その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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一筋の光

俺は俺を救った爺さんの伝を使って月面にほど近い、L1コロニー郡来た。

コロニー群としては最も古い規格のものであり、最近の理事国の投資先がプラントへ行った事により、施設自体はそれ程新しいというものでもない。

 

ここの管理権限は理事国から既に半独立的なものになっており、軍の駐留基地としての役割もあるのだとか。

尤も、コロニーに常設できる艦艇などその数はしれており、月面基地がその殆どの戦力を、留め置く役割を担っている為にここも既に形骸化しているとも言える。

 

「しかし、本当に良いんですかね?こんなコロニーに植物研究施設を置いてしまうなど。」

 

「今理事国の目はプラントに向いていますから、これこそ好機ですよ。結局環境はプラントとそうは変わらないので、向こうのための研究にもなりますからね。」

 

人はいずれ、地球を出なけれはならない時が来る、その時何の土壌もなく、ただ宇宙に放り出されれば路頭に迷い、宇宙に溺れ溺死するしか無い。

それを回避するには、こうやって無理をしてでも通す必要がある。

それに

 

「プラントでなければ、良いんですよ。理事国はプラントだけが目の上のたん瘤になっている。ここL1なんて眼中に無い、隠れ蓑には持って来いです。

ですから、プラントからそれらの植物を研究している人材を、ここに派遣できればと…。」

 

数年先の戦争の原因を少しでも分散させなければならない、逆にここでの研究を元にプラントで農業を始めたら止めようはないが。

 

「確かに…現状、我々に対する理事国の関心は薄い。ですが発覚したら…、その報復が恐ろしいのです。」

 

「だからこその、各サイドとの連携です。どれ程地球が強くとも、必ずしも連携出来ない彼等、それらと対等になるにはそれしか無い。」

 

皮肉なものだな、人は争い合うだけではないという俺が一番、人の愚かさを知っているなんてな。

 

 


 


 

宇宙空間を滑走する俺達の艦隊は、眼の前にポツンと存在する岩塊を中心に扇のように展開し、その威様を敵に見せつけるように一糸乱れぬ動きで艦隊の動きを止めた。

 

第六、第七、第八艦隊は要塞を前にして、最後の降伏勧告を実施する。そんな文言に対して彼等、ザフトの要塞ボアズは混乱に陥っていた。

 

俺達第13独立機動艦隊艦隊は第八艦隊隷下となり、連合艦隊の最左翼という最重要の位置に展開する。

ここを攻撃された場合、真っ先に殺られる位置、尤も敵の接近が予想される、両翼の片方を任された俺達には連合として言うのならば、〘あわよくば死ね〙と言われているに等しい。

 

俺達の艦隊の背後には、第八艦隊のもう一隊がおりいつでも俺達が裏切っても良いように、砲門をこちらに向けている。

向こうとしては、ボアズに照準を向けているだけというのが、言い訳だろう。

 

「シーゲル閣下の呼び掛けの結果はどうだろうな?」

 

「未だ現状、要塞内では諍いが起きている様子はありません。ですが、我々の前面の防御が些か薄くなってきているようですので、そろそろではありませんか?」

 

戦闘の初めに、敵への攻撃勧告並びに降伏を行いつつシーゲル閣下が、要塞の防衛戦力に対して声を変えた。

いや、攻略の数日前から徐々に浸透していくように噂を流しておいた。

 

クライン派のプラントでの諜報力はザラ派よりも高い、彼等はザラ派に密かに浸透し巧みに情報を操作した。

 

 

現在のパトリック・ザラの行っている内政や粛清に関する内容だ、尤もこれで動くやつはいないだろうが、それでも似たような噂はプラント内部ではかなり広まっていると思う。

もしこちらを手引するものがいれば、発光信号を出すことになっているが…果たして…。

 

「これは……、発光信号を確認!位置は…、スクリーンに出します。」

 

「良し、ハルバートン連合艦隊司令に連絡。これより我が隊は、伏兵の誘導の下、敵要塞の死角より攻撃を開始する。

連合艦隊は正面より遠距離攻撃を開始し、揺動を願う!

俺も出る、艦隊の指揮はバルトフェルドに移譲、もしもの場合は解っているな?」

 

「了解しました、通信始めます。」

 

さて、要塞攻略か上手く行けば良いが。

 

 

………

 

カタパルトが開いて行くと戦場が見える。既に何機かは出撃が完了し、隊列を形成していることだろう。

だが、それよりも面白くない現状がある。

 

ザフトの防衛線があまりにもお粗末ということだ、敵の艦隊はそのほとんどが姿を表さず、正面戦力と戦っているのだろうがそれでもこれはどういうことか、戦場での兵の意識が少なすぎるのでは無いだろうか?

