その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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破砕

俺達がユニウスセブンへと向かう中、既に破砕作業が始まっている時刻となってしまった。

しかし、それがどう言う風に作戦が変わるとか、そう言うのは状況によりけりなのだと、この時戦争というものの姿形を見てしまった。

 

「はぁ?戦闘が始まってるだって!!」

 

「はい。先行しているハンザ同盟のアムロ隊とこちらのジュール隊が交戦状態に入った…ということみたい。

敵の情報は逐次そちらへと送るけど、気を付けて。」

 

送られてきた敵の機体情報は殆どがザフトの機体で、クルーゼが言っていた状況とほぼ一致している。

これじゃあ本当に、ザラ派が関与してるとかそう言う冗談みたいな状況じゃないか。

 

「破砕作業……、どこまで進んでるんだろうな…。」

 

「シン、一応巨大構造物だから微細な重力があると思う、戦闘に影響は無いと思うけどちょっとは注意しといてね。」

 

言われなくたって判ってるつもりだ。

 

「シン・アスカ、インパルス行きます!」

 

射出され俺の後ろを着いてくるように飛行していく、チェストフライヤーとレッグフライヤーが飛行し始める。

近傍に接近するまでそのままを維持しつつ、隊の皆と連携の確認をし始める。

 

眼の前に広がる巨大な岩塊、ユニウスセブンからは赤い光が煌々と点滅し、中央の破砕予定地点では各所から粉塵や、爆発が見える。

戦闘…それもザフトどうしの同士討ちが起こる可能性がある、非常に危険なものだ。

 

「各機、良く聞いてくれ…。」

 

向かう最中、コックピットに声が響いた。それも、アスラン・ザラからの声が。

 

「敵はザラ派なのは確定したと思う、奴等は敵だ。どんな情報を持っていたとしても、極力撃墜して欲しい。

敵の練度は解らないが、彼等は元退役軍人。君等よりも実戦経験が豊富にある、時に機体性能が劣った機体がパイロットの技量によってそれを凌駕してくる事もある。

だから、破砕作業の援護を大前提として気を付けて行動して欲しい。」

 

「先達としてのアドバイス…、そう考えてよろしいですか?」

 

ルナがそう言う、ちょっと冷めたような言い草に当たりが強い感じ、少しご機嫌が良くないのかもしれない。

 

「そうだ、特に連中は死兵になっている。そう言う連中がどんな行動を取るかなんて、判ったものじゃない。基本自爆覚悟で来ると覚悟してくれ。」

 

「あんまり、味の良いものじゃ無さそうですね。」

 

俺達は地表に降り立つべく、ユニウスセブンへと急行した。

 

 

………

 

俺が請け負った宙域も既に戦闘が開始されて、幾つかの機体の残骸が宙を舞っている状況だった。

不気味な程に無機質な情景、固まった氷の断片…。そして、誰のかも解らない、そんな人形が浮かぶ宇宙…。

 

眼の前に、既に掘削作業に入ったメテオブレイカーが存在していて、きちんとそれが機能している。

だけど、戦闘という戦闘が終わったかのように静まり返り、周囲から諍いが消えていた。

 

「こっちはもう終わってるんだな。」

 

他方と比べて戦闘の光もなく、何もかもが静寂に包まれた場所は妙な程に敵も味方もいなかった。

 

来た事に損をした気分になったが、ホッとした自分もいる。だけど、そんな事をしていると何処からともなく、ジンHM2が現れた。IFFでは味方と出ていたけれど、そのジンの狙いはメテオブレイカーだと直感がそう告げた。

 

ライフルがブレイカーに向けられる瞬間、俺は機体を動かしそれの迎撃を開始した。

それに気がついたのか、ジンもブレイカーへの照準を辞めて俺の方へと機体を傾けた。

 

その動きは俺達よりも遥かに鋭敏で、何処となく相手をした事があるような、そんな気がする程に動く。

俺がライフルを構えると不規則に動き、射点を絞らせないように、バーニアをフルで使って避けてくる。

 

機体性能はこちらが有利にも関わらず、まるで時間稼ぎをするかのように反撃を最小限にしてくる。

 

「なんだってこんな事をする!今更やったって戦争は終わってるんだぞ!!」

 

通じるかも解らない無線に応答してくるかも解らないそれに、怒りをぶつけて叫んだ。

 

「だからこそ、戦いをしたいんだよ。シン・アスカ君。」

 

「はあ?」

 

俺はその声に聞き覚えがあった、それもここ数ヶ月前の事であり実際空耳だったら良いと思う程には、その声に愛着のある人だった。

 

「教官!なんで!!」

 

