その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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ハンザ同盟の軍服は地球連邦の基本軍曹である、グレーの軍服。
礼装は真っ白な、海上自衛隊のそれと似ている。


始めまして

平時において宇宙空間からコロニーへと至る道で最も危険な行為とはなんだろうか、西暦の時代であれば航空機事故が最も物は離陸と着陸である。

つまり何を言いたいかと言えば…、今我々の中にある中で最も難関と言える、最悪の場合マニュアルでの入港作業が待っていると。

 

「本艦はこれよりアーモリー・ワンへの入港作業を開始する。

我々の在居である円筒形コロニーと勝手が違い、この砂時計のちょうど頂点に行くことになる、現在は自動誘導されるがNJが散布された場合、無線誘導が出来なくなるのでそこに注意しろ!」

 

実にゆっくりと進んでいく本艦を、周囲のザフト艦がどう見ているか解らないが、どう考えても嘲笑されているだろう。

新兵の操るものというものは総じて遅く、それは決して笑えるものではないが、端から見ればどうでも良い事柄であるからな。

 

「砲雷長、〘メガ粒子砲〙のセッティングを〘ゴットフリート〙に切り替えておけ。」

 

「え?しかし、メガ粒子砲の方が破壊力が…、あ!

はい、わかりました!」

 

どうやら説明しなくても良いらしいな、私の意図を組んでくれた事に嬉しく思う。しかし、安定感が無い事には不満だな、やはりこの形のコロニーは、発展の余地が無いように思う。

あまりにもデッドスペースがありすぎるし、側面からの攻撃に脆弱過ぎる、平時には良いが有事には駄目だな。

 

「MS隊……、オルガ・サブナック大尉に連絡確認しておけ、格納庫のMSにはロックを掛けておけとな、戦争する為に来たわけじゃないんだ、武装解除して行く必要がある。」

 

ガリガリと、固形状の錠剤を噛み砕いて飲み込む彼の姿が思い起こされる。当時とは考えられない程に大人しくなった彼は、今ではこの艦にいなくてはならない存在だ。

他の二人とは対象的に、薬物による影響が少なかったのもその要因だろう。薬物による副作用も、彼だけは(・・・・)軽微だった。最後の1人として、私とともにいる。

 

私達は友好の使者という形でもある。新兵を、それも艦艇の乗員という一級の教育を受けた者達は、19世紀以来その国の顔としての役割を担ってきた。

そしてそれは、今このときでもそうだ。

例え、このプラントという新たなる国家という格式張った物を知らない人々に対して、非礼となる行為をしてはならない。

それが、船乗りという者の礼儀だからだ。

 

「ラウ・ラ少佐の方は準備はどうか。」

 

「はい、既に軍服から平服へと着替えております。外交官共々非公式となりますが、国賓待遇で迎え入れられるとのことです。」

 

我々のような、理事国の未承認国と外交を行うという行為は実際褒められたことでは無い。

そもそも、我々と彼等は立場としては似たようなもので、もし手を組んだらどうなるかと、連合に勘ぐられるだけでも本来やってはならないのだ。

 

「よし、接舷後指定された人員は半舷休息とする、4日後更に交代し人員入れ替えとする。

10日間、このアーモリー・ワンのザフト部隊との交流を存分に深めてもらいたい。残りの2日間は式典前日の為、我々は式典を艦として参加する為その準備日とする。良いな?」

 

俄にざわめく艦橋と、浮かれ具合に湧くブリッジ。

こんな腑抜けた者達……いやよそう。平時はこのくらいがちょうど良いのだ、あまり硬くなると連合にいた上層のようになってしまうからな。

 

「静かに!そうやって騒ぐのも良いが、今は入港作業に集中しろ、こんなところで座礁したくは無いだろう?」

 

下手な脅し文句等よりも遥かにその言葉は効果的だ、軍事拠点コロニーなのだからあまり深くは入れないが、表層だけでも触れる事が出来れば相手を良く知ることが出来るだろう。

