【急募】TS美少女が呪術界で生き残る方法   作:うぇいうぇい

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ヤツが、来る!!!(え


黒光りのアイツ

 

 

「──『血嘶・散』」

 

 体内で圧縮した血液を、掌に集約し、解き放つ。

 

 前方にいた呪霊の群れを吹き飛ばし、進路を確保。

 後方から来る大群は……

 

「おらぁっ!! だっ……はぁっ!!」

 

 悟が大立ち回りを披露し、見事なまでの暴力で片付けていく。

 蒼を使えば一瞬で蹴散らせるだろうに……なんか当の本人はとても楽しそうだし、気にしないでおこう。

 

「ウァーッ!!」

「イヒヒーヒヒ!!」

 

「……『骨晶・装』」

 

 手から骨の鞘、骨の刀を生やし、中腰に構える。

 

 簡易領域設定……半径100cm。領域内の呪霊の数を計算……3、7、13、今。

 

「──抜刀」

 

 刀の軌道が、綺麗に弧をなぞる。

 

 思い通り、迫る呪霊をまとめて斬り去った。

 視界が埋まる程の霧散した呪力に覆われながら、刃を返す。

 

「──『肉骸・纏』」

 

 脚の筋肉量を増加。それを細い脚に圧縮……

 

「キィウェアアァ!!!」

「エェースヴィィィ!!」

 

 第三陣とばかりの呪霊の大群を前に、右脚を大股に引き、刀もそれに合わせるように後ろに構える。

 

 ……簡易領域は自在に形を変えられる。だが、多くの門下生が円形に留めているのは、刀を振るという動作を伴い、必然的に刀の届く範囲内に限定される為だ。

 

 だが、簡易領域を使いながら身動きが取れるならば別だ。

 これは、簡易領域を縛り無しで成立させられる様な、師範や日下部さんみたいな実力者にのみ許された──奥義。

 

 領域範囲を、自分の脚元から幅150cm、奥行き200cmの長方形に調整。

 最初の蹴りの瞬発と共に、移動する領域に入り込んだ呪霊を切り刻む。

 

「シン・陰流────『清月(きよづき)』」

 

 踏み込みから一秒にも満たない時間で、緻密に制御された簡易領域の自動追撃の反応が途絶えた。

 

 ……ようやく終わったか。

 

 清月で酷使した右腕はもう酷い有り様だ。骨が飛び出してたり肉が裂けてたり、グチャグチャのチタタプ状態になっていた。

 子供の身体ながら、無理をしすぎたらしい。

 

 術式で腕を再構成していると、後ろから足音が。

 

「そっちは終わったか〜?」

「滞りなく。それより、この呪霊の数……度が過ぎてると思いませんか」

「だよなあ〜。病院は呪いが溜まりやすいっつーけど、いくらなんでも多過ぎる。そんでもって生得領域ってなったら、多分アレだろ」

「……特級呪物、でしょうね」

 

 嫌な予感ほど的中するものだ。

 

 封印されていない何かしらの特級呪物が、この病院に人為的に置かれ、受肉した。

 それが、外から強い呪いを誘き寄せていたのだ。

 

「どうします? この生得領域の主は特級で確定ですよ」

「ハッ……叩きのめすだけだろ。さっさとやろうぜ」

 

 脳筋め。

 でも、なんか悪くないと思う自分がいる。呪霊ボコし過ぎて私も脳筋になってるのかもしれん。

 

「……もし呪詛師が現れた場合は私が対処しますから、その予定で」

「ま、お前が殺せなかったら俺が片手間にやっといてやるよ」

「うっわー、流石御三家の人間……」

「いやお前もだろ」

 

 盛大なブーメラン。

 でもしょうがないじゃん、お偉いさんが『飴ちゃんあげるから悪い人殺してきて?』って頼んでくるんだもん。

 

 勿論、飴ちゃん(札束)は大量に頂いてる。

 当分は甚爾さんの授業代に充てられるだろう。

 

「オマエもまともな振りしてイカれてるよな」

「狂人ほど人間の真似が得意なもんですよ」

 

 プ○チ神父とか、吉○吉影とかね。

 いやその理論だと私がラスボスになっちまうな。嫌だ。

 

 

 

 さて、問題の手術室前。

 病院内に入った時から感じた悪臭が酷くなっている。鼻を摘みたい衝動に駆られるが、なんとか我慢して入ると、隙を生じぬ二段構えが待っていた。

 

 動物の体内にでも入ったかのような、ぶよぶよしたピンクの肉が部屋を覆い尽くしている。

 

 真ん中の手術台には、内臓を引き摺り出された女性の遺体。

 恐らく、戻らなかった看護師の一人か。顔も無惨に抉られている。

 

「……おうぇっ、くっさ!」

「吐かないで下さいよ悟くん。今なら、私も貰い吐きする自信があります」

 

