cal.   作:オタクは末端冷え性

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リメイクのビジュアルだと、工藤はどうなっちゃうんでしょうね



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 カチリ、と音が鳴る。

 

 

「んん……ふぅ、今日もありがとうございます」

 

「息を吐きたいのは俺の方だ」

 

 

 日課のネジ巻きを終わらせて、ミハルの背中から視線を外して携帯を取り出す。

 

 案の定連絡が来ていた。

 

 

「どちら様からですか?」

 

 

 文面の確認をしていると、気になったのかミハルがそのままの姿で画面を見ようと身を乗り出してくる。

 

 

「別に覗きこむことを咎めるつもりはないが、服はちゃんと着直してくれ。肩が見えてる」

 

「あ、ごめんなさい。先輩って結構肌でてると気にしますよね」

 

「お前のモデルが美春じゃなかったら、とやかく言わなかったんだけどな」

 

 

 間接的に美春のそういう姿を見たことになるから、あまりにも罪悪感というか申し訳なさが凄い。

 

 というか女の子のそういう姿を間近で見るのは、普通に心臓に悪い。

 

 

「それで、どちら様なんです?」

 

「杉並。入手を頼んでた物の目処が立ちそうって連絡をもらってね」

 

「お買い物ですか?」

 

「そう、安くはない買い物」

 

 

 杉並に頼めば、かんぬきの件のように大抵の代物は手に入れてくれる。

 遅くとも一日、二日で手に入れてくるあたり、本当に意味が分からん。

 

 勿論、物の価格分は支払うので乱用はできないが。

 

 

「パシリってやつですね」

 

「取引だ、寿命が縮む言い方をしないでくれ」

 

 

 ヤツの耳に入ったら何を言われるか分かったもんじゃない。

 

 

「……ミハル」

 

「はい」

 

「あー……スカート丈って、どのくらいがいい」

 

「お洋服買ってくれるんですか?!」

 

「いや、当たらずとも遠からずというかなんというか……」

 

「買っていただけるなら、ミハルは何でも嬉しいですよ!」

 

 

 ありがたい言葉ではあるんだが、この場合ちょっとなあ。

 

 

「オリジナルの美春は基本ミニだよな」

 

「そうですね、データで見ても美春さんはミニスカートが多いみたいです」

 

「似合うもんなあ」

 

 

 多分ロングでも似合うだろうが、動きづらいって言いそうな気もするし。

 

 ミニかぁ……。

 

 

『ミニ丈で頼む』

 

『邪道だが、要望であれば仕方があるまい。なんだ瞬木、貴様も男の子だったようだな』

 

『二度と日の光が見えないくらい顔面凹ませてやる』

 

 

 眞子に頼んで徹底的にやってもらおう。

 

 

 

────────

 

 

 

「自分でやりなさいよ」

 

「俺より眞子の方が威力高そうじゃん」

 

「丁度今、無料体験できるけど、試してみる?」

 

「謹んでお断りします」

 

 

 笑顔で袖を捲って握り拳を見せてくる眞子と、ニコニコで鍋の作る萌さんと一緒に屋上にて鍋を囲む。

 

 クラスの手伝いが終わり、お誘いもあったので本日はご相伴に預かることにした。

 

 

「まさか眞子から誘われるとは思ってなかったけど」

 

「鴨鍋のリベンジで、お姉ちゃん気合い入れて食材たくさん持ってきちゃったから」

 

「眞子ちゃんが、瞬木くんも誘おうって言うから、たくさん準備してきたんですよ~」

 

「ちょっ、お姉ちゃん!」

 

 

 あたかも偶然を装っていた眞子だったが、一瞬にして萌さんに無にされる。

 

 せめて口止めしておけば……いや萌さんには効かないか。

 

 

「そうなの?」

 

「いやーほら、あんたにはお弁当分けてもらったし、そのお礼も兼ねてってことで」

 

「眞子ちゃん、昨日も瞬木くんが来るかもしれないからって少し多めに食材用意してたんですよ~」

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

 この人無敵か?

