その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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傀儡

コペルニクスという月面都市には多くのナチュラルとコーディネイターが暮らしている。

俺達の世界でのフォン・ブラウンのようなものだろうか、比較的中立に近いの独自の文化を形成し始めている段階とも言える、そんな都市だ。

 

ここには様々な学者がいたりもする、勿論身分を隠しているものが大半であり、地球プラント問わずそういう亡命思考の強い人間が自然と集まっている。

 

俺が借りた家の近くには幼年学校があり、そこでは遮音されているものの、子ども達の和気あいあいとした感情が漏れてくる。この純粋無垢なそんな言葉が、もっとも似合う場所を歩くと、俺のやって来た戦争というものについて考えさせられる。

 

〘人はなんのために生まれ、なんのために死んでいくのか。

俺は時折、この苦しみにについて考えることがある。

 

杖を付き、サングラスをして歩く俺の姿は周囲にはどのように写って見えるのだろうか?

この顔を最後に鏡で見たとき、俺はいったいどんな顔をしていだろうか?〙

 

職場、に行く間にそんな事を考える。

俺はそんな事を考えながらも、今この世界に無い物を作り出そうとしている。

 

そうして歩くと、見知っている人物の落とし物を拾う。ハンカチだ。

つくづくこの()には助けられるが、困ったことに他者のプライベートまで見えてしまうこの感覚に、慣れを覚えたくない自分がいる。

 

「届けるか…?たぶん、歩いて行けばレノア・ザラ(探している人)がいるだろう。」

 

そうして歩いていく、やはりいた。探している、このハンカチはよほど大切なものだろうな、見たくは無いが、

 

「これをお探しですか?あちらで落ちているのを見かけましたので、」

 

「あ、ありがとうございます……。貴方はあの時の?」

 

彼女はきっと悲惨な最後を迎える、例えば崩壊するコロニーに巻き込まれて、苦しみ藻掻きながら。本人言ったほうが良いのだろうか?いや、未来は決まったわけではない。

どうなるかなんて、解りもしないことを心配なんてしないほうが良い、俺が干渉するということは、未来を滅茶苦茶な塗料で上書きするような事だから。

 

 


 


 

 

これで我々に協力してくれる人員は3千を超えてくるか…、そしてアムロ大佐の用意した艦艇への完熟訓練を吟味するに、最短でも一週間は必要であるがそれでもパトリックに対抗するにはこの程度の戦力ではまだまだといった所か…。

連合の改修戦艦が3隻、護衛艦が6隻、旧式輸送艦が3隻。それに我々の艦隊が加わるとすると、21隻の大所帯か、長期間の滞在に際して物資の供給量が心配だな。

 

実務椅子に腰を掛け、それに思い悩んでいる。戦力を整える事に注力していたが、補給というものに苦慮することになるとはな。

アズラエルは、

 

〖心配などしなくても良いですから、何のために僕が兵站担当を願い出たと思います?あなた方のような外交下手に任せておくことなどできないからですよ?〗

 

等というからには、きちんとした報告書が上がってくるのだろうな?

 

そう考えていると噂の人物が、私のもとに現れた。

 

「これ、外交報告書です。それとこれが、会計報告書に今後の補給関係の地点とその計画書になります。」

 

 

「アズラエルまさかと思うが、貴様我々を連合に売ったか!?」

 

その文章に書かれていた内容は、私にとって寝耳に水の出来ごとであり、我々にとり屈辱的な内容であった。

 

 

・プラント元在住者による義勇兵として、シーゲル・クライン等、以下の記す戦力を独立艦隊として、連合軍隷下として組み込むこと。

 ・将兵4,213名 艦船12隻 MS73機 MA31機

 

・義勇艦隊はプトレマイオス基地所属とし、ハルバートン中将隷下とすること

 

 

・第十三独立機動艦隊、アムロ・レイ准将はハルバートン艦隊隷下、義勇艦隊を監視のもと不審な動きがある場合処分すること

 

そんな内容を私は、私についてくると言った面々に言わねばならぬということだ。現在のパトリック政権を倒したのちに頭を挿げ替える為の傀儡に、正統権を与えるためということでもあるのだろう。

今の私は一体どんな顔をしているのだろうな、きっと怒りのあまり般若のような顔をしているのか、あるいは…、やっぱりなという顔をしているのかもしれない

 

「そんな顔をしないでください、これが一番現実的かつ実行可能な最大限度の連合との懸け橋ですよ?

