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「ううん・・・」
ぼやけた意識でみいなは目が覚めた。右手で瞼を擦り目を開く。
「あれ・・・ ここは・・・?」
みいなは真っ白なベッドの上に居た。肌触りのいい純白のシーツに包まれて。ベッドの周りを見回すと辺り一面も真っ白で、床も壁も白一色の大きな部屋の中だった。その奥に置かれたベッドの上でみいなはぽかんと上半身だけを起こしていた。
「確か・・・ わたし凛々奈さんとシエルさんの所へ行って・・・ それから・・・ それから・・・」
人差し指を頬に当ててう〜んと自分の記憶を整理する。
「そうだ! 怪我をした子のご飯を用意してあげて・・・」
意識を失う前の記憶を思い出すと、ひんやりと冷たい何かがみいなの首筋に触れた。
「ひゃいっ!」
驚いたみいなはぴょんとベッドの上で跳ねた。
「おはようみいな やっと目が覚めた」
隣から声が聞こえた。ゆっくりと声の方を見るとあの少女、シエルの所にいた白髪の少女が同じベッドに横になっていた。
「はえッ! 何してるんですか!? それよりここ何処ですか!?」
みいなは赤面して声を荒げた。隣にいる少女は下着姿。白いシーツの上で青白い少女の肌が華麗に浮かびあがっている。
「ッッッ!?」
そしてみいなの顔は更に赤くなる。自分の体を見ると着ていた筈の服ではなく薄手の真っ白なネグリジェを着ているのに気付く。
「な、な、な、なんですか!! 一体!!」
みいなはシーツを掴んで体を隠すように覆う。
「フフフ みいな・・・ そう、みいな・・・」
横の少女は自分達の服装や状況を全く気にしていない、蕩けたような顔でみいなの顔を見つめ続けている。
「もう 私のもの」
少女の掌がみいなの頬に優しく触れる。ひんやりと冷たい感触が伝わる。
「あっ」
その瞬間みいなの意識は霞み、その瞳は虚ろに揺れる。
『?56.32.201.26.59.58』
頭の中で、何かが聞こえる。
「ああ やっと会えたね・・・」
少女はみいなを優しく抱き寄せる。二人の顔はもう触れ合う程に近くて その時。
「みーちゃん!!」
うるさい位に元気な、いつも自分を呼んでくれる大切な人の声が聞こえた。
「やめてッ!!」
みいなは少女を両手で突き飛ばした。聞こえた声によって虚ろにぼやけていたみいなの意識はハッキリと引き戻された。
「い、いったい何なんですか!! それより凛々奈さんは!? 何処に居るんですか!!」
まだ自分の置かれた状況が分からない、しかしみいながいつでも信じられる存在である凛々奈を求める。
「りりな・・・? ああ あの出来損ない?」
突き飛ばされた少女は身を起こした。
「もう死んじゃったわよ? 私が殺した、プスッて後ろから心臓を突き刺して」
はだけた下着を整えて言う。
「だからそんな奴もう忘れて? 貴方はもう私の物、ネージュ ネージュ=フローライト 私の名前・・・ それだけ覚えて、刻みつけて? 貴方の魂に・・・」
少女、ネージュはベッドの上を四つん這いでみいなに近づこうとする。
「・・・・死んでない」
「ん?」
「凛々奈さんは来ますよ・・・」
凛々奈を殺したと言うその言葉でみいなは目の前の少女が敵だと、また自分の事を狙ってきた奴らだという事を察っする。
「凛々奈さんは・・・ テンション高くて、煩くて、セクハラ気質で!偶に何言ってるか分かんないけど・・・・」
「私を絶対助けてくれるんだ! 私は凛々奈さんを信じてる!!」
ギュッと両手を握って力の限り叫んだ。
「うるさいな」
「きゃっ」
みいなの頭をネージュの手が強く掴む。そして無理矢理抱くようにみいなの体を自分に寄せる。
「ねえ、もう居ない、要らないの 貴方と私、それ以外全部 全部殺して全部消してしまおうか? そうすれば貴方の中に私以外居なくなる」
ネージュは鋭くなった瞳でみいなを睨む。
「いいよ、今貴方を私だけにしてあげる、めちゃくちゃにして他の事なんて何も・・・」
ネージュは無理矢理みいなの顔を引き寄せる。みいなも両手で反抗するがその力は何の意味も成さなかった。そして二人の少女の唇が触れ合おうとしたその瞬間。
「イヤだぁッ!!」
みいなが叫んだ。心から、魂から彼女はそれを拒絶した。
ノイズ
二人は光に包まれた。
「なにッ!?」
ネージュはその光に吹き飛ばされた。眩しさに顔を手で覆う。そして数秒後、光は収まった。
「みいな・・・?」
顔を覆っていた手をどけるとみいなはベッドのあった場所に居た。その場所でふわふわと宙に浮いている。赤子のように身をかがめて眠っていた。
「なに・・・ これ・・」
意味の分からない現象にネージュは立ち尽くす。よく見ると浮いているみいなは何かに、シャボン玉のような薄い球体に包まれていた。
「・・・・・」
ネージュの目に浮いているみいなの下にある壊れたベッドの残骸が映る。そしてそこに何か違和感を覚えた。ネージュはゆっくりとその残骸に近寄っていく。残骸の横にはベッドの横に脱ぎ捨てていたネージュの白いワンピースが落ちておりネージュはそれを拾うと袖を通した。
「これ・・・」
そして壊れたベッドの残骸を見る。衝撃で破壊されたと思っていた瓦礫はネージュの思っていたそれより少ない。よく見るとシーツとベッドの部品と思われる鉄屑は異様な形になっていた。まるで一部がとてつもなく鋭利な刃物で切り取られたかの如く途切れている。
「・・・・・・」
ネージュは落ちていた鉄の棒を一本拾いあげるとみいな方へ軽く放り投げた。ゆっくりと飛んで行ったそれはみいなを包む球体に触れると音も煙も立てる事なく 消えた。 完全に消滅した。
「・・・・あははははは!」
ネージュは高らかに笑う
「凄い!凄い凄い凄い凄い凄い凄い!!! これが私達の力! 世界の理を超えた力!!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
狂ったかのように高らかに笑う。
「あぁ 今すぐ欲しいわ、みいなぁ」
恍惚とした表情でネージュはみいなに手を伸ばす。
「私を受け入れてぇ・・・ みいなぁ」
赤く火照り、蕩けた顔でみいなを見上げる。
ズガァン!!!
重い衝撃音がベッドの残骸と二人の少女だけが居る広い空間に鳴り響いた。ネージュは首を大きく横へ傾ける。ネージュの頭のあった所を白銀の銃弾が閃光のように駆ける。それは壁に到達し大きなヒビを壁面に走らせた。
「邪魔しないでくれる? 出来損ないの・・・・・ 死に損ない」
先程とは程遠い低い声で言いながらネージュは振り向く。この広い部屋の一つだけの入り口の方へ。
「うるっせえな 私が今ここで言う事もやる事も一緒、たった一つだけよ」
白銀凛々奈は銃を構える。
「テメェは絶対ぶっ殺す!!!!!」