銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

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3-6 満月の海辺で大火傷

 

「助けにいかないんですかあ〜? 今頃私の仲間があなたの所のお嬢さんたちと戦ってますよ〜?」

 

 白衣の女がロープで上半身をグルグル巻にされている。

唯牙に捕まり結局縛られたらしい。

 

「あの子達は大丈夫だ、というか戦って貰わないと困るんだよ、あの子達には強くなって貰う必要がある」

 

「やっぱり、私達が来るの知ってましたね!?」

 

「まあな、だがその事については深く聞くな」

 

 唯牙は縛られている女を睨む。

 

「ハイぃ!!」

 

「もう、あんまりいじめちゃ駄目よ、ユイ」

 

 建物の入口の暗がりからまた人が出てくる。

 

「いじめちゃいないさ、これから軽く質問するが、素直に答えてくれればな」

 

「も〜、というわけで素直に聞かれたことは答えてね襲撃者さん」

 

「アッハイ、ワカリマシタ」

 

 ニコッと優しそうな笑顔で言われたが、唯牙とは違うプレッシャーを感じ取り、縛られた女の顔はどんどん青ざめていった。

 

 

 

 

月明かりの下で、みいなは凛々奈が堕ちた海面を見つめる、目からは涙が流れだす。

 

「そんな・・・凛々奈さん・・・ダメ・・」

 

 バシャバシャと音を立て、虚ろな足取りで海へと歩き出す。しかしその肩は硬い篭手に掴まれる。

 

「やっと捕まえた」

 

 嬉しそうに笑う少女は愛おしそうにみいなを見つめる。しかしみいなは怒りに満ちた表情で自分と同じ程の背丈の少女を睨む。そして握った両手でポカポカとフラムの胸を叩いた。

 

「なんで! なんで!! こんな事するんですか!! 返せ!! 凛々奈さんを返せ!!」

 

 

 みいなは全力で叩いているつもりだったが、フラムは全く動じず、変わらず恍惚の表情で、肩に置いていた手をみいなの背中に回し、優しく抱きしめた。

 

 

「うあ! 離して!! 離してよ!!」

 

 その腕は、みいなを捕まえる為ではなく本当に大切な物を包むように優しい抱擁だった。

 

 

「もう離さないわよ、ずっと一緒、私とあなたで新しい世界を作るのよ」

 

 抱きしめたみいなの耳元で囁く。

 

「何を言ってるか分かりません! 離して! 凛々奈さんを助けに行かないと!!」

 

 フフッとフラムは笑った。少し顔をみいなから顔を離すとみいなの瞳を見つめてニヤリと口を歪めた。

 

 何かされると思ったみいなは咄嗟に目を瞑る。

そしてみいなの額に柔らかくて温かい感触が伝わる。 

 おそるおそる目を開くと、目の前にはフラムの胸、フラムは背伸びして額にキスをした。

 

 

「な、なんなんですかあなたは!」

 

 目の前の相手の行動が全く理解出来ずみいなは狼狽え離れようとするが、抱かれた腕は離してくれそうにない。

 

 

「さあ、私達で新しい世界の神になるのよ」

 

 フラムの目はみいなの前に来てから何かに操られているように虚ろな瞳をしていた。先程迄の元気な少女の雰囲気はまったく無くなり、欲望に忠実に、みいなだけを求めているようだった。

 

 そして今度は顔をみいなの顔に近づける。二人の唇が触れ合う刹那。

 

ザバーン!! と海面から音が鳴り、飛び出した影がフラムに飛び掛かった。

 

 凛々奈がフラムの顔面目掛けて飛び蹴りを繰り出す。

 

 フラムはみいなを抱いていた腕を引き戻し顔と蹴りの間に割り込ませてガードする。しかし勢いで後ろに吹き飛ばされた。

 

 

「ツッ、 死に損ないの癖に! 生きてるんなら海泳いで逃げちゃえば良かったのにさ!!」

 

 フラムは叫んだ、またさっきの子供らしい元気な声に戻っていた。

 

 

 現れた凛々奈はずぶ濡れで、全身がボロボロになり、攻撃が直撃した腹部は丸く服が破れ落ち、肉が黒く焼け爛れていた。

 

「凛々奈さん!! 大丈夫ですか!!!」

 

 みいなはすぐに駆け寄ろうとしたが凛々奈は右手を伸ばし制止した。

 

「ゴメンみーちゃん、私今キレてるから」

 

 鋭い目つきでフラムを睨む。

 

「そ、そんなに痛かったんですか」

 

 凛々奈の傷を見て心配そうにいうが。

 

「ちっがーーう!! アイツ今何しようとしてやがった!? 無理矢理みーちゃん抱きしめて! あまつさえチュッ! チューまで!! ゆ、許さん!!!」

 

 フーッフーッと息を荒くして怒り狂う凛々奈を見てみいなは心配と呆れで複雑な気持ちになった。

 

「で、でも凛々奈さん! あの子凄く強いみたいです! 逃げましょう!!」

 

