その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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偽り

ミラージュコロイド、それを探知するには専用の装備が必要で、それを装備するのは基本開発国である連合ですら、条約の観点からそれらを装備するものはいない。

ミラージュコロイドデテクターをそれ故に、恐らくはミネルバも装備していないのだろう。

 

ドミニオンにもそれを装備するスペースが無いが、しかし我々の艦のレーダー員(・・・・・)には、あまり効果無いのだが問題はその精度だ。

 

「レーダー員、敵の位置は掴めるか?」

 

「はい、いいえ。思念が…、あまりにも多いのでどうも上手く行かないと言いましょうか…。というか、ミネルバが邪魔ですね彼等の意識も紛れているので、追跡するのでやっとです。」

 

目を閉じながら、レーダースコープの横に移動しカチューシャのような物を被って、周囲を警戒する傍ら、目視で確認をする者達も必要だ。

 

「う〜ん、なんか変な感じがします。意図的に精神を遮断しているとか、そんな心を閉ざしているような感覚です…ね。

たぶんですけど。」

 

「解った、引き続き交代で探索してくれ。」

 

サイコミュを使った敵艦の索敵は、このレーダーの使用が困難な宙域ではレーダー以上の精度を叩き出す一方、対策というものがあるというのが驚きだ。

 

「艦長もそうですが、我々も元々は連合のコロニー在住者ですから、向こうだって少し位は対策考えてる筈ですもんね。」

 

「そうだな、だが今こうしている間にも敵が何をしてくるのか、判ったものじゃない。それ故に頑張ってほしい。」

 

レーダー員は日頃から何を考えているのか判らない者たちが多いが、高度な能力者を選抜しているだけに話は結構ズケズケと来るものが多い。

 

しかし、巡航速度の差がここまで如実に現れるか…、ミネルバの足は想像以上に速いのだな。

我が乗艦としても、ドミニオンは精一杯頑張っている方だが如何せん、前大戦の生き残り。

最新鋭ワンオフの艦艇には追いつけるものではないか。

 

我々よりも先行し、もはや有視界距離から随分と離されてしまっている。

戦略的に重要な物は最大戦速ではなく、巡航速度というものが通例であるがこれは、考え直したくなるな。

 

「艦長……、敵艦を補足しました。ですが、どうやらミネルバを攻撃しようとしているようです。上手くやりますね、なるほど〜〜。」

 

「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと報告しろ!」

 

「あ、はい。それでですね、光学カメラに同期させますよ。」

 

そして映し出されたのは、嫌な予感がしたまさにその形そのものだった。

 

「ミネルバと本艦のちょうど軸線上か…、これでは火力を出すことが出来ない…。ミネルバへの信号は?」

 

「ミラージュコロイドを上手く使って、レーザー通信を遮断していますから、無理ですよ。発光信号でモールスくらいなら送れますけど、向こうが気が付くかは運次第と言ったところですね。」

 

手慣れている、やはり其れ等を想定した訓練を受けた者達なのだろう。所謂特務隊、しかも情報戦のエキスパートと来たものか。

一方でこちらは素人集団、観測出来たとしても射線上を向こうは計算で割り出して攻撃できるのに対して、こちらは向こうが想定していない動きをしなければならないか。

 

「MSの推進剤の余剰はどれほどある?」

 

「次の戦闘で最後ってところです。ザフトと我々のそれは規格が違うからと、搬入しなかったのは議員さん方の判断でしたから、しょうがないですよ。」

 

迂闊に出せば永遠に漂流させる原因にもなりかねん、だがどうだろうな?

 

「ラウ・ラ少佐に繋いでくれ……、済まない。

少佐、状況は判っているだろうが現在本艦のMSは推進剤が少ない、よってMS全てに完全かつ均等に手当する事が困難だ。

従って、少佐の機体とサブナック大尉の機体は完全充足させておく、もしもの場合はそれでの出撃を頼む。」

 

「今から出なくても良いのか?」

 

本当ならばそうしたいだがそうも言ってられんのが、政治屋との折衷なのだろう。

 

「高度で政治的な話になるが、もしここで連合に敵対した場合全面戦争は避けられなくなる。

その場合、ザフトと組まなければならないが本心はどちらとも組みたくないのが現状だ。従って、本艦は敵艦がミネルバを攻撃してから動く事になる。」

 

「歯痒いな、こちらからは攻撃出来。あまつさえ、敵を撃ち落とす事が可能な位置ならば本来は攻撃すべきだ。」

 

「確かにそうだな、だが知っての通り我々は第三勢力だ。2つのどちらかに飲み込まれるのは、本来ならば避けねばならない。」

 