 

 

「お姉ちゃんだって来るかもって言ったら喜んでたでしょ!」

 

「だいぶ火も通ってきたので、よそっちゃいましょう。瞬木くん、器とってくれますか?」

 

「あ、はい」

 

 

 顔を赤くして抗議する眞子を物ともせず、涼しい顔で具をよそってくれる萌さん。

 

 

「どうぞ、瞬木くん」

 

「ありがとうございます」

 

 

 この人無敵だ。

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした、誘ってくれてありがとな」

 

「感謝しなさいよ、もう」

 

「また何かしらお礼しないといけないな」

 

「いいわよ別に、貰って返してを繰り返してたら永遠に終わらないじゃない」

 

「そうですよ~、私も眞子ちゃんも、瞬木くんが来てくれるだけで嬉しいですから」

 

 

 もはや眞子も開き直っており、萌さんの言葉を否定せず「はいはい」と流している。

 

 

「ごめんなさい、ちょっと失礼しますね~」

 

 

 テーブルに置いてあった錠剤が入った瓶を手に、萌さんは席を立ち屋内に入っていく。

 

 

「前から気になってたけど、あれ栄養剤の類いじゃないよな」

 

 

 一緒に片付けをしていた眞子の手が止まった。

 

 

「……どうしてそう思うの?」

 

「なんとなく。しいて挙げるならラベルがないから」

 

 

 わざわざ栄養剤のラベル剥がしなんてしないだろうし、ラベルを剥がした瓶に詰め替える理由なんてないだろう。

 

 まあ男と縁遠い薬の可能性も高いんだけど。

 

 

「睡眠薬よ」

 

「随分と不思議なもんを常備してるな」

 

「幼い頃にちょっと……ごめん、あたしから話せるようなことじゃなくて」

 

「いいよ、詮索したかった訳じゃない。ただ身体に影響はないのかと思って」

 

「薬の飲み方自体はちゃんと守ってるから、一応問題ないけど……」

 

 

 長く飲み続けてるってのは、あまりいいことじゃない。

 

 眞子の表情は暗く、屋上の扉を心配そうに見つめる。

 

 

「あたしじゃ何もできなくてさ」

 

「特別なにかをする必要はないだろ。今まで通り、普通に接していれば良いんじゃない?」

 

「でも、それじゃお姉ちゃんは……」

 

「切っ掛けは必ず来るよ。あとはその時、本人が大事なことに気付くかどうか」

 

「……」

 

 

 なお不安そうにしている眞子の額を、加減してデコピンで弾く。

 

 「いたっ」と口にして額を押さえながら、ジト目でこちらを睨んでくる。

 

 

「なにすんのよ」

 

「萌さんが戻ってきてお前がそんな顔してたら、俺が怪しまれるだろ」

 

「元はと言えばあんたのせいじゃない……まったく」

 

 

 眞子が両手で自分の頬を叩くと、いつも通りの明るい表情が戻ってくる。

 

 

「よしっ、ありがとね瞬木」

 

「ん?」

 

「ちょっとだけ、楽になったから」

 

「なんもしてないけどな」

 

 

 どのみち眞子なら心配要らなかったろうし。

 

 止まっていた手を動かして、片付けを再開する。

 

 

「たまに思うんだけど、瞬木っておじさんみたいよね」

 

「なに喧嘩売ってる?勝てなくても抵抗はするぞ?」

 

「冗談よ。けど、なんか大人っぽいっていうか達観してるっていうかさ」

 

「んなことはないだろ。達観した人間が、純一や杉並のバカに付き合うと思うか?」

 

 

 自分で言ってて悲しくなるが、アイツらへの罪悪感は一切ない。

 

 

「そうね、あんたも基本的にはあのバカ達と一緒だし」

 

「バカで悪かったな」

 

「いいじゃん」

 

 眞子は満面の笑みをこちらに向けて。

 

 

「あたしはバカ、嫌いじゃないよ」

 

 

 ……おー、すごいな。

 心臓もってかれるところだった。

 

 

「ごめんなさい~、片付けお任せしちゃって……」

 

 

 衝撃で言葉がでなかったが、タイミング良く扉を開けて萌さんが戻ってくる。

 

 

「大丈夫、あたしと瞬木で片付け済ませちゃったから。あたしはこれ持って先降りてる!」

 

 

 矢継ぎ早に話すと、眞子は荷物を持って屋上の扉に消えて行く。

 

 風のように去っていった眞子に、萌さんは首を傾げながらこちらを向く。

 

 

「眞子ちゃんは、どうかしたんでしょうか?」

 

