勢い良く拳を振り抜いた凛々奈はやっとの思いでネージュに届いた自らの攻撃に満足そうに顔を緩ませる。その姿勢のまま殴り飛ばしたたネージュを見る。フレイムレイヴの豪炎と強化された膂力から繰り出された拳を顔面に受けたネージュは回転しながら中を舞った。しかしその無造作な回転は途中から華麗に宙を舞う様な動きに変わっていく。そしてネージュは片足から音もなく着地する。純白のワンピースがふわりと揺れ乱れた髪が顔にかかる、その白い髪から覗く瞳は今迄と変わらない余裕に満ちた凛々奈を見下す瞳。
「アハッ ちょっとムカついちゃった」
ネージュは片手で顔にかかった髪をはらうと。右手に持っていた砕けた剣から手を離したそれは地面にあたり更に細かく砕けて光の粒になって消える。
「言ってなさいよクソガキ、そのニヤケ面 二度と出来ねぇようにしてやるから」
ダメージを受けているようにみえないネージュにほんの少しだけ凛々奈は動揺したが、すぐに両手の拳を握り直して構える。その拳からは紅蓮の炎が揺らめく。
(いける・・・ この
ネージュの氷を溶かし貫けるフレイムレイヴの力に凛々奈は勝機を見る。そしてこれからネージュがどうこの炎に対応してくるか、それをどう打ち砕き止めをさすかに全てをかける覚悟をする。
「あれれ〜? 何その顔? もしかしてこれなら勝てるー! なんて思っちゃてる感じ〜?」
ネージュは片手を口に当てクスクスと小馬鹿にするように笑いだす。
「あん?」
いい加減コイツの顔にも苛ついて来たと凛々奈はネージュをギロリと睨む。
「そうね〜 別にそんな雑魚い火なんてどうだって殺りようはあるんだけど・・・」
口に当てていた手を人差し指だけ立て何か考えるポーズをとったネージュは目を大きく見開いた。
「アハッ! いいわ!! こうしましょう!!」
無邪気に楽しそうに笑うネージュは右手を上へと持ち上げる。大きく開いた掌に白い靄の冷気が集まっていく。そしてそれは透き通る結晶の刃を創り出した。
「フフフ・・・・ さっきと同じ、なんならもう形は変えないわ アンタなんかに別の手を出すまでもない、これだけで殺してあげる」
ブンッと空を切る音と共に頭上から右手に持つ刃を勢い良く振り下ろす。
「馬鹿にしてんのか?」
明らかに自分を舐めているその行動に若干キレている凛々奈が顔に血管を浮かべ言う。
「アハハハハハハ! 馬鹿にしてんだよ出来損ない!」
ネージュは心底楽しそうに、高らかに笑った。
「ならさっきと同じようにそのオモチャごとぶん殴ってやるよ、次はその顔面ぐちゃぐちゃになるまでなァ!!!」
二人は同時に駆け出した。
凛々奈は笑うネージュを睨みつけ駆ける、橙に煌めく髪と両手を振りながら。ネージュはそれを瞳だけを動かしてみた。
二人の距離が縮まっていく、最初に動いたのはネージュの右手、透き通る氷の刃が射程に入った凛々奈に凄まじい速さで切りかった。
「オラァ!!」
凛々奈は声を荒げながら襲いかかる刃の腹を炎の拳で殴りつけた。炎の熱と凛々奈の力によりピシリ、と音を立てて刃にヒビが入る。凛々奈は歯を食いしばると更に拳に力を込めた。そして氷の刃は勢い良く砕け散る。
(よしッ!!)
再びネージュの刃を砕く事に安心し成功しこのまま攻撃に移ろうとした凛々奈の耳に声が掛かる。
「ざーんねん♪」
そんな軽い声が聞こえると同時に凛々奈は胸元の違和感に気付く。目だけを動かして下を見ると、自分の胸元を貫く青白い細い腕が見えた。
「あぐぁッ」
遅れてやってきた痛みに凛々奈は咄嗟に体を引き距離をとる。突き刺されていたネージュの腕が抜け血が吹き出した。
「クソッタレ・・・!」
咄嗟に右手で傷を押さえる、同時に手に宿る炎で傷を焼き出血を防ぐ。
「〜〜〜ツッ!!!!!」
激痛に顔が歪み汗が吹き出す。
「あのね〜 アンタが私の氷を砕くのに0.25秒は掛かってるわよ? 私の目の前でその時間隙を見せるなんて殺してくださいって言ってるようなものよ??」
ネージュは凛々奈を貫いた左手の血を楽しそうに見て言う。
(クソッ!)
フレイムレイヴによって見えた勝機に油断していたのもあり、まともに攻撃を喰らってしまった凛々奈。積み重なっていくダメージに体も限界を迎えようとしていた。
「アハハハッ! さっきまでの威勢はどうしたのかしら?」
ネージュは左手を顔の前に持ってくるとべっとりと付いていた凛々奈の血は彼女の操る冷気で固まっていく、そしてその手を振り払うと紅い結晶となって砕け散った。
「さて、そろそろ終わりにしましょうか」
楽しそうに大きく口を歪ませたネージュがゆっくりと凛々奈に向けて歩きだす。息も絶え絶えの凛々奈は1度距離をとろうと足に力をこめた。しかし足首から先が動かない。驚いて足を見る、凛々奈の足は靴の上から分厚い氷に覆われ地面ごと凍りついている。
「っ!? いつの間に!!」
驚く凛々奈の前まで迫ったネージュは右手を凛々奈に向けて開いた。
「それじゃ、おやすみなさい出来損ない 氷漬けのアンタの死体をあの子の見てる前でぶち砕いてあげるわ」
ネージュの右手から青白い光が放たれる、それは冷気になり凛々奈の体を包み込んだ。凛々奈の足元の氷が少しずつ大きくなり彼女の体を覆い尽くすように肥大していった。