【急募】TS美少女が呪術界で生き残る方法 作:うぇいうぇい
何だかよくわかんない事になってんだけど……
結界と思わしきものが張られた空間の中で、三つ巴の配置に立たされた子供三人。
五条悟、禪院直哉、そして俺だ。
ここに来る途中でお父様から聞いた所によると、この試合は既定路線だったそう。聞いてないが??
着物の内側に着ていた軽装は、この時の為だったらしい。
半袖、短パンの開放感パネェ。あー、重かった。
てか俺、戦闘訓練なんて屋内でしかやってなかったんだけど。
術式持ってるって気付かれないように静かにやってたから、子供の遊び程度の喧嘩術しか身に着けてない。
どうしよう。
奥の手があるにはあるんだけど、自分以外で試した事無いから、通用するかも分からないし……
「なぁー、もうやろうぜー」
「そうだな。では……試合開始!!」
ちょっ、まっ……!?
試合開始の合図と共に、視界の両サイドにいた直哉と悟が、俺の方に向かって走り出した。
いや、その表現は正確ではない。
目の前に、既に直哉がいた。
──〝投射呪法〟
お父様が言うには、なんか凄い速度で動いてくる、という感じで、突っ立ってただけなのに敵を倒したとか、なんだか要領を得ない答えしかくれなかった。
だから俺も注意してたんだけど……こんなに速いとか、ちょっとチート過ぎじゃね?
予測していた位置に来た拳を腕で受け止めると、ニィッと直哉が嗤った。
「終いや」
腹に強烈な衝撃。動きすらまるで見えなかった。
痛い、なんてものじゃない。
前世も、現世も、暴力とは無縁だった環境で育っていて、こんな力を受けた事は一度も無かった。
……いや、最後に、あったな。
ただの恨みというか、なんというか。
『お前は、お前は順風満帆に生きれて良かったなあ!!!』
どこが順風満帆だアホンダラと、言ってやりたかった。
高校は適当な私立だったし、大学受験で受かれた所も第三志望。一般的な商社に入社して、特に出会いもなく、30になる前に死んでしまった。
そりゃまあ、引き篭もりに比べたらとは思うがな……
『死ね、お前なんて死んじまえ!!』
…………あぁ、痛かったなあ。
「はー。口だけのザコやったな。アホらし」
「うわ、よっわ……居ても居なくても変わんねぇじゃん」
理不尽だった。
楽しい人生かと言われると首を捻るが、やり残した事はあったし、まだ生きていたいと思っていた。
「……『病者と、忍辱』」
「……あ? なんだ、オマエ。まだやんの?」
呪術とか結界術とか、楽しいからやってたけど、戦うのなんて真っ平ごめんだ。
当主にだって、本当はなりたくなかった。
でも、死にたくない。
もっと、自由に生きてみたい。
「『灼火の滅諦』……!」
「どうする、悟くんは?」
「オマエは来んなよ。おれがやるから」
舐めんなよ、クソガキ。
こちとら、平穏に暮らす為だけに命賭けてんだぞ。
「『肉骸・成』」
傷付いた体に、肉を宿す。
見た目には分かるまい。呪術的な肉は、物理法則を無視して、筋力だけを底上げしてくれる。
やった事ないけど、多分、今なら岩だって壊せる。
「行きます」
「──『蒼』」
瞬間、強い引力が発生した。
デジャヴ。
さっきの直哉と同じ、視認すらできずに殴り飛ばされる予感がした。
一撃目は、なんとか勘で受け止めるとする。
では、二撃目は?
五条悟の持つ無下限呪術に関して、お父様が話してくれた事は二つだけ。
一つ、無下限。
絶対不可侵のバリア。どんな攻撃も、永遠に到達することはない。
二つ、蒼。
物体を容易く圧縮し、塵にするほど引力を生み出せる。
実に単純明快、しかし厄介だ。
足りない頭で色々考えてみたが、こんなの無理ゲーじゃねぇかと匙を投げたくなるくらい、チート過ぎた。
「──『骨晶』!!」
あまり猶予のない発動で、厚い骨を生やすのは無理があった。
悟のパンチで骨盾が破壊される。続いて二回目が来たら、容赦なく殴り飛ばされるだろう。
だから、もう一工夫。
「『骨晶・散』……ッ!」
骨の残骸を呪力によって弾けさせる。
並みの金属ぐらいの硬度はある俺の骨の断片ともなれば、その威力は馬鹿にならない。
……まあ、俺にも刺さるんだけど!!
