銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

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3-7 因子と侵食

なんとか動けるまで回復した凛々奈は、謎の襲撃者、フラムを肩に抱えてみいなと泊まっている建物の前に帰ってきた。

 

「大丈夫ですか? 凛々奈さん?」

 

「うん、もう大丈夫だよ〜、お腹だけまだ痛むけどそのうち治るからさ」

 

 みいなは心配そうに凛々奈の空いている手をぎゅっと握っている。

 

「とりあえずセンセ達起こしてコイツをどうするか考えないとね」

 

 そのまま玄関から家に入ろうとしたが建物の裏から人の気配がするのに気付き、裏へ確認しに行った。

 

 

「ん、おかえり」

 

 

 そこにはセンセとハルさんと上半身をロープでグルグル巻にされた知らない女の人がいた。

 

「あれ、二人とも起きてたんだ、てかその人は?」

 

 縛られているのを見るにこの人も肩の少女と同じく襲撃者なのだろうと予想はつくが。

 

 

「お前の担いでるソイツのパートナーって所かな」

 

 まあそんな事だろうと思っていると。

 

 

「あ! フラム!! そんな・・・・もしかして死、死んでる・・・・?」

 

 縛られている女は肩に担がれている少女に気づき驚きの表情をした。

 

 

「気を失ってるだけよ、あんたがこの子の保護者? 一体あんたらなんなのさ、あとハルさんコイツも一応縛っといて」

 

 

 問いかけつつ抱えていた少女を縛られた女の横に下ろすとハルさんは少女をグルグル巻に縛り、此方に心配そうに近づいてきた。

 

 

「大丈夫? 凛々奈ちゃん、治療が必要だったら薬とか持ってくるよ?」

 

 

「大丈夫だよ、ありがとハルさん、で、早くアンタたちの目的教えなさいよ」

 

 

 腕を組み二人の襲撃者の前に立つ

 

「分かりました、話すのでこ、殺さないでぇ!」

 

 

「それはまだ分かんないわね、はい! まず名前は!?」

 

 

「うう〜、私は佐隈明希《さくま あき》といいます、科学者で終人機関で働いてましたぁ」

 

「ツッ!? お前!」

 

 やはりとは思ったが因縁のある名前を聞いた衝動的な怒りで銃を向けてしまった。

 

 

「待て」

 

 

 センセが強い口調で止めてくれた。

 

 

(そうよね、色々と情報を聞けるかも・・・・・・・てか弾入ってなかったわ)

 

 なんか間抜けなミスをしたおかげで冷静になれた。

 

 

「ひぃぃ! 撃たないで!」

 

 

「撃たないから、続けなさい」

 

 銃をポケットに無理やり仕舞い込む。

 

 

「働いてましたって事は今は違うの?」

 

 横からハルさんが言う

 

 

「はい、今は・・・・私達のいた支部は壊滅してしまって・・」

 

 

 チラリとセンセの方を向く、センセは目が合うと首を横に振った。どうやらセンセがやった訳ではないらしい。

 

 

 

「誰が潰してくれたのよ、あんたの施設」

 

 私達も一度潰した事があるから分かるが、簡単な事じゃない。そこいらの裏の腕自慢でも難しいだろう、それこそ私とセンセ並に強くないと。

 

 

「えっと・・・死神?」

 

 首を傾げながら答える

 

「なんでこっちに聞くのよ!」

 

「だって分からないんですもん! 私とフラムはなんとか逃げ切りましたけど! なんか少し前から機関の人間が殺され始めていて、みんな、首を跳ねられて殺されてたから犯人を死神って呼んでたんです」

 

 

「で、ソイツが施設ごとぶっ殺しに来たって訳?」

 

「多分・・・直接姿は見てませんけど、逃げる時に首無し死体がゴロゴロ転がってたので」

 

 

「ふーん、でもこのガキなら逃げずに立ち向かったりしそうだけどね」

 

「私とフラムは機関から逃げ出そうとしてましたからね、絶好の機会だと思って便乗して逃げ出したんです」

 

 

「なんで?」

 

 

「なんででしょうね〜、秘密です」

 

 さっき迄の怯えた顔から、何故か優しい笑顔であきと名乗った女は答えた。

 

 

「ふんっ、まあいいわ! アンタの事は分かったけど、なんで私達を襲ってきたわけ!?」

 

 

「あれ? 知らなかったんですか?」

 

 何故か向こうが驚いている。

 

「私達はその子、()()()を手に入れる為に来たんですよ?」

 

 その子、と女はみーちゃんを見ながら言っている。

 

 

「はぁ? 神の卵ってなによ? あの子は普通の子供だっての!」

 

 

「違いますよ〜その子は貴方やフラム、他のExSeedの子達とは別次元の力を持ってるんですよ〜」

 

 

「わっ私ですか? 私なんにも出来ませんよ?」

 

 急に自分の話になった上に神だの卵だの訳の分からない事を言われ混乱している、無理もない。

 

 そして過去にあのモヤシ男もみーちゃんの力について何か言っていた事を思い出す。

 

「仮にこの子が特別だとして何しようとしてたのよ!」

 

 

「ん〜、神の卵の力については余り詳しくはないんですけどね、ExSeedの子供達と神の卵が交わると   世界が変わるらしいです」

 

 

「ハッ! 訳わかんない、馬鹿らしい、センセどうする? こいつら、もう聞くこと聞いたでしょ」

 

