その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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時間の境界線














アグレッサー

ドアが横にゆっくりとスライドし、隔離施設の覗き窓の直ぐ側に老人がやってきた。

老人の視線の先にいるのは、あの意識不明であった身元不明のパイロット、それが起き上がっている姿だ。

 

「起きたと聞いたが、まさかここまで覚醒しているとは……、おい何故中に入らない。」

 

「対話するのは良いのですが、少々危険性が無いとも限りません。なにせ、絶滅戦争のような物をやっていた奴です、どんな人格をしているか……。」

 

それを聞いて老人はガラス越しに、その若者を見る。

眼に包帯を巻き、何も見えていない筈の彼はゆっくりと、老人の方を見る。

 

「彼の眼球は再生出来なかったんじゃないのか、どうしてこっちを認知している?」

 

「判りません、それに失明しているのにこちらを認識できる訳が無い。

向こうからはこっちは、ただの壁のように見える筈です!」

 

『おい、そっちにいるのは解っているんだ。うん、13人と言ったところかな、電気を付けてくれとは言わないが、直接話がしたい。ここは何処なんだ?』

 

ガラス越しに集音マイクが音を拾う、研究者たちは皆好奇心と恐怖で瞳孔が開き、嬉々としている。

 

「凄いな、どうやって人数を把握しているんだ?」

 

『ここは研究施設なのか?辺には何も無いのか?重力を感じるが、コロニーか?いや、この感覚は地球の重力だな。』

 

「状況を把握している、それも目ではなく何か別の感覚でこれは……大発見だ!!」

 

よせ!今ここで彼を殺せば、この先二度と現れないかもしれないのだぞ、ここはやはり被検体として丁重にお迎えせねば。」

 

そんな研究者たちの言葉とは裏腹に、老人は青年を見ながら考える。

その冷静さと、状況判断力に注目しながら。

 

 


 


 

 

基地内部の一室、所謂小会議室というところで椅子と机を並べ、そこに45人の士官が一人一人座り込み、壇上に来る人物を今か今かと待ち構える。

 

そこへ、ブーツの音を鳴り響かせ彼等の横を通り過ぎて、壇上に俺は、現れる。

登壇した俺に対し、敬意を表しながら挨拶をすると、一糸乱れぬ動きで再び座った。

 

「始めまして、そうでないものにはこんにちはと、言っておこう。

 

アムロ・レイ特務大尉だ。

 

私が何故、ここにこうやって立っているのか、察しが良いものならば解ると思うが、先の世界樹での戦闘において、我が軍のMAの損耗率は脅威の30%に達した。

 

その戦闘に参加した中で、最も多く敵の新兵器MSという機動兵器を撃墜した私に、君等への対MS戦闘術を叩き込むように、命令された。

 

これは特務である、よってこの戦闘術を諸君らに教導する間私は中佐待遇として扱ってもらいたい。

さて、ここに集められた人数は45名、何故45名なのか解るものはいるか?」

 

生徒となるパイロット全員の顔を一瞬のうちに覚える事は難しいだろう、だがそれでも覚えなければならない。

こいつ等の何人が生き延びる事が可能か、それは俺の双肩にかかっている。

勢いよく手を上げたのは、アナスタシア少尉だった。

 

「メビウス・ゼロを中心としたスリーマンセルによる索敵、防御、攻撃それを意図したフォーメーション戦術の為、ですよね?」

 

「その通りだ、座って良いよ。

さて、その通りだが。君等にまず第一に言わなければならない事がある。

これは君達がエース級の実力を有すると、俺が判断したからだ。

もしも、エースでなければ俺は、ファイブマンセルにしただろう。」

 

理解出来るやつならすぐに顔を青くする、それが意味する事がどれ程残酷だということだ。

 

「MS一機に対する、MAの戦力比はMA3に対してMSは1だ。しかもこれは、君等のようなエース級の場合だと思っておいてくれ。

故に、俺が君等に教えるのは互角までの戦い方と、生き残り方だ。」

 

ヒソヒソと話し声が聞こえる、不安と悲観の感情が漂っている。

 

「この中で最優秀なものは、教導隊として後続の部隊に技術を教えなければならない。

また、今回君達にはメビウスゼロ1に対してメビウス2の割り振りをしてある。

書類上尤も相性が良いであろう者達だ、時間は一月だ。良いチームになってくれよ?

 

それとだ、書類だけでは解らない諸君らの技量を見たい。総員パイロットスーツを着用の上、各部隊事に15分後格納庫へ集合せよ、以上だ。」

 

有無を言わせない、そんな事言ったところで現実は変わらないのだから。

 

 

……

 

「総員45名、揃いました!」

 

見事なまでにバラバラな年齢、身長、人種。対立することもあるだろうが、これから俺は憎まれてでもこいつ等を追い込まなければならない。現実を叩き付ける為に。

 

「これより戦闘訓練を始める、部隊ごと束になって俺を撃墜してみせろ。

撃墜出来た奴には、食堂で好きな物を奢ってやる。」

 

「それだけでは不十分です、そうですね。負けた者にはペナルティなんてどうでしょう。」

 

「それもそうだな、月面での腕立て伏せはみんな知っているだろう?負けた者は、200回やってもらう。

では、1番目ムウ・ラ・フラガ君が隊長となる、フラガ隊だ。

俺の機体は解りやすい色になっているから、間違えても誤射はするなよ?」

 

「冷たいねぇ…、まあ良いでしょう。こいつを見返してやろうぜ。」

 

俺の機体は真っ白だ、ノーマルタイプで白い部分が黒色になっている以外、すべてが白だ。はっきりと解りやすいだろう。

 

 

 


 

 

 

おいおい、こりゃ想像以上にやばいな!

