その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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時間

俺を拾った爺さんの伝でこのコペルニクスに作られていた俺の機体を解析していた施設は、今も駆動している。

彼等は俺がこの世界に来てから様々なものを研究していたようだが、どうしても解決できない物があったようだ。

 

「ミノフスキー物理学か、俺もそんなに詳しくはないが実物を作れないというものでもない。一応、設計図自体は知ってはいるが、果たして動くかは知らないぞ?」

 

研究者たちは俺のνガンダムから得られた知見から同様の駆動系を作り出すところまでは行っている。後は、ミノフスキー粒子がこの世界に存在するか。

いや、正直に言って俺はこの世界にもあると思っていた。

 

俺がこの世界に来たとき、どうやら世界中で大停電が起こっていたというのだ。

つまり、ミノフスキー粒子が何らかの作用をこの世界で既に起こしていたということになる。

 

組み上げられていく発生機が動くかどうか、俺は確認しなくても解る。

時の流れというものは、可能性を映す鏡のようなもので俺にはそれが見えている。

 

俺にとって時間は可視化出来るものになってしまったのだろうか?視力を失い、これを頼りに生きてきた。

ララァと共に見たこの景色、今でも鮮明に覚えているこれを、俺は常時見ている。

可能性の分岐を、自らの手の内にある。手の届く範囲の可能性を。

 

 


 


俺がエポナの艦橋に到着すると、その中では戦勝に浮かれていたところに、突然の攻撃によってかき乱された事によっててんてこ舞いになっている乗員が目に入った。

想定外の事に対して対処するのが彼らの役目だが、それにしても想定外過ぎたということだ。

 

情報が錯綜しているな、敵の攻撃があまりにも急すぎた。どうやって身を隠していたかは……、簡単に予想がつくが問題はその射点までいかにして戦力を、送り込むかだな。

 

総員!静粛に!

 

俺のその言葉で艦橋内は静かになる。俺の方向を見守る彼等の瞳には不安の2文字が写るようだ。

 

「まずは俺達の艦隊の状況確認から報告しろ、次に味方艦隊の損害の概略だ。」

 

「は、はい!我が艦隊の被害は先程の攻撃に対しては軽微です。数名クルーに精神疾患に似た症状が現れましたが、現在は鎮静剤を打って眠りについています。」

 

「通信手です。第六、第七艦隊の被害甚大、戦力の8割を先程の攻撃で損失しました。幸いなことに、第八艦隊は我々同様ボアズの影に隠れていたため、戦力の9割が健在です。

しかし、要塞内部に入った者達との連絡が取れず……。」

 

錯綜した中で、地道に情報を精査していた人員はやはり優秀だ。普段はおちゃらけているが、こういう時のON・OFFの切り替えが迅速に出来るやつは、信頼できる。

 

「解った、スペクトル分析を行ったものはいるか?あの攻撃に使われた兵装の予測をしたい。俺はγ線兵器だと思うのだが……。」

 

「はい、分析班のものです。提督の予想通り、γ線兵器だと思われます。ただ、かなりの大出力レーザーですので、照射装置は並の大きさではないかと。

被害の規模と熱量から計算しましたところ、コロニーサイズの照射物が必要です。ですが、作戦前には射点のようなものは。」

 

ミラージュコロイド、厄介なものを連合は作り出してくれたな。

姿形が解らなければ対策の施しようがない、最大の問題はあのレベルの攻撃を短期間で連射可能かどうかか……?いや、待てよなら情報は多角的なものの方が良い。

 

「シーゲル閣下へと連絡は取れるか?大至急だ!」

 

「エターナルとの通信は途絶していませんのですぐに!」

 

残骸ばかりが漂う宇宙、恐らくボアズ内部は悲惨なことになっているに違いない。

多量のγ線を浴びたのなら、肉体が分解されていることも考慮しなければな。

 

「スクリーンでます!」

 

「大至急というが、こちらも情報が錯綜している。早々に連絡をと思っていたところだ、あの攻撃に付いて聞きたいのだろう!!」

 

「その通りだ!そのために、DSSDが深宇宙探査のために開発中であったものの情報をもらいたい、恐らくは!」

 

シーゲル・クラインは亡くなったジョージ・グレンの意思を継ぎ、深宇宙探査のための組織DSSDというものに参加していた筈だ。プラントはコロニーの中でも宇宙空間に深宇宙に程近いラグランジュポイント5に建造されたコロニー群だ、そして其れ等の機材を良く組み立てるに充分な工業力を持っている。

 

「恐らくは貴方方が開発中であった、宇宙船加速装置を利用したのではないかと、俺なりに考えたのだが?それをこの様な兵器に転用可能か?」

 

「可能ではある。だが、そんな事をするとは奴も分別がある男だと思っていたが、こんな事に使うとは!!

私の預かり知らぬところでアレを……、私の夢を兵器に使ったのだ!責任は私にもあろう、ならばこの手で破壊しなければならない!そちらにデータを送る、これからどうする?」

 

これからどうするか、その行動理念は効率的な方が良いかそれとも感情的な方がいいのか?

