俺はユニウスセブンが落下軌道にあるという状況に際して、今自分の出来ることをと思い、再び戦闘への意思を示した。
その横に地球在住者として、カガリも同伴し今回のユニウスセブン落下に際するブリーフィングを受ける事になった。
列席者は議長を含め、艦長もいる。
艦内放送で聞かれているだろう事に、全乗組員への周知も兼ねていた。
「これでパイロットは全員か?いや、聞かずとも君達は初陣を果たしたばかりだったな。これだけしかいないのも無理はない。
さて、まずは自己紹介から始めようか。私はラウ・ラ・フラガ少佐だ。
しかし、嘗てラウ・ル・クルーゼと名乗っていた男でもある。」
「…ラ……ウ…?」
彼の顔を見てラウ・ル・クルーゼと判断出来る人間は果たしてどれ程いるのだろうか?
最も、近しい人物でなければ判らないだろう。俺自身、戦後のドサクサの中で始めて目にしたのだから、正直に言ってゼロに近いだろう事は確かだ。レイ・ザ・バレル、彼こそがもう一人のクローンという事だ。
「久しいなレイ。議長からはまだ聞いていなかったようだな、積もる話はあるだろうが今はこれに集中して欲しい。また、質問は最後にして欲しい。
さて、皆も知っている通り、現在我々は未曾有の事態に直面している。ユニウスセブン、前大戦の始まりの場所そこが安定軌道から離れ地球への落下コースへと入った。その事実は皆知っているだろう。
この事態に際して、我々ハンザ同盟は現在1個艦隊を急遽発進させ、ユニウスセブンの落下コースのちょうど側方ヘ位置するこの場所に、布陣する予定となっている。
落下軌道を修正することは困難であり、これ程の大質量物体の落下を経験した人間は、0に等しい。」
0に等しい…、その言い回しは恐らくはダイクンやアムロ・レイの父親の事を指しているのだろう、俄には信じ難い人物ではあったが、もし本当であるのならこの事態に対して何かしらの判断をしてくれたかもしれない。
だが、いない人間を頼るのは愚者のやる事だろう。
「これに対して、ザフトと協力する事になったのだがここで懸念点を1つ言いたい。
まず、今回の事態だが我々は人為的な方法による人災という判断を下した。
そしてそれは、君たちプラント在住者にもこの事態は決して他人事ではないと言うことの現れでもある。
観測データの結果、アレには何らかの推進機。恐らくは太陽を使用した何かが関連していると予想される。
これは、現在プラントで使用されているフレアモーターである可能性が高く、遠距離からの観測を下にそれは90%の確率である。
よって、君達の身内。例えばそこの、アスラン君の父上に影響を受けた者達の…海賊の仕業と考えているが、それは良い。
それによって、破砕作業が妨害を受ける事が予想される。」
父上の失脚によりザラ派は事実上解体された。それに伴って、ザラ派を支持していた軍人の何割かがザフトを離れていったと聞く。その時には俺は既にザフトを除隊し、父上の行った事への精算をしようと努力してきたが…、彼等の可能性は充分に考えられる…。俺の責任でもあるだろう…。
自然と拳に力が入り、その手をそっと何かが包む。すぐ横にいたカガリが俺の手を触っていたのだ。傷心していた彼女に気を遣わせてしまった、俺はその事に怒りを覚えた。
それと同時に、周囲の雰囲気がガラリと変わる。そう、プラント在住のコーディネイターにとってこの言われようは、要するに
「ザフトが使用するメテオブレイカーでの破砕作業によって、破壊出来れば幸いであるが、それが不可能だと判断された場合。我々は、この〘ソーラ・システム〙によってユニウスセブンを、諸共蒸発させる。」
十字型に綺麗に整列した、モデルケースを見るとそこには鏡が無数に置かれていた。
巨大な鏡による太陽炉という事が、この図面だけで判ってしまった。
「これは言うなれば巨大な太陽炉だ、本来は月面や小惑星要塞に対する攻城兵器として考案されたものだが、初の実戦配備となる。これを使い、文字通りユニウスセブンを蒸発させる。
そして、我々はこの照射基準点を阻止限界点と定め、ここを過ぎるまでの間にメテオブレイカーによって出来うる限り破砕に努めてもらいたい。
さて、質問はあるかな?」
俺は誰よりも早く質問をした。俺は判るが、わからない奴がいる可能性も捨てきれないからだ。
「ソーラ・システムで蒸発させるのなら、メテオ・ブレイカーでの破砕は必要ではないのではないか?」
「良い質問だ。我々のソーラ・システムは出力が太陽熱に依存する、それ故に不確定要素がたぶんにある。
細かく砕いたほうが、より蒸発させやすいという観点から先にメテオ・ブレイカーによる破砕を行いたいのだ。」
当然だろう、あれ程の大質量物体をそのまま蒸発させる熱量に、絶対的なものはない、そんな物があれば大戦等起こりようもなかったのだから。
だが、それ故にこの事態への対応としては完璧を期することが出来る。
「あんまりにも出来過ぎた話じゃないですか?」
そういう言葉が出てくるのは必然な内容だと言う事実に目を向けなければだ。
その言葉を皮切りに決壊したダムのように、不満が続出する。
自分たちを犯人に加担したと決めつけるような言い草と、この事態への対応速度を考えるに、本当はハンザ同盟がそれをやっているのではないか?と。
俺はその言葉に対して明確な答えを持っていない、それ故に声を上げようとした直後
「頼む!」
その言葉が周囲に響いた。
俺の周囲にいるプラントで生まれ育った連中の不満も、判る。だってそうだろう?
