8 ぷろろーぐ 8-1 やぶへび
♪〜〜〜
肌寒くなって来た季節、冷たい風が吹く町並みをきらきらと輝く太陽が一生懸命に照らしている。
そんな風景の中、大通りを外れた静かな住宅地を一人の少女がご機嫌にリズム良くスキップして進む。
橙の髪をサイドテールに纏めた少女、フラムは鼻歌を歌いながら胸に大きな紙袋を抱えていた。
「へっへへ〜 この前みいなに教えて貰ったパン屋さんやっと行けた〜」
袋からパンのいい香りが鼻に届いてフラムの顔はもっとご機嫌になっていった。そんな時目の前に二つの黒い影が降ってくる。
「うぉわ! びっくりした! おっとっとっと」
それに驚いたフラムは急に立ち止まった勢いで落としかけた袋をなんとかキャッチ。
「にゃははは! あんたがフラムね!」
「僕達の遊び相手になってもらうよ〜」
現れた二つの影はフラムと同じ位の年頃の少女達。フラムをみてニヤッと笑う。大きめのパーカーとミニスカート、よく似た顔の2人組。
「なによ、あんた達、黒焦げになる覚悟はできてるんでしょうね!?」
フラムは相手が普通ではないとすぐに判断し抱いていたパンの入った紙袋を左手に抱え直し、右手を顔の前に持ってくると、掌が太陽の様に発光しボウッと大きな炎が灯る。
フラムが戦闘に備える。
「にゃー、今日はそんな気分じゃないんだな〜」
「嫌だよね〜 血の気の多い子供ってさ〜」
何故かいきなり現れた方が呆れて物を言っている。
「な! なんだよう!! お前ら私と戦いに来たんじゃないのかよお! てかお前らも子供だろお!!」
悔しそうにフラムは怒鳴なるが謎の二人は意に介さず懐から何かカードの束を取り出して叫んだ。
「「今日の暇つぶしはこれだあ!!!」」
◆
◆
町外れの大きな川の堤防の上をサクラは一人で歩いていた。片手に紙袋を持ち、もう片方の手で大きなたい焼きを口に運んでいる。
(急に今日はやる事がないからってお休みにされても・・・・ 私やる事・・ないです)
その日は朝からハルに今日は休みである事を告げられ、サクラは何となく街を散歩していた。気まぐれに入ったショッピングモールのフードコートでたい焼きをいくつか買って、何処か静かな公園でもないかと彷徨っていると。
「うおっしゃあ! これで私の勝ちぃ!!!」
聞いたことのある声が聞こえる。声の方に目をやると、堤防の下の川沿いに公園があり、木で出来た机と椅子が隅にある。そこに三人の少女が座って何かのカードの束を机の上に広げていた。
その中の一人の少女、橙の髪の少女はサクラの知る顔だった。後の二人は見た事のない顔のパーカーを来た少女達。
「は〜い、だめ〜UNOって言ってな〜い」
「ペナルティで2枚だからね〜」
「うえぇ!?」
「次は私っ! ウ〜ノ!」
「あ、僕リバース」
「はいっ! 私あーがり!!」
「うぇえ!? えっえっと、えっと・・パス・・・」
「僕もUNOだよ〜」
「あ、あ、あ、これしかない・・・」
「おっけ〜 僕もあーがり!」
「な゛ん゛で゛よ゛ぉおおお!!!」
フラムがダミ声で叫ぶ。
「にゃはははは! 約束通り、コレはもらってくよん!」
ライカはいい匂いのする紙袋を持って頭の上に掲げた。
「あ! 返せよぉ!!」
「駄目だよ〜 負けたら僕達が貰うって約束だったでしょ〜」
ライカの横でフーカがぴょんぴょん飛んで喜ぶ。
「ぐぬぬ、ちくしょう! ちきしょう!!」
フラムは地面に四つん這いになり項垂れる。
「くやしいのう〜 くやしいのう〜」
それを二人がとても腹の立つ顔で煽っていると。