復讐のため、逆襲のためならば直ぐ様向かうべきなのだが、今はそれ程急ぐ必要がないと、俺の勘が囁いているそれに。

 

親父がいる場所に行ったほうが良いと、まるで囁いている。

 

「これからハルバートン提督と話をします。その話の如何によっては、作戦行動を別にする可能性がある事を重々承知の上でいてください。

通信終わりますよ?」

 

「あぁ、我々も急いで体制を立て直す。要塞の残存部隊を伴って、出来ればあの男、パトリックを止める。最悪の場合は……。私の手で引導を渡したい、最後はこの手で。」

 

それを最後に通信を切断した。次にハルバートン提督へと通信をいれる、このあとどうするべきか?

もう行動方針は俺の中では決まっていた。

 

 

………

 

「第六、第七艦隊の高速艦艇、ドレイク級宇宙護衛艦を中心に編成し、我々は1度月面方向へと屈折しその後一挙にヤキンへと全速力で向かいます。

その間に提督は、補給後残りのネルソン級、アガメムノン級を従え艦隊をそのままにヤキンへと前進お願いします。

 

その間に、第二、第三艦隊は月よりそのままヤキンへと向かうよう司令部を説得してもらいたい。急がなければなりません、第2射が来る前にヤキンを落とさなければ、この戦争負けます。」

 

「解っている、許可は出そう。ただし、必ず艦隊をヤキンへと向かわせよ、我々の部隊だけでは落とすのは困難だ。

敵の主力が待ち構えている筈のヤキンを、力尽くで抜くのだ。

それ相応の戦力がいる。

本当ならば時間を掛けてじっくりと、真綿のように首を締めたいがそうもいかないだろう。

武運を祈るぞ?」

 

これで俺達の艦隊の行く末が決まったな、後は高速艦艇だけを纏めるしかないか。

 

「第六、七艦艇の残存艦艇の内、ドレイク級を俺達が引き受けることになった。

既に集結が始まっている。俺達の艦隊の各隊、特にアークエンジェルには動くなと言っておけ、アークエンジェルは非常に目立つから良い目印になる。」

 

敵の動きが予測できない、自軍の要塞を囮にするのは解るがそれにしたって自軍の被害すら勘定に入れていない。

後先考えない攻撃は、破滅の道だ。

 

 

 


 

 

あれから20分…まだフレイは目を覚まさない。昏倒くらいならそれくらいで目を覚ますという、軍医さんの話だったのだけど一向に目が覚めない彼女を見ていると、急に怖くなっていく。

このままフレイは目を覚まさないんじゃないか?

このまま息を引き取ってしまうんじゃないかと、悪い方向に考えが進んでいく。

 

艦内放送が聞こえた、マリューさんの声だ。その後、アークエンジェルが動き出すのが、ゆっくりと解る。

身体に少しGが掛かる、加速して少し曲がっていく。

何処かへとむかうみたいだ、どこだって良い今はそんなことよりも、フレイが傷付くのを防ぐ為に彼女がベッドから外れないように、僕が固定しなくちゃならない。

 

ガタガタ、ビリビリと震える船内が落ち着くのは暫く掛かった。そう、かなりの時間アークエンジェルはエンジンを吹かしていたんだ。それはどういうことかと言うと、それだけ速力をだすためだけに使ったという事。

 

そんな急ぐ姿も、今の僕には映らなかった。

 

「おい、キラ・ヤマト君。そろそろ様態も落ち着いて来たんだ、彼女を部屋に連れて行ってやれないか?他の連中も待っている。」

 

遂にその順番がやって来た、戦闘に参加できないやつよりも、簡単に処置できる奴が優先になる。当たり前、当たり前のことなんだ。

だけど、ちょっと冷たいと思った。

 

「わかりました。」

 

僕は彼女を抱える。

宇宙空間の慣性移動で首をやらないように、所謂お姫様抱っこっていうんだろうその姿勢にして、フレイの部屋へ運んでいく。

 

身体の中の彼女は暖かく、ゆっくりと息をしている。まるで眠っているみたいな彼女は、あんなに発狂したとは思えない程にその顔を落ち着かせている。

皆はそんな彼女に対してお見舞いに来れるような状態じゃないのはわかるけど、誰一人として来ない。

 

暫くして、フレイの部屋に到着すると彼女に教えてもらったパスワードをいれる。

それなりに飾り付けをしてある彼女の部屋、ドミニオンからアークエンジェルに移った、彼女の部屋。

 

「キラ・ヤマト少尉、キラ・ヤマト少尉至急ブリッジにきてください。」

 

ミリィの声が聞こえる、でも僕は離れたくない。彼女が起きた時、1人だったら彼女は孤独になってしまう。

だからその声を無視しようとした。

 

『キラ……、行ってあげて』

 

幻聴だろうかそんな言葉が聞こえてくるように思えた。彼女の口は動いてないのに、何がそんな声を聞こえさせているんだろう。

 

「キラ…、行って?私はもう大丈夫だから。」

 

「フレイ?フレイッ!!」

 

僕は彼女を抱きしめた、やっと起きた。やっと目を覚ましてくれた彼女を、その嬉しさのあまり。

 

