その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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先勝

艦が逆様に向きを変える事に、身体が横へと維持しようとする慣性に引っ張られる。

それを気合いと根性で我慢しつつ、矢継ぎ早に進んでいく光景を目に焼き付けながら、私は声を荒げるように指示を出した。

 

「第2射ゴッドフリート照準、撃てー!」

 

敵艦は連合の新鋭戦艦、ガーティ・ルー。こちらとは一世代離れた連合の艦艇であり、ローエングリンが無い分通常砲撃能力はドミニオンに遥かに勝る格上の艦艇。

如何にラミネート装甲があると言えど、一世代前の艦艇であるこちらが不利な事に変わりない。

 

「おい艦長、グレイスいつでも出れるぜ!」

 

「出させろ!」

 

通心が入った瞬間に即効、カタパルトを展開しグレイスを出撃させる。

青緑の機体、カラミティに良く似たそれは対義語の名を冠し、ドミニオンを援護するべく外へと飛び立つ。

 

「次、デルタプラス出撃準備できました!」

 

「私の判断を待つな!!各個の判断で出させろ!全ての責任は私が取る!」

 

MA形態で飛び立つ燻銀の機体が目の端よりい出て、敵との交戦に入った。

二人共あいも変わらずいい動きだが、我々にとっての一番の問題点はそこではないのだ。

 

「コロニーとの通信!どうした!!」

 

「そ、それがNJが濃すぎて通信できんのです!」

 

ミノフスキー粒子を散布しなくても良い位の環境にあり、尚且つコロニーへの影響を考えてやらなかったが、このままの状態で戦闘を続けるのは非常に好ましくないと言うのに…。

 

「呼び続けろ、最悪の場合ザフトに撃たれるぞ!」

 

「は、はい!」

 

迂闊なの私の方だ、まだまだだと思いつつ戦時の感覚を忘れ、IFFをザフト側に提出していないのだ。

如何に相手方の要望と言ったところで、そういう物は強硬に推し進めるべきなのだ。

だが、今更言ったところでどうしようもないか…。

にしても

 

「動きが良いな…。」

 

敵艦との相対距離は徐々に近付いている。接近戦になればなるほどこちらは手数として不利となる。

その為に敵艦の頭上を取り、真正面の火力勝負を避けたのだがそんな物知っているとばかりにいるのは、恐ろしいくらいだ。

 

「MS隊、ヒヨッコ共はドミニオンの直掩を守りつつ前進、敵は手練れだ。決して1対1での戦闘は避けろ!」

 

動きが良い敵が多い、前大戦からの生き残りが大半を占めているのだろうな。それに引き換え私の艦の乗員の練度の低さは、正直言って嫌となるほどだ。

だが、実戦経験が無いものなど得てしてこういうものだろう、現に今こうしている私ですら、新兵だったのなら同じことをするだろうからな。

 

その間に、後方モニターを確認し自分達が今までいた軍港をチラリと見やる、なんとも恐ろしい事だろうか。

先程までいた場所が跡形もなく吹き飛んでいる、我々が開けた穴だけでなくそこから途方も無い程に、煤煙が出ている。

 

宇宙空間だからと、煙が無いわけではない。寧ろ宇宙空間でこそ、ああいった物は引きつけあい、空気中よりも遥かに濃い色を出す…。

 

敵もいい動きだ、的確な判断の下次々と港湾を無力化していっている。ザフトの守備隊は初動が遅かったのだろう、これ程まで被害が出ては大混乱だな。

 

我々とガーティ・ルーとの相対距離はどんどんと近付く、未だに互いに有効打を出せていないのは、ラミネート装甲のおかげだろうな…。

 

「敵艦後方より新たな艦影!識別無し!UNKNOWN!」

 

まずい!!

 

「艦首回頭下げ舵90左ロール角180!速力最大!!」

 

艦首が一気に下げられ、身体が宙に打ち上げられそうになるのを堪えつつ、さらなるロールを我慢し続ける。

 

「艦長!どでっ腹を曝しています!このままだと!!」

 

「解っている!だが、ここで避けなければミネルバの射線上にいるのだぞ!!

バリアント!下部90度!撃ち方始め!ゴットフリート格納!メガ粒子砲へと換装急げ!」

 

バリアントはどれだけ速くとも所詮は実体弾、この距離ならば迎撃されても致し方ない。

だが、それでも撃たないよりは遥かにマシだ。

 

「レーザー通信続けろ!呼び続け!!」

 

その時船体に衝撃が走る。

ビリビリと来る振動に、被弾した事が解ってしまった。

 

「被弾報告!」

 

「左舷安定翼損傷!航行支障なし!」

 

「消火剤防御!艦を敵に対し90度!」

 

「敵より小型目標分離!」

 

「コリントス装填!時限信管で対応!敵ミサイル群に向け榴散弾バラ撒け!」

 

次々と来る戦況報告に、私の頭の脳内麻薬は興奮のピークを迎え、自然と口角が上がるのを感じる。

 

「ミネルバとの通信繋がります!」

 

「副長!通信頼む!」

 