俺の指揮のもと機体を動かしていた味方はあろう事か、今俺の目の前でデブリとして、動きを固定されている。

 

「まじかよ、勘弁してくれよな!」

 

勘の冴えわたる一瞬で、アイツが次に何処から撃ってくるのか把握し、それを全力で回避する。

身体にはスラスターと遠心力によるGが一様にかかり、俺の意識を刈り取ろうとする。

 

「冗談きついぜ、こりゃ流星なんて生易しいものじゃねぇ。」

 

いつも思っていた、コイツは俺よりも遥かに家の親父…アルに気に入られるだろう、そう言う才能を持っていたことに。

俺は、嫉妬していた。コイツにいつも、良いように弄ばれる自分の力の無さに。

 

それを、人殺しの為にまるで研いだナイフのような鋭い殺気として、俺に突き立てようとしてくる。

思考が追いつかない、レーザーセンサーが照射時間とともに、俺のガンバレル一機に対して、撃墜アラートを発動させる。

戦闘は2分、最初の1分で味方2機が一方的に落とされた。

俺は、それでも粘っているはずだ、それでも

 

「畜生め、させるかよ!っ!?なにっ!」

 

動きが読めたと思った瞬間、まるで別の動きをしやがっただと!

しまっ!

 

「フラガ機撃墜を確認しました、帰投してください。」

 

「ちくしょう、まったく。お前ってやつは、本当に強えよな。」

 

「ムウ・ラ・フラガ少尉、いい動きだった。だが、深読みしすぎて、眼の前の物事を受け止めていないな。

腕立て伏せをしたら、反省文作成の後部隊全員のフォーメーションを組み替えてみろ。次、だれだ?」

 

マイクを通して入って来るこいつの声は余裕綽々と言ったものだ、どうやら俺に対しては本気すら出してないってね。

困ったもんだな、こりゃ一ヶ月でどこまで行けるのやら。

 

俺の次はあの貴族のお嬢ちゃんがいる小隊か、パイロット課程首席卒業者同士の戦闘が見れるってわけだ。

ま、アムロの方はゼロで、嬢ちゃんはノーマルだから、比べるまでもないか。

 

「まったく、親父のお気に入りってのはとんでもないぜ、俺なんか出来損ないって言われるわけだな。」

 

ま、そんな程度で折れてちゃたまったもんじゃ無いけどな。

アイツと初めてあったのは、あの火事のちょうど2ヶ月前だったか?最初は頭でっかちな奴だと、思ってたんだけどなぁ。

 

 


 

音が耳障りだ。真空の中、音のない宇宙空間で左右の区別が付くようにと、善意で入れられているこの空間音声、正直言って今はどれ程忌々しいと思うか。

強化されていない筈の五感が研ぎ澄まされていくと同時に、こんなにも音が忌々しいなんて。

 

「アナスタシア!そっちに行った、くそお前が射線に入って……うわっ!」

 

瞬間、私のメビウスにある機上レーダーからゼロの反応が消えた。今の焦りの一瞬で落とされたんだ。

誰よりも速く、誰よりも強く、誰よりも上に行こうと今まで必死に訓練してきたんだ、それをこうも簡単に打ち砕いてくる。

 

私の僚機達だって、月艦隊の中での精鋭の筈だ。なのにこの人は、さも当たり前のように私達を相手にして、まるで詰将棋のように追い詰めてくる。

 

「ヨーデル!そっち行った、ウィーブをして2機編隊で相互を援護するよ!」

 

「へへ、言われなくたって!」

 

急激な旋回で機体が軋む様な錯覚が起こる、

 

「クッ、これくらいで!」

 

あと少し、あと少しで合流出来る!

 

『させると思うか?』

 

「嘘だろおい、まじかよ!」

 

え?シグナルロスト、嘘っロックオンアラートすら無しに?人間業じゃない!

 

「どうして…こうも強いのよ!」

 

私が機体性能を充分に発揮出来ていない訳じゃない、もっと根本的にこの人は私達と何かが違う!

いつものように何かに集中する時にクリアになる視界、最近では意識すると出来るのようになったそれを駆使して、彼の動きをなんとかカバーしようとして…

クソっ!操縦桿が重く…、辺が真っ白に………。ハッ!

 

一瞬で機体のGに耐えきれなくなり、意識を手放してしまった。一瞬だけだ、たったそれだけで私の機体の中にはアラートで埋め尽くされた。あぁ、負けたんだと私は初めての敗北を味わった。

 

そしてこの日、彼の乗るゼロに一人たりともかすり傷を付ける事が出来ず。

唯一、フラガ少尉の機体だけしか6分以上彼と追いかけっこが出来ていない。私は3分26秒、ゼロパイロット以外では一番長かった。

そんな惨状が広がった、

でも、そんな事よりもどうやら私は

 

「私よりも強い人っているんだ、フフフ。」

 

恋をしてしまったのかもしれない。

 

この時の私の顔を見た仲間曰く、まるで狂戦士のように不気味な笑みだった。と言われた、因みに言った奴は軒並みボコボコにしてやった。

 




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アナスタシア少尉の容姿はZのセイラ・マスです。
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