【急募】TS美少女が呪術界で生き残る方法 作:うぇいうぇい
この作品のゴールは決まったな(大嘘)
縛りを結ぶには、縛りに対する明確なイメージが必要となる。
要するに、『正義の味方』より『悪の敵』理論だ。より厳密化しなくては、予想外のところで縛りにひっかかったり、縛りの効力が薄れる可能性がある。
さて、そんな縛りの内容だが、とっくに決めていた。
そもそも、誰に言われずとも、何が自分にとって一番大きいかは分かっている。
……自分が女として生まれてきたのは、この為な気がしてならない。
俺の性自認は男だし、異性愛者だ。
だから、このアイデンティティを、著しく貶める縛りを結ぶ。
詳しくはこうだ。
①女性として振る舞うほど、術式の効果が上昇していく。
②性的指向を男性とし、女性に性的興奮を覚えなくなる。代わりに身体能力が向上する。
③これらの内容を口外してはならない。代わりに、上記の縛りの効果を更に高める。
①が遵守、②③が強制の縛りになる。
つまるところ、男としての自分は心のうちに封じ込めるのだ。
生き残る為とはいえ、つくづく馬鹿だなあとは思う。
女として生きると、そう言っているようなものだ。
だが、女性として人生を送る以上は、万が一ということもある。この世界がどういう場所か、完全に推し量れている訳では無い。
その保険の意味合いも兼ねている。
だが、それ以上に捧げたものが大き過ぎたかもしれない。
「……即時に反映された」
身体が軽い。
まるで術式を使っている時のような全能さを覚える。
これでもう、後戻りはできなくなった。
……いや、完全に退路を絶ってしまおう。
「加茂式那は、呪術師として生きる。それ以外の道に逃げる事は許されない。その代わり、呪力が増加する」
縛りが結ばれると、呪力が体に充溢していく。
今までの何倍だろうか。これだけあれば、もっと気軽に術式が使える。
これは、俺が一般人の感性を持っているからこそ有効な縛りだ。
呪力があり、術式がある。それだけで呪術界の家に産まれた人間は呪術師となるよう親から言われ、自分もそう思うだろう。
でも俺はそうじゃなかった。
危険なものと関わり合いにはなりたくないし、逃げる事だってできた。
躯躰総術の万能性は伊達じゃない。少なくとも、顔の形ぐらいは簡単に変えられる。
五条悟と出会う前までは、いざとなれば国外逃亡も視野に入っていたくらいだ。
しかし、それを今絶った。
呪術師としての人生。
危険はあるが、それでも簡単にくたばってやる気はない。
生きたい。
今度こそ、最後まで生き抜きたい。
前はできなかった事もやって、出来るだけ、後悔が残ってしまわないように生きる。
だから、徹頭徹尾自分の為に、この先も生き残れるよう強くなりたいと願った。
「私は、加茂式那……ただの呪術師で、女の子で……」
ピタリと、そこで思考が止まった。
生き残ったとして、俺は何をするのか?
加茂家の次期当主だ。世継ぎだ世継ぎだと、いずれは男との子作りをせっつかれるだろう。
心がどうであれ、どこまでいっても女性なのだ。
「…………女の子、かぁ」
生理、結婚、妊娠、出産……考えるだけで気が重くなる。
そもそも、男と結婚するとしたら、どんな奴なら気が合うのか。
顔はイケメンじゃなくていいよ。まぁ、できれば今ぐらいから仲良くなって、気心知れた仲の奴がいいな。
……そうだ。
もうお見合いして許婚作って、逆光源氏を実行してしまえばいいんじゃなかろうか。
生涯のパートナー。悩みを共有できる友。
いいじゃないか、これで将来も明るいだろう。
思い立ったが吉日、来た道を戻ってお父様の部屋に直行。
「お父様! お見合いしましょう!」
「待て、落ち着け式那。縛りはどうした?」
「もう結びました! そんな事よりお見合い、お見合いですよ!」
「そんな事より……!?」
お父様は大混乱していた。
そりゃそうだ。
「う、ううむ……その、あまり自由に決められるものではないが、要望などはあるか」
「はい。クソガキでなければ結構です。後は私好みにせんの……ごほん、教育を施すので、家格が相応ならば特に言う事は無いです」
「……そうか。先を、見据えているな」
「将来の伴侶と後継の育成には余念はありませんよ。五十人ほどリストアップして貰えれば、後はこちらで決めますので」
「…………あ、ああ。暫く、時間をくれ。我が家と釣り合う家はそうはないが、選定には時間が、な……」
お父様は遠い目というか、なんとも歯切れの悪い返答だった。
「……その、私としてはな。縁談は、まだ早いと思うのだ」
雲行きが怪しくなってきた。
加茂家としては最優先で決めたい事だろうに、何故だか諭されているような。
もしや、お父様ご乱心か。親馬鹿モードに入ったか。
お父さん、結婚とかまだ早いと思うんだとか言って、パパ大嫌い! と言われてガビーンとするアレなのか。