 幸いにも、グロ耐性は術式の特性もあったから身についている。

 ただただ、痛ましかった。

 

 冥福を祈ってから、口を抑えて鼻をひん曲げている悟に手を差し伸べる。

 

「……嗅覚、鈍くさせましょうか?」

「……頼む」

 

 『躯躰総術』の四要素が一つ、『天覚』。

 

 体の内側の機能……とりわけ神経系に強く作用し、感覚を強化、あるいは感覚を麻痺させる事もできる。

 

 私も視覚を強化したり、痛覚を鈍らせたりと多用する。

 鼻の神経を一時的に麻痺させるくらいなら、他人にも適用可能だ。

 

 奥の方へ歩みを進めると、暗闇の中、ニチャニチャと咀嚼音が聞こえてきた。

 

 視覚を鋭敏にして夜目を利かせると、丸っこい体を屈めて、臓物らしき肉を食い漁る呪霊が見えた。

 

「……あんな奴が領域広げてんのかよ」

「でしょうね……呪力だけは一丁前のようですが」

 

 アレに夢中なうちに、手を銃のように構える。

 

「『老者と出離』『水命の集諦』」

 

「──『血嘶』」

 

 血の勢いで指ごと弾き飛ばすと、あっさりと呪霊に風穴が空いた。

 

 そのまま、でろりと倒れ伏す。

 

「あ……もう死んじゃいましたか?」

「いや、まだだ」

 

 霧散しない。

 

 むくり、と立ち上がった呪霊の身体が捻れて、繭のような形に転ずる。

 あの姿は、まさか。

 

「──悟くん!!」

「術式順転……『蒼』ッ!」

 

 無限の引力に負け、繭が破裂する。

 だが、その中身は全くの無傷……既に変態していた。

 

「──ケヒッ」

 

 ワカメのような模様を頭につけた、人型の呪霊。

 

 呪胎と呼ばれる状態から変態した呪霊は、特級の力を持つという。

 

 口許の笑みを崩さないそいつは、両手を一つに合わせる。

 

 複雑に組まれたその指は……手印となった。

 それが示す意味は、この場合において一つだけ。

 

「『領域展開』」

 

 最悪の響き。私の思考は焦るどころの話ではなかった。

 そんなもの、生まれたての特級が使えるとか意味が分かんねぇって……

 

 対抗するのであれば、こちらは簡易領域一択。

 

 自分の範囲内だけでも領域を中和しなくては、必中の術式で共倒れだ。

 

「私の簡易領域の広さは、半径1メートルが限界です。背中に捕まって下さい」

「は、はぁ!? そんな事したら……」

「────早くッ!!!」

 

 悟の手を引っ張り、飛んできた呪力を間一髪で避ける。

 

「『脊燐躍動』──『肉骸・成』──『天覚・越』」

「うおっ!?」

 

 片手で悟が振り落とされないように掴み、もう片手で刀を振るう。

 

 さっき飛んできたのは、鋭利な呪力の波だった。

 言うなれば、飛ぶ斬撃。私とて、直撃すればスッパリいかれるだろう。

 

 仕方ない……奥の手を使おう。

 

「『生者と持戒』『大地の道諦』」

 

 飛ぶ斬撃が雨あられと殺到する中を掻い潜る。

 簡易領域のオート反撃が機能したが、十発ほど斬り捨てたところで、刃が砕けた。

 

 だが、今更術式を中断はできない。

 

 このまま、やってやる……!!

 

「──『成道』『昏き予言の使徒』『落日』『救世の糸を編む』『終に智慧は破られた』」

 

 悟の術式になんとか守ってもらうが、体中血塗れで髪はボロボロ、とっくに服は布切れだ。

 

 それでもなんとか、詠唱をやりきる。

 

 引き算を極める呪術とは思えないが、これで、条件は揃った。

 起死回生の一手……主に私の命をべットした、ゴリ押し上等の作戦だ。

 

「──『骨晶・装纏』」

 

 身体の情報を一時的に書き換える。

 肌の大部分を骨と象牙質に、そしてその外側をエナメル質で覆った。

 

 背中の悟を覆うように装甲を広げれば、立派な異形の完成だ。

 

「あ〜……頭クラクラしそうですねぇ」

「なんだこりゃ……」

 

 開発に一月。習得に二年の歳月を掛けた、正真正銘の奥の手。

 

「『人躯甲冑(クブリール)』……対呪霊用の戦闘形態、と言ったところでしょうか」

 

 が、身体の大半を弄くる過程でどうしても顔の半分が仮面のように覆われてしまう。鏡を見た時の絶望感たるや。

 

 詠唱を長くし過ぎた代償だ。今なら「虚○」とか「帰○」とか叫んでも何ら違和感は無い。

 

