【急募】TS美少女が呪術界で生き残る方法 作:うぇいうぇい
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの よわりもぞする
式子内親王
──『新古今和歌集』 巻第十一 恋歌一より
「……終わった、のか?」
「……そう、でしょうね」
今の一撃……自分では考えられないほど異常な威力だった。
自分でトドメを差すつもりは無かったのに、あんな事になるとは。
『
……あれ。
傷の治りが早い。内臓ごとやられたのに、その内臓があっという間に生成できた。
術式に呪力を流す感覚が、これまでとまるで違う。
となると、さっきの光は……
「……まさか、黒閃」
「そうに決まってんだろ。あの時、呪力が一瞬膨れ上がってた。俺も実際に見たのは初めてだけど、間違いねぇよ」
「そ、そうですか」
「つーか、お前今まで黒閃未経験だったのにそんな呪力してやがったのがキメェ。六眼でも持ってんのかよ」
「それは素直に私の才能と努力って言ってくれません?」
私のことを何だと思ってるんだ。
なんかもう色々疲れて、思いっきり溜息を吐く。
「……取り敢えず、呪物を回収しましょう」
呪霊が祓われた跡には、禍々しい見た目の指が残されていた。
拾い上げてみると、何か、どこかで見覚えが………
────ドクリ
「式那っ!! オイ!!」
平衡感覚が無くなる。
意識が朦朧としてきて、あれ、えっと……
…………すんげー、眠い。
「……おい、いつまで寝ている」
「……んあ」
寝惚け眼を擦る。
あー、昨日いつから寝てたんだっけ……
「もう昼餉の時間だ。二度寝が長過ぎる」
「んにゃ〜! まだ眠い!」
「
「はい起きます起きました」
やべぇよ、どんな目覚ましだよ。
起きたら屋敷が灰でした、とか洒落にならないからな?
「……って、残穢無いじゃん。ハッタリかよ」
「バレたか」
あれは斬撃の方が焼き切れてないと使えないようなもんだしな。
あー、焦った。個人的には火の方が嫌いなんだよ、宿儺の術式。細切れにされる方が、繋ぎ合わせるだけだから負担が少ないし。
「お前はすぐそう言って脅すよな」
「ハッ、よく言う。俺の火が通用した事は一度もないだろうに」
「そりゃ万全なら結界で防げるけど……寝起きはキツイよ」
オレ、朝弱いんだって。
二度寝しないと寝た気になれないし。
大きく欠伸をしていると、宿儺がじーっと眺めてくる。
コイツの考える事と言えば、とにかく飯だ。飯にしか興味が無い。何考えてんだよと聞いたら、多分腹が減ったとかそんな感じたろう。
「……どうした? オレの腕でも食いたくなった?」
「ほう? 差し出すのなら貰うが」
やべ、藪蛇つついた。
でもなぁ……まだ育ち盛りだし、栄養少なくなったら術式使いづらくなるし……あ、そうか。
「お昼ご飯豪華なら許す」
「ケヒヒッ、では裏梅に作らせよう。……ここに契りは結ばれたな」
「はいはい、ちょっと待ってろよ」
やったぜ。美味い飯が食えるなら本望だ。
えーっと、痛覚遮断しておいて、腕の中に流れる血を術式で制御、戻し骨刀で斬り落とし、新たに腕を生成する。
血抜き済み、生の手羽先と手羽元だ。
あ、羽は無いから手先と手元か。いやなんかおかしいぞ?
……まあいいや。
「ほい」
「やはり美味そうだな。頂こう」
曰く、刺し身で頂いても美味いらしい。
食人嗜好もないし、自分の肉を食っても美味しいと思った事は無いから全然分からないし、自分の腕がもぐもぐバリバリされる光景はいつ見ても慣れない。
でも、食べてる時の宿儺を見るのは好きだ。普段は傲岸不遜なのに、こうして美味しそうに平らげる姿は、年頃の少年らしいんだよな。
「……なんだ難波の、羨ましいのか」
「いや全然」
普通の飯が食いたいに決まってんだろ。
お布団を片付けていると、良い匂いが漂ってきた。
この時代は醤油なんて無いから、この人生で食は捨てたものと思っていた。
しかし、それを覆した我らが料理人がいる……まだ十二歳だけど。
「……取り敢えず、これを食べて待っていろ」
「あ、裏梅おはよー」
性格は宿儺に似て不遜な裏梅ちゃんだが、宿儺に関する全てに沸点が低い。
要するに、扱いやすい。取り敢えず宿儺なら〜とか言っておけば想い通りに動いてくれる。
「お、うんまっ……お餅なんかあったんだな」
「宿儺様が搗いて下さった御餅だ。宿儺様に感謝しながら頂くといい」
「なんと。宿儺様、ありがたや〜ありがたや〜……」
「ふん。興が乗っただけだ」
オレ達は、いわゆる幼馴染。
村の忌み者である宿儺と、その従者こと裏梅。
そして、この難波一体を取り仕切る賀茂
「宿儺様、申し訳ございません。お出しできるまであと四半刻は掛かりそうです」
「よい。その分豪華なのだ。期待しているぞ」
「っ〜〜〜! この裏梅、全身全霊を賭して、最高のお料理をお持ちいたします……!!」
あ、これ時間掛かるやつや。
塩餡のしょっぱさを抹茶で流しながら、満面の笑みの裏梅が出て来るのを、今か今かと待ち受けていた────
…………だ……ごめん……何も……師匠…………
…………宿儺…………裏梅…………
…………死にたく、ないよぉ…………
「……………………うぎゃああああああっ!!!?」
「うわ、うるさっ」
なんかやべぇ夢見た!!!
