cal.   作:オタクは末端冷え性

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暑いですね



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「あ゛あ゛あ゛、全身痛い……」

 

「あい、お疲れ様です。そちらは大変そうでしたね」

 

「眞子のヤツ、男が俺しかいなかったからって、重作業全部こっちに投げやがって」

 

「それだけ水越さんに頼られているということですよ」

 

「いいや、絶対また都合のいい男としか思われてない」

 

 

 卒パの手伝いを終えた帰り際、珍しく手伝いをしていた紫さんと共に校舎を出た。

 

 その後すぐ予報にない雨に降られたが、運良くお互いに傘の持ち合わせがあり、大事には至らなかった。

 

 

「でも残念です、折角傘をお返しできるチャンスだと思ったんですが……」

 

 

 紫さんが差しているのは飾り気のない男物の折り畳み傘。

 

 つまるところ、以前渡したあれだ。

 

 

「むしろ運が良かったと思いなよ。あの時素直に借りたから、今回も濡れずに済んだってね」

 

「……そうですね、二度も瞬木さんには助けられてしまいました」

 

 

 紫さんは足を止め「ありがとうございます」と、こちらにお辞儀をする。

 

 

「そんなかしこまらないでよ。そっちにとっては死活問題かもしれないが、俺にとっては大したことじゃないし」

 

 

 彼女の背中をポンと叩き、姿勢を戻させる。

 

 着ぐるみの背中だからセクハラには……いや、女性であるという時点でセクハラかもしれないな。

 

 

「ところで瞬木さんは、帰り道はこちらでいいんですか?」

 

「ちょっと住宅街の方に用事がね。それと一つ、今日は大事な目的があって」

 

「あや……目的?」

 

「ああ。紫さんに」

 

 

 大きなクマの頭を傾ける紫さん。

 

 

「取引したいんだ」

 

「取引、ですか?一体なにをでしょうか?」

 

「こちらからは情報、そちらからは技術を提供してもらいたい」

 

 

 状況が飲み込めていない紫さんは、大きな頭を今度は反対に傾ける。

 

 

「あや、それはどういう」

 

「母星に帰る手立てがなくて困ってる。そうでしょ?」

 

「……どうしてそれを」

 

「俺から提供するのは、君が帰るために必要な情報」

 

 

 ぽつぽつと、雨が傘に打ち付けられる音がやけに大きく感じる。

 

 着ぐるみだから表情は分からない。

 

 だが俺の言葉を聞いて明らかに雰囲気が変わった。

 

 

「宇宙船、動かないんでしょ?」

 

「……あい。故障してしまって、こちらの星では修理に必要な材料も調達できず……」

 

「それを解決してあげる。その代わり、対価として作って欲しい物がある」

 

「それは、一体どのようなものなのですか?」

 

「作るときになったら教える。ちなみに兵器の類いではないし、誓って悪用もしない」

 

 

 警戒、そして困惑。

 

 今の紫さんの状態を言葉にすると、こんなところだろう。

 

 

「技術的には現代の地球でもギリギリ実現可能なレベルのものなんだけど、俺にはその環境がなくてね。だから紫さんの力を借りなきゃいけない」

 

「……」

 

「どうする?この期を失えば、二度と故郷には帰れないかもしれないけど」

 

 

 紫さんは俯いたまま微動だにしない。

 

 もう後は彼女の返答待ちで、俺にできることはない。

 

 何分経っただろうか。

 

 雨の中で暫く立ち尽くして、ようやく彼女は頭を上げた。

 

 

「……分かりました。ご協力いたします」

 

「ありがとう、こっちも助かるよ」

 

 

 良かった、これで協力を得られなかったら、かなり危ない橋を渡るはめになったから。

 

 とりあえず俺は、紫さんに全力で頭を下げる。

 

 

「まずは謝らせてほしい。強い言葉で選択を迫ったこと、本当に申し訳ない」

 

