その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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最適か?

 

星がゆっくりと流れていく、結局のところ我々は敵艦隊を取り逃がした。

いや、取り逃がしたというのは語弊があるだろ。取り逃さざるをえなかった。

 

敵艦の行動は一言で言えば〘完璧〙だった。

ミネルバを封じ込め、身動きが取れない状況を作り出しつつ、我々のMS隊の状況を巧みに読み取り、戦力の投入が出来ないことを悟ったうえで、決して同盟関係ではないザフトとの間を利用された。

 

岩塊の下にいたミネルバを、戦闘中断の名の下に救出することを最大限行わなければならない状況に我々を追い込んだ。

つまり、停戦信号を出し彼等の船は逃げたのだ。

人道上の措置として、決して間違ってはいないが、だからと言ってそれを真に受ける事が出来るかどうか、それは戦闘艦艇の意思による。

 

戦争ではない、だが一方的な申し出で尚且つ襲撃者である。戦闘時の偶発的な落盤事故によりある船が危機的状況にあり、こちらとしては積極的な戦闘の意志のない戦いに私は、それを受諾したのだ。

 

勿論それは2国間の国交としては良いことではない、ただプラントの敵が我々の敵かと言われれば違うと言える。

我々はただ、戦闘に巻き込まれただけとも言えるのでそういう措置も致し方ないと、そう言えるだろう。

 

ミネルバの初陣は華やかなものではなくなるが、だからと言ってみすみす彼等を見殺しには出来ない。

それが最良かどうか等、今は判らないのだから。

 

 

 

………

 

ウィングの修理をしつつ、ミネルバと共に艦を停船し二隻並んでいるとミネルバから通信が流れてきた。

 

「こちらミネルバ副長のアーサー・トラインです、至急そちらとの連絡をと思い通信しています。」

 

ちょうど休憩に入ろうかと言うタイミングでの通信に、私は苛立つ自分を抑えながらそれに答えた。

 

「こちらドミニオンのナタル・バジルール艦長だ。どうかしましたか?」

 

「はい実は!」

 

そこから始まるのは突然の出来事、今日はいったいどこまで私を酷使しようとするのか、まったくと言って良い程気が休まらない。

 

「要件は判った、だが1つ先程注文していたMS用の推進剤の搬入がまだなのだ。

よって、そちらへとMSを数機ずつ送り込みたい。そうすれば、我々も確実に戦力となるだろう。」

 

「わかりました……、副長権限ではありますが受け入れを進言します。こちらとしても、地球にアレが落ちるのを黙って見ていたくはありませんので。」

 

アーサーという男は頼りない顔をしつつも、細かい事に気が利くのだろうな。そういう意味では調停者というコーディネイターなのかもしれない。

 

「ありがとう。

先程は済まなかった、勝手に停戦を受け入れてしまったこと。しかし、あれはアレで良い判断だったと思う。

貴艦には生きてもらわなければ、我々としてもバランスが悪くなるのは気に入らないのでね。」

 

「本音と建前…ですか。お互い色々とありますが、頑張りましょう。」

 

朗らかな奴だ、嫌いではない。

 

「こちらでも本国へと連絡をしてみる。

本国が既に動いていれば、何かしらの対策を講じているだろうからな。

一応そちらへとデータを送っておく、大質量物体に対する破壊は我々も様々な手を講じているからな。」

 

「はい、了解しました。では、また連絡をします。」

 

さて、そういったは良いがこちらから本国へ通信出来る状態かどうかだな。

 

「本国への問い合わせはどうか?」

 

「はい、既に本国のレイ准将は艦隊を伴って出撃したと報告が入っています。

現在、阻止限界点(・・・・・)に関する要目を取り纏めているそうです。

ザフトへの連絡はまだ行っていないと思われますが、阻止限界点の計算が完了次第速やかに連絡を取るとの事です。」

 

最早形振り構わない行動が必要な時か、だとすれば有名人には出て来て貰わないと困るな。

 

「少佐はどうしているか?」

 

「現在、休憩中です。お呼びしますか?」

 

「いや、レーダー手。確か君は感応波を使用できたな、それは私が考えている事も伝えられるのか?」

 

「たぶん出来ますよ、でも心の底を見ちゃったりとするので……、大丈夫ですか?」

 

「構わん、見られて恥ずかしがっている場合ではない。」

 

そう言うが早いか、彼女は私の下に来るとデコとデコを合わせるようにしてくる。

 

「あ、判りました。それじゃあ、少佐に送りますね。」

 

その速度は異常に早い、一瞬で理解したのか。これでは我々が勝てないのも仕方ないのかもしれない。

 

「さて、では大気圏突入も考えられる。出来る限り修繕を急がせろ。」

 

我々に残された時間はあまりにも少ない、准将はアレ(・・)を持ち出したのなら、私がミネルバにデータを送った事を許してくれるだろうか?