「正解だよ、しかし良い機体に搭乗しているね、だが君はまだ未熟!」

 

言葉を、交わしたことのある人物の登場に俺の頭は少し困惑に染められた。

それが隙を作ってしまう。

先行していた動きが僅かに緩慢になり、そこを反撃されると盾でガードをした瞬間に盾が爆発した。

カービンに気を取られ、その下にマウントされていたグレネードが見えなかったのだ。

 

対装甲榴弾、それが直撃すると爆風により盾が大きく仰け反り、インパルスの保持機能の限界を超える慣性が働いて、機体内部にアラートが鳴り響く。機体がそれに追従するように動き、大きく盾に向かって仰け反る。

そのままなんとか体勢を立て直した瞬間には、眼の前に迫ったジンの姿があった。

 

右腕からいつの間にか消えたカービンを左手に持ち替えて、左手腰部にある重斬刀に右手を伸ばし、抜刀の容量で振り抜かれるそれを、紙一重で回避するとライフルだけが切られる。

手元で爆発しようとするそれを目眩しに、俺はサーベルを取り出すと、果敢にそれを振り下ろした。

 

互いの盾とサーベルが交差する。

 

「今の判断は赤点だな、見てみろカービンが君のコックピットを、狙っている。」

 

左手でしっかりと盾を保持している俺の機体とは違い、腕に固定されている盾でガードしている敵は、カービンを俺のコックピットへと向けている。

それでも、それが火を吹く事はなく寧ろ嘲笑されている。

 

「舐めやがってぇー!」

 

「ハハハ、良い動きだが圧倒的に足りないな経験が!」

 

「なんだってこんな事を!」

 

互いに剣撃が相手を襲い、離脱と集合を繰り返す。

 

機体内部のアラートは鳴り響き、俺は焦りを覚えている。時間が…足りない!

段々と動きが判って来たけど、決定的な隙がなさ過ぎる。

 

「シン!時間よ!戻って!」

 

「戻れって言ったって!」

 

ルナからどこからか通信が来るけれど、そんなものを構っていられる暇なんて無い。

一瞬の返答の隙が命取りになる、そんな攻撃ばかりが俺を襲ってくる。

 

「我々は日々研鑽した、来る〘白い悪魔〙との決戦を!しかし、戦争は終わった!!だからこそ、君達を育てたのだよ!

そんな時に勧誘されたのだ、やらない訳が無い!!」

 

戦争の狂気に染まったその言い方は俺には到底理解出来ない。目的の為の選択ではなく、選択の為の目的なんて狂ってる。

 

センサーが新たな敵影を捉え、俺は窮地に立たされるかと思われた。

その時、眼の前のジンに頭上から1条の光が降り注ぎ、跳ねるようにジンは後退した。そして着弾箇所が、熱膨張によって爆ぜる。

 

インパルスとジンの間に空白が出来ると更に追い討ちをかけるように、細いビームが連続してジンを狙いカービンに直撃すると、これも熱膨張によって爆発する。

 

周囲の敵影がその攻撃の来た方向へと向くと、一機のMAが変形しインパルスに何処か雰囲気が似た顔が出現する。

盾にはユニコーンのエンブレムが輝き、それに突貫したジンが盾から出たか細いビームに、コーティングが施されている筈の盾を融解させられ、吹き飛ばされ、次にコックピットを狙う一撃で葬り去られる。

 

「白い悪魔が…、やっとお出ましとはな…。シン・アスカ、良いパイロットになるのだな。」

 

「何を言っているんだよアンタ!」

 

いつの間にいたのだろうか、十数機のジンがたった一機のMSに向かっていく。

何処からかビームが降り注ぎ、次々と火を吹いていく。

そう、ドラグーンのような兵器がそれとは比較にならない程の猛スピードで機動して、次々と落としていく。

 

猛スピードで機体同士がすれ違うと、次の瞬間にはジンが落とされていく。

効率化された最小限度の回避は、ビームの間を縫うように動く。

2発撃つと当然のように火を吹いて落ちていく、そして教官の機体が最背後完全に死角となった辺から斬りつける、それを左に半身をずらして交わし、盾から発信されたサーベルによってジンを真っ二つに斬り伏せた。

 

「シン・アスカか、離脱時間を一分過ぎている。

直ぐに帰投を始める。俺の機体に捕まるんだ。」

 

「は?いや……判ったよ!!」

 

眼の前で起きた瞬く間の出来事を処理する前に俺は、機体を可変させたこのTMSの取っ手に機体を掴ませる。

すると急加速しつつ、岩塊の間をスルスルとまるで未来が見えるかのようにそれを避けていく。

決して、習う事のない危険な操縦を物ともせずインパルスがいることも忘れずに抜けていく。

 