「は…、はい!」

 

さて、こちらは擬似的にも挟撃体勢だ、お手並み拝見と言ったところだな。

 

 


 

 

眼の前で行われている軍艦同士の戦闘が私達とはまったく違う勢力同士の戦闘で、狙われているのは私達のコロニーという摩訶不思議な関係勢。

共倒れとか、そういうものになるかもしれないとしても、私達が戦わないという手は無いんだろう。

 

そう思っていると、眼の前のどちらかから私達へと通信が入った。

 

「こちら、ハンザ同盟所属ドミニオン。現在偶発的な武力衝突に遭遇し、戦闘状態となっている。

こちらは貴艦への攻撃意思はないものの、交戦中の為武装解除に応じられない。

IFFをそちらへと送る!繰り返す…」

 

一方的な通信は敵か味方か、どちらにせよそれがダミーであるという保証はない。

そう言うのを判断するために、私がCICにいるんだけれど。

 

「通信は右舷のアークエンジェル級より届いています、またアークエンジェル級より発艦したと思われるMS2機が、ボギーワンとの戦闘を行っていると思われます。」

 

「仮にアレがドミニオンだとして、ボギーワンと行動を共にしていないという確証は有りません。その通信情報を鵜呑みにするには情報が少なすぎます。」

 

「アレは敵ではないよ。我々が招待した外交官が搭乗しているのだ。」

 

「どういう事でしょうか議長…。」

 

嫌悪な空気が流れているけれど、あんまり良くないよね。戦闘中に非戦闘員が口出すの。でも、今の発言は正直汲み取っても大丈夫なのかな?

 

「昨日行われた晩餐会に参加していた面々もいる、もしアレを落とせば深刻な外交問題となるのは明白だ。」

 

「そうですか…。ですが、元々模擬戦相手であったのにも関わらず、今更IFFの登録を行えという相手を信用しろと?……、わかりました。

前方のアークエンジェル級をIFFに登録、これより前方艦ドミニオンと共に、ボギーワンを挟撃する!」

 

その号令と共に始まったのは逃走する敵を追うのではなく、正しく狩りであった。

 

私たちとドミニオンの二隻に挟まれたボギーワンは、逃げるべくもなく少しずつ追い詰められていく。そもそもこんな場所にたった一隻で来るなんて、本当に私たちを馬鹿にしていると思う。

だけど、そんな状況を変える出来事が起きた。

 

ドミニオンが突如として船体を90°上にのけぞらせると、何を血迷ったのか虚空に砲撃を開始したのだ。何もない空間、レーダーにも光学センサーにも何も映っていない、なのにどうしてそんなところを狙うのか。

けど、そんな疑問を艦長の一言が吹き飛ばした。

 

「たった一隻の訳がないことは重々承知だったけれど、ミラージュコロイドは本当に厄介ね。」

 

ドミニオンが砲撃をしている虚空が一瞬ぶれると、そこにボギーワンとほとんど同じ瓜二つの艦艇が姿を現す。つまり私たちはあと少しで、敵を囮とした相手に誘因されてむざむざと逃がすところだったようだ。

 

「シンとレイの状況はあまり芳しくなさそう?」

 

「敵の数2、ドミニオンのMAと共に迎撃戦闘をしています。しかし、いぜん戦闘は続行中。」

 

グレーのMAが二人の援護をしつつ、敵のMSとエグザスを翻弄している。連合のメビウスとも違う、同盟独自の機体だろうか、私たちはその戦闘データを取りつつも今目の前で起こっている事を直視ししてる。

 

「こちらドミニオンのラウ・ラ・フラガだ。敵艦の熱信号はダミーだ、実態はネルソンの高速改造艦艇をミラージュコロイドで偽装したものだ。

敵の本体はドミニオンが追跡中の敵だ。」

 

その言葉と共に送られてきたのは、歪に曲がった艦影の写真だった。ミラージュコロイドは条約で禁止されているはずなのに。

 

「通信ありがとうございます、そちらだけで追跡は可能でしょうか?」

 

艦長がそういう相手は、ドミニオンの艦長さん。向こうも女性のようだけれど、すごく堅物そうな人だ。

 

「こちらとしては深追いはしたくない、しかし追跡を続行するというのなら僚艦として行こう。」

 

その言葉と同時に、私たちがボギーワンと呼称していた艦は火球と共に宇宙の塵となった。

そして、それは私たちと彼らの奇妙な小さな旅の始まりに、他ならなかった。

 

 

 


 

 

敵の軍艦が爆発したと思ったら、俺たちが相手をしていた艦載機も突如として爆発し細々とした宇宙の塵となって、俺たちの目の前に漂った。まだそんな致命傷なんて与えられてないにも拘らず、その機体たちの爆発は内側から弾けるように周囲に飛び散ったのだ、そんな光景を見て俺は少しの間唖然としてしまった。

何のためにきて何のために戦っていたのか、彼らはいったい何者なのかそんな疑問が尽きない。

 

「シン、帰投命令だ。」

 

「あ、ああ判ってる。」

 