「窃盗未遂、かなぁ」

 

 

 なおのこと深く首を傾げてしまった。

 

 

 

────────

 

 

 

「にゃ」

 

「なにしてんだ」

 

 

 学園を出て神社に向かっていると、神社に上がる階段の前でフシギ猫が佇んでいた。

 

 尻尾をゆらゆらと揺らしながらこちらを見てくるだけで、動く様子はない。

 

 動かないヤツの横を通り過ぎようとすると、いつかのようにまた頭の上に鎮座される。

 

 

「もしかしてお前、自分で階段上がるの面倒だっただけじゃないだろうな」

 

「にゃあ~」

 

「にゃあじゃねぇよ」

 

 

 頭に地味な重さを感じながら階段を上ると、巫女服姿で境内を掃いている胡ノ宮さんがいた。

 

 

「どうも」

 

「こんにちは、瞬木様」

 

 

 笑顔でこちらに一礼する胡ノ宮さん。

 

 

「ほら、俺の頭よりあっちのがいいだろ」

 

「にゃ」

 

「あっ、待ってくださいうたまる様っ」

 

 

 俺が言うと、猫は俺の頭から直接胡ノ宮さんの胸元にダイブして抱き留められる。

 

 羨ましいなこいつ。

 

 

「よく分からんけど階段下にいて引っ付いてきた。あげるよ」

 

「あ、あの、巫女のお勤めの最中ですので、その……」

 

 

 口では拒否しているものの、表情やしっかりと猫を抱き留めているあたり、説得力がない。

 

 猫のために手放された竹箒が、物悲しげに地面に横たわっている。

 

 

「瞬木様は、本日はご参拝でしょうか?」

 

「あぁ。時間も空いたしそろそろ頃合いかなって」

 

「そうですか。ご案内差し上げたいのですが、その……先に拝殿に向かっていて頂けますか?」

 

 

 適当に猫の相手して追い払ってから来るのかな。

 

 

「分かった、先行ってるよ」

 

「はい、箒を戻して参りますので」

 

 

 ダメだ、甘やかす気満々だわ。

 

 

 

 

 

 

「どうぞ」

 

「ん、ありがとう」

 

 

 参拝後、社務所奥の座敷に通していただきお茶を出してもらった。

 

 胡ノ宮さん以外に人はおらず物音も聞こえない為、文字通りここは二人だけの世界……否、二人と一匹の世界と化している。

 

 

「その後調子はどう?」

 

「調子、ですか?」

 

「人助け。未来、視えるんでしょ」

 

 

 胡ノ宮さんは膝に乗っている猫を撫でながら、諦めたように微笑んでいる。

 

 

「やはり、お分かりだったんですね」

 

「流石にあんな体験したらね、疑いようもない」

 

 

 勿論、図書室での事故の話。

 

 あの時取り乱していた胡ノ宮さんは先に帰して、俺が後に来た教員に状況説明をしていたので、結局落ち着いて話すのはこれが初めて。

 

 

「あの時は本当に申し訳ありませんでした。瞬木様を危険な目に遭わせてしまって……」

 

「結果的に誰一人傷つくことはなかったし、気にしなさんな」

 

「いえ、私がもっと慎重に行動していれば……」

 

「あれが最善手だったよ。胡ノ宮さんじゃあの後輩たちは退かなかったでしょ」

 

 

 俺でも杉並を使った脅しがあったから、退いてくれたようなもんだしな。

 

 

「もしかしたら胡ノ宮さんが怪我してたかもしれないし、俺で良かったよ」

 

「……本当に不思議な方ですね、瞬木様は」

 

「どういう意味で?」

 

「数多の意味で、です」

 

 

 撫でていた手が止まると、猫は胡ノ宮さんの膝元から降りて日向で揺れ始める。

 

 

「なんとお聞きするのが正しいんでしょう……瞬木様は、何をお持ちなんですか?」

 

「持っている、だと少し違う。何者か、が正しいね」

 

 

 淹れてもらったお茶に口をつける。

 飲みやすいな、このお茶。

 

 

「お教えいただけるのでしょうか?」

 

「悩ましいね。多分だけど、胡ノ宮さんには説明は要らないと思うし。15日以降にある程度理解できるよ」

 

「15日……卒業パーティの日ですか?」

 