「これを見た以上は……生かしておきませんよ」

「……お前、んな無茶して大丈夫か?」

「全然大丈夫じゃないですよ……っと!」

 

 あと3分もすれば、恐らく崩壊してしまう。

 本当はもっと成長してから運用する予定の術式だから、甲冑を生成する為に必要な栄養とかそういうのを、無理矢理呪力で補っている。

 

 とはいえ、相手の領域展開は莫大な呪力を消耗する為、長続きしない。

 こちらの簡易領域が剥がされていないのを見るに、結界術ではこちらに分があるようだ。

 

 ……つまり、相手の攻撃を捌き続ければいい。

 

 ゴリ押し上等なのは、その為。

 悟のバックアップを受けながら、血反吐になろうと耐えきってみせる。

 

「シン・陰流────『夕月』!」

 

 『人躯甲冑』発動時に再生成した骨刀を、居合の要領で踏み込みと同時に引き抜く。

 

「……!?」

「遅い」

 

 チッ、急所を外されたか。

 片腕をもぎ取ったが、何事も無かったように回復した。攻撃を受けないためにも、反撃の手を緩めるわけにはいかない。

 

 であれば……超至近距離で領域に引き込むまで!

 

「お願いします!」

「わーったよ……!」

 

 蒼を用いた、引き寄せ。

 拳撃を確実に当てる目的で悟が使っていたその技を利用する。

 

 簡易領域に組み込んだプログラムが、右腕に永続する一連の動作を強制する。

 それは、刀を抜いてから一太刀を加えた瞬間、それ以降は八の字の様にループする振り方を調整された、日下部さん直伝の技。

 

「──霽月(はれづき)

 

 呪霊の拳と私の刀がぶつかり合う。

 ループの速度は日下部さんに遠く及ばない。特級相手だと、拳で受け切られて一太刀も入れられないらしい。二年も道場に通っているというのに、まだあの高みに登れないのが悔しい話だ。

 

「蒼、完全詠唱行けますか」

「バカか、この距離だとお前も巻き込まれんぞ」

 

 蒼の直撃。それすなわち、呪霊が容易く捩じ切られたあの引力を浴びせるのだ。

 

 間近にいれば、私もただではすまない事は解っている。

 それでも、勝機を見出す為には……

 

「気にせずやって下さい!」

「……どうなっても知らねぇからな!」

 

 またも刀が折れる。再生成する猶予は無い。

 

 ボクシングスタイルに移行し、拳打と斬撃しか脳のない呪霊の攻撃を腕の装甲で受ける。

 

 飛ぶ斬撃を間近で繰り出されようと、この装甲なら傷一つ付くまい。

 必中効果さえなければ、こっちのものだ。

 

「『位相』『黄昏』『智慧の瞳』────」

 

 懐に入り、拳を捻る。ガラ空きの腹へのアッパーカットは、呪霊と言えどもその動きを止めるしかない。

 同時に、悟の詠唱が完了した。

 

「────術式順転『蒼』、最大出力」

 

 最強の技が、空間や光をも捻じ曲げる。

 

 腐っても特級か。

 すんでの所で回避行動を取り、蒼の攻撃は左半身を大きく抉るに留まった。

 

 私も地面に骨を突き刺して踏ん張ったが、右腕が半ばから持っていかれ、肌から生えていた装甲に大きく亀裂が走り、肉が裂けていく。

 

「い……っ!!」

 

 強烈な痛み。

 だが痛覚遮断してる余裕は無い。

 

 呪霊の半身が抉り取られ、呪霊の領域が解けた今、やるしか無い。

 

 残された左拳を握り締める。

 

 相手もそれを見越して、右拳を構えた。

 

 

 

 ────それは、打撃との誤差、百万分の一秒以内に呪力が衝突した際に生じる「現象」

 

 

 

 お互いの腕が交差するが、リーチは言うまでもなく相手に分がある。

 装甲の亀裂を突き破り、呪霊の拳が私の内臓を引っ掻き回した。

 

 ……悟には無下限がある。この腹が突き抜けようが、悟に傷一つ付く事は無い。

 

 なら、躊躇いなんて捨てろ。

 この拳は、命よりも重い。

 

 足で床を踏みしめ、腕の勢いを殺すことなく、振り切った。

 

 

 

 呪力と打撃が同時に伝わった瞬間、空間は歪み────

 

 

 ────呪力は、黒く光る

 

 

 

「終わりです」

 

 特級呪霊の頭が、散弾のように脳漿をぶち撒けた。

 

 

 

 




☆覚醒の時、来たれり────!!(煽り文)

攻略したい子を選んでねっ♡

  • 王道?:五条悟
  • 邪道:禪院直哉
  • 外道:夏油傑
  • 覇道:羂索
  • 非道:宿儺
  • 寡夫:伏黒甚爾
  • 百合:庵歌姫
  • 呪霊:真人
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