「たっだいまー」 「ただいまです!」
お昼過ぎ、二人はケーキの入った箱をいくつか抱えて帰って来た。
「ん、おかえり、みいなちゃんどうだった?」
机に座っていた唯牙は読んでいた新聞から顔を上げてみいなを見た。
「はい! お友達もできたり! ご飯も美味しくて! それからそれから!」
体験してきた事を話したくて堪らないようで、みいなは唯牙のもとへ走っていく。
「はっはっは、楽しかった用で何よりだ! お話は後でゆっくり全部聞かせてもらうよ、でもちょっと待っててね」
唯牙は優しくみいなの頭を撫でると椅子から立ち上がった。
「? あっ唯牙さんのケーキも買ってきましたから、冷蔵庫に入れておきますね!」
「ん、ありがとう」
みいなはケーキを持って冷蔵庫へ向かう。そして唯牙は部屋の隅に隠れて顔面蒼白の凛々奈を睨みつける。
「さっき学園長から連絡があったよ・・・・何か言うことはあるか?」
静かな口調、でもとんでもないプレッシャー。
「え〜とえ〜と! あっ! センセ! イチゴたっぷりショートケーキかモンブランどっちがいい? ティラミスもあるよ!!」
引き攣った顔で取り繕う凛々奈。
「ああん!?」
ドスのきいた声。
「誠にごめんなさいでした」
本日ニ度目の直角90度。綺麗なお辞儀であった。
「・・・・お前三ヶ月小遣い半分な」
「えぇー! そんなぁ! 酷いよぉセンセ〜」
凛々奈は唯牙の下半身に泣きついた。腕で太腿をがっちりホールドして顔を太腿に埋める。
「さっきケーキもいっぱい買っちゃったしぃ〜! 来月漫画の新刊もいっぱい出るのよ〜! ゲームも予約しちゃてるし〜!! 堪忍〜堪忍しておくんなまし〜!」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしてゴネる。
「やかましい!」
凛々奈の脳天にチョップをぶち込む。
「あだい!」
その場で座り込みうえ〜んと泣いている。
そこへガチャリと玄関が開く。
「相変わらず騒がしい奴だな! うるせえぞ!」
「こんにちは、二人とも」
入って来たのは二人の女性。一人は小柄で深緑の作業服の様な格好、額の見えるショートカットで額にはゴツゴツとしたゴーグルを掛けている。
もう一人は白衣を着た長身の女性、唯牙も背が高い方だが、それよりも高いスラッとした体型の女性。長いストレートの髪と細い体で人形の様に白い肌をしていた。
二人は大きめのトランクを持って来ている。
「うえ〜ん! あれ? 武器オタとシエルさんじゃん」
今の今まで泣いていたとは思えない程ケロッと切り替えて来客に向き直った。
「武器オタって言うなっつってんだろじゃじゃ馬娘!」
「あっちょっと待って」
凛々奈は机の上の箱ティッシュから1枚取り出してズピーッと鼻をかむ。
「ほんっとにマイペースな奴だなお前は!」
うぎぎ、と歯ぎしりをする武器オタと呼ばれた女性。
「お前はそこで正座して黙ってろ!」
また唯牙が凛々奈の脳天に手刀を決める。
「あだっ!」
「来てくれて感謝する、とりあえず座ってくれ」
唯牙が二人の客人を部屋の中央にあるソファに案内すると奥からみいなが戻ってきた。
「お客さんですか? えっと、こんにちは!」
「あら、こんにちは」
「ん? ああ、よろしくな」
三人が挨拶を交わすと唯牙が割って入る。
「みいなちゃん、紹介しておくよ、こっちがウチの武器全般を売ってくれたりメンテナンスしてくれている武器商人、浅葱 乱馬《あさぎ らんま》
こっちの人が私達の体を診てくれている闇医者のシエル=フランチェスカ、二人ともよく世話になるからね、これからも会うことになるだろう」
「あ、よろしくお願いします! 私は花守みいなです! お茶お持ちしますね、ケーキもありますから良かったらどうぞ!」
「ありがとう、でもいいの? ケーキは貴方達のでしょう?」
長身の女性、シエルがみいなに言う。
「えへへ、今日は凛々奈さんがいっぱい買ってくれたので大丈夫です!」
みいなはまた奥へ小走りで消えていった。
「あの子が例の・・・・ いい子じゃないの、唯牙」
シエルは唯牙の方を向き微笑む。
「そこのじゃじゃ馬娘みたいにならん様にちゃんと教育しろよ!」
浅葱と呼ぼれた女性は凛々奈を指差しながら言う。指差された本人は正座のまま浅葱に向かってあっかんべーをしている。
「本題に入ろうか、凛々奈! こっちで正座!」
唯牙は二人の対面のソファに座る。
「足が痺れたあ〜」
凛々奈はよろよろふらふらと歩いてきてソファの横で正座した。