そんなもやもやとした感想を抱きつつも、俺たちと一緒に戦ってくれたハンザ同盟のMAとMSを見る。

一つは今まで見たことない奴だったけど、MSは俺の脳裏に焼き付いていた機体にそっくりな色と形状をしていた。

帰還と同時にインパルスの整備が始まる、インパルスの整備性とかそういうのはお世辞にも良いものとは言えないけれど、今やらないと条約だかの大人の事情で違法になるのだ。

 

格納庫で機体を物色していく、プラント内部で俺を助けたザクはいったい誰が搭乗していたのか。正規の武装の使用を躊躇っていた事から、ザフトの正規パイロットじゃないのは明白で、だからこそ礼と同時に話たいことがあった。本当はただ、あの時はありがとうと、そう言いたかっただけなのだ。

 

「シンこんなところにいた。」

 

「うん?どうしたんだよルナ。」

 

そこから嬉しそうに話し意を始める彼女を、正直心がここに無い俺は少し話を流した。オーブのアスハ、それの護衛として、アスラン・ザラがこの艦に乗っているのだという。だとすれば、あのザクに乗っていたのは二人に違いなかった。

でも、既に除隊して現在はザフトと何の関わりのない人と、関わりのない二人が何故そんなところにいるのか、正直疑問に思った。

 

 

「なあ、どうしてこんなところにいるんだろうな…。」

 

「どうしたの急に…、あそうかシン…オーブの出だったもんね。」

 

そういうと何故か哀れそうな顔をされる、正直そんな顔されたくないんだ。

 

「そんな顔しないでくれよ、別に今は関係ないからさ。」

 

「でも、無理しないほうが良いわよ。」

 

決してオーブを嫌いになったわけじゃない、父さんを母さんをマユを殺したのは連合だから、だからオーブを恨むなんて事はしていない。当時のオーブが置かれた状況を、今は判ってるから。

あの日必死の思いで俺たちを守ろうとしていた、MSに乗っていた人たち。命を燃やして盾になった人たちを、俺は心のどこかで尊敬している。

 

模擬戦で戦った人も、戦場のフリーダムも、連合を裏切ったドミニオン隊も、誰も彼もが俺たちを守るために戦ってくれたのだ。

俺が…、俺が嫌いなのはアスハだ。カガリ・ユラ・アスハ、父親であるウズミ様の理念を受け継ぐべきなのに、それを裏切って連合の傀儡になってまで、首長になった女。

それだけが、どうしても許せなかった。

周りの大人がどう言おうとも、俺は守ろうとした人たちに対する裏切りをやった人を、許せるもんか。

 

そう思いながら格納庫を彷徨っていると、議長と件の人物が話す声が聞こえた。

 

「争いが無くならないから武器を取る、確かにその事には理解しよう。しかし、貴方方は条約というものを理解しているのか?

特にあのインパルスという機体はなんだ、あれで誤魔化せるとでも!」

 

その言葉に、俺は頭に来ていた。理念だとか、そういう建前さえも言えなくなった連合に尻尾を振っている、忠犬のように振る舞うオーブの故郷の姿が、それを象徴する首長の姿が。

 

「アスハのくせに…、連合の肩を持つんだなあんたは!

 

俺の声は格納に響いた、言ってしまってから自分の口から出た言葉に目を逸らした。

そんな一瞬の中で目を見開き、それでうっすらと微笑んだ〘青と白を基調にした細身のドレス〙に身を包んだ代表の姿が目に映った。

カガリ・ユラ・アスハは、もっと活発なお姫様なんだろう?なんだよ、そんな普通の品格なんて気にしちゃってさ!

 

 


上手く自爆できたようで幸いだ。囮の役目ご苦労と、そんなねぎらいの言葉を言う事も叶わない既にいなくなった者たちへ、敬礼をしつつそんな消耗品などどうだっていいと、そう言うもう一人の自分がいることもわかる。

 

「大佐、しかし派手にやりすぎたんじゃないでしょうか、ここまでの被害を出すなど…。」

 

「そうでもないさ、事は予程通り進んでいるよ。唯一のイレギュラーである、ドミニオンを除いてね。」

 

我々のことを感知しうる存在がいるのは明白だ、誰が狙っているにせよ出し惜しみすれば確実に死ぬだろうな。

 

「次の戦闘私も出るぞ。」

 

「は、しかし彼らに任せればいいのでは?」

 

彼らというのは強化兵エクステンデットのことを言っているのだろうな、確かにあれらは有効活用できれば幸いに、コーディネイターよりも強いだろう。

だが、我々の目の前にはそれ以上の脅威がいることを知らないのだろうな。

 

「あれを落とすのならば最低でも、もうひとセット欲しいところだよ。

なに、私の代わりなどゴロゴロいるさ。」

 

虚空を見つめながらそう返す、きっと私も使い捨てなのだからな。




MSグレイス

カラミティを素体に、核融合炉を搭載した機体
胸部スキュラをオミットし、背部及び衝角砲をメガ粒子砲に換装した機体、衝角砲はビームサーベルとして使用でき、近接戦闘能力を上昇させている


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