交流を深めれば、互いに殺し合いなどしたくは無くなる筈だ、引き籠もるからこそ相手が判らなくなり、より争いやすくなる。

 

「逆噴射5秒前…2,1,スラスター噴射……艦停止しました。繋留作業開始します。」

 

「良くやったゆっくりで良いぞ、確実な方がより安全にコツを掴めるからな。」

 

さて、私はこのあと報告書か。アーモリー・ワン内部はどうなっているか、実に興味が湧くものだな。

まあ、私は仕事で来ているわけだからな、こちらもそろそろ着替えるとするか。

 

「副長、2日間頼む。」

 

「了解しました、存分に楽しんで来てください。くれぐれもお土産げ(・・・・)だけは気をつけてくださいね。」

 

お土産げなど、そんな物持って来るわけにはいかないからな。

 

 

………

 

艦長であるからこそ、武官としての正装を気を付けなければならない。その国の顔となるのだから、きちんとした化粧もほどこさなければならない。

アナスタシア姉様から、教わった軽めでなおかつ雑にならない化粧というものを施し、あまり着ることのない真っ白な礼服に袖を通す。

儀礼用のサーベルを腰にかけ、いざ施設と共に動く。

 

「遅れて申し訳ない、少し手間取りまして。」

 

「大丈夫ですよ、我々もそれ程急いでいる訳ではない。それこそあまり急ぐと、いらぬ勘ぐりをされてしまいますからな、ここは穏当に行きましょう中佐。」

 

元市長、現ハンザ同盟外務大臣であるこの男は、それなりに太っているがふてぶてしくなく、寧ろその手の人間としては非常に落ち着いている。寧ろ、慣れている事に関して言えば流石に年の功というものだろう。

 

私はといえば、正直な話こういう場にはあまり慣れておらず寧ろ、恐怖で膝がガクガクとしている。

戦場とはまた違った形の慣れない緊張感に、心臓がバクバクと脈打つ。

 

「そんなに硬くならなくても良い、ギルは礼節だけは重んじている。」

 

ラウ・ラ少佐にそう言われるとは、上官として少々…。いや、かなり面目ない思いで押しつぶされそうだ。

 

「それに、中佐。貴方は別に話をする立場ではなく、あくまでも武官。MS等の返答は私が取り仕切りますし、新造艦の事を聞けばよいのです。

それに、殺られるのなら既に殺られていますから。」

 

そう言う彼の視線の先には何も無い、ただ違和感のような物を感じる事はあるが、あくまでも無視できる程度で、そんなはっきりとしたものでもない。

 

「人は大なり小なり力を持つ、もう少し研ぎ澄ませれば貴女の助けになると思うのだがな。」

 

私にこの男や准将のような力等無い、空間認識能力という名称から変更された、ニュータイプという言葉。

物理的に説明不可能な行為を行うパイロット達は確かに存在し、適正の少ない者たちはパイロットではなく、CICにいたりする。

 

確かに彼等の動きは目を見張る物があり、私が指示をするよりも早く、何かに気がつくことがあるが殆どの場合はその力に振り回されている。

実際の戦闘になればそれがどのように作用するか等判りようもないが、それでもそんな者達と私は違うと…そう思う。

 

「さて、そろそろ到着だな。気をしっかりと持て、私はこういう儀礼は慣れている少しは信用してくれ。」

 

嘗ての敵であった男がそう言うと、乗車していた乗り物が止まり建物へと誘導されていく。

そしてとある一室に案内され、そこには会談を行う長机が設置されていた。

 

「お待ちしておりました。」

 

部屋には既にこのコロニー…、いやプラントの主である最高評議会議長、ギルバート・デュランダルがさも今来たばかりという体で待っていた。

 

 

 


 

俺がこのプラントに移住してもう1年以上が経過した。大変な思いをしてまでザフトに入隊して、必死の訓練で手に入れた赤服。もう誰も失いたくない、戦争なんて大嫌いだと思いながら一生懸命にしていた日々を。

