その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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再会

艦内が、ガヤガヤと騒がしい。

内装系は修理する箇所が無いとは言え、ちょっとこれはどうなのか?と、部屋からレクルームに顔を出す。

 

「あっ、シン。あんた外行かないの?」

 

「行かないの?ってさ、俺オーブ出身だからさ観光だとかそういうのあんまり面白くないんだよ。」

 

せっかくオーブに来たんだから、観光でもしてきなさいとそう言われているけれど、一応俺達軍人なんだからそんな事でいいのだろうか?

 

「半舷休息になってるはずでしょ?だいたい、こういう時は外に出ないと鬱屈した姿なんてらしくないわよ。」

 

「らしくないね…。あんまり行きたくないっていうのはさ、別の意味もあるんだけど?」

 

そう言うと、ルナは合点がいったのか済まなさそうな顔をする。そんな顔して欲しくないんだけど、なんでそんな顔するんだよ。これは俺の事であって、皆には関係無いって言うのにさ。

 

「ねぇシン!あのさ、じゃあ観光周りの案内やってくれない?」

 

メイリンがそんな事お構い無しとでも言うように、ズケズケと入ってくる。悲観にも浸らせてくれないのか、それとも俺の事心配して言ってるのか知らないけれど、本当に臆しない性格だな。

 

「はあ?観光周りって、完全に遊びに行く気満々じゃん。」

 

「駄目かなぁ?」

 

駄目とかそう言う事を言われるけれど、俺だって行きたくない時とかはあるんだけれど…、ヨウラン達の目線が痛い。

何だよ、まるで俺が2人を虐めてるみたいじゃんか。

でも、案内ったってそんな事したくないけど…、でもそうだなぁ俺も行かなきゃ駄目だよな、けじめ付けなくちゃ。

 

「良いよ、ただし俺の行きたい場所も回るからな!」

 

そう言うと喜び勇んで支度をし始める2人に俺は、軽装で良いかと思って数少ない私服で外へと繰り出した。

 

あれからかなりの時間が経ったと思う。両手に二人の荷物をぶら下げて、まだまだ買い足り無いと言わんばかりにショッピングを続ける2人。

日が傾くほどではないにせよ、1度帰ったほうが良いような気さえする。

 

「あのさぁ、荷物大量すぎるから1度戻るかしないと大変な事になってるんだけど。」

 

「あ、ごめんね。じゃあさ、郵送とかって出来ない?」

 

郵送か、出来なくはないはずだけど。あぁ、確かにあったな。

 

「あるよ、けどお金かかるけど?」

 

「お金は余裕があるから、ほら軍務のせいでプラントだとそんなに買いに行けないじゃない?その分ね!」

 

ウィンクしながらそう言うけれど…、手続きするの俺なんだよなぁ。

 

「なあ、そろそろお腹とか空かないか?」

 

「え?う〜ん、そうよね。じゃあ、案内してくれない?」

 

俺は2人を連れて漁港があった場所を目指す、まだあるのならアレもこの時間帯でやってるはずだ。

 

「ここって、漁港よね。プラントにも養殖してるのあるけど、こんなところ見て楽しいの?」

 

「いや、そろそろだと思うんだけど……あ、あった。」

 

大型南マグロの解体ショー、戦争前とかはこういうところで観光名所だったところだ。

昔より人は少ないけれど、今もやってるんだ…良かった。日常が戻ってるみたいで。

 

「え!!何アレ!うわっ!グロテスク。シン!あれ食べるの?」

 

「可哀想…、なんであんな事。それに、あれなに?剣?」

 

マグロ切り包丁、やっぱり凄いなぁあれ。

 

「プラントにだって海鮮ジョンゴルあるじゃん、あれだってこうやって作られてるんだから、グロテスクとか言うなよ。」

 

「あ、ごめん。でも、あんな大きな魚始めて見るからさ。」

 

プラントには一応海がある。冷却だとかそういうために、天秤の下に溜まっている水。それを使った海鮮養殖が最近では流行しているけれど、本場であるここに勝てる訳もなく。

マグロみたいな大型の魚は養殖出来ていない。

 

それから二人はおっかなびっくりしつつ、二人に鉄火丼を振る舞い食事を終える。貝類は嫌いだけど、魚類はさして問題じゃないから。

 

「どうだった?」

 

「やっぱりちょっと怖かったかなぁって、正直な話良くああいうの食べられるなって。

それでさ、シン何処に行くの?」

 

次の目的地は俺の行きたい場所、確認したい事が山ほどあるけれど、今はそこに行くだけで精一杯だから。

 

「観光するようなところじゃないから、二人は先に帰っていても良いんだぜ?」

 

「水臭いこと言わないの、どうせミネルバに帰っても修理終わるまで暇なんだから。」

 

