銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

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10-24 レム=フィフィファリア

 

 真っ白な部屋を覆う土煙がゆっくりと薄くなっていく。凛々奈は銃を構えていた両腕をダランと下ろした。死闘の末放った最後の一撃はネージュに直撃し彼女を壁面まで吹き飛ばしていた。

 

「・・・・・!!ッハア、ハア」

 

 凛々奈は大きく呼吸を繰り返す。一呼吸の隙で死に至るレベルの戦いが終わり、肩を大きく揺らし酸素を取り込む。

 

「終わっ・・・た・・・か・・」

 

 呼吸にのせて絞り出すように凛々奈は呟く。同時に彼女の髪は元の黒と白の髪へと戻っていく。

 

「早く・・・みぃちゃんを・・・」

 

 満身創痍の体のまま歩きだそうとしたその時。

 

「このッ! 出来損ないがアアアアアアアアアア!」

 

 激しい怒声が部屋を揺らした。

 

「つッ!?」

 

 凛々奈は声に振り向く。そして砂埃の向こうに立つ少女を確認すると口角をあげて煽り口調で言った。

 

「あーあ、腰から上全部ぶっ飛ばしてやったと思ったんだけどねぇ!! それだけで済んでよかったなぁ!? オイ!!」

 

「殺す!! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺してやる!!!! 白銀凛々奈アアアアァ!」

 

 現れたネージュは純白のワンピースを己の血で真っ赤に染め、怒りと憎しみに歪んだ顔で凛々奈を睨む。その彼女の右腕が消えている。えぐりちぎり取られたような悲惨な傷口は血の混ざった紅と青白い奇妙な色の氷で覆われ止血されていた。

 

「その怒りようだと流石にぶっ飛んだ腕は生えて来ないみたいね!」

 

「黙れぇ!! ぐちゃぐちゃにしてぶっ殺してやるッ!!」

 

 二人は叫びまた臨戦態勢をとろうとするが、その勢いのまま地面に倒れ込んだ。既に2人とも限界を超えている。

 

(・・・・・マズイ、動け動け動け動け! みぃちゃんを取り戻すんだ!)

 

(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!! 白銀凛々奈!!)

 

 二人は歯を食いしばりながら震える手で体を支えて片膝立ちまで体を起こした。最後の力で凛々奈が銃のリロードを、ネージュが氷の武器を精製しようと力を込めたその時。

 

「帰りますよ、ネージュ」

 

 声が二人の動きを止めた。

 

 ネージュの横には黒いドレスを身に纏った黒髪の少女が立っていた。

 

「邪魔するなぁ!!!」

 

 ネージュはその少女を残された血塗れの左手で突き飛ばそうとするが少女はヒラリと体を揺らしその手を華麗に躱した。

 

「・・・・言う事を聞かない人は嫌いです」

 

 不愉快そうに言うと少女はネージュの顔にそっと手をやると何故かネージュは体の動きを止めてまた地面に倒れ込んだ。

 

「レム・・・・!! お前ッ!!・・・・こ・・・の・・」

 

 ネージュは少女をレムと呼び睨みつけるがそのまま眠るように意識を失った。

 

 唐突に現れた少女に困惑していた凛々奈はその様子を見て警戒したまま中断していたリロードをしようとするがそれは少女の声でまた遮られた。

 

「白銀凛々奈、今夜はもう戦う必要はありません」

 

「なに?」

 

 凛々奈の名を呼ぶ黒い少女は続ける。

 

「花守みいなはお返しします、また今夜、これ以上こちらから危害を加える事はありませんのでご安心を」

 

「返すって・・・ みぃちゃんが目的なんじゃないの、アンタ達!」

 

「え? そうですね、最終的にはそうなんですが・・・ うーん・・・・」

 

 黒い少女は人差し指を頬に当て首を傾げて何か考えている。

 

「その辺りはアークの考える事なので私には分かりませんね・・・ とりあえず今回はここまでという事で」

 

「今回はって、一体何がしたいんだお前らは!」

 

「いずれ分かりますよ、どうやら貴方にも資格はあるようですしね」

 

「資格・・・?」

 

「あ! そういえばアークから伝言がありました」

 

 少女は両手をパチンッと叩くと懐からスマートフォンを取り出して画面を見ながら続けた。

 

「・・・・?」

 

「えっと・・・ まさかネージュと戦って生き残るなんてね、君の事を侮っていたみたいだ、ただの失敗作として切り捨てるには早ようだ 少し君にも興味が出てきたからね、また近い内に挨拶させてもらうよ これを白銀凛々奈に伝えてもらえるかな? ・・・最後のは言わなくていいのか・・」

 

「アークって誰だよ、知らない奴からの意味わからないメッセージ言われてもキモいだけだぞお前」

 

「うふふ、確かに! アークはその辺疎いというか気にしないというか」

 

 無邪気に少女は笑う。

 

「それでは私達はこれで失礼いたします、ああ そういえば名乗っていませんでしたね」

 

 両手で上品にスカートの裾を持ち上げると軽く頭を下げ少女は名乗る。

 

「私はレム、レム=フィフィファリア お見知りおきを」

 

 そしてレムは倒れるネージュの左腕を担ぎ歩き出す。

 

「あっオイ! まだ話は終わってない!」

 

 引き留めようとする凛々奈にレムは右手を優雅な動きで向けた。すると凛々奈の鼻に懐かしい匂いがフワリと香った。同時に凛々奈の目の前には懐かしい景色が広がる。凛々奈の最初の温かい記憶、もう戻らない大切な人の──

 

「凛々奈ちゃん!」

 

 少し癖のある髪を肩上まで伸ばした少女が凛々奈に手を伸ばす。嬉しいような、照れ臭いような、心が暖かくなるのを感じながら凛々奈はその手を掴む。凛々奈の大事な記憶。

 

 そして同時にそれはもう二度と感じる事の出来ない暖かさであると凛々奈知っている。

 

「ふざっけんなッ!!!」

 

 ブシュッ!!

 

 凛々奈は右手から伝わる痛みに意識を向ける。自ら噛み付いた腕から痛みが伝わり血が吹き出す。

 

「小賢しいことしてんじゃないわよ!」

 

 今の記憶が幻であることに気付いた凛々奈は自身の腕に歯を食い込ませその痛みで意識を現実へと取り戻した。そのまま周りを見回すとネージュもレムの姿も無くなっている。

 

「あら? すごい、初見で私の夢から帰ってこれるなんて」

 

 どこからともなくレムの声が響く。

 

「これがアンタの能力って訳?」

 

 凛々奈は口に混じった血を吐きだし言う。

 

「うふふ、秘密です・・・ それではごきげんよう、また会う日まで・・・・」

 

 その声を最後にレム達の気配は跡形もなく消えていった。

 

「はっ! 人の大事な記憶に勝手に踏み込みやがって、地雷踏んだぞクソガキが」

 

「って今はそれどころじゃない!!」

 

 凛々奈はハッとすると部屋の奥を見る。そこには青白い光の球体に包まれ浮いているみいなの姿があった。激しい戦いが傍であったにも関わらずみいなは眠るように目を閉じたままだ。

 

「みい・・・・ちゃぁんッ!!」

 

 凛々奈はガクガクと震える足でなんとか立ち上がると1歩1歩力を振り絞りみいなの元へと歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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