 

そんな日々を終えて、正式にインパルスのパイロットに選ばれた時、やっと力を手に入れられたとある種の満足感と、虚脱感に見舞われたこともあった。

なんの為に強くあろうとするのか、ブレる意思と忘れてはならないという強迫観念の中、乗艦となるミネルバの進水式が迫っていた。

 

その日もテストを行い、格納庫へと機体を収容した時のこと。ある集団が目に入った。

ザフトの軍服とも違う、オーブのそれとも違いかなり地味な色合いでグレーが中心な、それこそ連合のそれに似ている。

でも、連合の様な脇腹の辺の特異なマークも無いから…スタンダードだ。

 

「シン、どうしたのよこんなところで止まって。」

 

「ルナ、いやアレ。」

 

ルナマリア・ホーク、俺の同期で俺と同じ赤服。1つ年上だからと、世話を焼かれたこともある。

性格は正直に言って嫌いじゃない。

 

「アレは昼頃入港したというハンザ同盟のドミニオンの訓練生だそうだ。なんでも、友好の印に彼等にはザフトの機動兵器の外観見学をさせているそうだ。」

 

「レイ、物知りね。それにしても、皆私達と同じくらいかしら。」

 

レイ・ザ・バレル、俺の親友とでも言うべき人だ。いつも気がついたらそこにいて、俺が何かしらに苦労していると手助けしてくれる良い奴、俺は彼の性格が好きだ。

 

「一番先頭にいる金髪の男が一番階級が上なのだろうな、後ろを歩いている連中は皆パイロットなのだろう。」

 

確かに何か偉そうな感じがするし、人数も中隊くらいしかいないから皆パイロットなんだろうな。

でも、俺には関係ないな。今日の報告書も出さなくちゃならないし、早めに行かないと。

 

「お〜い、そこの君たち。少し良いかな、彼等の案内を少しお願いしたいんだが。」

 

「げぇ!マジかよ~、ルナッ!後頼んだ!」

 

「ハア?君たちって言ってんだから、アンタも一緒に行くの。それに報告書なんてさっき提出したのが本稿何だから、今更逃げようたってそうは行かないわよ?」

 

面倒くさいからやりたくなんて無いのに、どうして俺達に押し付けてくるのか…、あれ?あの人って副長のアーサーさん?

 

「いや〜、助かりましたよぉ。こんなところで会えるなんて、年齢がちょっと合わないので気まずくて気まずくて…じゃなかった。

ミネルバの方に行かなければならないので、ちょっとお願いしますよぉ。」

 

NOとは言えない、アーサーさんは所謂お惚けキャラだけれど、アレはアレで結構優秀な人だし、成績とかで人を見ない人だからちょっと尊敬している。

 

「しょうがないですね、わかりました。」

 

「おお、それじゃあお願いしますよ。ええと、一応紹介しておきますと、こちらオルガ・サブナック大尉。今日寄港したドミニオンのMS隊の隊長をやっている方です。

で、あとの方々は各々紹介していただくとして、こっちはミネルバ隊となる人達です。

自己紹介はお願いしますね、急ぎの用事があるので!」

 

結局急ぎの用事とは何なのか、理解出来ないまま行ってしまった。嵐のように過ぎ去る姿は、本当に急いでいるみたいだった。

 

「ええとそれじゃあ、俺はシン・アスカ。でもってこっちが」

 

「ルナマリア・ホークにレイ・ザ・バレル、後ろのツインテールの子がメイリン・ホークでそっちの黒い肌の奴がヨウラン・ケントだな。

名簿通りの顔揃いだから覚えていた。

俺はオルガ・サブナック、よろしく。」

 

差し出された右手を見て、そして顔を見ると俺達と同じくらいの年齢のくせに、何処か大人びた顔つきにムカついた自分がいた。

 

 

 


 