「あやや、頭を上げてくださいまし。実際に帰る方法に関しては本当に手詰まりでしたので、なにも間違いではなかったですから」

 

「紫さんの協力がないとこっちも相当困ったからね。なんとしてでもと思ってたから強く出ざるを得なくて」

 

「そんなに大事なものを……結局私は何を作るんでしょうか?」

 

「その頼みをする前に、直さなきゃいけないものがある」

 

 

 俺はポケットからそれを取り出して、指で弾く。

 

 放物線を描いたそれは、咄嗟に手を出した紫さんの手に乗っかった。

 

 

「これは、一円玉ですか?」

 

「ルミア。うちではアルミと呼ぶが、君の星ではこの素材をそう呼ぶらしいね。船の修理に必要なメイン素材だろ?」

 

「……あや?……あやややや」

 

 

 手に乗った一円玉をつまみ上げ、まじまじと見つめるつぶらな瞳。

 

 

「この軽さに耐久性……どうして今まで気が付かなかったんでしょう……」

 

「固定観念ってやつだな。他の素材に関して詳しいことは分からないが、そっち側で認識に関する何かしらがエラーを吐いてるはず」

 

 

 俺に言われて紫さんは脇で器用に傘を挟み、自身の鞄からディスプレイが付いた小型の端末を取り出す。

 

 慣れた手つきで端末を操作し、軽快なリズムで電子音が鳴り響く。

 

 

「あやや……地球の物質を認識するための変換方式が、本当に間違えてます……そんな……」

 

「それさえ修正すれば、後は君の方でなんとでもなるでしょ」

 

「一通り確認してみないとまだ分かりませんが……でも、どうして瞬木さんが私の星の事やエラーのことを」

 

「後々話すけど、それだけは知ってるってところかな。それより今は自分の船の修理を優先してくれ。俺の頼みも宇宙船が直らないことには始まらないから」

 

 

 どうせ今話してもまともな会話にはならないから、モノを作るときに話すとしよう。

 

 

「……いいんですか?」

 

「ん?」

 

 

 端末を鞄に仕舞い、躊躇いがちに紫さんは尋ねてくる。

 

 

「宇宙船が直れば、私はいつでも自分の星に帰れてしまいます」

 

「まあそうだね」

 

「つまりそれは、私が瞬木さんと取引を無視して帰れてしまうということで……」

 

 

 ああ、そういうこと。

 

 

「君は裏切らないよ」

 

「……どうして言い切れるんですか?」

 

「さっきも言ったけど作ってほしい物は悪用しないと誓うし、君が悪事に荷担するようなこともない」

 

 

 大概の悪いことなら、魔法でどうとでもできちゃうし。

 

 

「それに、君は人のためならともかく、自分の身勝手で人を裏切るような真似はしないよ。紫さん、真面目だからね」

 

 

 本当にその気なら、あんな躊躇いながらいいのか?なんて聞いてこない。

 

 

「信用されてるんですね、私のこと」

 

「信頼すらしてる。じゃなきゃ俺が魔法使いってことも教えてないよ」

 

 

 こっちからしたらあれはリスクしかないからな。

 

 俯いていた紫さんが勢いよく顔を上げ、こちらを見据える。

 

 心なしか、そのつぶらな瞳が輝いて見えた。

 

 

「では、その期待を裏切ることはできませんね」

 

「ああ、期待させてくれ。まずはそっちの船の修理だ。頼むよ」

 

「あい、任せてくださいまし」

 

 

 紫さんはお辞儀をして、水溜まりも気にせず走り去っていった。

 

 気付けば雨の勢いは弱まっており、もう殆ど傘も要らない程度に止んできている。

 

 ふと気になって後ろを振り返ると、遠くの空の雲間から眩しい光が射し込んでいた。

 

 

 

────────

 

 

 

 これ帰ってもいいんじゃないか?