「ルサン大佐、こちらアムロ・レイ。時間通りに照射を開始せよ、俺は直ぐに脱出する。」

 

無線も入っていないのに、そんな言葉を出す彼を俺は疑問に思った。接触回線だからこそ、俺にはその声が聞こえているけれど、こんな場所からあんな場所まで聞こえるものかよ。

 

「シン、その機体は大気圏内飛行は可能か?」

 

「いや出来るっちゃできるけど、このまま行ったってバッテリー持たないんだが!?」

 

「そうか、じゃあ俺の機体に乗っていろ。コイツなら大気圏を簡単に突破出来るからな。

そろそろ…時間だな。」

 

俺の機体のバックカメラが捉えた映像には、あまりにも眩い光が一点に集約されて、それから一気にユニウスセブンだったものを消滅させていく光景だった。

 

それと同時に、ミネルバが大気圏に突入したという画像情報を入手し、そちらへと機体をよこして欲しいと言うと直ぐに了承したのか、アムロ・レイは機体を傾けながらミネルバの近郊へと降下していった。

 

 


 

「宇宙空間を地球に向けて航行していたユニウスセブンですが、大気圏への侵入前に蒸発したとの事ですが…、大気への影響等はないのでしょうか?」

 

「はい…蒸発した岩塊が雲のようになる可能性は充分に考えられますが…」

 

報道管制が解かれて、私達の日常が戻ってくるという事象が始まった。

ユニウスセブンは結局のところ地球に落ちてくることもなく、ザフトとハンザ同盟の手によって文字通り消滅したらしい。

 

そんな日常が戻った報道だけれど、そんな情報を私はアークエンジェルという戦艦の中で見ているのだから。まだまだ全然、日常じゃない。

艦内の散策をしつつ、色々な部屋の内装を覚えていると声が聞こえてきた。

 

「ラミアス艦長、ちょっと良いでしょうか?」

 

「ラクスさん…どうしたの?」

 

「いえ、実はちょっとした事なのですが、私とニコルを届けて欲しい場所があるのです。」

 

そんな話が聞こえてくるのだ、大丈夫なのだろうか?

勝手に動いて命を危険にさらしているという事が解らない二人じゃないのに、どうしたのだろうか?

 

「届けて欲しい場所ね…、因みにどちらへ送り届ければ良いのかしら?」

 

「カーペンタリアに行く必要があると思ったので。」

 

嘘でしょ、ザフトの地球での最大拠点じゃん。そんなところ行けるわけ。

 

「行けなくは無いと思うけれど、何をしようと言うの?」

 

「コンタクトを取りたいのです、私のご友人達へ。」

 

ご友人…、絶対に友達って意味じゃないって。やっぱりこの人たち、恐ろしい裏があったりするのかな?

 

「それでなのですが、お一人連れていきたい方がいまして。

例えばそう、ちょうどそこで盗み聞きしている方が良いと思います。」

 

その件の人物はきっと私だ、そしてその声と同時に私がいる場所に、ヌッと顔を出してきたニコルさんが笑顔のまま私の手を引いて艦長の眼の前に連れて来る。

 

「キラ君には……、内緒にしなきゃね。きっと彼女の事で取り乱すかもしれないから。

PTSDに陥ってる可能性があるし、出来る限り負担は減らした方が良いわ。」

 

「そうでしょうね、彼は今少々心が荒んでいますから。ニコル、それで良いでしょう?」

 

「ええ、僕はそれで構いません。ですが、フレイさんには伝えておいてください。もしもの場合、キラを止められるのは現状彼女くらいですから。

アスランは立場的に大変らしいので、まあカガリさんの護衛をしっかりやってくれるのが一番です。

ですが、少し戦力が物足りないなぁと思っているんですが、虎さんとお電話繋がりますか?」

 

虎さんって誰よ。

というか、私がいなくなったらモルゲンレーテの人達が探し回るんじゃ。

 

「そうねぇ、最近やっとお店が周り始めたとか言っていたから、ちょっと可哀想だけれど、当たってみるわ。

それと、カガリさんが帰ってきたらちょっとお願いしてみます。一応、私は隠密部隊のトップみたいなものですからね。」

 

「あの〜、そんな大事に私を巻き込むのは構わないんですけど…私は本当に必要なんですか?」

 

「ええ、戦争が始まるかもしれない状況をなんとか止めなければなりません。

ザフトの方へ直接乗り込んでみますから、少しトリックをお手伝いしてくださるかしら?」

 

少しの間まだオーブに居て良いらしいけど、いったい私はどうなってしまうんでしょうか?

 

 

 

 




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