その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦Ⅱ

私のクローンとして作られた彼女には、私が幼少期のころから受けてきた礼儀作法や軍で培った格闘などの様々なものを教え込んだ。

アムロほどと言えずとも、彼女のそれはやはり私という人間のそれのおかげか急激な伸びを見せた。心残りなものがあるとするならば、私と同じということはNTとしての素養はその程度であるという事だろうか。

所詮は成りそこないのクローン、そこまでの期待などしようものではない。

 

「外を見てみたいと?」

 

「はい、無理であることは重々承知の上です。少しでもいいので、外を見てみたいのです。見分を広げるのは悪いことではないのですよね?」

 

いったい誰に似たのか、その行動力は現状からの逃げに等しい行為でもあるのだろうな。

 

「良いだろう、ただしわかっているだろうな?余計な事などしなくても良いということを」

 

その言葉を聞くと、彼女は私の前から飛び出しプラントを見回ったという。そこで様々な人物と話し同年代の友人といえる存在を見つけたという。その彼女の名を、私は聞かなかったがきっと私にとってのガルマのようなものだろうと、私は納得した。

私の交友関係の狭き事を実感することの遅さを、我ながらこの時自覚していなかったことが事態の悪化を招いたのだろう。

 

 

≪hr≫

 

 

随分と敵の奥深くまで侵入した、既に戦闘前に所持していた実弾火器のそのほとんどを使い切り、武装で残っているものとすれば、盾に付属の対装甲ライフルが数発にビームライフルにサーベルそれと背面ビットくらいなものだ。万全な状態にほど近いとはいえ、人間の疲労は蓄積されていくものだから俺の肉体のほうが、先に限界が来そうなものだ。

 

だが、どうやら俺の後ろからついてくる者たちがいるらしい。

 

『アムロ・レイ…。貴様がいなければ!』

 

一人はラウだ、だがもう一人のこれは…シャア?だが奴は親父のほうにいるはずだ、だがこの感覚は…そうか。貴様も俺とラウの同類か!フリーダムにあったプロヴィデンスという機体のデータに合致するものにいるのがラウだとすれば、データに無い機体、しかし識別にはザクと出ているそれも俺を追いかけている。

 

「邪魔だ!」

 

目の前に出てきた敵機を足場に、メインカメラを足蹴にして破壊するとともに踏み台にして、回避行動のために跳躍すると踏み台にした機体がビームを受けて爆散する。

ラウが搭乗しているであろう機体からオーラと共に、何かをコントロールしようとする思念が流れる、そして機体の背面のヒトデが花開き、ビットとして俺を折り囲むように攻撃してくる。

 

俺はそれに最後の対装甲弾を打ち尽くし、一機背部ビットを展開し迎撃していく。互いのコントロールは概ね互角、いや本来なら俺に一日の長があるから有利である。

しかし、問題は!

 

『貴様を殺せば、キャスバル様は戦いを辞められる!あの優しいお方が狂った元凶よ、ここで沈め!』

 

もう一機俺に追いすがる者がいることだ。

しかし、この感覚はスターシャに似ている、だが彼女のそれと少しだけ違う、だがどういうことだ?なぜ、こうも似ている?

思考の隙をついてくる攻撃を紙一重で逸らしつつ、来た道を辿っていく。行きと帰りの戦況はその形は変わっていくものだ。

 

いや、親父が世界を跨いだのならば〖同位体〗もまた可能性があるわけか、だがまさかスターシャがそういうものだとは微塵も考えつかなかった。

 

「貴様がどういう存在かなどもはやどうでもいいが、俺の前に出てくると言うのなら!」

 

機体を翻し、ライフルで牽制するとその隙をついて今度はラウが機体を駆り前へと躍り出る。完全に2対1の状況だが、このまま何とかいけるか?

最小限の動きでビームを避けていく、その隙をついて更にサーベルの凶刃が俺を襲う。まるで暴風のような剣捌き、かなり鍛え上げられているだがいちいち動きに迷いがある。

まるで不完全で、己のそれに振り回されているような動きこれではまるで俺の言葉を聞いて、それに動揺しているようだ。

 

つまりは彼女は成れていない、これは唯一の好機か?いや、それならば寧ろこの状況を利用すべきだな。

俺たちの艦隊は現在、ハルバートン艦隊の横槍が成功したことによりザフト守備隊を半包囲し始めている。上手い戦況判断だ、これが智将の本領か。

 

「ラウ、目を覚ませないか!俺の声が聞こえるのなら、抗っているのだろう⁉」

 

確実に彼の動きは鈍い、でなければこの状態で別のことに思考を割く余裕など、毛頭ないだろうからな。

この状況、うまく利用できないか?

