「流石に丸腰じゃあねえかぁ!! なあ!! バレットウィッチ"octo"さんよぉ!!」
着地した男はハルに向き直って構える。
「今は情報屋octoよ」
ズガァン
言いながらまたハルは銃を撃つ。その弾道は正確に男の眉間へと向かう。
「ハッハァ!!」
それと同時に男は異形の足で上空へ飛んだ。
「んなオモチャ! 当たらなきゃなんの意味もないんだよ!!」
高くまで張り巡らされた鉄骨に男は着地してそこからまた一瞬で跳躍する。高速でそれを繰り返し、その姿を目で追うのは困難な速度だった。
ハルの上からガギンガギンと男が跳ねる音が鳴り続ける。
「そうね、当てりゃいいのよ」
ズガァン ズガァン
ハルは2発、鉄のジャングルジムへ発泡する。
「当たるかよ! そんなもん!」
しっかりと男の脚をつくタイミングで放たれた弾丸は一瞬でその場から跳躍で移動した男にかわされ、鉄骨に当たってガギィンと音を立てた。
「当たるわよ、外さない」
「ヘヘッ あと2発だな? リロードしようとしたらお前の最後だぜぇ? 一瞬の隙も見逃さねえ!」
そして男が一度鉄骨に止まりまた跳躍しようとしたその一瞬。
ガギッ ガギッ
男の足から不快なノイズと衝撃。
鋼鉄の足の関節、その隙間に銃弾が挟まり可動が阻まれ軋んで動かなくなっていた。
「なん・・・だぁ?」
唐突に訪れた脚の不具合に男は対応出来ず、勢いのままバランスを崩して地面まで落ちていく。
「ガアああああああ!」
ドォンと響く衝撃音。
「"リコシェクリティカル"、跳弾を経由して狙った所へ確実にヒットさせる私の18番よ」
指でクルクルと銃を回転させながらハルは落ちた蝗虫に近づく。
「ま、威力は跳弾した分落ちちゃうけどね、こうやって弱い所狙えば十分よ」
バシッ
回転を掌で止めて銃口を男にむける。
「それとリロード? 笑わせないで、始めからする気なんてないから 貴方を殺すのに6発でも贅沢だわ」
「この・・このクソアマがぁ!」
男は痛みに堪えて立ち上がる。落下の衝撃で関節の弾丸は外れている。
「ふふふ、あと1発にしておきましょうか」
「死ねオラァ!」
冷静さを失った男はハルに真っ直ぐ飛びかかる。
そしてハルもまた男の眉間へ最後の1発を放った。
しかしハルの弾道は確実に眉間を狙う事はバレている。男は首だけを大きく捻りそれを躱す。そしてハルの顔面目掛けて回し蹴りを放った。
「おっとっと」
咄嗟に1歩距離とるハル。凛々奈達とは違い身体能力は普通の人間。僅かにバランスを崩した。
「貰ったぁ!」
男、番場亮平はそこへ踏み込んで最後の一撃を放とうとする。
男が最後に見たのは不敵な笑みを浮かべるハルの顔、そしてハルがその首を大きく横へ捻るとハルの顔があった位置から迫りくる銃弾の弾頭・・・
「え?」
ドチュ
驚いた表情の男の眉間から紅い花が咲いた。
「とっとっとっと」
ハルはドサッと尻餅をつく。
ハルの最後の弾丸は躱されたあと、鉄骨の反射を繰り返し、ハルの後頭部から真っ直ぐ飛んでくる軌道となって男へ到達した。
「うん、腕は鈍ってないわね」
立ち上がりパンパンと砂埃を払う。
「この脚の鎧殻、噂のモドキよね・・・ 私が無傷で勝てる位だし・・ 少し話を聞いておけば良かったかな」
「とりあえず鎧殻だけ回収してくか、あとは・・・」
ハルは最初に見つけた男達の死体へ向かう。そして見知った顔の死体の懐を探る。内ポケットから血に濡れたUSBメモリを取り出す。
「ごめんなさい貰っていくわ、報酬は貴方の奥さんの口座に・・・ こんなことになるなんて残念だわ・・・・」
ハルは少し表情を曇らせると自身の車へ向かいながら電話をかける。相手は裏の世界の掃除屋。この建設現場の凄惨な現状を処理しなければならない。
「ええ、後は頼んだわよ 黒服の男達は丁重にお願いね、頭に1発貰ってるタンクトップは好きにしていいわ」
死体の処理を頼んでハルは車に回収した鎧殻を積み込んで走りだす。