 

 


 

艦長から言われて、私はミネルバへと渡った。私の機体の推進剤を補充しつつ他の機体と違うのは、私自身がミネルバの奥深くまで入らなければならないという事だ。

というのも、ドミニオンからミネルバへと送信したデータの詳細を説明しながら進むのには、少々時間が少ないからだ。

 

そのため、その開発の経緯や使用方法等を逐一補足できる人材が必要となり、そうなった場合他の人間では役立たずとなる事が目に見えていた。

そして、同時に私がそこに渡ったということは、私のネームバリューを使えとそう言っている事に他ならない。

 

格納庫へと到着すると、メカニック達がいそいそと電源ケーブルを接続しに来る、私はそれを見て機体の違いをいちいち説明する気も失せつつも言った。

 

「我々の機体はバッテリー駆動ではない、補充は推進剤だけで良いと言っておいてあると思うのだがな?」

 

私は高圧的にそう言うと、文句が聞こえそうな態度に構っている時間も惜しく、それを補足せず艦橋へと急いだ。

艦内構造は判らずとも、なんとなく進路が判る。別に船というものは変わらないのだから、そういうところにあるのが必然だ。

 

と、そう思いつつ上に向かっていると眼の前に現れたのは、非常に見知った顔。アスラン・ザラだ。

 

「クルーゼ隊長!なぜこちらに?」

 

「アスラン…、今の私はラウ・ラ・フラガだ。それ以上でもそれ以下でもない、それ故にその名を言うのは控えておいてくれるかな?

それに見ろ、今の私が仮面などつけているかな、他人のそら似だよ。」

 

だがそれが行けなかった、何故こういう時に限って人というのはタイミングを見誤るのか、赤髪の少女が現れ急いで立ち去ったのだ。

 

「アスラン、後でじっくりと話をしようではないか。」

 

面倒くさい事をしてくれる、これでは道化のようだ。

 

 

………

 

艦橋へと到着すると、私を出迎えたのはこの艦の艦長と議長である、ギルバート・デュランダルであった。

彼と彼女は所謂男女の仲であるから、恐らくは先程もお楽しみだったのだろう。こんなときでもそのような事をしている事に、嫌味の1つでも言いたくなったが、そこは敢えて抑えた。

 

「議長お久しぶりです、会談以来でしょうから凡そ10日ぶりでしょうか?」

 

「そのようだな。だが、今艦内では君の噂で持ちきりだ。

ラウ・ル・クルーゼが生きていたと、そういう噂だ。」

 

どれ程早く広がったのか、まるで一瞬にして広がったかのように思えるが、恐らくは先の戦闘も含めて様々な憶測から、あの少女によって答え合わせされたという事だろう。

 

「君がいなくなってから、ザフトも随分と様変わりした。どうだろうか、復隊してみる気は無いか?」

 

艦内放送でもされているのか、嫌な感覚がある。私の事は、ザフトではどう報道されたか聞き及んでいる。

〘戦争終結の功労者〙〘最後の忠臣〙だとか言うそんなこそばゆいものから、裏切り者というところまで様々な物言いをされている。

 

「アスランにも言いましたが、今の私はラウ・ラ・フラガだ。ラウ・ル・クルーゼという男は死んだも同じですよ。

今、私は私の同族のような者達とともに、ハンザ同盟に参加している。それを裏切る訳にはいかんのですよ。」

 

心に揺らぎ1つ見せない、それどころかユニウスセブンの軌道変更に関しても、まるで驚きすら見えない。

恐らくは、この男は何か仕込みを入れたか?いや、寧ろ好都合と考えているか…。

 

「それに、私は今そんな御託を話す余裕はない。

移動しながら色々と説明しなければならないのですよ…。

君はアーサーと言ったな、ミネルバに中佐がよこしたデータを出して欲しい。それと、パイロット達にも緊急に可及的速やかにブリーフィングルームの画面を見るようにと。」

 

「え?あ、はい!」

 

「それが急ぐ事か?」

 

「えぇ、でなければ我々だけでなく。この艦のもろとも、文字通り蒸発する可能性があるのですから。」

 

私のその言葉に、アーサーという副長は戯けたように驚き、グラディスという艦長は真剣な眼差しをし、ギルは私を見て射殺すような雰囲気を醸し出していた。

 

 


 

