その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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皆さん、良いですか良く聞いてください。
原作はとうの昔に始まっているのに、未だに戦争が起こっていないのです!


面の外交

 

 

連合とプラントの間には大きな溝ができていた。しかし、ユニウスセブン落下未遂事件から既に3週間が経過しているというのに、互いに静観を決め込んでいた。

本来ならばここまで緊張状態が続けば、瞬く間に火達磨になる世界。

 

しかし、連合もプラントも無視できない相手が宇宙に存在する。ハンザ同盟という第三勢力の進出によって、引き絞られる筈のトリガーが、更に重くなっていた。

相互確証破壊には、バランスというものが求められているからだ。

 

事態の発生後、速やかなる対策をしたハンザ同盟はハルバートン率いる艦隊が、プラントに対する恫喝行動である観艦式を行い、アムロ准将隷下の艦隊が、表月面方面にドミニオンを回収するために展開する。

 

連合の表月面基地である、プトレマイオス基地は少なくない艦隊をそれに対する警戒配備へと回さざるをえず、連合の宇宙に対する艦隊は、その数を多方面に振り向けるために、プラント侵攻への充分な数量確保が行えない状況となっていた。

 

これがムルタ・アズラエルと故シーゲル・クライン、故ウズミ・ナラ・アスハが画策した、武力による均衡である。

アズラエルとしては、兵器産業よりも基幹産業を促進させる為に必要な平和という時期の延長の為、シーゲル・クラインとしてはプラントの緩やかなる改革への時間稼ぎとして、造られた形ではあるがそれが当に機能していた。

 

連合は非常に恐れた。

特にユニウスセブンを蒸発させた、ソーラ・システム〘太陽系〙という名の兵器は、その概要こそあまりにも単純故に恐ろしさが際立っていた。

 

高々鏡をしきつめるだけで、ジェネシス並みの破壊能力を誇る兵器へと転用させられるという、あまりにも軽いコストに対するリターンの重さ。

たった20分で展開できるという手軽な、戦略兵器。

 

現在絶賛建造中のレクイエム等よりも遥かにコストパフォーマンスに優れて、平時には保管期限が定められたそれは、コロニーの鏡面に使用されるという、生産性の高さに連合は舌を巻いた。

 

そう、高コストでそんなもの造ったとして平時に使用できない物を、何時までも管理する事は予算の都合上出来ないことで、再び軍備を増強しようにも、長期的な戦争の結果連合の予算も当初よりは少なく、核を使う方法が最もリーズナブルであっただけに、それを躊躇なく使うことが出来なくなった。

 

核を、使用した場合。ハンザ同盟は直ちにプラント側で参戦し、月面基地を叩きのめして宇宙から完全に遮断して来るだろう事は容易に想像出来たからだ。

結果、連合はプラントへ最後のトリガーを引けなかった。

 

 

他方プラントはハンザ同盟に多数存在するという、所謂〘ニュータイプ〙という予知者とも言える存在の確認が取れてしまったばかりに、軍事的な見直しをせざるをえなくなった。

前大戦の折、生産されたクローン達はその技術を研究所の完全自爆という形で姿を消し、完璧な形でその研究そのものが途絶えてしまっていた。

 

正体も掴めぬままに、プラントはニュータイプという存在を恐れた。

コーディネイター以上にMS適性があり、身体能力では分があるもののMS戦において自らのアドバンテージを完全に覆されてしまっているということだ。

 

それだけに、日進月歩するMS技術に磨きをかけなければ、未来予知するかのような動きをする、そんな集団に勝てる訳が無い。

と言う、〘大いなる誤解〙をしてしまっていた。

 

勿論、デュランダルはそんな事梅雨ほども思っていない。突然変異的に優秀な存在が、急激にその数を増やすには精々20年。

一世代分の時間がかかる筈であるからだ。時間としてあまりにも長い余裕があるというのを、デュランダルは見越していたが、旧ザラ派出身者はそうもいかなかった。

 

既に残党へと成り果てた彼等だが、それでもプラント内部にヒタヒタと漬かるまるで漬け物のように塩分多めな、そんな彼等はその現状に不満を覚えていた。

 

たった2年すら我慢ができない彼等は、再び旗を掲げる為にパトリック・ザラを本国の監獄より脱出させるという、本人すら望んでいない事を計画し、ユニウスセブン落下作戦に同時並行して行われたのだ。

 

その結果、どうなったか。パトリック・ザラ本人はその強引な手段によって凶弾に倒れた。

これは、瞬く間に同じ急進派と呼ばれた者達に激震が走った。御旗は崩れ、担ぎ上げる神輿はもう無い。

 

牢獄の襲撃という、隠しようのない犯行はそれだけで彼等を、弱体化させた。そして、プラント内部における戦争の火種は急速に萎えていった。

無計画に感情論で動いた結果、予想外に無意味な事となったからだ。

 