「そう。全部ではないけど、ある程度はね。話が聞きたいなら、その後の方がいい」

 

 

 漠然としたことしか言っていないが、胡ノ宮さんは満足そうに頷く。

 

 

「分かりました、その時をお待ちしております」

 

「随分と信用してくれるんだね」

 

「信頼しておりますよ、助けていただきましたから。おそらくは、過去にも」

 

 

 聡い子だな、本当に。

 

 

 

────────

 

 

 

「こんにちは、瞬木先輩!」

 

「ん、美春か」

 

 

 商店街に夕飯の食材を買いに訪れ、店から出ると美春に遭遇した。

 

 ここのところ二、三日会ってなかった気もするが、ミハルのこともあり毎日会ってる感覚がある。

 

 

「お前こんなところで鞄もって何してんの?」

 

「さっきまでクラスの出し物について、友達と相談してたんですよ」

 

 

 ファミレスでの作戦会議が終了して解散した後、たまたま店に入っていく俺を見て出てくるのを待っていたそうな。

 

 

「せっかくだから、途中まで一緒に帰りたいなって思いまして」

 

「そ。じゃあ帰るか」

 

「はい!」

 

 

 まだ日は落ちてないが、だいぶ空は赤みがかっている。

 

 

「どうなんですか、ミハルは」

 

「よくやってくれてるよ。間違いなく家の中が明るくなった」

 

「え、ミハルって光るんですか?」

 

「物理的な明るいじゃなくて、雰囲気の話な」

 

 

 アイツが発光したら怖いわ。

 

 

「お前のおかげで家事も任せられるし、俺自身も家の中で会話できるのが新鮮だし」

 

「そうですか。先輩のお役に立ってるなら何よりですけど……」

 

 

 なんとなく歯切れの悪い返事を寄越す美春。

 

 

「なんか気になるのか?」

 

「いえ、ちょっと羨ましいなって」

 

「羨ましい?」

 

「はい。先輩のお家にお泊まりして、一緒にご飯作ったり食べたりできるんですもん」

 

「そんなのが羨ましいのか」

 

「羨ましいですよ」

 

「ふーん」

 

 

 「私が力になりたくてお願いしたんでけどね」と、誤魔化すように美春は大きくあははと笑う。

 

 

「お前、今度うちに泊まりに来い」

 

「え?」

 

美春が目を丸くしてこちらを見る。

 

 

「ミハルは基本的に家に居るしかないから、俺以外の人間との交流がなくてな」

 

 

 ミハルは色々なものに興味を持つから、俺以外のたくさんの人にも触れてみたいだろう。

 

 

「状況的に友達と呼べるような存在を作るのが難しいからな。だから事情を知ってるお前には、仲良くしてやってほしい」

 

「それはもちろん、美春的にはばっちこいですけど、その」

 

 

 若干上目遣いで、その頬は夕焼けが当たっていて赤い。

 

 

「お泊まり、してもいいんですか?」

 

「ん?寝る場所はミハルの部屋か……俺の部屋のベッドで寝てもらって俺がソファで寝ればいいし」

 

「えっと、そういうことじゃ……」

 

「最悪ロボットのミハルに俺のベッドで寝てもらえば心配はないだろ」

 

「……」

 

 

 急に美春は神妙な面持ちで、「どうしよう……」とか「美春自身だけど……」などとぶつぶつ呟き始める。

 

 

「泊まりに来るときは事前に一言くれればいいから、好きなときに来いよ」

 

「あ、はい!お言葉に甘えて近々遊びに行きます!」

 

 

 それから俺の家まで他愛もない会話を続けていたが、美春は難しい顔をしながらパジャマやらお風呂やらと呟いていた。

 

 随分と気合い入れて泊まるんだなこいつ。

 

 

 

────────

 

 

 

「だから、そのうち遊びに来るってさ」

 

「ミハルの為にありがとうございます!」

 

「窮屈をしいてるのはこっちの都合だからな。いろんな経験してほしいし」

 

「でも、それだとやっぱり先輩にはソファで寝てもらうことになっちゃいますね」

 

「別にいいけど、お前のベッドなら二人入れるんじゃないか?」

 

「十分入れますけど、間違いなく取り合いになると思います」

 

「贅沢なやつらだなぁ」

 

「合法的なチャンスですからね」

 

「は?」

 

 

 

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