その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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開戦

 

クローン施設を移設した。私の駒を創るのには非常にちょうど良いものだろう。これでメンデルになにかあったとしても、私の護衛だけはなんとかなるだろう。

 

「このデータにある者達は、空間認識能力が高い者たちであろう?それならば良い駒になるな、有事の際は使わせてもらうとするよ。」

 

「もったいないお言葉で、まさかメンデルからこちらに引き抜いて頂けるとは、コレならば好き放題に研究が出来ますな。」

 

自らの欲のためならば何でもする男が、俗物がそういうのは当たり前の事だ。

 

「しかし、近衛ですか。このプラントの中でまさかこの様な事をする人がいるとは…。ヒビキの行っているスーパー・コーディネイター計画のほうが良かったのではないですか?」

 

「コーディネイター等露ほども興味もない、あのように可能性を固定化することに、いったい何の意味があるか?

それに、私はこのプラントの中では厄介者と言われている。ならば、同族の護衛を作りたいのは至極当然であろう?」

 

ナチュラルだ、コーディネイターだと。真の人の革新の前ではそのような事、些事だ。

ニュータイプ部隊、嘗てアクシズで造られていたというクローンによる人造ニュータイプ部隊。

 

促成によってそれらの軍を直ちに編成できるようになれば、私のデータを狙って現れる者達に対するカウンターを速やかに用意出来るだろう。

願わくばこれらが使われることがない方が好ましいが、万が一もあろう。

 

「数ヶ月で、最低でも青年程の年齢への成長を出来るようにしてくれ、それが一番望ましい。」

 

出来なくとも良い、その時はその時だ。

 

「クローンを作るとき、必ず注意することがあります。それは、クローンは実験動物だと思わなければならないということです。

過度なスキンシップは、クローンの自我を誘発させますのでよろしいですね?」

 

愛着など湧こうはずもない、所詮は道具だからな。

 

 

 

 


 


 

「クラウス少尉…、いやニコル・アマルフィ君。君は、向こうに移乗してくれ。」

 

「どうしてですか、僕は貴方の部隊の人間のはずです!僕は足手まといですか?」

 

僕はアムロ准将に呼び出され、この13艦隊からエポナから降りろと言われた。

信用されていないという訳では無い、ただ何故降りなければならないのか、それだけが疑問として残っている。

 

「別に心配しなくてもいい、何より君を信頼していないというわけでもない。

ただ君の力が、アズラエルひいてはシーゲル閣下に必要になるということだ。」

 

「もっと納得の行く説明をしてください、それなら僕以外の人でもいいはずです!」

 

僕はこの13艦隊の中で特に抜きん出た強さを持っているという訳じゃない。寧ろ…下から数えたほうが良いとすら言える実力を持っている、そんな僕が少数精鋭でなおかつ最重要な艦隊に行くことが、何よりわからない。

 

「君は俺の動きをよく解析していただろう?それを彼らに教え欲しいと思ったからだ。」

 

「ですが!あの動きをしたとしても、確実に戦闘に役に立つという保証はありません!

確かにキラ・ヤマト個人にはあのフォーメーションは有効でした。

ですが、あれはひとえに僕たち普通の人間の感覚が前提で会って、ましてや相手は僕たちのようなコーディネイタ-等よりも、はるかに敏感に反応して攻撃してくる貴方の同類のような人たちですよ!」

 

僕は准将の動きから色々な戦術が組み上げられるのではないかと、その動きをくまなく分析して結論を出している。この人には、僕たちのような存在では太刀打ちでないという結論を残して、それを承知の上でどうして僕の不完全な戦術を使おうとするのか?

 

「これは自惚れになるかも知れないし、俺の驕りでもあるかも知れないが、ひとつ言っておく。ニコル、その動きは俺と君たちコーディネイターを比較したものであって、俺や親父の動きを例えばアルスター少尉や、ムウと比較したのか?

試していないだろう?