「キラッ、痛い…。それと、私今汗臭いから……。」

 

そんな事構うものか、鼻腔を刺激する彼女の匂いは決して不快なんかじゃない。むしろ僕はそれが好きだ。

 

「ブリッジに行くんじゃないの……?私もいかなくちゃならないの、だからお願い…。」

 

「解った…解ったよ。だけど、無理しちゃ駄目だよ?」

 

彼女の瞳は何を写しているのか解らない、でも何かを知ったみたいに進み始めた。

 

 


 

はぁ、頭が妙に痛い。いったいどうしたのかしら…、色々な事が起こりすぎて疲れているのかしらね…。

 

「ラミアス艦長、大丈夫ですか?少しお休みになられたほうが…?」

 

「いえ、大丈夫よ。ノイマン少尉の方こそ休んだ方が良いんじゃないかしら?さっきからずっと操舵していたのでしょう?

貴方の腕で色々な苦難をのりこえてきたけれど、こういう時こそ休みなさい?

もしもの時頼りにしていますから。」

 

ブリッジクルーも疲れが溜まってきている。

先程の戦闘だけではなく、この数ヶ月私達は心を落ち着かせる事ができる状況になかっただけに、どうしようもなく心に不安を抱えているんだ。

 

張り詰めた糸はいつかは切れるもの、ムウの言っていた事が今更になって良く判る。

あの人はおちゃらけている所とか、そういう所はあるけれどそれでも周囲のムードとか、そういうのを見て話をしていると、そう思う。

 

「失礼します!ラミアス艦長、少し良いですか?」

 

いきなりブリッジの扉が開き、キラ君とフレイさんが現れる。

フレイさんが倒れたと聞いたとき焦ったものだ。

遂に私のせいで、戦争に行かなくても良かった子が倒れてしまったと思うくらいには。

 

それがどうだろう、眼の前にいてまるで何かを訴えるような眼差しをしている。

 

「どうしたのかしら?パイロットスーツも脱がないなんて、今は警戒態勢だけど、そこまでの状態じゃないのよ?」

 

「まだ脱いでないだけです、それよりも。私達は今、どこに向かってるんですか?」

 

向かっている場所……、アムロ・レイ准将指揮するこの大規模な艦隊が向かう先は、ヤキンとボアズの直線ラインから少し離れた場所。

何も無い空域だ、正直今ここを攻撃されれば一溜まりもないのだろう。そんな場所を悠々と進んでいるということは、ザフトの予備兵力がもう存在しないということだろうけれど。

 

「わからないわ、ただ。向かっている先にあるのは、何も無いわよ?」

 

「アムロさんに聞いてください、そこにはアムロさんのお父さんがいるのかって、私は話さなくちゃならないの!」

 

この子は最近おかしな言動が増えた。

元々アークエンジェルのクルーの大半が正規のクルーでなかったときから、私達を護るためにパイロットになってくれた子だった。

 

特にキラ君が1人で戦っていたときに、率先して何か役に立てないかとか言って、MSパイロットになった子。

私は正直彼女達に対して申し訳ないという感情しかない、特にキラ君とフレイさんに対しては。

 

二人は戦場という吊り橋で恋に落ちた。でもそれはきっと長続きしないかもしれない、正常じゃない精神のときに正常な判断なんて出来るわけがないから。

 

きっと二人はもう、平和な世界には戻れないかもしれない。戦争という物が常となって、それが今彼女に牙を向き始めているのだとしたら、戦後私は彼女のお父さん。アルスター外務次官になんと言われるだろうか…償いきれるだろうか…。PTSDは辛いと聞いたことがある。

 

「今准将は忙しいわ、下らない内容だったら通信はしないのだけれど、とりあえず私に話を聞かせてくれない?」

 

支離滅裂な事を言い出したら、それこそ私は止めなければならない。それが最低限、彼女達を戦争に巻き込んだ私の役目よ。

 

そんな彼女が話し始めた内容は、ある戦いの話し。

理解し合った者同士が殺し合い、それを疎ましく思った男が妹を殺しそうになった話し。

かけがえのない人を失った二人の男の、死ぬまで永遠と続いた私怨の物語。

 

 

 


 

 

ジジジという音とともにスパークが飛び、灰色の塗装に焦げが付く。

最低限の修復と、部品の取り付けはMSで充分に可能だが細かな作業は船の外に出なければできない。

 

「1人で来るなんて言わなきゃよかったな、こういう可能性を見るのを忘れていた。便利過ぎるものに頼るのも考えものか…」

 

そろそろあいつがこちらに向かってきている頃だろう、上手く行けば明日には艦を進めることが出来る。

そうすれば向こうの修復が終わる前に戦闘を開始できるな。

 

「まあ、その前にこの壊れた回路を修復しなきゃならないが…ぶっつけ本番で撃つものではないな。

原理は通常のメガ粒子砲と同じとはいえ、ジェネレーター出力の調整にミスがある。

次が最後の一撃だな。」

 

大きいことばかり気にしていると、小さいことには気が付かなくなるものか、そういうものだろうな。

だから万能なものじゃないんだ。

 

 

 

 

 




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