本当に、観光するようなところじゃ無いんだけどなぁ…。

 

 

……

 

車を借りて行く場所は、郊外から離れた場所にある小さな丘。そこには石で出来たレリーフがあってそこの下には、小さいながらも花壇がある。

ここがどういう場所だとか、そういうのを判る人なら簡単に判るだろう。

新しく献花された花があり、誰かが置いていったという事が判った。

 

「ここって…」

 

「戦没者慰霊碑、ここには俺の家族が眠っている…筈なんだ。」

 

「筈ってどういう…。」

 

知らず知らずのうちに視界がぼやけて来て、眼の前が見えなくなっていく。

こんなところで泣くなんて、そういう事をしたくない。だけど、俺は悔しい。

 

自分一人では、なんとも見窄らしい戦果しか上げられない己の小ささを、護られてばかりいる自分が。

あの日誓った筈だ、守りたい物がある。守りたい世界があると、弱き者を助け、悪事を挫く為にとそう思って入った筈なのに俺は何一つ頼りにならない。

 

「ちょ、ちょっと大丈夫……、じゃないわよね。」

 

あと少しでここさえも吹き飛んでしまっていたかもしれない、そんな恐怖が今更になって込み上げてくる。

 

そんな時、何処からか声が聞こえた。

 

ねぇ、キラさん。あんまり浮かない顔しないでくださいよ、辛気臭いですよ?

 

え!辛気臭いって…そんな顔してるかなぁ。

 

「してるわよ、ほらほら笑って笑って。貴方が護ろうとした人達は、悲しんでるだけじゃ拭いきれないんだから。」

 

聞き覚えがある3人の声、二人はマイク越しに聞こえてきた声だけれど、何故もう一人の声は耳に残るように覚えているんだろうか。

 

 


 

結局、私は慰霊碑に花束を置くことになった。

花壇達は元気だろうか、気休めの為に造られたそこに両親の遺体が埋まっているわけではない。

それでも、形だけでもこの地にあの人達がいたという、そういう証拠が欲しかった。

 

「辛気臭い顔してると、取り殺されちゃいますよ?」

 

「それは嫌だなぁ…やっと、結婚する決意が出来たのに。」

 

そう言いながら、私に自慢するように薬指を魅せてくる。

うわぁ、厄介なものを見たと思う。あんまり聞くと、たぶん〘フレイさんの良いところ百選〙を聞かされそうだ。

 

「まったく、待たせるんだから。良い?私は絶対に大西洋連邦には帰らない、ずっと貴方と一緒!」

 

なんで私、一緒に来てるんだろう。

イチャイチャするなら他所でやってれば良いのに、これじゃあお邪魔虫みたいじゃないか。

 

と、そんな会話も程々に歩きながら前を診ていると、どうやら先客がいたらしい。

1人が慰霊碑に齧り付くように泣いているのを、気まずそうに後ろで控えている二人の女の子。

 

あぁ、きっと泣いている人は忘れられないんだろう。失った者の大きさを、重さを、尊さを。

だからこそ、私達は前に進む為にも深く考え過ぎないようにしなくちゃならない、だって私達は生きているのだ。死人の為に命を燃やしたって、何かから大切なものを守れるわけじゃない。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

キラさんがそう声を掛ける、それでもどうやら聞こえていないのか、少年?の方はずっと泣いている。

 

「今はそっとしておいて上げてほしいんです。彼、ここで家族全員を失ったって聞いていたので…。」

 

家族全員を失った、私もそっくりだ。

でもなんだろう、シンパシーを感じると言うか何処かで見たことあるような、そんな背中だ。

 

「ねぇ、話しかけてみれば?そうすれば、そのモヤモヤ晴れるわよ?」

 

何が晴れるのだろうか?だいたい、そんな疑問をサラリと言わないでもらいたいものだ。こういうものはそれこそデリケートな話題で、私みたいにケロッとしている人なんてそうそういないから。

 

「あの、私も家族を無くしました。このオーブで、でもこうして生きています。

お互い、色々な事が積み重なって泣き崩れる事もあるかもしれません。

だけど、前を見て時折立ち止まるように生きましょう。それが、死者との付き合い方じゃないですか?」

 

「なんだよ……、その死生観。そんなの人それぞれだ………ろ………?

ハ!ハハハハ、俺は僕は幻覚でも見てるのか?