物差しは基準にはなるだろうが、絶対ではないだろう?それと同じように、比較対象がいて初めて輝くことだってある。」

 

「確かに…比較はしていません。ですが、可能性は捨てきれません!」

 

僕は正直言って怖いのだ、もしもぼくの仮説が間違っていてそれによってアスランやイザーク・ディアッカ…それだけではない。ここ最近交流が多かったパイロットのみんなが、僕のその助言をまともに信じて死ぬかもしれないという恐怖を。

昔のアークエンジェルを追っていた頃には考えられないほどの臆病な考え、かけがえのないものを失いたくないという恐怖。

 

「だが君のそれは、確実に有効だと俺は思うよ?キラ・ヤマト、彼は間違いなく上澄みだ。それも並みのニュータイプ相手なら、彼なら勝てると俺は確信を持って言える。

無責任な話だが、俺がもっと君に色々な相手を想定して欲しいと言わなかったのも悪いと思う。

だから、頼む。君の力が彼らには必要なんだ。もしそれでもというのなら構わない、だが俺は君を信頼して頼んでいるんだ。」

 

髪を掻き揚げる、あぁもうどうしようもなく今の髪の毛が鬱陶しく感じる。そういえば、髪を切ったのはいつ以来だろうか?

そう、僕がこの艦隊の一員になってから一度たりとも髪を切っていない、もうショートヘア位になっているかもしれない。

 

「髪を切ってきます。覚悟を決めるなら、僕はクラウス・ニュンペーじゃダメなんです。ニコル・アマルフィとして、やって見せます。それで、良いですね?」

 

「済まない、戦いが終わったらその後じっくりとピアノを聞かせてくれないか?」

 

まったく、僕はお人好しじゃないいんだけどなぁ。仕方ないよね、僕はどうしようもなくニコル・アマルフィなんだ。

何のためにザフトに入ったんだ?皆を守りたいって思ったからでしょう?

 

「えぇ、その時は飽きるほどお聞かせてあげますよ、勿論みんなも誘ってですけどね?」

 

僕はそう言って部屋を出る。そうして、ロッカーへと足を向けた。

 

 

・・・・・・

 

 

僕の目の前には、生徒…というにはあまりにも僕よりもパイロットとして強い人たちが並んでいる。正直に言って僕は、この中では下から数えたほうが早い人選ではある。

少数精鋭、その言葉が一番しっくりくるそんな人たちばかりだ。このなじみの薄いグループ、僕は艦隊から切り離されたエターナルのブリーフィングルームを、使っていた。

 

「今日よりお世話になります、ニコル・アマルフィです。といっても皆さんとは、もうすでに顔見知りなわけですけど、これから話す内容をしっかりと覚えてほしいと、最初に言っておきます。

特に、僕たちコーディネイターにとっては死活問題ですので。」

 

「ふーん、そう。じゃあ、私とムウさんは関係なさそうね。」

 

「いえ、寧ろフレイさん、貴女方が一番必要なことです。」

 

彼女は、僕の言う事を一瞬で理解したのだろう。正直に妬いてしまう、その理解力の高さ教えもしていないのに、きっと彼女は僕が何を言おうとしたのか解っているのだろう。それ故に、このニュータイプという存在の弱点になるということだ。

 

「僕は、一人のオールドタイプとしてアムロ准将のそばで戦ってきました。

そこで学んだことは、フレイさん貴女と准将の戦い方の違いです。」

 

そこで、僕は彼女と准将の反応速度の違いをデータで抽出し、それを出力した。

 

「データをご覧のとおり、准将よりもフレイさんのほうが反応速度が速いことがわかると思います。

と言っても、ほとんど誤差のようなものですが、それによって准将とフレイさんが同じニュータイプと戦った場合を想定しました。」

 

フレイさんはそのほとんどを反射的に避けているのに対して、准将の動きは相手に僅かに空白の時間を与えている。

このほんの一瞬の動きの違いによって准将と、准将のお父さんの動きはフレイさんの想定する動きをはるかに上回る。

 

「フレイさんは、反射的に動いて攻撃を回避したり、攻撃したりしていますよね?」

 

「うーん、まあそうね。…なるほどねぇ、確かに私のほうが効率悪いだろうし、たぶん二人と戦えば其処があだになって落とされるでしょうね。

でも、今すぐに改善なんてできないわよ?」

 

「俺はまあ真似できないとは言わないが…、そこまでの紙一重の戦闘をするつもりはないぜ?なにより俺はそこまでじゃないからな。ま、確かに俺たち以外には、必要だろうけどが。」

 

僕らを待ち受けている相手、シャアの私兵。それがどのような相手か、それ自体は僕には解らないしきっと僕は死ぬまで、ニュータイプという存在に振り回されるだろう。

それでも、今ここでこの対策法が一番の対策であるというのなら、僕が見てきたものは無駄にはならない。

 