私は年齢よりも、発育が良い方だと思う。それでも、パイロットスーツの一番小さいサイズで尚且つ胸のあたりはスカスカな辺り、そっちの方の発育は遅いのかもしれない。

寧ろ、そっちの方は成長が止まってしまっているように錯覚している。

 

アークエンジェルに配属されて2週間、私はMSの整備とテストパイロットとしての、一応の地位を得ていた。

孤児院でのニコルさんとの訓練の賜物か、動き自体は申し分無く寧ろ褒められる程度には出来ていると思う。

 

なぜだか私は、モルゲンレーテでこんな事をしているのだけれど、軍人という身分で民間に出向しているというのは、別に珍しくは無いはずだから…と、自分に言い聞かせている。

 

「ご苦労さま、どう?クサナギの最終確認、可変機構がある機体なんて初めて乗るでしょう。

ちょうど、新人パイロットの方で足りないデータがあったから助かってるわよ。」

 

そう言って私にドリンクを持って来たのは、アサギという前大戦からテストパイロットをしているという人は、私に何やら思う事があるのか、そっとしておいてくれる。

 

正式採用された機体の粗探し、どれだけ良好なテスト結果でも項目にない欠陥があればすぐさまにそれをフィードバックしないといけない、重要な仕事だ。

 

「アサギさんって、M1のテストパイロットをしていたんですよね、それで今でもやってるのは理由があるんですか?」

 

「うん?そうね…、昔話になっちゃうけど…。M1のテストパイロットは、元々私にだけじゃなくてね。後二人いたのよ、二人共ヤキンで死んじゃったけど。」

 

そう言って胸ポケットから古びた写真を取り出す。紙媒体で取り出された劣化し始めているものだ。

 

「ジュリとマユラ、3人で色々とやったわ。でもね、それも思い出になっちゃったけど。」

 

悲しそうな顔をしながら、そこから話し始めるのはM1の苦労話。色々とあったのだろう、今でこそ当たり前のように動くMSは一昔前迄、歩くのがやっとだったと、兵器としては欠陥品と言われた代物だったのだから。

 

そんな話をしながら、休憩していると突然サイレンが響き渡った。それも、オーブ侵攻作戦が開始された時と同じ〘国民保護サイレン〙という代物だ。

 

それを聞いた途端、アサギさんは立ち上がって顔を豹変させた。真剣な眼差しをしながら、周囲へと気を回し問いかけると最悪の事態の始まりを告げる言葉があった。

 

〘ユニウスセブンが落下軌道を取っている〙と。

 

そして、私達は直ぐに命令を受諾した。

 

………

 

 

私の〘軍人として〙の最初の仕事は、民間人の避難誘導だった。MSを操縦し、街中を歩いて目印になるように録音音声を流し続ける。非常に単調かつ、重要な役回りに私の手は汗ばんだ。

たったこれだけ、これだけの作業にも関わらず私は緊張していたのだ。

 

戦うわけじゃない、それでも眼の前の人達の命を私は握ってしまっている。

皆を守るための力、たとえそれが戦争の為に振るわれる訳では無いとしても、眼の前の情景は自分の見ていた視点の低さに驚かされたのだ。

 

MSに乗りながら、初めて見下ろす人々の姿はあまりにも小さく、それでいてあまりにもか弱く見え、せせこましく動き回り誰が何処に行こうとしているのか、はっきり言って訳が分からない。

こんな者を守りながら、キラさん達は戦っていたのだとしたら、それはどれほど難しい事だったのか。

 

眼下の人の波が消えても、その感情は一片たりとも変わること無く、そして探し始めた。

あぶれる人はいないのか、あの時の私達家族のように眼の前に見えなくて、忘れ去られた人達が、いないかと。

 

どれ程深く探しても、探し過ぎるという事もなくやらないよりもやったほうが遥かに良いことは明白だ。

 

「アスカ訓練兵、君も避難したまえ。」

 

「何故ですか、私は軍に仕官したのです。出来ることをできる限り行いたいのです!」

 

私の年齢を知っている人は、皆一様にこうやって私を子供扱いする。そうやって従わせて自分達だけが危険な目に会おうとするのを見るのは、もう沢山だ。

 

「では、君の暮らしている孤児院の確認をお願いしたい。

時間となった場合、直ぐ様最寄りのシェルターか高山へと避難せよ!

これは命令だ、判ったな?」

 

孤児院…、私の最後の家はどうなってしまうだろうか?もし隕石が落ちたら、どれ程の被害が出るだろうか?

私は今更心配になった、と同時に自分の薄情さを知る事に拍車をかけた。

 

 

 

 

 

 




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