連合も正規戦力をすり減らしたくないのです。なら、それを利用しない手は存在しえないのですよ。

わかりますよね?戦争を始める前から、あなた方の外交というものを見てきましたが、強かさが足りません。

もしあなた方に強かさがあったのなら、この戦争起こってなどいませんよ?」

 

「それはどういうことだ?我々は一貫して、プラントの独立をと申し入れていたと記憶しているのだが?」

 

この男の話は、実に商人といえる打算しかないものであり、我々がもっとも毛嫌いする能力よりも金を重視するようなものばかりだ。

そんな男が、戦争の原因はプラントにありプラントの動きが、血のバレンタインを引き起こしたとしか思えない発言をした。

 

 

「ではこれをどうぞ、重要なことは数字の変動ですよ。これがどういうことか素人でもわかるように、私が造りました。」

 

アズラエルから受け取ったもう一つの資料には、プラントが今まで造り理事国に輸出していたものと輸入

していたものの、貿易収支が記されていた。

年々高騰していく食品の輸入額と同様に、輸出額も増えている。私たちがいつも気にしていた数字、そしてそこにはもう一つ我々が目をつけていなかったものがあった。

プラントの労働者人口が増えるにつれ、輸入額は増えるのは当然で。

 

「打ち上げ費用が増えている?だがこれは、輸入額に加算されていない?これでは、理事国の利益は目減りしていくばかりではないか!」

 

打ち上げ費用をなぜ合算しないのか、それは簡単なことだ。プラントが生産したものは理事国内で主立って回る資材だ、もし費用を無限に吊り上げれば巡り巡って理事国の住民に還元されてしまう。

ならば税金から捻出するのがセオリーとなるが、税金は無限ではない。いずれこの関係は破綻していたと?

 

「あなた方はこれを出汁に、将来の独立を約束させれば、こんな血を流す必要もなかったんですよ。それに、ユニウスセブンを違法に改造する必要も無かったんじゃありませんか?」

 

「今更だな、之を私に見せて恩でも売るかね?」

 

この男はプラントの独立を承認することに、微塵の躊躇もない。そのほうが遥かに安上りでかつ、この男の企業の利益になるのだろうな。

 

「独立に伴う理事国の今までの投資金額は今までに、すでに回収していますから簡単でしたよ。我々としては、残った移住目的のコーディネイターも受け入れてもらえると助かりますよ。」

 

ブルーコスモスとしては、宇宙にいる我々を檻にいれているのと同じこととして、次代の戦争の種を摘むということでもあるか。

まったく食えない男だ、だが嫌いではないな。

 

 

 


 

はぁ~、大変なことになっちゃたな~。

どうしよう、フレイとラクスとの関係。

昨日、模擬戦をした後フレイが僕の更衣室の前で待っていると、ラクスが現れたらしいそれでなにやら話をしているな~なんて思っていたけど、僕が出てきた瞬間事態が動いた。

 

〖キラ様!私あなたを諦められません!だから、フレイ様!私、あなたとキラ様を掛けて決闘を申し込みますわ!〗

 

なんて言ったんだからたまったものじゃない。

フレイの目が爛々と輝いて

 

〖へぇ、良いわ。嫌いじゃないわ、競技は何にする?あんたの得意なものでも良いわよ?〗

 

 

〖いえ、競技ではありませんわ。キラ様、理想のお嫁様の願望などありますわよね?教えていただきますか?〗

 

 

僕はその言葉に答えられなかった。だってそうでしょ?理想の人と恋した相手の現実が同じなんて、そうそうないって話じゃないか!