それと同時に、地球へと降下しオーブへと寄港したドミニオンとともに行動を共にするアムロ准将は、オーブ首長であるカガリ・ユラ・アスハとの会談を行っていた。

計画よりも段階として少し早いが、フェイズの移行と言うことでもある。

 

 


 

絢爛豪華!と言うほどでもなく、そこそこな雰囲気のあるこのオーブの会談室には私率いるオーブ首脳陣と、アムロ・レイ率いるハンザ同盟外交団が対面していた。

 

まずはオーブ代表として私は挨拶を交わすが、やはりこういう仕事はまだあまり慣れない。

しかし、一国の主として私は振る舞わなければならず、それが却って必然的に教科書通りの動きに成るのは好都合だった。

 

例えば周囲の人間が、オーブで良く政務官が着る紫色のスーツを、私は着ておらず。

首長として、神輿の飾り物としてスーツスカートとなっていた。

 

「本日の議題なのですが…、我々はオーブにも我がハンザ同盟へと参加願いたいという事なのです。」

 

連れて来られた文官達は、アーモリー・ワンからずっとドミニオンに乗り込んでいたという、ハンザ同盟の外交使節団だ。

彼等はプラントとの、通商条約を数週間前に締結させたばかりという事であるから、内容はどうにせよその実力は確かなのだろう。

 

一見して鬘だと判る髪を、さも堂々とした不自然な自然体で先程の言葉を、言う姿に不覚にも笑いが込み上げてきてしまった。

頭では判っている、しかし緊張のせいで精神的におかしくなっているのだろう、だから笑いそうになっているのだ。

それとも、態となのだろうか。

 

「我々としてもありがたい申し出ですが…、現状それをハイそうですかと、受け入れられる土壌に無いのですよ。

我々オーブの理念はご存知のように、それだけでなく国民そのものがそれを望んでいるのです。」

 

私の直ぐ近くに座り、この会談を取り仕切るアナト・ロマ・セイランという男。

彼がこのオーブの復興の立役者であり、1つ減ってしまった五大氏族の椅子に座った男だ。

 

政治手腕は見事なもので、私では到底できなかった大西洋連邦からの特別な戦後手当は、彼の功績と言っても過言ではない。

最も相手が、当時はムルタ・アズラエルであったこともあり、最初から折り込み済みだったのかもしれないが。

 

そんな彼の後継者である、ユウナ・ロマ・セイランは私の事をねっとりとした視線で見てくる始末で、虫酸が走る。

気をしっかりと持っていなければ、私は奴の毒牙に掛かってしまうのではないかと、そう思わずにいられない何とも言えない男だ。

 

それでも、政務は淡々とこなす姿はそれなりに様になっているのだから、人は見かけによらない。生理的には嫌だと思うが。

 

「我々は曲がりなりにも、大戦中は中立を貫き通した事は、オーブの貴方方と同じです。

我々も血を流した。無力だった、だからこそ今我々は力を着け着々と軍備を増強し、秘匿されていた同盟を白日のもとに晒したのです。

武力による均衡はベストとは言えない、ですがベターではある。

互いに相互保証し合えば、大西洋連邦だってそうそう手は着けられなくなります。」

 

「それは、貴方方が宇宙にいるからこそ言えることであり、我々オーブは地上に住んでいるのです。

根本的な現状こそが違う、それ故に簡単にハイそうですかと受け入れる事は出来ないのですよ。」

 

議論は平行線を辿っているが、見た目に反して向こうの外交官達に焦りは見えない。

逆に言えばこちらは少し、感情的になり始めている。

もし、今この同盟に参画したとして見返りはどれ程のものになるだろうか?

 

宇宙空間における、彼等でしかなし得ない金属加工物。

所謂ガンダリウム(ルナ・チタニウム)系統の、超軽量硬化素材をはじめとした核融合技術。並びに、ミノフスキー物理学というものが導入出来るという。

 

逆にリスクとしては、我々の技術が流出する事だろうが彼等に対する我々のアドバンテージは何か、恐らくは大気中の航空力学、熱力学が発達し辛い環境から、他惑星に対する移住計画は共に同等水準。

尤も、純粋水爆を兵器利用可能な彼等は、それらを利用する核パルス推進を多分に使うようだが。

 

やはり地上でしか作成不可能な生産物が、我々の重要輸出品ともなるだろうし、端的に言ってやってみなければ解らないのが現状だ。

地上でしか作り出せないものは、基本低重力及び人工重力で創り出し辛い重金属。

そして、特に宇宙空間で創り出し辛い物品として()が挙げられる。

 

なるほど、確かに同盟となれば其れ等の製品や電装系統等も、共同開発出来、尚且つ互いの利益を享受する事が可能ならば、経済的に言えばオーブの利益は大きい。

他方、戦争になれば自動的に反撃義務が生じ我々は矢面に立って、再び地上戦を演じなければならないか……。

 

平時ならばパートナーとして相応しく、戦時では厄介者であるからどちらが良いか…。不安定な政情を鑑みれば、どっち付かずという訳にも行くまいに、私達は恐らくは連合に与するだろうから、やはり将兵を見せしめに最前線に送らざるをえなくなる…。ならば、どちらとしても同じという事か。

 

今回のユニウスセブン落下未遂事件での対応に、落下予告地点であった赤道連合は彼等に接触を図ろうとしているらしいし、ここは彼らも巻き込んだ、地球上でも大規模な中立同盟と言うのを形成するのも有りか?