 

「ちなみに、ExSeedの子の因子と神の卵の因子は無意識に惹かれあうようですよ、まるで心から愛しい恋人みたいに」

 

「うるさいな! もう喋らなくていい!」

 

 この子は、みーちゃんには普通に生きていてほしいのに。

 

 

 そして

 

「うぅぅ、いたい、いたいよぅ」

 

 気を失っていた少女は目を覚ました。

 

「フラム、大丈夫?」

 

 アキは隣で縛られているフラムの顔を覗き込む。

 

「フンッ! 篭手越しとはいえ頭にキツイの一発くれてやったからね、そりゃ痛いわよ」

 

 

「いたい・・・くるしい・・・」

 

「ッ!! フラム!!」

 

 ボタボタッと少女の下に赤い液体が垂れ落ちた。

少女の瞳、鼻、口と顔中の穴から血が流れ出ている。

 

「ちょっと! 一体どうしたのよ!!」

 

 突然の事に理解が追いつかない。

 

「そんな、なんでこんなに早く侵食が・・・!」

 

 アキは何か知っているようだった。

 

 

「せ、センセ! な、なにこれ!」

 

 咄嗟に助けを求める。センセは動揺する気配もなくタバコに火をつけた。

 

「あの子達に埋め込まれている()()それはただ超常の力を使えるようにするだけの便利なものじゃない、因子は使用者の体、人間の存在をゆっくりと侵食していく、そして埋め込まれた者はいずれ人間ではなくなるか・・・・死ぬ」

 

「そんな、アイツどうなっちゃうの!? もうどうしようもないの!?」

 

 さっき迄戦っていた相手だけれど、目の前で小さな女の子が苦しんでいるのは、見ていられなかった。

 

「手段はあるが」

 

 センセが続きを喋る前にアキの叫びが夜空に響く。

 

「お願い! フラムのロープを解いて!! もう貴方達に危害は加えない! 約束する! それに必要だっていうなら貴方達に協力する! なんでもするから! お願いします!」

 

 このまま素直に解いて良いのかと悩んでしまった。この場を逃れる為の作戦なのではないかと。

 

 一瞬迷っている間に横を小さな影が駆けていった。

 

 

「みーちゃん!」

 

 

 みいなは地面で悶ているフラムに駆け寄りロープを解く。そしてフラムはよろよろと倒れそうになりながら横にいるアキに近づいて倒れるようにもたれかかる。

 

「フラム! 早く!」

 

 そう言ったアキは首を反らして首筋をフラムに向ける。そしてフラムは露わになった首筋に噛み付いた。

 

「フーッフーッ」

 

 息を荒くしてフラムは噛んだ傷からでる血を飲み続けている。

 

 

 その異常な光景を見て凛々奈は呆然としていたが暫くして口を開いた。

 

「・・・・センセ、アイツらって吸血鬼だったの?」

 

「違う、さっき言っていた侵食を止める方法、自分に適合する人間の体液を摂取する事、それが唯一の方法だ、、ExSeedの子供には必ず適合したパートナーがいる調整者《バランサー》と呼ばれているらしい」

 

「もしかして、私とみーちゃんもああなっちゃうの・・・?」

 

「お前達は能力が開花していないからな侵食は進行していない、大丈夫だ安心しろ」

 

 

「うん、でもやっぱり碌でもない研究だったんだね私達がされてたの」

 

 

「ああ、本当に碌でもない」

 

 

 暫く首筋に顔を埋めていたフラムだったが少し落ち着いたようで息も穏やかになっていた。

 

「フラム、もう平気?」

 

 肩から流れる血を気に留めず、アキはフラムを心配する。

 

「うん、ありがとアキ、ごめんね痛かった?」

 

「ううん、平気、間に合ってよかった」

 

 フラムは横にしゃがみこんでいたみいなに振り向く。

 

 

「なんで、助けてくれたの? 私はアンタ達を襲ったのに」

 

 みいなは解いたロープを手に持ったままフラムを見る

 

「あ、あのまま見ているだけなんて出来なかったから・・・・それにあなたは、悪い人じゃないと、思うから・・・・」

 

「ははっ、なによそれ」

 

 フラムは少し微笑んだ。

 

「ねえ、名前教えてよ、神の卵じゃなくて、君の名前」

 

「えっあっ、みいなです、花守みいな」

 

「みいな、ごめんね・・・・あと、ありがと」

 

 それだけ言うとフラムは眠るように気を失ってアキの胸に倒れ込んだ。

 

 

「センセ、とりあえず一件落着?」

 

「だな、もうコイツらもやる気はないだろう、ハル、このフラムをとかいう子、血を拭いたらベッドを貸してやれ、あとコイツもロープ解いていいぞ」

 

「えっ! いいんですか!?」

 

「うちの愛娘が助けた相手を始末する訳にはいかんだろう、お前も怪しい動きをしなければ中のソファを使っていい、あと肩の手当もしてもらえ」

 

「あ! ありがとうございますぅ!!」

 

「とりあえず寝ようか、疲れちゃった、みーちゃん行こう」

 

 

「は、はい!」

 

 走って横に来たみーちゃんの横顔を見る。

 

 あの時すぐにロープを解きに行った姿を思い出して、いつまでも優しいこの子のままでいて欲しいなって。

 

 優しくみいなの髪を撫でた。

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