 

「で、どうして俺にそんなことを話すんだ?」

 

「アスランはそういう事とか結構しっかりしてそうだし、上流階級の見振り方とか知ってるでしょ?だから、参考にしたいなぁって。」

 

呆れられるのは判ってる、だけど残念だけど僕は一般家庭の生まれ?生まれは特殊だけどそういう話じゃなくて、上流階級の価値観とか全然知らないし!

そもそもフレイも、ラクスもそれなりの家格だから絶対普通の家庭とか知らないだろうし!

 

「俺だって恋愛とかそういうものはしたことがない!そもそも許嫁なんてものを勝手に決められるようなのが、上流階級だぞ!そんな恋愛など…、いや気になる相手がいないとは言えないが…。

だがな、そもそもこんなシーゲル閣下から頂いたダイクンの記録の解読をしながらする話か!」

 

「だって、これくらいしないと自由に話せないじゃないか!何かにつけてアスランは僕のことを避けるから!」

 

アスランは僕の事を避けている。何か負い目があるのか、それとも嫌なことがあるのか、昔はあんなに一緒に遊んだりした中だったのに、何故?それに…

 

「ねぇ、今気にならない相手がいないではないっていったよね、それって誰?僕の相手は知ってるのに、アスランの相手を知らないのは不公平だと思うんだけど!」

 

「いつ俺がそう言った!」

 

とぼけている、絶対にいるのだいったい誰が…。

 

「おい、こんなところにいたのか、アムロ・レイが艦隊引き連れて返ってきたっていうからまた模擬戦……、何やってるんだ?」

 

「あ、カガリじつ」

 

「ああ、キラと共に敵の研究をしていたところだ。模擬戦も良いんだが、今はこちらのほうが重要だと思ってな。」

 

うわ、露骨わかりやすいな。というか、本人気がついているんだろうか、饒舌になってるし。

 

「そうか、解った。そう言えば、ラクスのお父様から全員に訓示があるそうだ。16時までには来いよ!」

 

「わかっているよ、おいキラ!それまでに終わらせるぞ。」

 

「私も何か手伝うか?」

 

カガリは僕の後ろに立ってパソコンを覗き込む、つまらなさそうに、でアスランの方にも行くんだけど……、胸を当ててるのかな?近づきすぎじゃない?相思相愛?でも鈍感すぎじゃない?二人共。

アスランがなぁ…。もしかして、僕が女の子だったらアスラン僕の事狙ってきたりして、うわぁそれはちょっとアレだな。

 

「解ったよ、ところでさ。ここのとこのプロテクト何だけどなんか見覚え無い?」

 

「これか?これは幼年学校の頃出された、プログラミングのアレに……」

 

聞かないほうが身のためだな、でもそうか。アスランよりもカガリに聞いた方が良いのか、ならアスランに聞くよりも確実だよね。だってカガリは二人と同性だし、何より首長のお姫様だからたぶんアスランの価値観よりもずっと二人に近いんじゃないかな。

 

「あ、解けた。なんだ、簡単じゃん…なになに?」

 

「MSの戦闘データ、カメラと音声映像か。何故こんな物をクライン閣下が見たがっていたんだ?」

 

「なんか、昔は解けなかったから君達なら行けそうだ。なんて言われて渡されたんだよ。とりあえず見てみない?」

 

そこに映っていたものは宇宙空間と、巨大な小惑星そして地球。小惑星の後部に火が灯り、地球に落ちていく映像と声が入っていた。

 

『フィフス・ルナの投入は終わったのだろ?総員引き上げのサインを出せ。』

 

「この声、ダイクンの声か!だが若いな、何時の映像なんだ?」

 

暫くするとすると会話も程々に宇宙空間へと飛び立つ。映像の中でも、僕達と同じように戦争をしている。

それどころか、地球にもっと酷いことをしているように見える。

 

「これ…隕石を地球に落としてるのか?映画だとしても、悪趣味にも程があるぞプラントはこんなものも作っているのか?」

 