「キラさん、いえキラ、フレイさんと模擬戦をして気が付いたことはないですか?それが知れるのなら、僕の結論の確証が取れます。些細なことでいいんです。」

 

少し考えたそぶりをした後、キラは目を一瞬大きくした後口を開いた。

 

「フレイは模擬戦と、実戦で反応速度が少し違うんです。もしかして…それ?」

 

「はい、今現状のフレイさんの動きは、准将やアムロ大尉が想定している敵の動きそのものです。

アムロ大尉は言いました、〖感情のない機械のようだ〗と。

それはつまり、信号をダイレクト受け取り即座に反応する超然とした反応ですが、攻略法はあるんです。

フレイさんと同じ、実戦経験の少なさからくる感覚に頼り切るという。

フレイさんは、殺気を感じて動いているんじゃないんですか?」

 

「そうよ、人って何かしら動作を行うとき少し考えたりするでしょう?引き金を引く時にも〖此奴を殺そう〗っていう意思?があるのよ。私は、それをダイレクトに感じ取って動いてる。

でも、模擬戦ってそういうの無いでしょ?だから、実戦なら私キラよりも速く動いてると思うわ。

確かにそれが弱点ね。」

 

僕が言おうとしている戦いかたは、正直言って戦場ではどうしようもなくダメなものだと思う。でもこれ以上のものはないんだ。

機械のように動くからこそできる、通常の敵にはまずやらない方法。

 

「全員、特にここにいるコーディネイターの人は良く聞いてください。もしクローン兵と思われる相手が来た場合は、自らの反射神経だけを頼りにするだけでなく、まずはがむしゃらに避けてください。そして、攻撃するときは不殺を心がけてください。それが、今できる最善策です。」

 

もし殺気に反応しているのなら、殺気を出さない。殺そうと思って攻撃してはならない、それが僕の出した答えだ。

 

 

 


 

 

せわしなく動く人の足音、(わたくし)は自分の無力感を痛感しながらその様子を見守るしかできない。

 

『オーライオーライ、ストップ。格納できました!』

 

トリコロールというあまりにも目立つ色合いの機体が入ってくる格納庫の映像を見ながら、私は自分にも何かできることはないかと思案している。

格納庫では、戦いが始まるという空気に充てられ皆さんの貌が険しくなっている。

 

「聞いたか?あの機体無人でここまで来たんだってよ。どうやったんだろうな、あれには俺たちプラントの識別コードがないから、無線誘導なんて出来ないはずなんだぜ?それに、人が乗ってるみたいに動いて判断してたっていうぜ⁉」

 

入ってきた機体はアムロ大尉の機体のようで、それが無人だったことに湧きだっている。一人で二つのMSを持っていることに事に驚きもあるのですが、やはり同じ人とは思えないような人物です。

 

私にできる事…、私はお父様とともにこのクライン派を纏める旗印としてそこに居るだけでよいとされています。ですが、それだけに私は単なる旗印として何もできないのです。

旗は、一人だけでよいにも拘らず。私は予備として、ここに来たわけではないというのに…。

 

「あっ、すいません。ぶつかってしまって…。」

 

私はお荷物ではないでしょうか、このように廊下を移動するだけで何もできることがない私など。

 

「いえ、こちらこそ…、ラクスさんこんなところでどうしたんですか?」

 

私がぶつかったのは、ニコル・アマルフィ様…。どうしてこちらにいらっしゃるのでしょうか?

 

「あ、驚きますよね。僕がこっちにいるなんて、パイロットと艦橋乗員それとシーゲルさんくらいですからね。」

 

「いえそれは…、そうですね。確かに驚きました。」

 

私は、そういう大事なことまで話してもらえない。誰がどこに何をどのように配置しているのか、本当ならそういうものも私は把握しなければならないのに、私には誰も。誰も教えてくれない。

 

「なんかあまり驚いたような感じではないですね…、どうです?少しお話でもしませんか?作戦前でちょっと気を紛らわせたいなぁと思っていたところなので。」

 

「私でよろしければ。ですが、良いんでしょうか私は戦闘とは無関係ですが。」

 

私がそう話すと、クスクスと笑う。何がそんなにおかしいのでしょうか。

 

「いえ、ラクスさんは本当に真面目だなぁと思いまして。移動しながらでも構いませんか?ちょっと、音楽の話を。戦争でコンサートなんかできませんし、僕自身だいぶ離れてしまったのでどうなっているのかとか

