その蒼い宇宙を見て   作:丸亀導師

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俺達がカーペンタリアに到着したとき、既に戦闘の結果はわかりきっていた。

 

全てを破壊しようとやって来たたった一機のダガーが、基地守備隊という大多数に勝てる訳もなく、散々周囲を破壊した上大破し今にも命の灯火を消そうとしていた。

それでもまだ、果敢に突撃し死兵となって俺の前に現れた。

 

「こんな事して!何になるって言うんだよ!!」

 

俺はそんな声を出したけれど、向こうは無線を切っているのか、降伏勧告すら無視してそれでも動き、左腕一本になってもなお正確な砲火を凌ぎながら、インパルスに近付いてくる。

物凄い反応速度、まるでユニウスセブンにいた教官のように、俺の動きを予想して動き回っているのだろう。

 

俺は砲火の中を前進する。

 

「シン!戻って、射撃出来ないじゃない!」

 

どうやったところで、基地への被害を最小限にする為に精密砲撃しているのを利用されているんだ、なら俺はそれを意識して突貫するのみ。

スラスターを全力で吹かし、盾を機体の前に立てて敵の視界を奪うように俺の眼前の盾を超至近距離で、手放した。

 

盾は慣性の法則に則り、前に進んでいく。

ダガーが、それをヒラリと躱そうとした瞬間に奴は隙を生じさせる。

 

「うぉおおお!」

 

雄叫びと共に、機体を一気に踏み込み敵の死角である斜め下から一気に、右腕を切り上げた。

手負いでも、エースパイロット並みの技量を持つ相手に、俺は奇策を使ったのだ。

たった今考えた戦い方、教本なんて当てにならない。

なら、俺は勘を頼りに敵の技量を信用した。

 

そんな俺の動きに着いてくるようにスラスターを最後の力で吹かす姿に、俺は相手が生きたいと言っているように見えたけれど、その動きに呼応して、俺はオートバランサーを落とし機体が沈み込むのを利用して左腕のサーベルを起動し、フェンシングのように、突いた。

 

 

……

 

「おおい、次はこいつを運んでくれ!」

 

そんな声が響く、基地での作業。

結果的に俺はダガーを行動不能にして、基地を守った。そう、眼の前の守るべき者を守ったのだ。

だけど、そんな俺に待っていたのはルナの罵倒だった。

 

「シン!何であんな無茶するのよ、きちんと集中砲火すればあんな危険な行動取らなくても、簡単に相手を落とせてたのよ!?」

 

「いや、だってあのままやってたら基地の被害が増えるばかりだったし、アレが最善だって思ったんだ!」

 

「それは結果的なものだ。万が一にもお前が落とされていれば、更に無力化するに時間が必要だっただろう。」

 

俺の味方はいなかった。

結果的な勝利を認めてはいても、そのやり方が問題視されたんだ。

確かに戦争はヒーローごっこじゃないから、結果的に良くても最悪の事態は避けなきゃならない。

だけど、そんなに責められる謂れは無いと思った。

 

そして、あのユニウスセブンで共闘した、アムロさんの事を思い出していた。

あの人は俺の事を叱責しつつも、それはやんわりとしていて尚且つ改善点とか言ってくれたのだ。

ああいう人が、上司だったらどれだけ良かっただろう。

 

「でも、俺があの時動かなきゃラクス・クラインだって危なかったんだろ!」

 

「核シェルターにいたんだから安全に決まってるじゃない!」

 

プラントに登るためにシャトルを待っていたラクス・クラインが、このカーペンタリアにはいたという。

正直顔だけ知ってるだけの有名人がどうなろうと知った事じゃないけれど、生きていたのなら良かったと思う。

 

「礼を言いにこちらに来るそうだ。これで、プラントに無事に帰ることができますと、と。

行って来いヒーロー。」

 

ヒーロー…、ヒーローは遅れてやって来るって?そんなのは本当は駄目なんだ。

誰かを守る為なら、戦う前から守っていなくちゃならない。理想のヒーローは、戦う為じゃなく誰かを悲しませない為にいなきゃ。

 

「判ったよ、でもラクス・クラインって正直そんなに好きじゃないんだよね。」

 

「文句言わないの、アンタの暴走の結果なんだからありがたく思わないとね。」

 

暴走の結果、と言いつつ。いつの間にかルナの顔はニコニコと、俺を送り出す為に笑顔になっていた。

俺を非難していた顔と違い、まるで誇らしげに俺を見送っていたんだ。

 

 

……

 

ラクス・クラインが待つと言う場所まで行って、少し待たされている。

お礼を言う相手が、どうして恩人をまたせるのか。別に俺はどうでも良いけれど、なんていうかそう言うのは常識的にこんなもんじゃないだろうに。

 

「お待たせしました、お入りください。」

 

ハスキーボイスの少年の様な声で、俺が入室する事を許可してくる。お偉いさんって本当にそうなんだなと、結局は英雄って言ったって権力とか持てば同じなんだろうか?

