銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

113 / 115
10-26 私が

 

「それじゃあね! みいな!!」

 

「「またね〜!!」」

 

 そう言ってフラムちゃんが大きく手を降って部屋から出ていくとフーカちゃんとライカちゃんも二人共綺麗に揃った動きで手を降りフラムちゃんを追いかけていった。私も胸の前で小さく手を振ってできる限りの笑顔で見送った。

 

「私もあの子達を送って行った後、少しハルさんのお手伝いがあるから・・・・」

 

 横にいたサクラさんもドアへと歩き出す。

 

「はい! 私はまだここに・・・ 凛々奈さんの側にいるので・・・・」

 

「・・・うん 迎えにくるね」

 

 サクラさんは少しだけ悲しそうに目を細めると早足でみんなを追いかけて行った。

 

 ──あの日私はみんなのお陰で帰って来ることができた。みんなと過ごす日常に。

 みんな沢山怪我をしちゃってたけれどあの日から1週間、シエルさんの治療もあって何事も無かったみたいに元気に過ごしている。今日でみんなは治療も終わったようで私もとても安心していた。

 

 ────だけど

 

「今日は冷えますね・・・」

 

 私はベッドで眠る凛々奈さんに語りかける。

 

 あの日からずっと凛々奈さんは眠り続けている。このシエルさんの診療所で、ずっと

 

 穏やかな寝息をたてて本当にただ眠っているみたいに、すぐに起き上がって、いつもみたいに元気にはしゃいでくれる気がしていたけれど

 

「凛々奈さんッ早く・・・ お、起き・・て」

 

 二人きりになった部屋でまた涙が流れ出す。青白い凛々奈さんの手を両手でぎゅと握るとその手は氷みたいに冷たかった。

 

「うう・・・ うああああ・・・」

 

 暫く流れる涙は止まらなくて、ずっと凛々奈さんの手を握っていた。

 

 泣き疲れた頃、ふわりと肌を撫でる冷たい空気が伝わってきた。そっちを見ると窓の外に灰色の空が見下ろす乾いた街が広がっている。

 

「・・・・・・あ」

 

 私は窓に近づくとカーテンをそっと閉めた。そうすると部屋を無機質な電灯の光だけが照らしてなんだかとても暗い感じがしてしまった。明るいはずなのに。

 

 そして私はずっと考えていた事を実行する事を決めた。あの日からずっと考えていたんだ。

 ぎゅっと手を握って覚悟をして、私は凛々奈さんにそっと近づくとゆっくりと顔を近づけた。

 

「早く・・・・ 元気になってくださいね、約束ですよ」

 

 呟くと凛々奈さんの額にそっと唇で触れた。

 

「・・・・・・凛々奈さん、ありがとうございます 貴方のお陰で・・ あ母さんと、お父さんがいなくなっちゃっても・・・ 生きていられてッ幸せでしたよ!」

 

 また涙が溢れて声が詰まる。

 

「凛々奈さんも、唯牙さんもハルさん、サクラさんにフラムちゃん達も本当に大好きです・・・」

 

 溢れるなみだで顔が濡れているけど、精一杯の笑顔で思いを伝える。

 

「凛々奈さん・・・」

 

 話しているうちに無意識に自分の唇が凛々奈さんの唇に近づいていた。 そのまま、そのまま心の動きに従おうとしたけれど。

 

「ふふふ、さようなら 凛々奈さん」

 

 これからする事に覚悟を決めた事を思い出して私は顔を離しそっと凛々奈さんの居る部屋を出た。

 

そのまま診療所の奥のシエルさん達に気付かれないようにこっそりと外へ出る。冷たい空気が鼻を通ってスーッと胸を冷やす。震えながら吐いた息が白くふわりと浮かび消えていく。空を見上げると灰色の雲がずっとずっと遠くまで広がっていた。

 

 

 

 すこしだけぼうっとそれを見つめてから私は歩き出した。人通りの少ない道を、あてもなくただ人の少なそうな所を選んで歩き続ける。

 

 

 

「・・・・楽しかったな」

 

 

 

 足を止めないまま、だんだんと沈んでいく視線は空と同じ灰色のコンクリートの道を写す。だけどモノクロな次回の中で、私の頭には色付いた沢山の大切な記憶が思い出されてた。みんなと海にいったり、新しい学校でお友達ができたり、それから・・・

 

 

 

 色鮮やかな思い出がついさっきの事みたいに頭の中で流れている。みんなと過ごした大切な思い出。

 

 

 

「ふふっ」

 

 

 

 無意識に口元がゆるんで声が漏れて、伏せたままの目は少しだけ潤んで優しく綻んだ。歩き続ける私に、冷たい風がまるで邪魔をするみたいにずっと前から吹いていた。それでも私は行かなきゃいけないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───いつまでそうやって歩き続けたのか分からない。ちゃんとした目的地を決めていた訳ではないけれど、立ち止まって周りを見るとさっきよりも黒みを帯びた灰色の空と人気のないビルと何を作っているのかも分からない寂れた工場みたいな建物だけが周りにあった。

 

 

 

「・・・ここでいいかな」

 

 

 

 誰に言うでもなく呟いて私はビルを見上げて言った。

 

そのまま入り口を探した。見つけた入り口は荒れ果てていてひと目でもう使われていないのだと思った。ふと横を見ると掠れて読めないボロボロの大きなプレートがあったので、どこかの会社のビルだったのかな?なんて思った。

 

 

 

「・・・・・」

 

 

 

 心の中で丁度良かった、と安心してビルの中に入る。何かの破片と瓦礫に注意しつつ上へと続く階段を探して歩く。鋭く尖ったガラス片も散らばっていてうっすら私の顔が反射していた。

 

 

 

「・・・・怪我してももう関係ないんだけどな」

 

 

 

 私はそう言うけれどやっぱり痛いのは嫌なのでガラス片に注意して進んだ。気を付けながら壁沿いになんとなく歩いていると錆と汚れで黒ずんだ鉄の扉が少し開いているのが見えた。中を除くと目当ての階段があった。

 

 

 

「何階建てなんだろ?」

 

 

 

 充分な高さがあれば良いからなんでもいいんだけれど。

 

 

 

 入り口と同じように散乱している瓦礫やゴミを避けながら私は階段を登りだした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。