9月から始まった新兵のMS適正訓練の成績表を見て、僕は絶句した。佐官であるがゆえに、その成績表に目を通し誰がどのような戦闘に必要な人材で、どのような配置が良いのか考えなければならない立場。

それがここに来て、悪い意味で効いてきていた。

 

マユ・アスカ、彼女の肉体は欠損した右腕以外は万全で白兵戦を主体とする歩兵には適さない物の、MSパイロットとしての腕は並のそれを遥かに上回る成績を残していた。

コーディネイターと言っても、彼女はまだ11歳の子供で戦争に出れるような年齢じゃない、それでもこの国の法律で否定されていないから否定しようもなかった。

 

どこの国でも、兵役年齢を外す程にまで犠牲を出した戦争のせいだという事もある。

でも、少年兵というものの恐ろしさがここに来て、現実のものになろうとしている。

 

「もし、神様がいるのならどうして彼女にこんな才能を与えるのか…、理解したくない。」

 

彼女の反射神経は、僕のそれと非常に良く似通っている。流石に僕のような調整を施されていないから、すぐにでも付いてこれると言う訳でもないし、年相応のスタミナだから負けることはないけれど…。

 

僕は目にした文章を書き換えたかった、でもそれをやろうとしても、僕の階級章に付き纏う副官という存在が邪魔をする。

いつも僕のすぐ近くにいて、僕の事を見張っている。

非公式ながらも、僕がカガリの兄妹だという事を知っている人間はオーブにはいるのだ。

そして、ここで僕がボロを出せば必ずカガリの立場が弱くなる。

 

「僕は…どうすれば良いんだろうか…。」

 

護れなかったものを、今度こそ護ろうとすればするほど、泥の中に深く沈んでいく。このままでは駄目だと判っているのに、それを采配する方法が無いという現実に押しつぶされそうだった。

 

………

 

知らない間に帰路に付く、家の窓は明るく輝き誰かがいる事が判った。

 

「ただいま…、」

 

フレイは僕よりも一足先に帰っていたらしい、玄関の靴を見て僕は判断するも、もう一つ女性物のそれがあった。

 

「あら、キラ君。少しお邪魔しているわ。研究してた新しい野菜を、ちょっと試しに料理してもらっていたの。」

 

椅子には少し痩せこけた女性、レノア・ザラ。アスランのお母さんが座っていた。

喋る時に引き攣っている右の顔面を、僅かに動かしながら話し辛そうにする姿は、僕には少し辛い。

 

低酸素症の後遺症の一つで、顔性麻痺というらしいそれを抱えてしまった彼女は、少しずつリハビリをしてもうすぐでプラントに行けそうだという。

 

戦争があったにせよ、僕とアスランが互いに殺し合った事を話し、涙ながらに謝られた時はこの人の優しさに感動を覚えた。

 

「キラ…、おかえり。ちょっと待ってなさい今ご飯持ってくるから。」

 

フレイは最近、軍でいる時間が短くなって寧ろ僕の家にいる時間が長くなった。

部隊編成を変えてもらったってそう言いながら彼女は今、カガリの親衛隊としてその近くにいる。

 

3交代制というある種カガリらしい制度で回しているから、彼女も早くにここにいられるのだ。

それと同時に、僕のような悩みを抱えていない彼女を恨めしく思いながら、彼女にはそんな考えお見通しだった。

 

食事の後、寝室で彼女と話をした。そうしたら彼女は言ったのだ、辛ければ軍を辞めても良い。何かを守るのは別に戦わなくたって出来ることだと。

それでも、知り合いを殺したくないというのなら自分の直接の部下にするのが一番、安心できるでしょ?と。

 

職権の乱用、その言葉が頭をよぎりそしてある結論に達した。

特務隊…アークエンジェル単艦で編成されるカガリの私兵軍団。そこに彼女を入れられれば、僕単独で護るよりも遥かに安全ではないかと。

 

 

 

 

 

 




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