【急募】TS美少女が呪術界で生き残る方法 作:うぇいうぇい
誰か二次創作で強化したげて……(おまいう)
「サケ…………サケエェェェ…………!!」
「わぁ……キモいですね」
不定形というか、崩れた顔というか。
準一級呪霊とか言ってたけど、あぷあぷしてるだけで何だか強さの欠片も無さそうな見た目をしている。
「……瞬殺しちゃ駄目ですよね?」
「いえ、構いませんよ」
「実戦訓練の意味」
お付きの人雑だな。
人選ミスったかお父様。
そう言われたとはいえ、呪霊の何たるかを知らないまま呪術師をするのも気が引ける。
少し様子見してみよう。
「『心意霊枢』『両儀の陽』『正滅は悉く』────『脊燐躍動』」
お家にあった『赤血操術』という術式を参考に組み上げた、詠唱型の技だ。
本来は血液の巡りを良くする事で身体能力を底上げするらしいが、俺のは操作対象に細胞も含め、身体の活動そのものを促進する事で強化している。
が、自分で全部やるのはまあまあ面倒だったので、詠唱で補った。
必要な時に必要なだけ、必要な部分を強化する。
それがこの技になる。
「ノメェェェェエ!!!」
「完全に吐瀉物じゃないですか……」
口らしき場所から黄土色の粘液が吐き出される。
『骨晶』の盾で受けると、ジュワジュワ音を立てて穴が空いた。強力な溶解能力付きらしい。
初戦闘で嫌な術式の呪霊と当たったなあ。
しかも、見るからに物理攻撃が効かなさそうだし、こっちの身体が溶かされる気がする。
折角発動した『脊燐躍動』は出落ちに終わった。
開発したばかりだから、慣らしも兼ねたかったんだけど、現実はそう相性の良い敵を出してはくれないらしい。
仕方無いので、当初の予定通りに瞬殺しよう。
「『老者と出離』『水命の集諦』」
指先に血液を集める。
銃のポーズで呪霊に狙いを澄ませ……
「──『血嘶・発』」
……出力調整をミスって、指先が吹っ飛んだ。
「……あっ」
呪霊にどデカい風穴が空き、建物の壁ごと爆散。呪霊はあっけなく霧散した。
明らかにオーバーキルだよ。
屋外でもあんまり使えないから、全然練習してなかったんだが、これは酷い。
「痛覚遮断しておいて良かった……」
「大丈夫ですか、お嬢様」
「あぁ、ごめんなさい。心配をお掛けしましたね────『肉骸』」
指先を生やし、ちゃんと動く事を確認して、建物を出ようとする。
「まさか、反転術式……!?」
「え?」
「えっ」
なんぞそれ。
○ ✕ △ □
反転術式とかいう高等技術が存在するらしい。
授業で習った事のない未知の技だ。是非とも習得したい。
しかし、マイナスとマイナスを掛ければプラスになるとかいうぶっ飛んだ考え方をしているが、平安時代から呪術師の間でも使われているというのだから不思議だ。遣隋使、遣唐使で中国から算術が入ってきたものだし、マイナスの概念なんて数学界の当時最先端じゃなかろうか。
では、当時の人々は反転術式をなんと理解していたのだろうか。陰陽道に習えば、確かに呪術みたいな陰の術とは相反するものだと考えはあったと思うが、それを如何にして生み出すかは別問題だろうに。
そもそも、人間を呪いばっかりの存在と思ってる呪術師って何なんだろうか。負の感情が呪いに転ずるのなら、正の感情の行き先はどこに行くんだよって話に普通ならないか?