「なに・・・してるの?」
フラムの横にサクラがやって来ていた。
「うう・・ あ、サクラだ」
半泣きでサクラの方に顔だけ向き直るフラム。
「え・・・ いじめられたの?」
「うわああん! アイツらに買ってきたパン取られたあああ!」
うえぇえええん! と泣きだすフラム。サクラは食べかけていた残りのたい焼きを口に入れて食べ終わるとフーカとライカの方を向く。
「いじめは・・・良くないと思う」
珍しく強い口調で言う。
「別にいじめじゃないもん! ちゃんと負けたら私達にくれるって約束してたし!」
「もしも僕達が負けたら好きなお菓子買ってあげるって決めてたしね〜」
「・・・・・・・そうなの?」
真面目な顔をしていたサクラは少し気の抜けた顔になりフラムを見る。
「ううぅ・・・・でっでもさぁ! あいつら二人で二対一なんだよ!? ズルいでしょ!」
いつのまにか泣き止んでいたフラムが二人を指差して言う。
「ぶ〜! それはあんたが二体一でも余裕だし♪ って調子乗ってたからでしょ!」
「僕達は一対一でやろうとしてたんだよ〜?」
「・・・・・・・そうなの?」
別に割って入らなくても良かったのではと思いながらフラムに聞くと。
「ええ〜? だ、だって私なら大丈夫かなって」
目を逸らし気まずそうに言うフラムを見てサクラは面倒くさいからもう帰ろうかと考える。
「所でお姉さん誰なの〜?」
フーカが首を傾げながら言った。
「え・・・私は・・・・」
サクラが名乗っていいものかと口篭っていると。
「コイツはサクラだ! すっごく強い死神なんだぞぉ!!」
何故かフラムが勝手にバラす。
「ちょっと! ていうか死神じゃないし!」
「「ふ〜〜〜ん」」
それを聞いて双子はニヤリと笑った。
「それじゃあ特別スペシャルファイナルラストリベンジマッチだ!!」
「おまけだよ〜」
何故かテンションの上がる二人。
「スペ・・・なに?」
なんだか嫌な予感がサクラを襲う。
「今から2VS2のタッグマッチで決着をつけるよ!」
「そっちが勝ったらこのパンは返してあげる!」
「その代わり! また私達が勝ったらそれを貰うわ!!」
二人はサクラの手元の紙袋を指差す。
「ふっふっふ、そうこなくっちゃね、燃えてきたわ!! リベンジマッチよ!!!」
それを聞き、立ち上がり復讐に燃えるフラム。
「行くわよサクラ! あいつらに一泡吹かせてやりましょ!!!」
強く言いながらサクラの手を掴もうと力強く右手をサクラへ伸ばす。
「・・・・・・・・え、いや」
「うぇ?」
「やだ・・・ これ、わたしの・・・・・・帰る」
たい焼きの入った紙袋を抱いて盛り上がる三人を置いて帰ろうとするサクラ。
の足にしがみつくフラム。
「なんでだよぉ!! 頼むよぉ!! あのパンなけなしのお小遣いで買ったんだよぉ!!」
フラムがフルパワーで足にしがみつく。特殊な力を持つフラムとサクラが全力で引っ張りあい公園の地面がひび割れミシミシと音を立てる。
「ちょっと! 危ない危ない!!」
「た゛の゛む゛よ゛お゛おおおおお! サクラああああ!」
涙と鼻水と涎を撒き散らしながら引っ張り続けるフラムにサクラは。
「わかった! わかったから!!」
「うう゛ほんどぉ?」
ずぴーっと鼻水を啜りながら言う。ちらりと元いた所を見るとこっちを見ながらフーカとライカがお腹を抱えて爆笑している。
「・・・・・・はぁ、これが藪蛇ってやつなんですかね」
大きくため息ついてからぐしゃぐしゃの顔のフラムと二人の少女の元へ戻っていった。