凛々奈達は目的の建物の前に車でやって来ていた。その街の中心から少し離れた、静かな住宅街の外れにある場違いな高級感の高層ビル。
「周りからめっちゃ浮いてるわねこのビル」
「碌でもない奴が碌でもない事を密かにやる為に建てたんだからな、郊外の方が都合が良いんだろう」
凛々奈は車から降りる。その姿はいつものだらしない服装ではなく、深紅のロングスカートの上品なドレス姿だった。
「凛々奈さん、凄く似合ってますよ! 綺麗です!」
続いて車から降りたみいなも可愛らしい黒いドレスを着ている。裾や細部に白いフリルの装飾が施されてゴシックな雰囲気で、少しいつもより大人びて見える。
「えへへぇ〜 みーちゃんも最高に可愛いよぉ〜」
ドレス姿で何時ものデレデレ顔になる凛々奈。
「そのバッグも可愛いですね!」
みいなは凛々奈が手にしていた白いハンドバッグを見た。
「あ、これ? 中は全然可愛くないけどね〜」
そう言って凛々奈はバッグの中をみいなに見せる。そこには無骨なサバイバルナイフと映画等でよく見る形の拳銃。それと3つの棒付きキャンディ。
「ああ・・・ 見るんじゃなかったかもです」
「念の為の護身用だからね〜」
「分かってると思うがただの銃だからな、相手によっては牽制にもならん、もしもの事があったら逃走最優先だ」
最後に車を降りた唯牙はいつもどおりのビジネスシャツにスラックス。そしてその上にベージュ色のロングコートを羽織っている。
「センセもどうせならオシャレに潜入スタイルになればよかったのに」
「これでも問題ないだろ」
「あれだよ! なんかこういう高級そうな服じゃないと入れないあれ! どれすもーど?」
「ドレスコード、別に目立たなきゃいいんだよ、私達は仕事しに来たんだから」
唯牙はビルの入口に向かって歩き出した。入口には二人の黒服の男が門番の様に立っている。
「てかどやって入るの? 誰でもウェルカムってイベントじゃないでしょ?」
言われると唯牙はポケットから1通の綺麗な封筒を取り出して見せる。
「招待状、ハルが用意してくれてる」
「さっすがハルさん! じゃあ堂々と入れるのね」
「予想していたより遥かに簡単に手に入ったらしいぞ」
「それじゃあ皆で潜入破壊大作戦! ミッションスタートー!!」
「大声でそれを言うやつがあるか!」
凛々奈の脳天に手刀をいれる唯牙。
「す、スタートです!」
その横で緊張しながら気合を入れるみいなだった。
◆
同じ時、目の前のビルの最上階にある展望フロア。そこから双眼鏡を使って入口の前にいる凛々奈達を見ている存在が居た。
「来てくれたみたいだね! 神代唯牙と白銀凛々奈!」
嬉しそうに言うその人物の左右にも小さな影がある。
「ねーねー! 本当にその人遊び相手になるのー?」
「ぼく久々に運動できそうで楽しみだな〜」
小さな二人は真ん中の人物の腕にそれぞれ抱きついている。
「はっはっは!! 彼女なら良い遊び相手になってくれるさ! 二人とも! 今日は存分に楽しもうじゃあないか!!」
あっはっはっはっはっはっは
芝居がかった派手な笑い声がフロアに響き続けていた。