自分が犯人と決めつけられること程、辛い事はない。レッテル貼りは、最悪の所業だ。
「頼む!」
そんな声が聞こえたと思えば、次にはクルーゼの横に移動したアスハ代表の姿がそこにあった。
最前列でものを聞いていたのだろう、地球在住者にとってこの事態は受け入れられない事態であるからこそ、出席を認められたとも言える。
「身勝手な言い草になってしまう。けれど、これは地球に住んでいるものの1人としてお願いしたいことだ。
あの星には無為の民がいる、私の家族が。大勢の事実も知らない子ども達もいる。
そんな子どもたちの為に、貴方方の命を捨てて欲しいとそう聞こえてしまうかもしれない。
だが!今の私は無力だ、あの戦争のように目の前で多くの命が消し飛び、散っていた故郷のように今動いてくれなければ、また同じ事が繰り返されるのではないかと。
私に貴方方に命令できる権利はない、だからアスハとしてではなく。
今ここにいるカガリとして、お願いしたい。
お願いします、アレを破壊してください。」
今目の前にいるのは確かにアスハのカガリだ、でもそれが頭を下げている。
オーブ元在住者の俺にとってそれは衝撃的なものだった。
オーブの5代氏族は、オーブを代表する存在でオーブそのものを取り纏める存在で、オーブの5つの柱。
国民にとってそれはもはや天に聳え立つ、そんな存在でその中でアスハ家は崇拝の対象でもあった。
そんな存在がだ、元とは言え国民だった俺の目の前で俺に対して頭を下げるなんて考えられるか?
普通ならそんな事考えもしない、5代氏族は椅子にふんぞり返って国民を陰ながら支えてくれればそれで良かった筈なのにだ。
「俺からもお願いしたい。」
そんな声が聞こえる、もう一人が立ち上がり俺達の前に現れた。アスラン・ザラ、前大戦の英雄の一人そんな存在が頭を下げている。
「今回の一件は、恐らくはザラ派の暴走によるものだ、本来ならば父の代行として俺が遮断しなければならない事柄だったのだが、私の力不足が浮き彫りとなった事態だ。
事の次第によっては、更なる厳罰を覚悟している。
故にお願いしたい、どうかユニウスセブン破砕を行ってもらいたい。」
雁首揃って頭を下げる景色を見て、それでも心を動かさない奴がいるだろうか?
もし、ここで俺がそんな事を言ったらあの日戦ってくれた人達に対して、俺は面目が立つのか?いや、立たない。
俺は、俺やマユのような人が出ないようにするためにザフトに入隊したんだ、この事態こそその時じゃないのか?
俺はそう考えると踵を返して部屋から出ようとする。
今出来ることをする為に。
「ちょっとシン!どこ行くのよ。」
「決まってるだろ!!インパルスの調整に行くんだよ、いざという時動けなかったら困るだろ!」
周囲の目を気にすること無く、淡々と歩みを進める俺の後を追うように周囲の人間は、各々自分が出来る作業を始めた。
………
機体の各種チェックを進めていくうちに、ブリーフィングで言っていた阻止限界点というものの詳細が送られてきた。
所謂ソーラ・システムの照射地点というもので、破片が地表に降り注ぐ前に蒸発させると言うのは判った。
映像が流れると、そこに映る天然パーマの人物がハンザ同盟のアムロ・レイ准将という人物で、彼がMSを直接指揮してメテオブレイカーの起動までの護衛を引き受けるそうだ。
アムロ・レイ…どっかで聞いたことがあるんだけれど、あまり思い出せない。
なにせ元は連合の士官だったらしいし、ザフトとしてはあまり知りたくもない人間なのだろう。
「シンどう?機体の調子は」
「う〜ん、まあまあだな。起動も良好だし直にでも出撃出来るよ。」
ルナも自分のザクの点検が終わったらしいし、後は出撃を待つのみという状況になった。
「ねぇ、あのラウル・クルーゼってさやっぱり本物だと思う?」
「さあね、俺にとってはどうでも良いかな。だって、オーブの人間にとってザフトの軍人はあまり話題に上がった事なかったからさ。
ルナにとってはどんな存在なんだよ。」
ラウル・クルーゼ、元はザフトの白服でネビュラ勲章を獲得した伝説的存在、なのだがどういう訳かハンザ同盟にいる。
何かやましい事でもあったのか、偽名?を頻繁に使っているから、正直有り得そうな感じもある。
「例えばさ、戦争の英雄とかってプロパガンダで結構演出されるじゃない?