「そんな訳無いだろ!こんなもの……見たことも聞いたこともない…。」

 

そして、一機のMSと対峙する。

 

『なんでこんな物を地球に落とす!これでは、地球が寒くなって人が住めなくなる!核の冬が来るぞ!』

 

その声は聞き知ったもので、なおかつ抑揚も声も何もかもが同じ人を知っている。くぐもった無線での声も、僕は通信をしたことがあるんだ。

 

サーベルとサーベルが交差し、光を放つ。サーベルが交差することなんてあるのだろうか、普通は盾とかで。

 

『私シャア・アズナブルが粛清しようというのだよ、アムロ!』

 

『エゴだよそれは!』

 

やっぱりそうだ、この声はアムロさんの声だ。じゃあこれって、アムロさんはシャアの事を良く知ってるってことになるんじゃ!

 

「問い詰めよう、この事を使ってアムロさんに聞くんだ。シャアとか言う存在を知ってるのは、アムロさんだけだろうから。」

 

気になることは沢山ある、どうして二人は殺し合うのか、どうして隕石を落とそうとしているのか、どうして。

 

オーストラリア大陸のシドニーに巨大なクレーターができているのか。

 

 


 

シーゲル閣下の艦隊と合流すると、まず最初にアズラエルに言われたことは、

 

「アムロ君、君今日から准将ね」

 

だった、階級が上がって悪いと思うことはない。給料も上がって、権力も大きくなる。

問題は書類仕事と責任の範囲が広くなることだ。

そして、俺はアズラエルが行ったという交渉の結果に基づいて、この艦隊を監視しなければならなくなった。

 

「いきなりこれか、いったい俺は戦前から何階級あがった?元は尉官だったんだぞ?

これではおちおち前線に出ることも出来ないじゃないか。」

 

「別に艦隊運用は大佐級の方にお願いすれば良いのでは?そこまでくくる必要はないと思いますよ?」

 

「だがな……、なんだ?」

 

内線が鳴る、俺に呼び出しとはいったい誰だ?

 

「キラ・ヤマトです、あのアムロさんにお聞きしたいことがありまして。ラクスやアスラン、それにシーゲル閣下とかアズラエルさんも話を聞きたいらしくて。」

 

「解ったすぐ行くが、それ程重要な内容か?なら、話す人員はキラ君の素性をしっている人間で固めてくれないか?」

 

そう言うと俺は呼び出された場所へと向かう。

 

「何なんでしょうか、重要な事って」

 

「わからない、だがおそらく俺の出自に関することだと思う。最悪の場合は頼むぞ?」

 

その言葉を聞いた彼女の制服の下に、黒く光るものが写る

 

「そこまではしなくて良い、過保護すぎるよ。」

 

何を聞かれるのだろうな、根掘り葉掘り聞かれることは確定だろうが。

 

……

 

「皆集まってオレを尋問かい?笑えるね」

 

俺は到着してまず第一声そう答えた。

 

「アムロさん、あのまずはこの映像を見てください。」

 

そうやってキラが見せてきたものは、見覚えのある動きをする一機のMSそれと戦う、映像の主の駆るMSの戦闘だ。

 

「これを何処で?」

 

「それは私が話そう。そうだな、それはシャア…ダイクンの乗っていた赤いボールの中から得られたデータから、そこのキラ君とアスラン君の手によって復元されたものだ。

これ自体は、既に30年ほど前の代物だが当時の私にはこの映像の暗号を解く事ができなかった。

それで今回解かれたとき、君の声がしたものでね。何か知っているのかと思ってな。」

 

なるほどな、十中八九親父の戦闘行動だろう。そんな動きをするMSが映っているしな。

 

「正直に答えてください、これはいったいなんですか?」

 

「俺にも解らないよ、第1この声の主は俺じゃない。たぶん、俺の親父の声だろうけどな。」

 

さて、その言葉に皆どの様な反応をするのか、今からでも逃げ出したい気分だが、逃げ出したところでどうなることでもない。

なら、前に踏み込むべきだ。

 

 

 

 




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