向こうも本心を判って聞いてきている、艦内の人間に我々がどういった立場であるかわからせる為にも、いちいち声に出すのが適切な判断だろう。

 

「私も……腹黒くなったものだな。」

 

こうは成るまいと思ったものに近付いている事に、嫌な感じがするがそれも成長の一種なのだろうな。

 

「動くなら早く動け、そうした方が我々にとっても後腐れ無く葬り去る事ができるのだからな。」

 

そう口に出すも、その言葉は誰にも聞かれることなる。只々、虚しく艦橋を漂うだけだった。

 

 

「向こうにもNTがいれば……、あの〜少佐の力をお借りしたいと言ってくれませんか?」

 

「少佐の?……、そうか!その手があるな、だが傍受されないか?」

 

「やってみないとわかりません。」

 

「はっきり言う気に入らんな、だが悪い事じゃない。」

 

引っ掛かってくれれば、それまでで良い。どうせ交戦するならば、この状態で戦闘を行えればそれでこちらが有利だ。

 

 


 

格納庫を後にするとカガリがデュランダル議長へ少しの間二人きりにしてほしいと言い、カガリと俺は再び空いている部屋へと入れられた。

 

「アスラン、聞いたか?あの言葉、『アスハのくせに…、連合の肩を持つんだなあんたは!』だってさ…、そうだよなこんな、連合の味方みたいな話をするやつが、中立国の代表だなんて嫌いになって出ていくのも頷けるよ。」

 

彼女は傷ついている、いや傷ついているのを俺に吐露している。オーブの代表という地位にいて、周囲の人間に弱みを見せられない彼女の数少ない相談役である俺は、それを真正面からぶつけられた。

 

「だいたい何故私が代表なんだろうな、父様やアズラエルが勝手に決めた首長という立場。

連合の良いように着けられた称号と、傀儡として都合の良い年端も往かない少女という立場。

 

正直、シン・アスカの言っていた〘理念を大切にしていたオーブ〙という立場が、懐かしいものに感じて…、それが……それが嬉しくてたまらないんだ。

 

まだ、昔のオーブを知っている奴がいる。まだ、昔のオーブを尊敬してくれる人がいる。

それだけで、それだけで良いとそう思う私がいて。

私はあまりにも無力だ、確かにアズラエルと父様のおかげで新氏族の台頭は避けられた。

 

だが、今の現実を見ろ。どうあがいたところで、オーブは連合に頭が上がらない存在になり、中立という立場すらもはや危ういところまで来ている。

キラやフレイ等の力を貸してくれる者達もいるが、シンのように現状に不満を持って出ていった者達もいるんだ…。

 

それが……、悔しくて悔しくてたまらない……。」

 

カガリは悪い考えばかり思い浮かぶようで、俺はそれを見てどうすべきか考えあぐねた。

そんな時、母上のある言葉を思い出した。

 

『良いですかアスラン、ガールフレンドが思い悩み苦しげにしている時は、貴方方が、愛し合っているのなら簡単にその苦しみから解放する事が出来る簡単な方法があります。

 

貴方は人に何かを説明する時、端折るという悪い癖があります。それは、美徳でもあり欠点でもあるのです。誤解を招く恐れもありますから、口頭での説明よりもより簡単な方法を教えましょう。

もし貴方が、彼女を本当の意味で愛するのなら良く聞きなさい。』

 

「それに、アスランお前だってプラントでやるべき事があるのに、こんな私に付き合ってなど、あっぷ!?」

 

俺は無心で彼女へと口付けをした。

ミネルバの中、何処かから盗聴や盗撮されている可能性もあるが、そんな事今は関係ないのだ。

彼女は今、いっぱいいっぱいで何を考えようとも悪い方向に考えてしまう。

ならば、その思考をいったん停止させ、頭の整理をできる時間を与えなければならないのだと。

 

ん""〜〜ん〜〜ん〜〜……。」

 

初めはジタバタと俺を押しのけようとした彼女は、だんだんと力が弱くなり、俺を受け入れるようにしなだれかかってくる。

あぁ、俺はこんな事しか出来ないだからカガリ、許してくれ。こんな事でしか、君を愛している事を説明する方法が無いのだから。

 

「カガリ…、頭の中はスッキリしたか?」

 

「い……いきなり何をするんだ!!こんな…こんな事をするなんて…、は、恥ずかしいじゃないか!誰かに見られていたらどうするつもりだったんだ!」

 

「ごめん……、だが今の俺にはこれしか出来ないんだ。

君が思い悩んでいるのを見ていることしか出来ない俺が、唯一君に捧げられるものが。

でも、今出来ることをしなければとそう思いながら、君を守らなければならない。

 