 

「失礼します。シン・アスカ入ります!」

 

「貴方が…、インパルスのパイロット。シン・アスカ様ですわね?私は、ラクス・クライン。

今回の襲撃犯を見事討ち取って頂いたこと、感謝致しますわ。」

 

映像とかでよく見る人だ、金色の簪?を模した髪留めをしている、最近は確か星型の髪飾りしてたからイメチェンでもしたのかな?

 

「いえ、自分は義務を果たしたまでです。」

 

「それでも、ですわ。

私はこれからプラントへと帰らなければなりません、そしてこの事態を議長へと話したいのです。

決してこれは、連合の手のものではないと私は、考えております。」

 

でも機体は連合のものだったし、どうやってカーペンタリアに侵入したか解らないけれど、そんな手を使えるのは間違いなく連合だ。

 

「前大戦も、様々な互いの誤解が戦争を引き起こしました。

私は、貴方よりも戦争と言うものを理解しているつもりでいます。

戦後、様々なものを見ました。親を亡くした子供たち、手脚を失った兵士達。

私を見て憎悪に狂う、連合の兵士達。正常な判断が出来なくなった、狂ったザフト兵士達を。

ですから、議長が誤解する前に私はプラントへと赴かなければならないのです。」

 

「でも、今のアンタは一介の民間人なんですよ、そんな事出来るわけ…。」

 

そんな反論をする俺を微笑みながら見る姿は、何処かあの日ミネルバの中で見たアスハ代表のようで、何をそんなに微笑んでいるのか、全く解らなかった。

 

「もしも、何かがあればもう一度力を貸して頂けますか?」

 

「はあ?」

 

「ザフトの赤服、シン・アスカとしてではなく。

1人の家族を思う、MSパイロット。シン・アスカとして、力を貸して頂けますか?」

 

個人的なお願い…、いや流石に駄目だろうな。でも…、そういう垣根を越えたような危機なら、ありなのかな?でも…う〜ん。

 

「ラクス様そろそろ」

 

「わかりました。では行きましょう、クラウス。

シン様、お身体にお気をつけて…。妹様によろしくおねがいしますね?」

 

「え?…、あ、はい!」

 

そう言うと、彼女達は部屋を出ていった。取り残された俺は、そこには呆然と立ち尽くした。

……、いやまてよ。なんで、俺に妹がいること知ってるんだ?

 

 


 

 

ゴウンゴウンという音が響き、私はそれに合わせて機体を動かしていく。

狭いコックピットに、ピンク色の髪に星型の髪飾りを着けた、ラクスさんと同じ顔の人、ミーアさんがコックピットの横に縋るように震えていた。 

まさか、私がブリッツを操縦して帰ることになるなんて、突然言われたんだから、秘匿しすぎでしょ。なにが!

『敵を騙すならまずは味方からと言いますでしょう?』

よ、あ〜あまったく腹立つ。 

ま、それでもガタガタしている同乗者を見ると、そうも言ってられない。

 

「あの〜、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫なもんですか!私は、こんな事今の今まで経験した事無かったんですよ!ずっとプラントにいたんです、こんな事判るわけ無いじゃないですか!」

 

そう言う彼女の声は震えていて、その瞳には今にも決壊しそうなほど涙が溜まっていた。

 

「逆になんでそんなに冷静にいられるんですか!見つかったら、殺されちゃうかもしれないんですよ!!」

 

「これより怖い環境にいた事があるから、別にどうということは無いです。

実際、もしやられるのならそれは私の実力不足なだけですから。」

 

ガタガタと震える彼女は、プラントという箱の中で静かに暮らしていた人なんだろう。

たまたま、ラクスさんの目に止まったのか、それともラクスさんの亡くなったお父さんの目に止まったのか判らないけれど、そっくりな程の見た目にしたという…。ちょっと可哀想だけど、たぶんそれ以外は自分で志願したんだろうか?

 

「ミーアさんはどうして、ラクスさんの影武者なんてやってたんですか?」

 

「なんでって…、だってラクス・クラインよ。お父さんのシーゲル様を暗殺されて、それで周囲の人が彼女も狙われるかもしれないからって、それで影武者に成らないかって言われて…。」

 

「それって誰からの提案だったんですか?」

 

「今の議長ですけど…。知らないんですか?」

 

ラクスさんの事を議長は知っていて、議長が用意したミーアさんの事をラクスさんが知っていて、周囲の人間がその関係をどのくらい知っていたんだろうか?

なんだか、きな臭い話だ。

う〜ん、これは色々と皆さんに聞いて回らないと気が済まないなぁ!