 

 

「いらっしゃい瞬木君。お見舞いですよね?」

 

「どうも。一応そのつもりではいるけど」

 

 

 先からポタポタと水が滴る折り畳み傘を片手にインターホンを押すと、ことりの家から出てきたのはみっくんだった。

 

 

「そっちもお見舞いでしょ?」

 

「はい。でもちょっと相談して退散するつもりだったんですけど、長引いちゃって……」

 

「相談?」

 

「とにかく、上がってください」

 

 

 あ、結局逃れられないのね。

 

 

 

 

 

 

「つまりだ。ことりを捧げればあのイカれた手芸部がステージ衣装を貸してくれる、と」

 

「そうなんです。二人とも、私を人身御供にしようとしてるんですよ」

 

 

 パジャマ姿でベッドに腰かけていることりが、可愛らしく憤慨している。

 

 

「いいじゃない、減るものじゃないんだし」

 

「向こうも三人分用意してくれるって言ってくれたし、お得でしょ?だから……」

 

「コンテストに出るのは私じゃないですかぁ……」

 

 

 うちの学園には手芸部がある。

 

 腕こそ確かだが頭が少々不確かな連中であり、去年のクリスマスパーティにミス風見学園コンテスト、略してミスコンと呼ばれるイベントを開催した。

 

 手芸部側の主張としては、あくまで自分達が制作した衣装の発表会であると語るが、実際は学園のナンバーワン美少女決定戦みたいなものである。

 

 去年は目の前のことりは勿論、あの音夢さんも出場し、想像を越える激戦を繰り広げた。

 

 そしてイベント終了後、両者にとんでもない数の野郎共が殺到し、それはもう大変な目にあったとか。

 

 

「うぅ、モテる女はツラいっすな」

 

「モテないよりはツラくないって」

 

 

 嘆くことりに、みっくんがやれやれと呆れたように言い聞かせる。

 

 

「いや、みっくんだってモテるんじゃないの?十分可愛いだろ」

 

「えっ」

 

「……え」

 

「え」

 

「……え?」

 

 

 三人の視線が一斉に俺を貫く。

 

 え、なんか間違ってる?

 

 

「……いやぁ、そう言われるとちょっと照れますね」

 

「それは、なにより?」

 

 

 絶妙な反応で、人差し指で頬をかくみっくんに、こちらもなんとなく気まずくなる。

 

 するとことりが「こほん!」とわざとらしく咳払いの真似をして。

 

 

「違いますよ瞬木くん。みっくんはお兄ちゃんさんにしか興味がないだけですもんね?」

 

「え?!や、やだなぁ人聞きの悪い……」

 

 

 なんだか似たような兄妹を彷彿とさせるな。

 

 ことりの刺すような指摘に、わたわたと動揺するみっくん。

 

 ともちゃんは静観の姿勢であり、じっとことりを見つめている。

 

 

「それでっ、瞬木くんはどうしたらいいと思いますか?」

 

 

 なんだかちょっと語気が強めのことりに意見を求められる。

 

 こういう時に何故かを尋ねると、ろくな目に合わないことを知ってるのでスルーさせてもらおう。

 

 

「んー、そうだなぁ」

 

 

 俺は机の上の衣装に視線を向ける。

 

 衣装はドレスであり、単純な赤ではなく深みのある赤色であるため、落ち着いた上品さを感じる。

 

 派手過ぎず地味過ぎないデザインは、ことりたちの演奏の雰囲気にもしっかりと合っている。

 

 流石、奴らがことりに着せるために身命を賭して仕上げただけはある。

 

 

「ことりはこの衣装どう思ってるの?」

 

「それは勿論、私には勿体ないくらい素敵なドレスだと思います」

 

「つまり着るのが嫌なわけじゃないんだよな」

 

「それはそう、ですけど……」

 

 

 ことりからの反応は悪い。

 

 本人が嫌がってるのは、恥ずかしいことと、イベント後が大変なことだろう。

 