 

キラ君達直掩隊まだ出て来ていないが、これは…嫌な予感がする。これがどういう意味を記しているかはわからないが。

 

「MS大隊、これより前進を始める。各部隊連携を取りつつ、敵要塞に取り付け。敵の内、こちらの味方をする部隊からの連絡が入った。各員IFFの状況を確認しておけ、誤射はなるべく避けたい。」

 

次々と発艦していく姿、これ程までの大規模な戦闘は俺も初めてだ。

 

「損傷機は速やかに後退し補給の後、前線にもどってきてくれ。

直掩部隊はキラ……フリーダムの指示に従うように、あの機体が一番索敵能力に長けている。

スターシャ、部隊の運用は任せる。俺は敵の防御を突き崩す!」

 

「了解!敵の中には精鋭もいます、どうか怪我をしないように!」

 

俺はその言葉に短く返答し、単騎で行く。

 

反撃の少ない中を突き進んでいく、たまに飛んでくる攻撃は流れ弾だろう。俺達の艦隊は直ぐに要塞へと取り付いた。

呆気ない、あまりにも呆気ない。ボアズの戦力の大凡三分の一が、シーゲル閣下の呼びかけに答え戦場をかき乱している。

 

敵との戦闘、敵の動きも慣れたものから不慣れなものまでいる戦場。

敵の腕が上る前に落とさせてもらう。

意識を下に追い縋ってくる者達をライフルで、撃つ撃つ撃つ。

火球の後ろにもう一つ。

機体を貫通し、後ろの機体も巻き込んでいく。

 

ビットを展開し、俺の機体に合わせて敵の防御を崩すように穴を開けていく。

俺の機体についてこられる味方はいないが、それでもこのビットは俺の意識どおりに動いてくれる。まさに手脚のように。

 

抵抗する敵の部隊を締め上げるように徐々に包囲を狭めていくと、敵の抵抗は激化の一途を辿っていく。

敵の部隊を結ぶ十字砲火の中を飛び、砲火を出す射点を一つづ潰していく。ゆっくりだが確実に。

 

この要塞の造りは水際防御用の形をしている。

つまり、坑道のようなものを活用しているのではなく。火点を露出させ、敵の進行を火力で刈り取り味方との連携で敵を葬る。

所謂、短期決戦向きの要塞だ。

 

だが、ザフトの艦隊の姿は未だに見えない。それどころか、出撃してきた艦隊はもはや風前の灯で、正面から戦力をすり潰されている始末だ。

こんな、軍事音痴な要塞をどうして作るのか理解しがたい、この気持ち悪さは何だ?

ヤキン・ドゥーエからの増援が見込めないのか?

 

俺はそれを疑問に感じ、ヤキンの方へと意識を向けた。何も無い、岩塊が浮かぶだけの宙域。ここからは影になって何も見えない、この要塞を超えた先にある場所。

この距離では何も見ることは出来ないそこに、何かが有るはずもないその空間を。

 

無意識の内に敵の攻撃をカウンターしていく。近距離格闘を仕掛けてきた機体を、シールドでコックピットを突き指すように潰す。

それでも、俺の意識はヤキンの方へと向いている。

 

戦況は遥かにこちらの有利、1日のうちにボアズは落ちる。古い内部地図と、クライン派の用いる情報から得られた地図により、内部に陸戦隊がなだれ込み、ボアズの制圧が始まっている。

 

「各部隊、損害の集計を進めてくれ。損傷機は直ちに帰還し、最寄りの艦艇で修復を行うこと。

内部で反乱してくれた者達には充分な支援を…………、なんだ?」

 

なにかが起こるようなそんな感覚がある。どういう事だ、これは…人の意識がこちらを向いている?!

どうしてこんな感覚に気が付かなかった!!

 

 


 

僕は直掩部隊を率いて僕たちの変える場所を守りきった。何人か怪我をしたみたいだけど、シーゲルさんのお陰で僕たちの部隊はすんなりと、相手の懐に入り込めたみたいで、この戦闘を僕たちは有利に進めた。

 

これが……戦争。正面から戦うだけじゃなく、絡め手を使って相手の弱い場所を探り出して戦う。

 

「キラッ!なんか寒い!寒いの、何で?どうして…、寒いの!」

 

僕の近くで戦っていたフレイから突然そんな通信が入った。大丈夫だろうか?どこか体を壊してしまったのだろうか?僕は心配になって彼女との通信を取り、彼女のコックピット内の映像を見た。彼女は震えて、肩を抱えて一つの方向を見ていた。

 

「フレイ!大丈夫じゃないみたい、直ぐに帰投して!」

 