思い出せ思い出せ……そう、着物を着た白髪青目の長身イケメンが、容赦なく
餅つけぇ……いや餅つかなくていいから取り敢えず落ち着け落ち着け。
いや落ち着くとか無理だろ。どっからどう見ても悟じゃねぇか。
赤い光に押し潰されたんだが、何あれ新技? 最悪だよこの野郎。
予知夢かよ、こえぇ……
「悪夢でも見たのかよ。ダッサ」
「貴方に殺される夢を見たんですよ……!!」
てか何でお前そこにいるの?
そもそもここ何処? 病院?
「まー、お前を殺せる奴なんて俺ぐらいなもんだしなー。分かる分かる」
「いや私を殺せるような人、たくさん居ますって……」
甚爾さんとか師範とか
他にも、唯一の特級である九十九由基さんとか、禪院家当主さんとかいるし。
「そんなん大人になりゃ、全員カスだろ」
「だと良いんですけど」
……さて、直前までの記憶が確かなら、私は黒閃を決めて、呪物を回収した所で終わっている。
実際に、呪力操作も格段の進歩が見られる。今なら実現不可能だった数々の技を実用レベルにまで持っていけるだろう。
待てよ。
悟くんって黒閃決めてないんだよな?
「じゃ、悟くんもとっとと黒閃決めて下さいね〜」
「てんめ、自分がマグレで当てたくせに」
イェーイ、マウント取れたぜ〜。
私の数少ない楽しみだ。悟にマウント取れる機会なんてそうそうないし、ここぞとばかりに煽ってやるわ。フハハッ。
「黒閃なんて会心の一撃みたいなもんですから。でも経験した人とそうでない人の差は激しいですし? このまま黒閃童貞のまま生き恥を晒したら、私と一緒に最強なんてとてもとても……」
「……や、やってやらぁ!!」
悟が出ていった。
一人取り残される私。
……あっ、やべ。アイツに色々聞くの忘れてた。
任務の顛末ぐらいは知っておかねばと、のそのそとベッドから這い出ると、再び戸が開いた。
「目が覚めたか、式那」
「あ、お父様。おはようございます」
「昨日の今日だが、元気そうだな」
怪我も全部治したから、単純に諸々の疲れがどっと来たのだろう。
でも、ほぼ気絶したようなものだし、悟にはずいぶん迷惑を掛けてしまった。詫びの一つでも入れておくべきだったか。
「それより、呪物は回収できましたか?」
「ああ。特級呪物〝宿儺の指〟……よくぞ無事に回収してくれた。五条からの報告を聞いた時は肝が冷えたものだ」
「宿儺の……指?」
宿儺といえば、呪術界で知らない者は居ない超有名人だ。
今で言えば、その在り方は呪詛師に近い。
平安の世で、料理に使えそうなのに全くそうやって使わない凄まじい術式で人々を鏖殺し、裏梅とかいうツンデレな料理人を従えて呪いの王として君臨した、食べる事ばっかり考えてる史上最強の呪術師だ。
その指は、死してなお死蝋として残され、封印するしかなくなったとか。
その一本が、アレだったと。
それなら、あの特級が使っていた術式にも納得が────
「…………」
「……式那、どうした。放心しているのか?」
今、私は何を考えていた?
何をもって、こんなにも腑に落ちている?
私は、何を知っているんだ……?
「……式那、式那。返事をしなさい」
「あっ……ごめんなさい、お父様」
「いや、宿儺の指相手では、そうなるのも無理もない。何より、お前が無事で本当に良かった……」
これ以上考えても、この違和感が解消できる気がしなかった。
何か、大事な事を忘れているような、そんな喪失感。
まあ、思い出せない以上どうしようもないんだが。
「明日は、我が家で盛大な御馳走でもしようか。何がいい」
「山盛りのジャンクフードで」
ポテトはマ○ク、オニオンリングはモ○、バーガーはバ○キンで。
あれ、バー○ンってこの頃あったっけ……?