 憂鬱になる気持ちも分からなくない。

 

 

「これはまあ持論になるんだけどさ」

 

 

 少しでも伝わるといいんだが。

 

 

「いつか振り返ったときにバカなことやったなって。そんな呆れて笑っちゃうような思い出、いくらあってもいいと思うんだよ」

 

 

 今を生きる少年少女が理解するには、少し難しいかもしれない。

 

 

「恥ずかしいとか面倒くさいってのは確かにあるかもしれないけど、それで未来の自分が一瞬でも笑ってくれるんだぜ?」

 

 

 けれど、それでもこれを伝えたくなってしまうのは、自身の選択に後悔があるからだろう。

 

 

「それだけでバカやる価値は十分あると思わない?」

 

 

 振り向くと、三人ともきょとんとした顔をしてこちらを見ている。

 

 やはり彼女たちにとっては理解しづらい事だったかもしれない。

 

 その中で、ともちゃんが口を開く。

 

 

「瞬木君って、達観してますよね。あまり同世代の男子には見えないっていうか……」

 

「そんな風に見える?俺も結構ガキなんだけどな」

 

 

 たらたらと講釈を垂れるより、きっとこのくらいストレートの方が伝わるかもしれない。

 

 

「俺だってドレス姿、見てみたいしさ」

 

 

 

────────

 

 

 

「ただいま」

 

「あ!先輩お帰りなさい!」

 

 

 リビングに繋がるドアから、ひょこっと顔を出すミハル。

 

 いつも俺が帰ってくると一瞬で出てくるけど、どんな反射神経してるんだお前。

 

 

「ミハル、風呂ってもう沸いてるか?」

 

「はい。ついさっき沸かしたぱかりですけど……もう入るんですか?」

 

「今日は随分と重労働を任されて身体痛くてな。温まりたいんだ」

 

「なるほど、お疲れなんですか」

 

 

 ミハルはなにかを悩むそぶりを見せて、フェードアウトしていった。

 

 今のでなんか考える内容あったか?

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 頭を洗い終わり、身体を洗い始めようとしたところで、脱衣室の方からゴソゴソと音が聞こえてきた。

 

 

「せんぱーい。湯加減どうですかー?」

 

「ん?まだ湯船入ってないけど、大丈夫そうだぞ」

 

「……し。いく……今……ない……」

 

 

 扉越しに聞こえるミハルの声に返事をする。

 

 初日の時以来はそんなの聞いてこなかったろうに。

 

 不思議に思っていると、急に風呂場の扉が開かれ冷気が流れ込む。

 

 

「先輩!お背中流させてください!」

 

「待て、待て待て待て待て。それは色々と不味いだろ」

 

 

 首だけ後ろに向けて振り返ると、そこにはバスタオル一枚巻いて仁王立ちするミハルの姿。

 

 

「何をどうしてこんな奇行に走った」

 

「ミハルは常々考えていました。先輩のお役に立てているのかと」

 

「立ってるよ。家事の手間省けてる時点で相当役に立ってるよ」

 

「否!全然役に立ってないんです!!」

 

「どいつもこいつも振り切れると人の話聞かなくなるのやめようよ」

 

 

 ミハルは浴室に入り込み、扉を閉める。

 

 なにしれっと入ってきてんだお前。

 

 ミハルはそのままタイルにぺたんと座り込んだ。

 

 

「完全防水とはいえ温度には弱いんだから、リビング戻ってなさい」

 

「大丈夫です!ミハルの計算ならお背中流すくらいの時間なら全然問題ありません!」

 

 

 そっちに問題がなくても、こっちに問題があるんだよ。

 

 

「だって、ミハルは先輩を介助するためにここに来たんですよ?なのにそれらしいこと一度もできてないじゃないですか」

 

「まあ見た通り健康体だからな」

 

「でも美春さんからは酷い怪我してるって聞いてたんです」

 

「大袈裟に言っただけなんじゃないか」

 