いや、それならばこの手があるか?

 

「届いてくれよ!スターシャ、聞こえるか!今、俺はラウと交戦中だ!済まないが、一人では厳しいものがある、もう一人を君に任せたい!」

 

これで聞こえていればいいが、ニュータイプとは言うがすべての人間が須らく可能性があるというのなら、たとえ遺伝子に多少の工夫を施したところで、可能性が目減りするだけだ。

SEEDというものがなんであるかはわからないが、彼女の戦闘力は、急激に上がることがあったその状態であれば。このパイロットに追いすがれるか?

場所も明確に伝えた、彼女の戦闘センスにかけるのが最適解か。

 

・・・・・・

 

暫くの攻防、ラウのビットをすべて叩き落したもののこちらも数機失っている。それでも、俺にはまだ余裕が残っていた。

段々と実戦慣れしてきているザクのパイロットのおかげで、正直言って戦況は膠着状態といった所だ。全体を見れば連合が押し、いくつかの地点で取りついている。

 

一瞬だけその事を思考すると、その隙をついてくる動きを利用して迎撃する。そして、そんな流れに一筋の光明が現れた。

そう、ビームがこのザクに向け伸び虚を突かれたザクはこれを盾でふさぐしかない、隙を埋めるようにすかさず現れるラウには手を焼かされる。

 

「随分と遅いじゃないか、重役出勤とは君も偉くなったな。」

 

「随分と苦戦していますね、疲れがたまってるんじゃないですか?」

 

俺はその声を待ちわびていた。それだけの会話を交わし、俺たちは二手に分かれた俺はラウの相手を、そして彼女には。

 

「敵はアルテイシアというようだ、君にとっては並行宇宙の兄妹のクローンになる。」

 

「またぞろ空想科学みたいなことですね!なら、私が妹ならこんなことやる兄なんてひっぱたいて見せますよ!」

 

そういうと、彼女の動きはがらりと変わる。まるで、俺と共に戦うために身体能力を上げているように。

 

 

≪hr≫

 

凄い速度だ、私のこのリベレーターの反応速度はMCによって機体として最大限に上げているのに、この相手の速度はそれに追随するどころか、勝っている。

 

この冴えた空間にいる間に、これ程の動きをする人はそれはもう殆どいなかった。

それこそ、ジンで戦っていた時以来の苦戦かもしれない。

 

数の暴力とは違う、純粋な個の力。彼女の動きは非常に直線的で、それでいて判り易い。

アムロさんの動きよりも若干初動が遅くて、思考を挟む余裕がないんだと思うけど、経験もない中でこれ程戦えるなんて正直、嫉妬しちゃうかな!

 

斬り結ぶサーベル、私のサーベルがメガ粒子だからこそ起きるこの現象。もしこれがそれでなければ、何度かやられていた可能性もあるけれど、この絶対のアドバンテージは私をこの娘との戦闘で優位に立たせてくれる。

オープン回線を入れる、ちょっと興味が湧いてきちゃったかな!

 

「はじめまして!私、アナスタシアって言うの。よろしくね!」

 

「戦場でふざけたことを、私を舐めているな!」

 

舐めてなど毛頭ない、寧ろ恐ろしく思っているからこそこうやって声を掛けているのだ。

どれだけ繕おうと、彼女はまだ思春期真っ盛りの不安定な精神状態、それがどれだけコンディションに響くのかフレイちゃんで実践したのだ。

 

「多感な時期なのに友達とかいないのかな!!貴方くらいの年齢なら1人や2人いてもおかしくないと思うんだけど?!」

 

戦争になんか一切関係のない話、それがどれだけ彼女に効果があるかなんて判り用ない、それでも普通の感性を持った人間でこの年齢の子なら普通を尊ぶでしょう。

 

そう言うと多少たじろぐ、ほうかなり効き目がある。どちらかと言えば繊細な子だ、フレイちゃんみたいに図太くない。それどころか寧ろ…自分を騙して、なんとか自分でしようとするタイプだな。

 

「そんなもの必要ない!そんなものよりも、私には使命があるんだ!!」

 

いないかどうか聞いたのに、必要ないか。うん、なるほどこれは誰か友達になりたい人がいたんだな。

 

「私別にニュータイプじゃないからさ、深くまでは判らないんだけど、そうやって嘘付く辞めた方が良いんじゃないかな?」

 

「そんな理屈も無いことを!」

 

そう言いながらサーベルを持って斬り結んでいた中に、突貫し私の機体に急激に接近する。でも、それってさ振り回されるよね?貴方の機体に、その方向に対応するバーニアないよね?