どうにか顔だけは守ったが……クッソ痛い。
やっぱり咄嗟の痛覚遮断には無理があった。
でも、これで多少はダメージ入ったよな……
「舐めてんの? おまえ」
あ、こりゃダメだ。
土煙が晴れたら、ものの見事に無傷な悟が出てきた。
「おれの無下限を破れる訳ねぇだろ」
となると、術式には頼れない。
まあ、俺の術式って、汎用性高くても強い訳じゃないしな。
だから、手で印を作る。
呪力を練り、構成式を作り上げる。
方位を指定、直径は1m。強度は、自分にできる最硬度で。
条件──五条悟の出入りを禁じ、その他全員の出入りを可能とする。外側の強度を脆くし、内側の強度を引き上げる。
「『結界』」
界を結ぶ。
たったそれだけだが、この六年間、俺が練習してきた集大成だ。
「なっ……クソッ、出しやがれ!」
これだけは、悟の術式を以てしても破壊できないみたいだ。
破れるものならやってみろよ。
その間には、1on1になってると思え。
「う、うせやろ、あの悟君が……」
「『死者と般若』『颶風の苦諦』──『天覚・越』」
「ちぃっ!!」
直哉が動いたが、俺の術式は既に働いている。
『天覚』は五感に作用し、それにまつわる脳の機能を補助する事ができる……という解釈でいいのだろうか。自分でもよく分かっていない。
だが、知覚における処理能力を向上させれば、如何に速いと言っても脳が追いつく。後は『肉骸』で対処が可能だ。
何回も直哉が瞬間移動する様を観測しつつ、死角に回り込んだ直哉の横っ腹に……ていやっ。
「ごふぁっ!?」
直哉の術式、発動したら止まれないっぽいな。
寸前で攻撃の構えを取っても、何も反応しなかった。
ただ、一つ誤算がある。
『肉骸』『天覚』そして『結界』。
『肉骸・成』は見た目には現れない。
それが故に、『骨晶』と違って維持する呪力が必要となる。
加えて『天覚』は感覚の強化。その汎用性のためか呪力の消耗が激しい。
視覚のみに限定していても、長続きはしない。
そして『結界』は現に悟が破壊しようとしている。壊れる心配は今の所皆無だが、修復やメンテナンスを逐一行っており、こちらも呪力をかなり食っている。
持ってあと二十秒。
どうにか、その間に直哉だけは片付ける。
「ええよ、もう……僕、今から本気出したるわ」
姿が消える。
だが、『天覚』の効果で見えなくはない。
だから、敢えて突っ込む。
一秒掛けて移動するなら、瞬間移動って程じゃないからな。
「どぁっ!? ぁが……ッ!!」
よーし、顔面ストレート決まった。
だが、直哉の姿が空中で人外じみた動きをしたと思えば、直哉が目の前に現れ……
……俺は宙を舞っていた。
直哉に触れられると、意識が僅かの間だけ吹きとんでしまうらしい。
その間にボコられて、吹っ飛んでいる、という感じか。
目は追いついていた。
しかし、身体があの速度に追いつけていない。
つーか、あそこから体勢を立て直すとか、ちょっとクソ過ぎませんかね……?
飛び退いて後ろを振り向く頃には、直哉は術式で高速移動。
だが、俺の天覚を前にそう何度も動きを見せるのは、愚策という他に無い。
二十四回……でいいのだろうか。
残像みたいに一定のリズムで動きを作っている。
それが一秒間に行われる。故に、あの高速移動というわけだ。
……まあ、それが分かった所でなんだけども!
方向、動きから行動を予測。斜め後ろからのハイキックを両腕で捕まえると、その一瞬、直哉がピタリと制止した。
これ幸いにと、顔面から地面に叩き付けると、完全に沈黙した。やっべ、やりすぎた。
まだ乳歯もあるだろうし、多分問題無いよな……?