 

そうすれば、オーブが抱える軍事力も加わり赤道連合の保持する軍事力もあれば、連合。特に大西洋連邦と、なんとか渡り合えるか…。

皮算用だが、今まで世界を見てきたのだ。色々と考えて発言させてもらおう。

 

そう決意したとき、ふとアムロ・レイが私の顔を見て、まるで子どもの成長を見た親のような顔をしていた。

 

「済まないが、発言させてもらっても良いだろうか。」

 

私の突然の発言は議場に轟いた。

 

 


 

明日にはここオーブを、ミネルバが出航する。それと同時に、俺はプラントに上がるかそれともここオーブへと残るかという、瀬戸際に立たされていた。

 

今、プラントではとある事件が起きている。政治犯を収監する為の監獄を何者かが、襲撃するという事態だ。

襲撃犯は言わずもがな、ザラ派残党。大方父上を奪還しようとしていたのだろうが、それが裏目に出た。

 

汎ゆる事を一般以上に出来るコーディネイターという人種の、最も愚かな部分は、己の力量を過信して過大な評価を自分にしていると言うことだろう。

前線で戦争に出ていた者達ならば判るだろうが、所詮コーディネイターと言えどただの人間に過ぎない。

 

どれ程尊大にしようとも、結局は働きアリの一匹に過ぎないんだ。そんな事も忘れて、計画するから綻びが産まれる。

 

襲撃事態は上手く行ったのだろうが、そんな事よりも重大な事が抜けていた。

そう、襲撃の直後建物を破壊した時に父はそれに巻き込まれ、潰されたのだ。

 

馬鹿なことをと、最初に聞いたときそう思った。母上はそれを聞いて、それほど強くない握力を力の限り握り、俺に少しの間離れていて欲しいと言って、静かに泣いていた。

 

どれほどの事が有ろうとも、好きあっていたのだろう。だからこそ、互いにその理性を保つのがどれ程難しい事だったのだろうか。

母上は、ザラ派と言うものに対して嫌悪感を持っていたが、それに更に拍車が掛かった。

似たもの夫婦だったのだろう、まるで嘗ての地球軍に対する父上を見ているようだった。

 

そんな中で俺は……プラントに帰るべきなのだろうか?

母上は、肯定も否定もしない。しかし、ただ一言。

 

「お前には死んでほしくない。」

 

と、言われた。もし、今ここで俺がプラントに戻った場合、プラントは俺をどうするだろうか?

首謀者の名乗るザラ派の筆頭として、刑に服するのか?それとも、俺を神輿に今度は誰かを殺そうとするのか?

 

全く解らない、解らないが。後者は最悪のパターンを引く可能性が充分にある。

それ故に、俺はそれを選ぶことが出来ないと、結論付けることは出来た。

 

……

 

護衛として、カガリが会談を終えるまで待機する。そして、その扉が開いたとき彼女は心底満足気な顔をしていた。

浮かない顔の俺とは対照的に、彼女は目的を達成出来たと胸を張っていた。

 

暫くの後に、館内に誰もいなくなった時間を見計らって彼女は座り込む俺の前に現れた。

 

「アスラン、お前の父上の事聞いたよ。残念だったな。」

 

「あぁ、だがアレは報いなのかもしれない。1人のうのうと生き残ってしまった報い。」

 

俺がそう言うと彼女は、静かに俺の頭を抱き小さく言うのだ。

 

「無理をしなくても良い、辛いなら辛いと言ってくれ。私がそれを受け止めるから。」

 

と、俺はそれを聞いて母の目の前ですら出来なかった涙を流した。

嗚咽と、声にならない後悔の情念を彼女に言うのだ、それが今彼女が俺にどう思っているのかとか、聞かずに対応する。

そんな彼女は、今の俺にとって女神のようであった。

 

ひとしきり泣き終えると、俺は事の顛末をカガリに話した。

 

「アスラン、お前プラントに帰るのか?」

 

「いや、今戻ったところでプラントで俺が出来ることなど無いだろうな、戦争が起きている訳でもなければ、危機に陥っている訳でもない。

行けば行くだけ、今度は母上を危険に晒す事になる。そうなれば、もう俺は耐えられない。」

 

それを聞くと、彼女は安心した顔をした。だが、こうも言った。

 

「事態が収まったら、共にプラントへの外遊に行ってくれないか?その時、色々と紹介して欲しい。

私をアスランの家族として。」

 

「俺なんかで良いのか?」

 

「ここ1年ずっと一緒だったろ?だからさ、今更そんな事言うなよ。」

 

そう言う彼女の薬指には、俺が上げた指輪が光っていた。

 

 




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