「じゃあいいです。私が適当に見繕いますので」
「待て、待つんだ。あと六年、いやせめて五年は待ってほしい」
それは待たせ過ぎだ。
それもう初等教育終わっちゃうよ? 逆光源氏とかできる年齢じゃないって。
「いいか、式那。我等呪術師における婚姻はだな。相伝の術式を後の世代へと受け継がせる為にも、受け入れる血は貴いものでなくてはならない。そして、お前は胎として比類無く素晴らしいが故に、選ばれる相手もまた、最高の血でなくてはならないのだ」
「では、五条悟とかですか?」
「……御三家の、それも次代当主同士での婚姻はあり得ん。力の均衡を崩してしまう事があれば、この呪術界の存続すら危うい。だが、お前という存在と釣り合うものは、知る限り五条の坊と禪院の坊のみだ。零落した旧家筋を当たってみるが、時間が掛かるだろう」
えぇー。
旧家とかじゃなくとも、非術師の家でも凄い術式持ってる人とか居るっぽいし、そういう人連れてくればいいと思うんだ。
できるなら、一般的な思考の子だと
「では、二年。二年で許婚候補を探して下さい。その中から選びましょう。ただし、最低三人以上でなければ、縁談に持ち込みません。いいですか?」
「……分かった」
お父様の承諾も頂けた事だし、こちらも動くとしよう。
伝手も何もないが、これから始まる任務次第では術師や補助監督がつくことがあるそうなので、絶好のコネ作りチャンスだ。
我が人生計画に大きな路線転換は無し。
この調子でなんとか進めていこう……
「……式那。やはりお前は、受肉しているのか」
「はい?」
じゅにく……受肉?
ゲームとかで出てきた気がする。神やら悪魔やらが現実に依代を作って動き回る……みたいな。
転生って受肉になるんだろうか。
広義で言えば近いような気はするが。
……もしやあまりに子供離れしていたから、別人乗っ取り説を考え始めたのか。
御三家の嫡女に、最高の術式。あと美少女。
創作ならまず主要キャラの仲間入りだ。ヒロイン説は前にも提唱した事があるくらいには。
……俺が、この身体を乗っ取ったのだろうか。
「もしや私は……本当の私を殺してしまったのですか」
「受肉すれば、器の自我は消失する。中には耐性を持つ者もいるが、それは稀だ」
「……では、もう」
「お前が他の自我を知覚できないのであれば、そういう事だ」
他の自我。
そんなものを感じた事は一度たりとも無かった。
「…………」
「その事で、お前が罪の意識を感じる必要は無い。生前の術式は持っているのか?」
「……いえ。呪術とも、あまり関わりはありませんでした」
「ふむ、まあいい」
まあいい、で軽く流さないで欲しいんだけども。
「恨みは、しないのですか」
「私が育てたのはお前だ。そして、期待以上の術式の扱いと結界術を身に着けた。故に、私はお前を評価している。それだけの事だ」
……呪術師らしい、と言えばらしいのか。
そんな風に考える事はできなかった。
転生なんてよく分からないもののせいで、大切な赤子の心を殺し、死に損ないの大人が生き延びた。
償い方も分からない、そんな罪だ。
いずれは、記憶からも薄れていくことだろう。
「……薄情者ですね、お父様も」
「はっ……呪う者が情など持ち合わせた所で仕様があるまい。呪わば穴二つ、我々はそういう世に生きるものだ。死ぬならば呪いで死ね。情に絆されるなど論外だ」
「そこまで厚かましくなれればよいのですが」
「何を言っている。お前は私の娘だろう。……いずれ、割り切れる時が来るさ」
え、と声を漏らさなかったのは、幸運だった。
いや、顔には出てしまったかもしれない。
割り切れる、というその言葉に、初めて素のお父様を見た気がした。
悟くんまだですか?(自戒)
攻略したい子を選んでねっ♡
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王道?:五条悟
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邪道:禪院直哉
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外道:夏油傑
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覇道:羂索
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非道:宿儺
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寡夫:伏黒甚爾
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百合:庵歌姫
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呪霊:真人