それってさ、まあ結構脚色されてたりするわけで、当時の彼って仮面をつけてたのよ。それで、なんかちょっと好きかなぁって…それだけ。
でも、素顔見たら年相応な人なのねって、そんな感じ。」
「ふぅん、オーブ国民で言うところのフリーダムのヤマトとレッドコートのアルスターみたいなもんだろうな。」
俺の記憶に今も存在する、あのMS。必死に戦っていた彼らの姿。
連合を裏切ってまで、俺達を救いに来た人達。
憧れないわけがない、まるでヒーローみたいだって子供ならきっとはしゃぐだろ。
「そう言えばさ、あの准将。例の〘白い悪魔〙だって、そんな噂があるのよ。」
「白い悪魔?アレが?あのMAで、ジン相手に大立ち回りしてキルレシオを逆転させたとか言う、連合の化け物の?」
俄に信じ難い存在、ザフトの教材に出てくるような奴だ。
MS操縦のお手本には決して出来ない様な、そんな回避機動をしつつ、MS以上の索敵範囲を持っていて、機体のセンサー範囲外から狙撃してくるとかいう、そんな奴があんな優男とは?
「冗談かなにかじゃないのか?」
「本人に聞くのが早いかもね、偉い身分なのに前に出てくるみたいだから。」
データバンクに入れられた、一機のMS〘デルタ・ガンダム〙と表記されたそんな機体を見つつ、それを訝しんだ。
私は急いで孤児院へと向かった、焦りを覚えたのがあまりにも遅すぎた事に、自分自身への苛立ちはそれはもう自分を追い詰めるのに充分に機能した。
命令通りにそこに到着すると、まだまだいるではないか子供達が。
何でこんなところにいるのか理由のわからない程に呑気に遊んでいる人達の姿が。
「皆さん!何やってるんですか!死にたいんですか!だいたい、なんでニコルさんもラクスさんも、みんなを説得しないんですか!」
拡声器で響く声に皆が驚いているところを、まるで意に介す事無く堂々と歩いてくるニコルさんとラクスさん。
戦争に行った人間の肝の座り方は正直どうかしている、まさか本当に頭がおかしくなってしまったのではないか?
「皆で、君が来るのを待っていたんですよ!さあ、一緒に避難しましょう、アークエンジェルへ!」
アークエンジェルへと言った、と言うことはつまり私が来なくても避難したのだろう。
一応の配属先の名前が出た事に、私は一瞬戸惑った。
すると、次の瞬間に海が盛り上がり一隻の船が姿を表した……。
「これが……アークエンジェル…。」
私はこの艦の外観を見ることが初めてだった。初めてというのに語弊があるけれど、確かに写真ではある。けど肉眼では初めてだった。
確かに中には入ったけれど、結局モルゲンレーテでテストパイロットやっていたから、とうとう外から見れなかったけれど。
その美しい白亜の船体に、私は思わず見惚れた。
「さあ、皆さん行きましょうか!」
ニコルさんが言うのが早いか、キラさんの機体とフレイさんの機体も現れる。
二人して何やってんだとか、そう思ったけれどたぶん2人とも家族を避難させに来たのだろう。
それ程多くはない孤児院の人数は直ぐ様に、アークエンジェルの中へと収容されていった。
中へと入ると、なんとモルゲンレーテで働いていた人達がわんさといる。
この事態に、私は驚愕した。
デルタガンダムは可変機のあのデルタガンダムです。フレームをデルタプラスと共通にした、ガンダム顔のデルタプラス。
なお、バインダーにフィン・ファンネルを2基搭載し、可変時にはビーム砲として、MS形態でもファンネル、肩部ビーム砲兼用。サイコミュを搭載している。
ガンダムデルタカイみたいにゴツゴツした印象では決してありません。
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