない、人にはそういう可能性があるってだけの話だ。」

 

「だとしても、それは夢ですよ。だってそうでしょう?コーディネイターのように肉体を強化せずともそうなる事ができるのなら、コーディネイターの意味は無いとそう思えます。」

 

嫌な予感がする、このまま行くと内部分裂すらあり得るかもしれない。

 

「そうでもないさ、肉体の強度が上がるわけでもない。戦闘力が特段強くなるわけでもない、俺のこれは体質みたいなものだ。

皆が皆俺等みたいにパイロットに成れるわけでもないし、頭が良くなるわけじゃない。

そういった意味ではコーディネイターの方が簡単な話だろう。」

 

肯定も否定もしない、曖昧な応対だからこそシーゲル閣下もその言葉に渋い顔をしつつ受け入れている。

何よりも、ニュータイプという存在を認識出来ただけで御の字だろう。彼等も怒ったりするのだ、少しだけ感覚が多いだけで同じ人間だ。

 

「そんなことよりもです、あの敵は偵察なのでしょうか?正直我々はあれ等を認識すらしていなかった。軍人失格です。このまま艦隊がここに大挙するようならば、我々はここを離れなければならない。」

 

「それは杞憂だ、アレはもっと別の存在だろう。それこそ戦争を左右するような存在と言うよりかは、何かたった一つの目標を持っている存在とでも言うべきか…。

決して敵ではない事は確かだろう、だが恐れるべき相手ではある。」

 

なにはともあれ、私達は集結し一つの目標に向け進んでいくだろう。

それがどんな風に世界に広がるか解らない、でも私達がやらなければならない。

 

このまま行けばどちらも共倒れになるかもしれない、この戦争を止められるのは、互いを理解している私達だけかもしれないから。

 

 

 

 




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