だってなんでこんな、嘘だって、だってあの日眼の前で腕がちぎれて降ってきて……。」

 

文句を言おうと少年は振り返って私を見る、何処かで見覚えがあるような。

でも、記憶に霞がかかっているように思い出せない、だけどこの感覚。家族写真を思い出そうとした時のアレと同じで、私の無くした大切なものがあるとき、いつも起こることだ。

 

そう、例えば目の前の人は私の大切な家族…、お兄ちゃん。

 

「私の方こそ、信じられない。だって、あのとき身体が何処にもなくて、生存者一覧にも乗って無くて…。それで!!」

 

ガバっと私を強く抱きしめてきた、急に締め付けられるから痛いなんてものじゃない。だけど、何処か懐かしくて全然嫌じゃない。

 

「マユ!!マユなのか?なあ、俺は幻覚を見てるんじゃないのか!」

 

「幻覚じゃないよ、でも私の方こそ幻覚なんじゃないかって、そう思えてる。ねぇ、お兄ちゃんの前はなんていうの?ううん、自己紹介は、せえの、でやろう?

 

せえのマユ〘シン〙・アスカ!」

 

私は、この日失ったものが突然眼の前に現れたことに驚愕した。

 

……

 

その後、なんとなく私達六人は慰霊碑に花を添えたりした後、そこら辺に生え始めていた雑草だとかを採ったりと、そう言う作業を軍手を嵌めて始めた。

ボランティア活動は、ここを管理している人達の持ち回り。行政だけに頼っていると、いつの間にかボサボサになってるからね。

 

「ふぅん…、じゃあお姉さん達はザフトの軍人さんなの。」

 

「ザフトっていうか、プラントのザフトね?まあ、一応成績優秀者で、上位陣よ?」

 

結構すごい人のような、聞くところに言う赤服だとかいう人なのだろう。昔何処かで聞いたことがあるお土産と似たような響きだけど、そこは考えなかったことにしよう。

 

「私はパイロットじゃないけど、コンピューター関連なら負けない自信あるんだから!」

 

「はいはい、メイリンはハッキングとかは凄いものねぇ。」

 

「ふぅん…、じゃあプログラミングとか得意なの?」

 

横からそう言う話をしたのは、誰であろうキラさん。コンピューターの事、特にOSとかの話になったからか食いついたのだ。

 

「マユは…、今は中学生だよな?」

 

「うん?ううん、中学生じゃないよ。でも、そうだなぁある意味では中学生だけど、一応オーブ軍なのかなぁ。」

 

「ハア?なんでマユがオーブ軍になんか!」

 

オーブ軍になんか!だって、なんかムカつくなぁ。

 

「オーブ軍の何が駄目なの?確かに私はまだ12だし、結局雑用だとかやってたりするけど、立派にやってるんだよ?

なによ、国を捨ててさ!」

 

「捨てたって…、俺はオーブにいたくなかったんだ。色々と思い出すから、それに今のオーブにいたくなんかない、だってそうだろ!連合なんかに尻尾振っちゃってさ!

あいつ等のせいで、オーブは焼かれたんだぞ!!」

 

だとしてもだ、それでも。カガリさんがどんな思いで政治を引き受けているのか、どれだけ辛い思いをしているのか解らないんだろうな。だって、この国にいないから。

 

「確かに焼かれたよ、でも今のオーブの復興を手伝ったのは連合の大西洋連邦だよ。

だから、文句なんて言えない。そんな事も解らないの?」

 

お互いに引けないところはある、それがどこまでも行くから兄妹喧嘩というものは収拾がつかない事もあるんだ。

 

「こんなに花が綺麗なのに、そんな色も褪せちゃうような話を続けるなんて、勿体ないわよ。」

 

その言葉が耳に入る。

声の主を見れば、草むしりをさぼって海を眺めている。まったく、こういう時だけぬけぬけと!

 

「せっかく互いに生存確認出来たんだから、そんな陰険な話よりももっと将来性ある話ししたら?

これからどうするのかとか、どうやって行こうだとか。

だいたい、どうして明るい話からそんなヒートアップする話になるのよ。

マユもマユだけどシン君もシン君だよ。お兄ちゃんなんだからさ、もっと妹には気を使わないと。」

 

「貴方は部外者なんですから、口出さないでください。」

 

部外者、確かに私達は家族とは今は関係ない。だけど…。

 

「キラ、部外者だってさ。せっかく、人が戦って護ろうとしてあげたのに、お姉さん悲しいなぁ。キラもそう思うでしょ?」

 

「ううん、確かに家族の間に挟まるのはどうかと思うけど、部外者は言い過ぎだと思う。

だって、こうやって生きててくれるだけで、僕は少しだけでも心が救われるから。」

 

二人はあの日戦ってくれていた、キラ・ヤマトとフレイ・アルスター。

だからこそ、そう言うことを言う権利がある。

 

「え?貴方たち、ミネルバをエスコートしてた二人なの?」

 

「そうよ、それにしても立派な船よね。アークエンジェルみたいに優美だし、何より乗組員の練度も高そうだし。本当に、昔のアークエンジェルとは大違いだけど。」

 

そんな二人の武勇伝もとい、苦労話が始まった。

 

 




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