『全員!ボアズの影に隠れろ!』

 

頭の中にそんな声が響いたと思った瞬間、ボアズの後ろが朧気に発光して宇宙で決してあり得ない、爆風が周囲を包む。

何が起こっているのか、アムロさんの声がどうして頭に響いたのかはわからない。

 

だけど、今のこの状況はそれどころじゃなかった。

 

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”ああああ〜あ”

 

フレイの聞いたこともないような声が聞こえる。

藻掻き苦しみ、ヘルメットを外して頭を掻き毟りながら彼女は叫んでいる。

 

「フレイ!フレイ!!」

 

「人の意識が溶けて溶けてく……わたしの、わたしの中に広がって!」

 

僕が目にしたのは、ボアズの影から外れた艦がその現象の原因になっているであろう、発光するデブリと同じように光り爆散する姿。そのたびにフレイは悲鳴を上げ、苦しんでいるんだ。

 

光の奔流が流れてくる方向にあるものを、地図で見るとそこにはヤキン・ドゥーエが有ることが解る。

つまり、ザフトは大量破壊兵器を使ったんだ。

 

そう思った次の瞬間、レーザーの軌道がいきなり上振れしてあらぬ方向を向いて宇宙へと飛んでいく。

その頃にはフレイからの悲鳴が聞こえなくなり、ボアズ要塞は完全に沈黙して、攻略艦隊は半壊してもう戦闘どころの話じゃなくなっていた。

 

「キラッ、大丈夫だったか!?頭に何か避けろとかそういうのが聞こえたんだが……」

 

「フレイッ!早くしないと!カガリはどいて!」

 

近くにいたのだろうカガリがそういう通信を入れてくるけれど、僕はそれを半ば無視してフレイを連れてアークエンジェルに戻る。

コックピットの中のフレイは髪を振り解き、まるでシートに括りつけられているように、まるで人形のように動かなくなっている。

このままじゃフレイが死んじゃう、嫌だ!僕は失いたくなんて無いんだ!護るって決めたのに、絶対に死なせない!

 

 

……

 

格納庫に戻った時まず目の前に広がっていたのは、損傷した機体。血で赤黒く変色したコックピットのアストレイ、そのすぐ隣にはパイロットだったモノが置かれている。

原型がもうない、僕はそれに目を逸らしながらフレイの機体を繋留して、ハッチを開けようとするマードックさんに一言言った。

 

「フレイはヘルメットを外してるんです、エアロックが閉まるまで待ってください!」

 

幸いなことだと想うけれど、アークエンジェル隊で一番離れた位置で戦っていた僕たちは最後の着艦だった。

そのおかげで直ぐにエアロックが締まった。直ぐに僕はフリーダムを置いて、フレイのストライクのコックピットに急いだ。

 

「おいおい、どうしたってんだよ。フラガの少佐も顔を青白くして帰ってきてよ、嬢ちゃんも何かあったのか?」

 

「さっきの閃光のとき、突然錯乱したみたいになってその後直ぐに気絶したんです!」

 

ハッチを外部から開けると、フレイが力なくだらんと腕を宙に浮かせて座っているところに近づく。

 

「フレイ…フレイ!」

 

フワリと浮かぶ彼女の髪が乱れるように、辺りを触る。

虚ろな瞳が目に写り僕は彼女を一心不乱に呼んだ。

 

 

 


 

私は臨時にアークエンジェルに着艦した。きちんとラミアス艦長の許可を取って。

キラの言っていたフレイの状況に、居ても立っても居られなかったというのが本音で、私は友達を失いたくなかったんだ。

 

アスハの人間として育てられて、友人という友人はその尽くが友人ではなく臣下となり、私はそういう意味で完全に孤立してしまった。

身分を隠してアークエンジェルに強引に乗り込んだ時、フレイ・アルスターがまず初めに私の正体に気が付いたのだ。

 

初め私はその事を隠してくれるように頼んだ。社交界という私の苦手な場所で1度あったことがあるという彼女と私は、他国の人間ということである意味対等な相手だったんだ。

 

好きな遊びや、好きな人の話のような恋バナをその時初めてした。私は、1人だった中でこれ程楽しい事はないと、そう思ったんだ。なのに、なのにフレイ!お前は!