、そういう話も誰もしませんし。」

 

「それは…そうですね。私も最近歌を歌っていません、このような状況で歌ってよいものか正直判りませんでしたので。」

 

そういうと、今度は嬉々としてその話を始めた。これは私を気使っているのでしょうね、こんなことに気が付いてしまう自分に腹が立つ。できる事ならもっと能天気な性格に生まれてきたかった。こんなにも、心が休まらないのですから、正直その気使いが辛いです。

移動しながら話を続けていく、私はそれに受け答える。

 

「…もしかして、迷惑でしたか?それでしたら謝ります。ですが、そんなにどうして悩んでるんですか?誰かに相談などはしなかったんですか?」

 

「私が悩んでる?いいえ、そのようなことは…どうしてそのようなことを?」

 

「いえ、前に一緒にコンサートを開いたときは、そんな顔をしていないと思ったので。」

 

私の悩みは色々とある、そんなもの普通に過ごしているとき誰かに相談など出来ません。周囲がそれを心配すれば士気にかかわりますから。なんて言えるわけない

 

「…、じゃあここからは僕の独り言ですけど。実は、先ほど戦闘の進退を決めることを、パイロットの人たちに話しまして、色々と言われました。

正直荒唐無稽な話をした自覚はあります。特にイザークには、色々とそれはもう言われました。

それでも、僕は曲げなかったんです。でも、正直怖いですよ?もしかすると、それが原因で、みんな死んでしまうかもしれないので。」

 

「それは…いったいどのような?」

 

「これは独り言です。聞きたいですか?」

 

私は〖はい〗と答えた。独り言、便利な言葉。でも、心の内を誰か関係のない人に吐露するには、一番いい方法。つまりは、私に楽することを覚えなさいと、もっと簡単にいいなさいと、彼はそう言っているように聞こえた。

彼の言葉は、アムロ様のように伝道師のようでなく、寧ろ今を生きている一人の悩める方の吐露に聞こえた。そして同時に、このように話せば私も悩みを共有できると、そう教えてくださっているのだとも。

 

「あの…ニコル様?私の独り言を聞いていただいてもよろしいですか?」

 

(わたし)は、初めて自分の悩みを同世代の方に吐露した。

 

 


 

無機質な迄に誰もいない廊下…寂れた要塞の中をただ1人歩む。

私の弟たちは、実に無機質な人達ばかりだ。なにせ、ここ数ヶ月の間に生まれたばかりで、人語も殆ど解さず。何よりも、反応が軽薄な者たちだ。

 

「キャスバル様、何故私とこの木偶だけヤキンへと向かわせるのですか?」

 

木偶、嘗てラウ・ラ・フラガと言われた男は私の支配下となり、私の手足となって動く、都合のよい人形となっている。

 

「彼は私の命令しか聞かない。暗示があまり効果がないというものであるが、その頑強な精神をコントロールするには、お前でなければならないのだ。アルテイシアよ。」

 

「確かに、私は貴方の血を受けたものです。ですが、弟達は自我もないのです。お近くに来た者達を相手にする場合、柔軟な動きができない可能性も…。」

 

それを聞いてキャスバル様は立ち止まる、思い留まってくれたのだろうか?私の言葉が通じたことに嬉しさが出てくる。それによって少し、口角が上がってしまうことを感じた。

 

「くどいぞ?あやつらの相手は彼等で充分だ、君はソイツを連れてコントロールセンターを守れば良い。内部の者達はもはや身動きも取れないのだから、外面を整えるのは当たり前のことであろう?

ソイツは、ネビュラ勲章を持っている男だ。ソイツの言う事を聞かない兵士は基本いないだろうからな。」

 

それでも、私はキャスバル様から離れたくはない。この方は、私を育ててくれたのだ。

例え、私がこの方のクローンであり出来損ないの〘女〙であったとしても、そんな私をこの(16)まで育てて頂いたのだ。

恩はあれど、憎むなどそんな事あろうはずがない。

 

「とにかくだ、お前は私のいない間ヤキンを守れば良い。

もしも強敵がいれば、ソイツと協力して事に当たれ良いな?」

 

「はい…、わかりました。」

 

私は唇を噛んでそれを受け入れた。

 

そして、ヤキンに火が灯る。

 




好奇心が時には、命を救う事だってあるかもしれない。

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