 

 まあ実際骨折はしてたから、美春の見解もあながち大袈裟じゃなかった訳だが。

 

 

「そしたらミハル、先輩のお家に置いてもらえる理由がなくなっちゃいます……」

 

「別に元気だからってお前を追い出すなんてことしないって」

 

 

 なるべくミハルの姿をハッキリ認識しないように、身体を横に向けて目の端で捉えるようにする。

 

 

「てか背中流すだけなのに、なんでバスタオル一枚なんですかね」

 

「それは……こういうのはフェアじゃないとダメってネットで皆さんいってましたし……」

 

「着てたって脱いだってフェアにはならないんだよ。それに女の子なんだから、ちょっとは露出に気を使ってくれ」

 

「ミハルはっ……その……」

 

 

 何かを勢いよく吐き出そうとしたが、途端に失速してしおらしくなる。

 

 

「ミハルはただ、先輩に喜んで欲しくって……それで……」

 

 

 ミハルは一瞬視線を彷徨わせると、顎を引いてやや上向きの視線をこちらに向ける。

 

 

 

 

 

「ミハルだって、恥ずかしくないわけじゃ……ないんですよ?」

 

 

 

 

 

「………………はぁ」

 

 

 上気した頬。

 

 潤んだ瞳。

 

 風呂場の暑さと湿気による影響だそうに違いない、と自らに言って聞かせ平静を保つ。

 

 この状況での問答は時間を長引かせるだけで、こっちの精神が徐々に削られていくだけだろう。

 

 

「背中だけ洗ったらすぐ戻るように」

 

「はい!一生懸命流させてもらいます!」

 

 

 もう諦めの境地でミハルに全て丸投げしよう。

 

 後ろからはごしごしと泡立てる音が聞こえてくる。

 

 

「ミハルって羞恥心あるんだよな?」

 

「当たり前じゃないですか。ミハルだって女の子の端くれですよ」

 

「でも朝のネジ巻きではだける時は、あんまり恥ずかしがってなくないか?」

 

「あれはミハルにとって生命維持の為の、欠かせない日課ですからね」

 

「意識の問題か。確かに喫茶店でパフェにやられた時は恥ずかしがってたしな」

 

「それはもう忘れてください!」

 

 

 誤魔化すように勢いよく背中にボディタオルが押し付けられる。

 

 そのまま強すぎず、弱すぎない具合で上下に背中を擦られる。

 

 

「でも意外でした。先輩って結構やんちゃな人だったんですね」

 

「ん?なにが?」

 

「ほら、これ」

 

 

 ミハルの泡だらけの手が、俺の二の腕に触れる。

 

 

「これ、タトゥーってやつですよね?やんちゃな人がやるってミハル知ってますよ」

 

「これの話か。まあ似て非なるものだよ」

 

「違うんですか?でも不思議な模様ですね。なんかこう、神秘的というか……」

 

 

 ミハルの指が模様をなぞるように、ゆっくりと滑る。

 

 

「止めておけ。変に触れると何が起こるか分からんぞ」

 

「……」

 

「背中だけって言っただろ?腕はもういいから」

 

「……」

 

「……ミハル?」

 

 

 なんだ?

 

 腕に触れたまま手が動かないミハルを心配して振り返る。

 

 

「はふぁ……」

 

「……言わんこっちゃない」

 

 

 耳からモクモクと煙を出し、目を回してるミハル。

 

 間違いない、オーバーヒートだ。

 

 

「計算したんじゃないのかよ」

 

 

 とりあえずシャワーで背中を流し、ミハルを抱きかかえる。

 

 バスタオル姿で濡れたままにしておくわけにもいかないが、かといってタオル剥ぐわけにもいかない。

 

 割と詰みだなこれ。

 

 誰かもう一人、ミハルを世話する女の子を雇うべきなのかもしれん。

 

 

「ああ、猫の手を借りたい」

 

 

 

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