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「約束、1日に使用していいのは3本まで、同時使用は絶対駄目よ」
「えーっ なんでよー強くなれるならいっぱい使えばいいじゃんかー!!」
不機嫌そうに凛々奈は言う。それを受けてシエルは少し険しい顔になり返す。
「約速を守れないならこれは渡しません!」
「ぶー、なんだよシエルさんのケチ!!」
いつか、凛々奈が力を手にした日。まだ10歳にも満たない頃の凛々奈。
「言う事を聞け馬鹿」
ガツン!
横にいた唯牙が凛々奈の脳天に手刀を叩き込む。
「いった!! 暴力反対!!」
打たれた頭を両手でさすり凛々奈は涙目でシエルに向き直る。
「でもさ、もしその約束破って使っちゃったらどうなんの??」
言われたシエルは目を細めた。
「そうね・・・ 死んじゃうかもね?」
「マジでぇ!?」
「分かったか? 絶対言われた通り使えよ、もしこの制限内で勝てない相手だった時は逃げて私の所へ来ること約束出来るなら使わせてやる」
「ぶー わかったわよ」
拗ねる凛々奈のよこで唯牙は煙草に火をつけた。
「でもまぁ」
そして一息煙草を軽く吸ってから空を見つめて言った。
「死んでも殺さなきゃいけない奴がいたら────
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ネージュは顔を上げた凛々奈を気にも留めず数歩踏み出し手にした刃を振り被る。そのまま力を込め凛々奈の頭へ振り下ろした。
「・・・?」
そして気付く、凛々奈の髪の変化に。フレイムレイヴの効果で橙に煌めいていた髪に稲妻のように輝く黄色い髪が混ざり合っている事に。
氷の刃が迫る凛々奈はひざまずいたまま、手を地につきニヤリと笑う。刃が凛々奈の頭を両断しようとし、ネージュが勝ちを確信したその最後の油断を凛々奈は見逃さなかった。
バリバリバリバリバリバリッ!!!
「ガッ! なッ!!? に!?」
ネージュの体を激しい光と謎の衝撃が突き抜けた。それは凛々奈の手から放たれた力、凄まじい雷撃。ネージュの作り出した氷を溶かした際に出来た水溜りを伝い彼女の素足から体へ届く。
電気を操るその力はこの戦いに挑む前、シエルから手渡された新たなキャンディのフレーバー。唯牙がもしもの為にと用意していたそれはフーカとライカに協力を頼み作り出した二本のキャンディ。凛々奈が使用したのはそのうちの一つ、ライカの力を用いた雷撃を操る能力を秘めたそれは─
「ヴォルティックラウド・・・」
いつかこの力を手にした時にシエルから言われた忠告、忘れることは無い、しかし限界を超えた4本目を凛々奈は使用していた。
その覚悟から生まれた最後のチャンスを凛々奈は見逃さない、電撃によって一瞬怯んだネージュの腹部を立ち上がって殴り付けた。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリッ!!
その拳に放てるだけの電撃をのせて。
「がはッ」
攻撃の勢いで後方へ飛ばされたネージュの視界と意識は電撃により眩む。ほんの一瞬だけネージュが無防備になる。
意識の回復にかかったのは僅か0.数秒、ネージュが動けるようになろうとしたその時。
「ヴァイスインパクト.RM《レールマグナム》 チャージ完了しました」
抑揚の無い不自然な声が耳に届いた。それは凛々奈の手元辺りから聞こえている。
「0.25秒あればこっちだってアンタなんか殺せるわよ」
「なんだってのよッ!!」
ネージュの視界が戻る、その目に映ったのは自分の前に迫る凛々奈と真っ黒く深い深い穴。ネージュを捉える銃口。
「真っ赤にぶちまけろ、クソガキ」
「あ・・・」
ヴァイスインパクト.RM《レールマグナム》凛々奈の持てる最後の、最大の一撃が放たれた。