それに呪力に関してだって、現代の頭の良い人はこう考える筈だ。
リソース不要で、人が生きていればそれだけで生産される、最高のエネルギーだと。
事業を興そうとする人間がいてもおかしくない。それこそ、呪術界の権力者達がこぞって富を独占しようとするだろう。
しかも、呪力発電さえ実現してしまえば、呪霊なんて出現する余地がなくなるし、手隙の呪術師は軍事力としては優秀過ぎるほどだ。政府ぐるみでやっていたら、日本は本物のアジアの星だっただろうに。
……なんだかこう、しっくりこない。
同人ゲームの設定の凝りとは完全に別種だ。パッと聞いてなんとなく分かる、ぐらいの緩さがある気がする。
だが、奥深さもある。特に戦闘面において。結界術なんてその極みだ。
推察するに、原作があるとすれば
「反転術式は私でも身に着けられるものですか?」
「反転術式も、結局は資質次第ですよ。できない人はできません。反転術式の出力ともなれば、更にその戸口は狭くなります。ちなみに、反転術式の使い手は現在一人も居ないとか」
ファー、笑えないわ。才能才能って、天才頼みで呪術界はよく存続できたな。
汎用化とか一般化とか、そういう概念に落とし込められなかったのだろうか。
できない人はできないで片付けるから、いつまで経っても閉鎖的なコミュニティになるし、対立が加速する。その主な例が御三家だ。
呪術師の驕りというか、慢心というか、諦めというか。
それが、呪術界が千年も前からちっとも前進しない理由じゃないか。
「……つまらない世界ですね」
「はは……同意しますよ」
お付きの人もそんな事言うとは。
こんな腐りきった世界で、気の合う人がいるものだ。
「──君、ちょっといい?」
背後から、そんな声が聞こえてきた。
声は俺に向けられているような気がしたが、こんな京都の街中のど真ん中で、か弱そうなロリっ娘に話し掛ける時点で不審者だ。ここは華麗にスルーして……
「キミだよ、キミ。和服ちゃん。その呪力量といい、ずっと身体に纏ってる結界といい……どこかの大きな家の出だったりする?」
まさかの関係者か。
付き人に目線をやると、頷かれた。
話に応じてもオッケーらしい。
「……なんですか、いきなり」
「私は、近くで道場を経営しているものでね」
振り返ると、三十前半ほどの男性がそこにいた。
……うん? 声や顔の若々しさから想像できない肉体年齢をしている。
自分の術式で丹念に解析すると、凡そ五十代後半らへんか。いや嘘つけ。
となると肉体年齢ですら、実年齢相当かも怪しくなってくるな。
「私を勧誘していると?」
「その通り。……ああ、そうそう。これ、名刺」
そこに印字された名前に、思わず目を剝く。
『呪術道場 シン・陰流 最高師範』
「シン陰って……まさか、簡易領域の?」
「ザッツライト。どう? 興味あ────」
「入ります、いや入らせて下さい」
「……おっと?」
付き人に再度目配せして、こちらの名刺を渡す。
「加茂家本流が嫡女、加茂式那と申します。以後よろしくお願いいたします、師範」
「……わお。想像以上にビッグネームだったね」
よーしよしよしヨシ。
打倒五条悟RTA的には最高のイベントだ。
結界術の授業でイマイチ要領が掴めていなかったのが、この簡易領域だったのだ。
結界の中和に特化しており、また生得領域を用いない為に純粋な結界術の延長線上にあるらしいのだが、どうにも原理が分からず途方に暮れていたのだ。
だがコレで勝つる。
領域内に入った術式の効果低減もできる。至近距離で相手を領域内にさえ入れてしまえば、術式を発動した状態で叩き潰せる可能性もあるのだ。
「では、任務の報告もあるので、本日はこれにて。後日またご連絡いたします」
「分かった。じゃあまた会おうね、我が弟子」
しかし、お父様にはなんと言われるだろうか。
あんまり強さに貪欲になり過ぎて、ドン引きされないだろうか。
……まあ深く気にしたら負けだ。持てる手札は多いに越した事は無い。
明日からは簡易領域修得に向けて頑張らなくては。
打倒、五条悟。えいえいおー。
○ ✕ △ □
「彼女、やっぱり面白いよ」
「……いきなりどうした」
またも現れた共犯者に、当主は辟易した。