 

医務室の扉を自動で開くのを余所に、思い切り力付くで開く。

 

「ここにフレイ・アルスターがいるだろ!!」

 

周囲の人達は私に敬礼をする中、青いパイロットスーツを着たキラだけが、私が来たことを気にもせずピンクのパイロットスーツを着た1人に縋り付いている。

 

「キラ、フレイの状態はどうなんだ?」

 

優しくゆったりと言ったと思う、けれどその声にキラは苛立つように言った。

 

「これが大丈夫に見えるかい?どうしてこうなったのか解らないけど、どう考えても駄目でしょ?」

 

キラは混乱していた。それもそうだろう、自分の想い人がこんな事になったらきっと正気じゃいられない。

 

「軍医さんも解らないんだって、どうしてこんなに意識が無いのか、脳に異常はないのに脳波が弱ってるって。

何かに引っ張られているみたいだって。」

 

脳波って、そんなもの解る訳無いだろどうすれば。

 

「おいおい、やっぱこうなってたか。おいキラそこどいてくれ。」

 

私達の後ろからフラガが現れた。何の冗談か、私を避けてフレイの額に手を当てると勢いよくため息を吐いた。

 

「アムロから聞いていてみれば、案の定かよ。ま、なんだ?このまま寝ていればその内起きるだろうってさ、一時的に精神に負荷がかかっただけだからよ。

キラ、そこまで落ち込む必要はねぇよ。」

 

アムロ・レイから聞いただと?そんな事不可能だろ、今はただでさえ無線が錯綜してるんだ、私が着艦するときだってかなり対応に四苦八苦していたんだぞ?

それをさも簡単に出来るわけはないだろ。

 

「でも、ムウさん!それでも…、」

 

「それ以上は無しだぜ?あんまり言われても、俺だって気分良くないんだぜ?今はそっとしておいてやれよ、キラは傍にいてやれ、たぶん起きたらお前のこと探すだろうからな。 

その後はしばらく一緒にいてやれ、命令があるまでな。

 

おい、アスハ代表殿。お前は俺と一緒にブリッジに行くぞ、艦長に話があるからな。

クサナギはお前の言う事しか聞かないしな。」

 

私は強引にその場から剥がされるように、連れ去られた。

 

 

 


 

アラートが鳴り響き、赤い非常証明が灯る。

この煩い音の中に、緊急対応に負われる人々の声が響く。

 

「第2反射鏡融解!ジェネシスの損壊40%!これでは……修復に一週間かかります。」

 

私はジェネシスのトリガーを引いた、このプラントの議長の戦争に勝ちたいという願いのために。

 

「この事態は一体何だ!!誰がジェネシスを撃っていいと言った!……、まさか貴様か!ダイクン!」

 

随分と遅い到着だな、一番上の席でふんぞり返ってくれたほうが

私としては良かったのだがね。

それにしても、周囲の人間のこの対応の遅さと言ったら、安全な場所で最後までいた人間とはここまで劣化するものか?

 

「お早い到着で、どうしました?まさか、ジェネシス故障の件で参られたのですか?」

 

「違う!私は何故ジェネシスが発射されたのか聞いたのだ!アレは、連合が核を使用してきた時の切り札として!」

 

「切り札と言うのなら、使わなければ敵にこの脅威を認知させる事等できません。

まさかと思いますが、ジェネシスを最後まで秘匿するお積もりだったのですか?なんと弱腰な。」

 

これで怒るのなら良いものだ、そうすればよりやりやすいといったものだ。

 

「弱腰だと?」

 

「えぇ、弱腰ですよ。このようなものを飾りとしてしか使えないものが、これからの世界を統治する人のやることですか?戦に勝てなければ、このようなものを持っていたとして何の意味もない。」

 

私としてはどうでもいいことだ、こんなララァのいない世界に興味など無いのだから。

だが、私はこの状況を楽しく思っている何故なら。

 

「だが、この損害はなんだ!一体どうやったらフェイズシフトで防御されたこのジェネシスに傷をつけられる!」

 

「それは現在調査中です。しかし、出力を抑えれば戦術用としてはまだ使用できます。

そうでしょう?皆さん」

 

「は、はい!20%の威力であればもう3射までなら!」

 

この傷といい、この威力と言い。物理攻撃に対する絶対的な防御、陽電子破城砲すら耐えられると豪語したこのフェイズシフト装甲という代物を突破する威力。

コロニーレーザーに匹敵する威力を艦船レベルにまで落とし込んだこれは…まさに伝え聞くところのハイパーメガ粒子砲だな。

 

「射点は特定出来たのだろうな!」

 

「はい!しかし、現状そこには何もなくなっております。恐らく、ミラージュコロイドではないかと……。」

 

これ程までにミノフスキー粒子に関する理解をしているものはそうそう居まい、恐らくはエンジニア部門にも精通しているものでなければ想像もしない代物だ。

ならば答えは一つしかない、生きていたということだ。あの男が、私のライバルであるあの〘アムロ・レイ〙が!

 

もはやこの男に使い道は無い、上手く誘導して私がアムロと戦える土俵を整えようか?

良いところで退場してもらおう。

 

 

 




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