銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

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10-19 限界を越えて

 凛々奈の下半身が巨大の氷に包まれていく。そしてゆっくりと彼女の腹、胸へと冷気が上り進む。それを心底愉快だというような表情でネージュは見つめる。

 

 ギリッと歯ぎしりした後凛々奈は大きく息を吸い込んだ、そして力の限り叫ぶと同時にまだ動かせる右手を高く頭上に振り上げる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 橙に煌めく髪が逆立つと同時に凛々奈の全身から今迄とは比べ物にならない程の炎が立ち昇った。その紅蓮の炎は振り上げた右手へと集まり赤く輝き密度を増す。

 

「あらあら?」

 

 ネージュはきょとんとした顔になりそれを見ている。それはここから何が起ころうとも彼女にとって勝利は揺るぎないという余裕の表れ。そして凛々奈は全力で燃え盛る右手を自らを包み込まんとする氷へ叩きつけた。フレイムレイヴによる筋力の向上、今放てる全力の火力を上乗せした一撃に部屋の中は大きく揺れ凛々奈を包んでいた氷は砕けちった。勢い良く飛び散る破片はキラキラと輝きながら凛々奈から放たれる炎の熱で溶け水と蒸気になり部屋全体を濡らす。部屋の中には室内だというのに霧とポツポツとか細い雨がゆっくり降り注ぐ。

 

「アハハハ!!」

 

 霧の中にネージュの笑い声が響いた。

 

「イタチの・・・ なんだっけ? この国の諺にあったわよね? フフ まあいいわ、今度こそ本当におしまい♪」

 

 

 衝撃と熱波により凛々奈のいた場所から少し距離をとっていたネージュ、視線の先には膝を折り座り込む凛々奈の姿があった。俯く彼女の濡れた髪は白のインナーカラーが入った黒髪に戻っている。弱々しく座り込む少女はピクリとも動かない。

 

「つまらない悪あがきご苦労様、それじゃあね♪」

 

 ネージュは言いながら凛々奈へと歩きだす。ピチャピチャと薄く水の張った濡れる床を人形のように白い足で踏みしめて。

 

「あの世で私とあの子を祝福してなさいな!」

 

「・・・・・・・・・」

 

 俯く少女から何か聞こえた。

 

「あん?」

 

 ネージュの顔が、初めて心底不愉快そうに歪んだ。

 

「もういい加減しつこいんだよお前ェ!!!!」

 

 ネージュは荒々しく言うと足早に凛々奈の元へ歩きだす。片手に氷の刃を精製しながら。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 また小さく凛々奈の声がする。

 

「遺言だったらはっきり言え出来損ないッ!!!!!」

 

 あと少しでネージュの刃が届く距離。

 

「─────えてやるよ」

 

「ああん?」

 

「限界、越えてやるよ」

 

 凛々奈は勢い良く顔だけを上げた。

 

「ぶっ殺してやる」

 

 充血した目を大きく見開きネージュを睨む。

 

───その口には見慣れない色の棒付きキャンディが咥えられていた。

 

 

 

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