「ぐぬぬ〜 相変わらず失礼な奴ですわね! 白銀凛々奈!」
「そうですわ!」 「無礼ですわよ!」
凛々奈の前に現れた少女の横にまた二人の少女が現れる。二人とも黒髪の地味な少女だ。
「この方は九条財閥のご令嬢、九条 姫沙羅《くじょう きさら》様よ!」
取り巻きの一人がドヤ顔で紹介する。
「うっわ〜 テンプレお嬢様にテンプレ取り巻きじゃんか〜」
ドン引きする凛々奈。
「てん? てんぷら? お腹が空いていますの?」
いまいちピンときていないテンプレお嬢様。
「なんでもないこっちの話、で私になんか用? キササさん」
「キサラよ!! さが多くて逆に言いにくいでしょそれ! 今日こそ貴方に復讐させて貰いますわよ、あの忌々しい敗北の!」
◆ 数ヶ月前
華皇学園の食堂、その日は学食の利用も多く、個別のテーブルも全て埋まってしまっていた。
そこでなんとかテーブルを使う事が出来ていた二人組の少女達、仲良く食事と会話を楽しんでいる。
ダンッ、そのテーブルを手が叩く。
「おどきなさいな」
座っている二人を睨みつける少女、九条姫沙羅。
「姫沙羅様の九条家は世界でも指折りの大富豪、姫沙羅様の前では貴方達でも庶民みたいなものなのよ!」
取り巻きAが捲し立てる。
「分かったらさっさと姫沙羅様に席を譲りなさいな!」
取り巻きBも捲し立てる。
「オーホッホッホ」
その様子を見てテンプレ高笑いをするテンプレお嬢様。
そして。
ガシッ 姫沙羅の手が掴まれる。
「あんたが金持ちとか知らないし別にこの子達の知り合いじゃないけどさ」
肩まである黒髪に白のインナーカラーの入った少女が姫沙羅の手を引っ張ってテーブルから離す。もう片方の手にはホットドッグが握られている。
「ルールは守りなよ、この子達みたいにちゃんと正しく暮らしてる人に迷惑掛けるってんなら相手になるわよ」
ギロリと姫沙羅を睨みつける。
「フンッ わたくしにそんな態度をとっていいのかしら? いいわ、相手になってもらいましょうか、わたくしに負けたら卒業するまで、わたくしの言う事をなんでも聞くこの学園にいる間の専属メイドになって頂こうかしら」
「なんでもいいよ、で? ケンカでもすんの?」
言いながら掴んでいた手を話す。
「そんな物騒な事する訳ないでしょ! 本当に貴方この学園の生徒!?」
「じゃあなにすんのよ?」
「フフフ、この後テニスコートへいらっしゃいな、負けるのが怖かったら逃げても構わなくてよ」
「おっけい、これ食べたら行くわ」
少女はモシャモシャとホットドッグを食べ始める。
「・・・ここ、ホットドッグなんてメニューにありましたかしら?」
「シェフのおっさんに死ぬ程お願いして特別につくってもらったのよ」
「あ、そう」
若干ヤバイ相手の喧嘩を買ってしまったのではと後悔する姫沙羅だった。
そして。
華皇学園テニスコート、食堂での騒ぎを聞き付けてギャラリーが数十人コートを囲んでいる。
「逃げずに来るなんて、わざわざ恥をかきに来たのかしら?」
テニスウェアに着替えた姫沙羅がコートの上でボールを弾ませている。
「いいから早くやっちゃおうよ、てかあんたらご飯食べれたの?」
向かいには黒いジャージを着た先程の少女。
「心配ご無用! あの後我が家の抱えのシェフを呼びつけて最高級フレンチでランチを頂きましたわぁ〜」
「じゃあ最初からそうしとけっての!」
Pーーー
取り巻きAが開始の笛を鳴らす。
「お嬢様は幼少の頃からプロのレッスンを受けて今や! 女子高校生の中でもトップのテニスプレーヤー! プロレベルのお嬢様に勝てる訳がないのよ!」
取り巻きBが解説してくれる。
「いきますわよ! 無様な負け姿を! 晒しなさい!!」
10分後
キャーーー カッコイイーー パチパチパチパチ
拍手と歓声。
「そん・・・・な」
膝を付く姫沙羅。
「ゲームセットよ、審判役の取り巻きAもショックでコール出来なさそうだし」
姫沙羅は謎の少女に一度も点を獲る事も無く一方的に敗北した。
「これに懲りたら、もう他の子達に威張り散らしたり、迷惑かけるんじゃないわよ」
それだけ言うとジャージの少女はコートから出ていこうとする。
「必ず、必ずこの借りは返しますわ! 貴方!名前は!?」
「わたし? 凛々奈、白銀凛々奈よ、あんまり此処には来ないから別に覚えなくていいわ」
「白銀・・・凛々奈!」
姫沙羅は去っていくジャージ姿をただ睨みつける事しか出来なかった。
◆そして現在
「・・・・・・・こうして私は貴方にリベンジする事を心に決めたのですわ」
目を閉じ懐かしそうに姫沙羅は凛々奈との出会いを語っていた。
「ん〜、テニスでなんか知らない奴をボコったのはなんとな〜く覚えてるんだけど、そんな話だっけ?」
「そんな話ですわよ!」
「ふ〜ん、で? ちゃんと私が言った事は守ってんの?」
「当たり前ですわ! 九条家の人間として約束は必ず守りますから! もう他の方に迷惑を掛けたり威張ったりしてませんわ! そのおかげで・・・・・!」
「そのおかげで?」
「友達がいっぱいできましたわ!」
「じゃあいいじゃん!!!!」
「それとこれとは別問題ですの! わたくし負けず嫌いなので! テニスで貴方にリベンジするまで挑み続けますわ!」
「もお〜! 今それどころじゃないんだって! てかあんまり騒ぐと気付かれちゃうじゃん!」
チラッと硝子の向こうのみいなに目を向ける
じーーーーーー
こちらの方を見ているみいな。
「うぉおう!!」
みいなからの視線から出る為に凛々奈は姫沙羅と取り巻き二人にタックルして茂みに倒れ込んだ。
「な、なんですの!? 白銀凛々奈! いきなり押し倒すなんて・・・まさか貴方・・・」
凛々奈の下に倒れてなぜか照れている姫沙羅。
「お嬢様から離れろこの変態!」「変態!」
取り巻きは凛々奈の腕を引っ張って姫沙羅から引き剥がそうとしている。
「ああー!! もう! やかましい!!」
腕を振って取り巻き二人を振り払う。
「だからそれどころじゃないんだって〜」
茂みから顔だけ出してまたみいなの様子を伺うとみいなは何事もなかった様に友達と喋っていた。
気付かれていなかったかとほっと息をつく凛々奈。その時校内にお昼の時間の終わりを告げる鐘が鳴り響いた。
「やばっ一旦ここから出ないと!」
凛々奈は茂みから飛び出して走り出す。
「あ! こら! 白銀凛々奈! 必ずわたくしのリベンジ受けてもらいますからねーー!」
背後からの叫びを無視して凛々奈は学園の外へ向かった。