 

「ちょっと速度を出すので、邪魔にならない程度にしっかり掴まっていてくださいよ!」

 

「え!ちょっと!」

 

 

ぐぅ〜んと、速度があがっていく。アークエンジェルまで30分、海路を間違えてなきゃ良いんだけど。

 

 

……

 

そして私達は、無事にアークエンジェルへと辿り着いた。

文句を言いに、ミーアさんを伴って艦橋へと行くと、ちょうどこの艦の幹部要員がみんなの集結していた。

 

「ねぇ、どうして私に教えてくれなかったの?」

 

「教えてたら貴方はどうしてたの?」

 

マリュー艦長がそう言う、もしそれを知っていたら私はきっと、着いていこうとしただろう。

お兄ちゃんがいるのだ、任務の序にとプラントに行っても驚かない。

 

「そうなっていたら、私達も困っていたから良かったわ。

それにね、そんなにザフトは甘く無いわよ?

定員人数なんて特に、ごまかしをきかせ辛いものだもの。

そうなっていたら、最悪貴方は捕まっていたかもしれないわよ?」

 

たぶん正論なのだろう、それでもそう言うのは辞めて欲しいというのが本音だ。

 

「私達が計画変更したのも数刻程前だから、言う暇が無かったのが、正確なところなのだけどね。

それにね、貴方が持ってきたこのデータを見た瞬間、絶対に行かせたくないって思ったわ。

キラ君のコンピューターウィルスのおかげで、ザフトのデータをサルベージしている時点で、既に崖っぷちだけれど。」

 

キラさんなにそんな危険なもの作ってるのよ。

避難の視線を向けるとプイッと反対方向を向いた、まったく。自覚がある分達が悪い。

 

けど、そう言う艦長が見ているデータは、ザフトだけではなく。地球上で絶賛稼働中の海底ケーブルを使用した、通信データだった。

それによって、映し出された世界地図に十数個の光点が付加されている。

 

「カーペンタリアを襲撃した時と、同時多発的に世界中で連合ザフトを問わずMSによる襲撃が発生している。という情報よ。」

 

大西洋連邦をはじめとした、連合各国。ザフトが展開している一部地域、様々な場所でそれが行われていた。

しかも、軍事基地がない場所まである。

いったい誰がこんな事をするのか、しかも不味いことに各々が敵対する機体を使用しているから、あからさまに誰のせいかと所業を擦り着けようとしている。

 

「それで、一番の問題はこの赤点がない場所よ。」

 

そう言われてみると、そこにはある共通点があった。

 

「中立国とか、連合から脱退した国?」

 

「そう、何故彼等はそこを襲撃しないのか。色々と理由はあるのだろうけれど、一番の理由は…、戦争をするのに邪魔な勢力だから、と言うことよ。」

 

「僕らの故郷だけじゃない、南アメリカ合衆国や大洋州連邦も、そしてたぶん本命はオーブと…。」

 

ハンザ同盟。

中立国が一束になって第三勢力を形成することを邪魔する為に、連合の言う事を聞かせる国に仕立て上げる為に、そんな事をするのだろうか?

 

「ラクスさんは、自分がプラントでは絶大な影響力がある事を知っているから、急遽自らがプラントに行く事を選んだわ。

ハンザ同盟の人達は……、たぶん余裕を持って対処するでしょうね。

問題があるのは、連合の方よ。

私達にはどこにも取っ掛かりのない組織、皆大西洋連邦からの元脱走兵だとか、そう言う人達だから行ったら最後、どうなるかしらね。

だから、説得材料が無いの。

 

ただ…、手がない訳じゃないのよ。」

 

そう言いながらモニターの操作を始める艦長は、とあるデータを引っ張り出してきた。

 

「これは、ラクスさんが世界中を回っている間に作成した、とある人物の足跡を辿る物よ。」

 

「足跡?なんの為に?」

 

地図上に青い点を追加していく、するとだんだんと一箇所だけが空白地帯になって行く。

カスピ海付近に来るとその印が黄色にされている。

 

「これは、その人物の名称分布と声量データから、言葉の訛を数値化したものらしいのだけど、これにキラ君が解析したデータを合わせると。」

 

「このデータは、ラクスが自分の本当の親を探す為に作ったものなんだ、だからかなり正確なデータだよ。」

 

本当の親って?じゃあ、ラクス・クラインって名前は偽名なの?

 

「メンデルの曰くつきの人物、色んなデータから出された結果。執念深いのよねあの子。でも、普通自分の出生が思っていたものと違ったら、調べたくなるものよ。」

 

「そんなの…初耳なんですけれど。」

 

と、ミーアさんが驚愕すようにリアクションする、けれどそれを見た皆さんはその声を残念そうに見た。いや、心配そうに見た。

 

「ミーアさん、貴方にはもう少し危険な事をして貰うのだけれど…、良いですか?」

 

「え?…それって、まさかラクス様の身代わりとか…?」

 

無言の肯定が彼女を襲った。

 

 

 

 




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