 だがボロボロの凛々奈を見て心配の気持ちが勝り、逃走を提案するみいなだったが。

 

「大丈夫! もう一個作戦あるから!」

 

 そして凛々奈はチラリと別の方向を確認する、戦闘の最初に武器を装備してその場に置いたアタッシュケースの位置を。

 

「だーかーらー!! 私を無視すんなって!!」

 

 ダンダンとフラムは地団駄を踏んでいる。

 

「心配しなくても、次で終わらせてあげるわよ」

 

 クロノスタシスの効果もあと1分弱。

 

 凛々奈は走った。今度は距離を詰めるのではなく

フラムに対して円を描くように回り込む。

 

「今度は完全に黒焦げにしてやるわ!」

 

 フラムはまた両手を凛々奈に向け、炎弾を発射する。なんとか凛々奈は直撃を避けるが襲い来る爆発の衝撃は今のダメージを負った体には重く響く。

 

「熱っついなぁ!!」

 

 そして目当ての場所迄たどり着くと凛々奈は再び銃を向けた。

 

「無駄だって分かんない? そんなオモチャ、どれだけビリビリさせても効かないわよ?」

 

 

 フラムは余裕の表情を浮かべる、しかしパレットバレットは電撃の弾丸を発射する為だけの物ではない。

 

 「“赤の爆撃”《エクスプレッド》」

 

 フラムの炎弾に似た爆発と炎を炸裂させる“赤の爆撃”《エクスプレッド》、炎はフラムのそれに及ばぬ火力だが爆発の衝撃はフラムのそれを上回る。

 

 凛々奈はそれをフラムではなくフラムの目に前の砂浜を狙って発射した。

 

バゴォン!! とフラムの目の前で爆発が起こった。

 

「なに? もうまともに狙いも定まらないの?」

 

 フラムは完全に油断しているがその目の前は爆炎と衝撃で舞い上がった砂により完全に視界が遮られていた。

 

 

 

「悪あがきだね! 撃ってくる方向が分かればそんな弾、簡単に止められるんだから!」

 

 フラムは周囲の気配と音に集中する。そして、フラムの右後方からザッと砂を踏むような音が聞こえた。

 

「そっちか!!」

 

 体を音の方向へ向け両手も同じ方向へ構える。躱した後にすぐに炎弾を撃ち込めるように。舞い上がった砂が落ち始め、少し視界が晴れる。構えたフラムの先には、砂にめり込んだアタッシュケースがあるだけだった。

 

 

「あ、あれ??」

 

「ゲームオーバーよ」

 

 砂煙の中フラムの後頭部の1m程先に白と金に光る銃口があった。

 

「白の衝撃《ヴァイスインパクト》」

 

ズガァアン 凄まじい音が響く、特殊な効果は無く単純な威力、貫通力だけに特価した白の衝撃《ヴァイスインパクト》、これなら頭に直撃すれば私でも死ぬ、コイツだって同じ筈。

 

「きゃあ!!」

 

 ガガン!! 子供の悲鳴と金属音が月夜に響いた。

 

「ん? ガガン?」

 

 直撃した白の衝撃《ヴァイスインパクト》の威力で少女は数m吹き飛ばされて動かなくなっている。

 

 発射と同時にクロノスタシスの効果が切れた凛々奈には着弾した瞬間は砂煙もあって見えなかった。

 

 

「ちょっと、これ以上は私動けないわよ」

 

 激痛の走る腹部を手で押さえながら倒れている少女に近づく。

 

「むきゅ〜〜〜」

 

 少女、フラムは額に大きなたんこぶを作り目をグルグル回して気絶していた。

 

 どうやら反射て咄嗟に手を顔の前に持ってきており、弾丸を手甲で意図せずに防御する形になって、弾かれた凄まじい勢いの手甲が頭に直撃していたらしい。

 

「運がいいわね、あんた」

 

(でもこれはコイツが戦闘慣れしてないお陰だったな・・・・恐らく炎の力でまともな戦闘技術を学ぶ必要がなかったんだろうね・・・・、吃驚して隙が生まれる様な奴じゃなかったらやばかったわ・・・・)

 

 

「いてててて」

 

 痛みとダメージで凛々奈はその場に座り込む。そこへみいなが走ってやって来た。

 

「凛々奈さん! 酷い怪我!! やっぱり無理してた!! 早く病院に行かないと!!」

 

 

「あはは・・・・大丈夫大丈夫、みーちゃんあそこに投げちゃったアタッシュケースから透明の飴とってきてくれるかな?」

 

「わかりました!!」

 

 タッタッタとみいなは走っていく。透明の飴は身体能力の強化量は少ないけど、治癒能力を他の種類より強化する 透明 "リジェネレイト"。

 

 

「持ってきといて良かった〜」

 

 ドサッと砂の地面に背中から倒れる。

 

「昼から火傷してばっかりね・・・・」

 

 動けるようになったらこの小さな襲撃者をセンセの所に連れて帰らないとな、と空に浮かぶ星と満月を見ながら思う凛々奈だった。

 

 

 

 

 

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