 

突出してきた腕目掛けてサーベルを縦1の字に思い切り振り下ろす。そして、彼女の機体の腕が宙に舞う。

感情的になりやすいのが、この年齢の子特有の弱点だ。

正直、撃墜するためだけにこうやってきたけれど、考えが変わっちゃったよ。

 

「くっ!貴様!私で遊んでいるのか!」

 

「いくら原子炉って言ったって私の機体も、融合炉を搭載しているの、PSじゃないけど単純な機動性はこっちのほうが上よ?」

 

手負いの機体など、防御一辺倒しか出来ないとてもいい動きをするけれど残念、このサーベルにビームコーティングは殆ど意味をなさないって、アムロさんとお父さんで結論出ちゃってるから。ごめんなさいね。

 

「投降しなさい、今ならまだ間に合うから。それに…向こうも蹴りがついたみたいよ?」

 

手首が亡くなったプロヴィデンスと、ビット全てを無くしライフルを失いサーベルを所持して、盾を上に掲げるリベリオンの姿が私の視線の先にある。

そして、リベリオンは発光信号を打ち上げた。そう、ここは要塞の陰、即ち道を切り開いたのだ。

 

 

 

 


 

 

 

少々というよりもかなりてこずりますね、いやそれどころか僕の想定以上の機動力ですよ。正直に言って見積もりが甘かったかもしれませんね。T9ザクが、僕らの前に躍り出てくる。たったの2分、しかし永遠とも思えるほどにゆっくりと流れる時間が、僕らに襲い掛かってくる。

 

「イザーク、敵の機動がだんだんと洗練されてきています。このままだと…⁉」

 

「わかっている!わかっているが…、速い!」

 

僕たちの攻撃をスルスルとかわしていく姿に、幻惑されるように僕のブリッツはその動きに引き付けられてしまう。

意志の感じない無機質な動き、それでもわかってしまう彼らと僕たちコーディネイターの共通した動き、

そしてその弱点を。

今の彼らは、実際のところどのくらい強いのかわかりませんが、それにしたってたった一機に対して僕は、イザークと一緒に事に当たらなければならないことに苛立ちを覚える。

 

「ディアッカとトールさんは!」

 

「向こうもだいぶてこずっているようだ!正直に言って、今の俺たちはあのアルスターにすら勝てないだろう、だがなこんなぽっと出の相手に負けるわけにはいかないんだよ!」

 

単純に言って、彼らの動き僕たちの上位互換だ。それも、急激に情報を吸収し膨らんでいくビックデータのように、徐々に数のアドバンテージが削られていく。

それだけではない、僕の機体は所謂13部隊仕様。核融合で、その性能を敵と同じように常時出力できるのに対して、イザーク・ディアッカ等の他のメンバーの機体は総じてバッテリー駆動ということがここにきて響いている。

 

腐っても第二世代MS、ビーム兵器を当たり前のように使えるからこそPSに手傷を負わせられているけれど、当たり前のことだが、特撮番組の光の巨人のようにエネルギーを使いすぎれば先に此方が不利になるのは明白だ。

だからこそ僕たちは作戦を立てたというのに

 

「僕自身がブリッツの本領を発揮できていない、隠密機が前線で戦った所でダメとは‼」

 

考えろ!ニコル・アマルフィ戦い方を決めたのは貴様だろうに‼

その間にもその高機動でこちらを翻弄してくる、スイングレールガンをこちらに撃ち放つ瞬間。瞬きをするよりも短い一瞬、それは偶然だったのかもしれない。しかし、これだけは言えるフリーダムと同じと言う事に。

 

「一か八かですかっ‼」

 

僕は、その一瞬を逃さないように猛然とそれに突撃する。機動もライフルを撃つ時も、格闘戦の間合いの時も、そのどこにもない洗練されたOSの動きの中にその動作の中だけに存在する、〖誤差範囲のタイムラグ〗〖整合性を無理やりつけた〗その〖連携のない動作〗。

〖そこだけがフリーダムと同じ〗僕らの見知った、OSの硬直があった!

 

メインカメラを狙った動き、僕らの弱点である目視するしかない動物である、僕らの動きを封じる一手ですが!