何ヶ月か一回に顔を合わせればいい方なのだが、ここ一週間で三回も部屋を訪れている。
「呪術界が詰まらないって言ってたんだ。しかも、資質って言葉を聞いた瞬間、あからさまに気配が鋭くなった。才能至上主義に疑問を抱いてるらしいよ、君の子」
「……元は非術師の人間と言っていたからな」
まさか打ち明けられるとは、当主も考えていなかったが。
共犯者も、少し面食らった顔をしている。
「その口ぶりだと、彼女は受肉体で確定したのか。しかし妙だな……非術師を呪物にするなんて、聞いたことが無い」
「……お前でもできないのか?」
「できなくはないさ。ただ、そうするメリットが無いんだよ」
術式も無いことだし、と付け加える。
「呪術師が非術師に受肉して、最盛期の力を取り戻す事はできる。ただ、非術師が呪術師に受肉した時、肉体に刻まれた術式を、受肉者が扱えるかどうかは私にも分からなかった。それがここまで大成するとは、いよいよ私の計画が現実味を帯びてきたらしい」
「……非術師を術師にするという、あれか」
「そう。術式があっても呪力を扱えない人々の脳構造を弄るんだ」
その全容は、未だ当主にも明かされていない。
いや、一から十まで聞いたとて、理解できるものではない。
これは、そういう化け物だ。
「まだ見ぬ原石が、きっとどこかに埋もれている。私はそれが見てみたい」
「……娘も巻き込んで、か」
「それはまだなんとも。私の理想に共感してくれれば、心強い限りなんだけどね」
「どうだろうな。あやつは元非術師とはいえ、そうだったとは思えん程こちらの世界に浸透している。お前のプレゼン次第だろう」
「言わせてくれるね……私がどれだけその手の勧誘が得意か、君も知らない訳じゃないだろう?」
「ハッ」
自分自身、その勧誘を受けた身でもある。
コレは、甘言で人を上手く誘うのは大の得意だった。
「そこまで言うのなら、好きにするといい。力を求めているあいつにも、お前の存在は好都合だろう」
「そうさせてもらうよ。彼女を計画に組み込めれば、予想より簡単に次のステップに進める」
当主は期待していた。この、丁寧に丁寧に盤上を整えている化け物を、いつか娘が踏み台にして、台頭していく様を。
元々気に食わなかったのだ。せめて、アレが自分と共に地獄に落ちていく様をせせら笑いたい。
(……あいつの血が濃く出ているお前になら、為せるだろう)
血の繋がりほど、断ち切れない呪いは無い。
それに、あの奔放さを見ていると、その面影を強く感じてしまう。
もしかすると生まれ変わりかもしれないな、と心の裡で冗談めかしく笑うと、ニヤニヤと悪知恵を働かせている共犯者をじっと睨め付けた。
「だが、
「……肝に銘じておくよ」
ニヤケ顔を直そうともせず、信頼も置けない言葉を吐き捨てて奴は出ていった。
○ ✕ △ □
「加茂式那……名前に少し運命を感じていたけど、つくづく君はあの子に似ている」
男は小刀を手に取った。
鞘から抜けば、一千年の年月を経たはずの刀身は、未だ純白に輝いている。
「好奇心も旺盛で、結界術に凄まじい才を発揮する。呪術界を詰まらないと言い切る様も、そっくりだ」
忘れもしない、古い記憶を遡っていく……
『この世はつまらなくて、嫌いなんです。だから、変えてみたい』
『何も成せないで死ぬより、何かを成して死にたい。オレがこの世に、この時代に生まれた意味が欲しいんです』
後の計画の為に、弟子として育てていた彼女を呪物化するつもりだった。
そんな彼女を誅殺したのが、当時の六眼。天元の同化を阻んだのと同じ人間だ。
「……彼女が受肉していれば、どれほど心強かった事か」
今、真に協力者と言える人間は周りに誰も居ない。
自分を慕って付いてきてくれた彼女だけが、信頼の置ける人物だった。
であるならば、これはどんな因果だろうか。
彼女と同じ術式と素質を持った人間が現れるなど。
彼女を見た時、彼はこの時代で変革を成せと言われているのだと悟った。
「……あの日々の続きをしよう、シキ。今度こそ、世界を呪いで満たしてみせるよ」
……今度こそ、今度こそ必ず。
羂索はヒロインです。異論は認めません()
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