だから、議長の意向を汲んでザクに乗ろうと思う。

今、君を護る力を使うのを躊躇いたくない、だから待っていて欲しい、必ず守って見せる。

その後、迎えに行くから。」

 

顔を真っ赤にしている彼女の髪を梳く、仄かな薫りが鼻腔を突く。そこからもう一度、彼女との口付けをして俺は目を上に向けた。

 

 


 

ほう……、なるほどな。

思念を飛ばすというのは、実に恐ろしいものだ。だが残念な事に、私もそれを使うことが出来るのだ。

どれ程秘匿しようとも、我々は其れ等を下にする下地に創られたのだ。

 

「艦長、相対距離に常に注意しろ。敵艦は我々を撃てない。逆に我々は撃ち放題だ。先行する敵艦のMSは既に我々の偽装に引っ張られ、遠く離れている。

攻撃のチャンスはここしかない。」

 

「しかし、敵のMSが来た場合こちらの機体では対処がむずかしいのでは?」

 

「案ずるな、その為に私が出るのだ。」

 

そう言うと内線を切り、私は機体を動かす。

MSの操縦が不慣れな肉体はどれ程持つのだろうか、それよりも機体が持つのか?

使い捨てと言われた我々は、どれ程役に立つのだろうか?

 

「生き残り、ここにいるというのに。まったく、あの男の試作品というレッテルを払拭したいものだな。」

 

アムロ・レイ、奴を創ろうとしたものは尽くそれが失敗した。人格を形成しようが、奴の過去がそれを邪魔しそれを創り出すことも叶わない。

 

どれ程MSシミュレーションを重ねようとも、奴のような機動をする事は敵わず全てが猿真似と言える程度にしか出来ないという、我が存在意義の欠如。

 

憎たらしくも私を見下ろす機体は、前大戦時の奴の機体を模倣して造られた模造品。

しかし、NJCによって得られるエネルギーは核融合炉を搭載している、ハンザ同盟の奴等ともやり合う事が出来るはずだ。

 

「MS隊発進せよ、これより迎撃戦闘を開始する。」

 

存在意義の証明、私は決してスクラップ等ではない。

 

 

 


 

感覚が研ぎ澄まされる、宇宙という無為の空間を生きるものとして、これは何よりも得難いものであり、未来と言う新たなる可能性を行こうとする私にとってこれ程素晴らしいものはない。

 

だが、私の直感が告げているものに対して、私は正直な話懐疑心を覚えた。

アムロ・レイ、我が友人の感覚を持った敵が目の前にいる。だが、それは彼とは似ても似つかず、弱々しいそれに対してそれを戦闘面にのみ特化させたものだというものは明白だろう。

 

人の可能性、それをそのような形としてしか使えない愚かしくも、効率的な思考に舌を巻く。

眼の前の機体は、アムロの乗機をモデルに造られたのは明白でそれを手脚のように使う姿は見事なものだった。

 

スラスターから出る推力を調節しつつ、機体を駆るも追いすがる姿は滑稽なものだ。

しかし、腕自体は良いのだ。図らずも私は苦戦する。ガンダム、それもビットを背負う姿はまさしく奴だった。

 

サブナックからの援護もしばしば入れつつも、それに対応する姿は成長しきっていないアムロを見ているようで、それが私の思考を濁らせる。

落とせるかと言われれば落すと言うが、そうも言っていられない敵であることは確かだ。

 

ビットが飛んでくるのを掻い潜り、近接戦闘へと持ち込む。

まだまだ未熟な内に殺しておけば、これが成長するのを止められるだろうと思いながら、話をしてみたくなった。

 

「貴様は何者か、何故アムロのような感覚を持っている。」

 

「ほお、貴様はラウ・ラ・フラガか…、なるほど確かにアル・ダ・フラガのクローンなのだな。

寿命を克服したのか?」

 

口調はどちらかと言えば、私のそれに似ていて人格はと言えばよりせせこましい。

 

「正々堂々と戦えないとはな、貴様の元となっている奴は貴様よりか遥かに強い。」

 

「フフフ、そんな事解っている。だからこうしてここにいるのだろう?」

 

どういう訳かこの男からは勝機というものを感じない、寧ろここでどう死のうかと言う思案すら有る。

だが、そうかならば貴様が何か解った気がする。

 

「レギオンというものがあるのなら、貴様のようなものだろうな!」

 

奴の肉体は急激な戦闘機動に着いてきていない、数分も経たずに死ぬだろう。

 

「だが、それで良い。そうすれば私は更に強くなるのだから!」

 

一瞬の隙を付き、奴の機体を落とす。しかし、これで終わり等では無いのだろう。奴からは断末魔のような、そんな物は一切感じられなかったのだから。

 

それが終わった時、すべての戦闘が終焉していた。

 

 

 




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