○ ✕ △ □
「彼女の血では宿儺の覚醒には至らなかったか……やはり受肉が前提と見るべきだね」
加茂式那をこちらに引き入れるという第一段階は既に終えたも同然。後は記憶を全て思い出せば、叛意を抱く余地もない。
ツキが回っている。そう思わずにはいられなかった。
宿儺をこちらに引き入れる算段として、式那に呪術師側と敵対してもらわなくてはならないが、元々こちら側となれば話は別。
どうにも厄介な縛りも結んでいるようだが、そこは策を講じればどうとでもなる問題だ。
羂索の計画に隙は無い。
「だが、あれは本当に偶然だった……賀茂式子の転生体は私にも見付けられないし、そもそも生まれる保証も無かった。だというのに、千年後のこの世で、巡り巡るとは」
最初から、受肉の線はあり得なかった。
当時の五条家当主……六眼によって、賀茂式子は抹消され、分家は取り潰しになり、初代の軀體總術の記録は全てが無に帰った。
呪物化もできなかったのだ。受肉していたとしても、それなら己の師を忘れているはずがなく、もはや転生体としか考えられない。
「宿儺……君は恵まれているね」
クツクツと笑いながら、町を見下ろす。
学校の帰りであろう、仲の良さそうな学生の男女。
その片方の男を、羂索はよく知っていた。
「虎杖さん、聞いてますか!」
「……っああ、すみません。ちょっと考え事をしてまして」
「もー! 私は真剣に怒ってるんですよ!」
この二人を密かに引き合わせたのは、言うまでもなく羂索だった。
だが、この平成に入ってからというもの、全ての巡り合わせが羂索の思うように噛み合っている。
運命を信じた方が、まだ現実味があるに違いない。
「躯躰総術、宿儺の器、天元の同化、天与の暴君……呪術全盛の再来、〝死滅回游〟へと至るピースはもうあと僅かだ」
残るは、天元を手中に収める為の呪霊操術。
こればかりは相伝を持つ家も無く、確保が難しい。
代替案もあるにはあるが、そちらは博打にも近い賭けだ。
しかし、天は確実に自分に味方している。この調子なら、早くて二十年後には始められるだろう。
「待ち遠しいものだ……」
その晩、羂索は久しく酒を手に取っていた。
晩酌の肴は、燻製もの。
コップを呷り、喉に流し込む。
無性に酔いたかったが為に、安いパック酒を買ったのだ。味わおうとは一寸たりとも考えていなかった。
それ故に、ただ一つの誤算が生じた。
……この身体は、下戸であったのだ。
「うお、だめだ……早く反転術式を……」
しまった、と思った頃には遅く、世界がカオスになっていく。
その中で、羂索の頭がふとデジャヴを覚える。
それは、確かに存在していた記憶────…………
『遊びに来たよー、宿儺、裏梅』
『私も邪魔するよ』
あれは、愛弟子を連れて宿儺の屋敷に訪ねた時だったか。
まず裏梅に睨み付けられて、チッと舌打ちされたかな。どれだけ私の事が嫌いなんだか。
『飲め、酒だ』
『おや、良いのかい』
『興が乗った。今だけは、式子の師としてもてなす』
『はは、そうか……それは嬉しいよ』
宿儺は、私を信用などしなかった。
幼馴染を誑かした男、という印象なのだろうか。初対面の時から、あまりいい顔をされなかったものだ。
だが、彼女が宿儺という逸材と交流していた事は、私にとって有利に働いた。
後に呪いの王と称される彼に呪物化を提案できたのも、式子の存在あってのもの。
『ほらぁ〜、裏梅も飲めよぉ〜』
『ああもう、シキは今後酒は禁止だ。酒精に弱すぎる』
『ええ〜、酔ってないつーの……うっ、あ、吐きそ──』
『待て待て、宿儺様の邸宅を汚すな。ほら、ここにゲーッてするんだ、ゲーッて』
『……あ、反転術式使ったら楽になった』
『えっ』
……それに、私は多分、嫌いじゃなかったのだろう。
私は停滞を好まない。常に変革を求めている。
しかし五条によって式子が殺され、もうあの四人で集まれないと知った時、落胆と怒りを覚えた。
ただ一つとして変わらないものを、いつからか求めるようになっていたのだ。
『師匠も一つどうです? 裏梅自家製の燻製肉、かなりお酒に合いますよー』
『いいね、一つ貰うよ』
『なっ……羂索、貴様にやるとは言っていない! それは宿儺様とシキのものだ』
『酷くないかい?』
『む、あんまり師匠を虐めないでくれよ。めっちゃ怪しそうだけど、これでも一応師匠なんだからな』
『式子まで……針の筵じゃないか』
『ケヒヒッ、胡散臭いお前にはお似合いだろう』
……また、四人で酒を酌み交わす時を。
GWなんてなかったんや……(絶望)
攻略したい子を選んでねっ♡
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王道?:五条悟
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邪道:禪院直哉
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外道:夏油傑
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覇道:羂索
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非道:宿儺
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寡夫:伏黒甚爾
-
百合:庵歌姫
-
呪霊:真人