地面に突っ伏した直哉を場外に引き摺って、結界を開放する。
後は、コイツだけ。
「テメェ……殺す!」
またも引力。体が前のめりになる。
とは言っても、それはさっき見た。幾ら次代の最強とて、まだ切れる手札は少ないらしい。
強い引力と共に、迫る拳を片手でいなす。
……ってぇ。何だその馬鹿力。
だが、確かに肌の感触はあった。
悟に触れたということだ。
なるほど……悟は自分の方から触りにいく事はできるのか。
こちらの攻撃が通じず、なのに自分だけ物理で攻撃可能。
無敵かよコイツ。勝てる気しねぇよこんなの。
まだまだテレフォンパンチな拳を避け、一旦距離を取る。
「言ったろ、お前なんてクソ雑魚だって。俺に一撃も与えられねぇ雑魚だ」
「……流石に、厳しいものがありますね」
思ったより天覚による消費が激しかった。
肉骸もとっくに解けてる。
後は、幾らかの博打打ちができるか、といった程度の呪力しか残されていない。
その理由は単純だ。
俺はまだ、戦闘行動と呪力操作の両立ができていない。しかも呪力は感情に呼応するから、多少粗さが出てしまったのだ。
さっきの何重もの術式行使と結界術が、そのトドメになった。
後は、『骨晶』一回分と、何かができるどうか……
くそ……体は痛いし、術式の使い過ぎで頭も回らなくなってきた。
一か、八か……取り敢えず、やってみるしかない。
「『生者と持戒』『大地の道諦』────『骨晶・装』」
骨を利用した武具。
腕から生やした小刀を手に持ち、もう片手で手印を組む。
それは、結界術の授業でチラッと教わった程度で、誰も使えないし、使わないという技。
なぜなら、それはこの世で数人もできない、呪術戦における極致の応用だから。
だが、よくよく考えてみると変だなと思った。
術式を付与するか否か、というだけの違いであるなら、付与しない方が遥かに簡単な筈じゃないか。
しかも、体という輪郭を用いる時点で、結界を外側に生成する『領域展開』とは、格段に容易じゃないとおかしい。
生得領域は、自分の身体の内側にあるという。そして、領域である以上は結界術だ。
やっている事は、内側にある領域を少し外側に押し広げるだけなのだ。
だが、それでは足らない。
その身体の範疇に、俺の骨刀を含める。
それくらいなら、俺にだってできる。
呪力を絞り出せ。
今あるこの感情を、吐き出せるだけ吐き出すんだ。
「──加茂流、『領域展延』」
呟くと、効力が発揮された事を体感した。
術式の強制解除。『天覚』によって引き伸ばされていた意識が現実に追いつく。
身体が力を失って、それでも踏ん張って、刃を突き出した。
これで、おわ────
○ ✕ △ □
倒れ伏した一人。
地に足をつけている一人。
勝敗は明白だった。
「……やはり、無下限は圧倒的か」
「カカッ……相手は六眼持ちだ。無理もあるまい。だが、この俺でもこの勝負の趨勢は最後まで見切れんかった。よもや、加茂と五条の一騎討ちとはな」
「私としては、娘があそこまでやるとは誇らしい気分だがな」
「俺の前でよく言いよるわ」
外野がざわざわと喚き立てる中、五条悟は目を見張って、地面を見つめていた。
足元に転がる黒髪の少女。
その側に、キラキラと光る銀髪が落ちていた。
(破られた……おれの、無下限が)
手を掴まれたのは、ただの失態だった。
だがこれは何だ。
髪の毛一本たりとも触れることは許されない筈の無下限が、どうして効果を発揮しなかった。
少女の手に握られていた小刀を拾い、指先に突き刺そうとする。
無下限は正常に発動する。この武器が特別なものではないようだ。
だが、あの時制御を誤っていたとも思えない。
「悟、おめでとう。流石は私の息子だ」
父親が何やらと言っていても、悟には聞こえなかった。
最強。
それが自身の存在意義だ。
最強だから、自分が家で何をしようが咎められなかった。
無敵の術師だから、次の当主だから、彼の父や周りの人間は自身を褒め称える。
では、最強でなくなったら。
自分はもう、いらないのではないか。
「悟? ……悟っ! どこに行くんだ!!」
五条悟はその場から逃げ出した。
その手に、式那の小刀を持ったまま。
攻略したい子を選んでねっ♡
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王道?:五条悟
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邪道:禪院直哉
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外道:夏油傑
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覇道:羂索
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非道:宿儺
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寡夫:伏黒甚爾
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百合:庵歌姫
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呪霊:真人