 

「当たったとして‼」

 

我武者羅の突撃、僕は明滅する画面を気にすることなく突撃しサーベルを横に薙いだ。

 

 

≪hr≫

 

後60秒

 

大尉が宣言した時刻まで残り僅か、僕たちのミーティアは何処からか現れた真っ赤なMSに阻まれた。

急激な機動は、コンピュータの予測する動きとはまるで違う機械的な回避挙動とは一線を画す。

 

道を切り開いていく筈の僕達はその時点で、2対1のMS戦に突入した。

ミーティアの先を行く攻撃で、ユニットを完全に破壊され行足を無くした僕達の前にいるのは、ジャスティスなんかよりも遥かに赤い機体は、まるで人間のように動いて、僕たちを翻弄していく。

 

機体の色、そしてこの動きからこの相手が誰かなんて考えるまでも無い相手だ。

他の機体と似ていても違う、フリーダムのデータに無いそれでいてその他の機体と同じ様な頭部をした機体が僕達の前に君臨している。

 

 

【挿絵表示】

 

 

動作をするたびに、その胸部の辺りから僅かに漏れ出す蒼い光、それが確認されるたびにその機体の機動性は上がっていく。

まるで、僕達を相手にトレーニングしているように。

いったいどうすればそんな機動ができるのか、最小限の動きと反撃。まるで、隕石のように怒涛の接近を許すとそれをアスランが防御する。

 

僕の反射神経はきっと限界まで引き上げられている、護るためにこの力を持っているのにも関わらず、この機体の速度にフリーダムが追随できていないんだ。

それに……さっきから妙なのだ、蒼い光が灯れば灯るほど眼の前の機体の挙動が冴えていく。まるで、リハビリでもしているように。

 

「反応は悪くないな、すまないが道を開けてくれると嬉しいのだが?」

 

「ここを通すわけには行かないんだ!」

 

アスランはこの戦いが始まる前から何かおかしかった、まるで怒りに燃えているように。

その言葉が、眼の前のシャアという人物が何をしたのか物語っていた。

 

「ほう、そうか。だが、私には私なりにやることがあるのだよ、無益な殺生は正直に言って好かんが、」

 

「どうして!どうしてこんな事を出来るんですか!僕達はただ戦争を終わらせたいだけなんです、だからそこを!貴方が、攻撃を止めればこんな戦いする必要すら!」

 

アムロ大尉、あの人はこのシャアという人を理想主義者とラクスに言ったらしい。

それがどうして、こんな事をするのか。 

 

「私は、この身をプラント在住のコーディネイター達の器と規定して、行動しているつもりだ。

彼等は求めたのだ、この戦争での勝利を。見ろ!この戦争に勝利するためならば、汎ゆるものを兵器に転用するというその粋を、それを何故敵対者である君達が否定することができようか?」

 

「でもこんな事しなくたって、人は判り会えるはずです!」

 

「甘いなキラ・ヤマト君。隣の人間の持っているものを羨ましく思い、時にはそれを奪うのが人間だ。

そんな人間が、自ら下と思う者たちを理解できると思うかね?

まったく、邪魔をするな…。殺れ!!」

 

アラートが鳴り響く、僕とアスランに対して2機ずつが追い縋ってくる。

赤い機体がそれを尻目に艦隊に向かっていく、このままじゃ!

 

15秒!

 

この敵1人で最低でも三人組のうちの2人を相手するような敵だ。それも彼等並に連携が上手いときたら、正直に言って注意をそらそうなんて思うことすら。でも

アムロ大尉は狙撃に専念するために出てこれないって言うのに!

 

僕は自分の機体に無理を言わせる。つまりは、攻撃に対して敢えて避けずにそれを当たる覚悟で、シャアに対して命を取るために撃った。

 

無情にも、それをまるで後ろを見えているかのように避けてしまう。僕はその間にも、レールガンの直撃を喰らうPSでなければきっと僕は死んでいただろう、でも僕は失敗したのだ。

 

イリスという艦がビームを発射した瞬間、それに対して攻撃する姿が見える。あぁ……守りきれなかったと。

ビームは出ている、でも照射時間があれじゃあ足りない、熱量が足りない。あれじゃあ、ジェネシスを完全破壊なんて…。

 

 

その時だ、頭の中に声が響いた気がした。

 

『シャア、すまないな。お前の頑張り過ぎのおかげで、出力の調整をせずに済んだよ。

これで心置きなく、救助を始められるよ。』

 

残った極太のビームがジェネシス表面を薙ぐ、一部を破壊して穴が空いた箇所から内部が見えた。

そして、それに呼応するように

 

 

【挿絵表示】

 

 

ガンダムが、ザクと対峙した。

 

 

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