◆ 2時間後
「面白かったねー!」
「はい! 私、最後感動してちょっと泣いちゃいそうでした・・・」
「そうだね〜 いいお話だったね〜」
映画を見終わったみいな達は感想を語り合いながらチケット売り場のあるホールまで戻って来ていた。
「あ、私グッズ見ていきたい!」
宇佐美が上映中の映画の様々なグッズを販売している売店を指差す。
「いいですね! 私主人公のお姉ちゃんのグッズが欲しいです!」
「僕はパンフレット買っていこうかな〜」
三人は売店へ早足で向かう。するとその少しあとに目を赤くした凛々奈とサクラが並んでホールへ出てくる。
ズピーッ!
二人は大きく鼻を啜る。
「な、なかなか最近の子供向けアニメも悪くないわね」
涙声の凛々奈が言う。
「うん・・・凄く感動した」
「舐めてたわ・・・ こんなに涙腺に来るなんて聞いてないわよ・・・」
「うん・・・ 泣けた」
ズピーッ!
また二人は鼻を啜る。
「・・・・・・パンフレット買ってく?」
「・・・・うん、私あの双子のお姉ちゃんのキャラクターのグッズ欲しい・・・」
二人が売店に目をやるとみいな達が買い物を終えて離れていく所だった。
「ッ急いで買うわよ!!」
「うん!」
みいな達にバレないように急いで売店に向かいグッズを物色する二人。パンフレットとキーホルダーをそれぞれ買うとみいな達が映画館を出ていこうとしている。
「次はどこ行くのかしら・・・」
また尾行を開始しようとすると凛々奈の目つきが変わる。
「あー・・ サクラ、何時でも動けるようにしといて」
「?」
凛々奈はサクラにだけ分かるように小さく顔を動かし顎で二ヶ所の場所を指す。そこにはそれぞれ二人組の男がいた。どちらもとてもこの場所には不釣り合いな格好をしている。片方は全身黒いスーツに角刈りのサングラス、もう片方はミリタリー柄のジャケットとズボンにサングラス、こっちは顔つきからおそらく外国人。そしてどちらも服の上からでも分かるほどの体格の良さだ。
「あれ・・・? あの人達・・・・」
言われて確認するとサクラも気付く。
「そうよ、あいつら私達が映画見る前からあそこにいたわ」
凛々奈が上映前に気になっていたのはこの男達だった。
「それだけでも要注意なんだけど・・・・」
凛々奈は男達に悟られないように眼鏡の下の瞳で彼らを観察する。サングラスで分からない男達の視線を凛々奈は顔の筋肉の僅かな動きから推察する。
「完全にみーちゃん達を目で追ってるわ」
「え、分かるの? すごいね」
「私はあの神代唯牙に鍛えられてんのよ? このぐらい朝飯前、てか動いたわよ」
二組の男達は同時にみいな達を追い映画館を出ていく。
「とりあえずこのまま様子見で、ちょっとでも怪しい動きしたら出るわ」
「了解・・・」
二人から先程までの穏やかな雰囲気が消えた。
◆
「ねーねー! 私ちょっとお洋服見ていっていーい?」
「い〜よ〜、私は本屋さんに行きたいな〜 みーちゃんも何か買いたい物ある〜?」
「あ! はい! でも最後で大丈夫ですよ」
三人で並んで歩いているみいな達から一定の距離を保ったまま男達は尾行している。更にそれを凛々奈達は追う。
「変ね・・・ アイツら二組、同じとこの奴らって感じはしないけどお互い認識しながら距離をとって別々に尾行してる」
「外国人だからって仲間じゃないって決めつけるのは今の時代良くないよ、凛々奈」
「それだけじゃないっての! 私くらいになるとなんとなく分かんの!!」
「ふ〜ん」
暫く強く警戒し男達を見ていた二人だったが何も行動を起こさない男達に少し気が緩んでいた。そして子供向けサイズのアパレルショップや本屋を巡るみいな達を謎の男達と少女二人が付いていく。
「あ〜!! もう埒が明かないわ!! 直接殴り込んで事情きいちゃる!!」
そんな一行がショッピングモールを一周する頃凛々奈が痺れを切らして駆け出そうとするがそれをサクラが制止する。
「待って! 凛々奈、あれ」
サクラの指差すみいな達の方を見ると彼女達の前に尾行中の男達とは別の金髪の柄の悪そうな男が立ち塞がっていた。
「ってーな!このガキ!」
「な! なによ! あんたがスマホ見ながら突っ込んで来たんでしょ!!」
三人の先頭の宇佐美が少し震えた声で男と言い合う。彼女達はスマートフォンを見て歩いていた男とぶつかってしまいトラブルにあっていた。
「うさちゃん! 適当に誤って逃げようよ〜!」
「・・・・・・つ!」
宇佐美の後ろで神楽はアワアワと慌てふためいている、その横でみいなは唯牙から貰った防犯ブザーを握り締めて男を怯えた目で睨んでいた。
「生意気言ってんじゃねえぞガキ共!!」
更に男が声を荒らげる。そのやり取りを遠くから見ていた凛々奈がプルプルと肩を震わせている。
「凛々奈・・・・?」
「ぶっ殺す!!!!」
追跡し警戒していた男達の事をみいなに絡む金髪男への怒りで忘れた凛々奈が体中から殺気を放ちながら駆け出そうとする。
「ちょ! 待って!! 凛々奈!!」
このままではとてもマズイ事になると直感したサクラは駆け出す凛々奈の手を掴んで止めようとした。しかしいきなり動き出したサクラの足はもつれて前のめりに倒れ込む。
「あ、」
そのまま凛々奈の手を掴み損ねた伸ばしたサクラの手は一瞬空を切った後、駆け出す凛々奈の右足首を掴んだ。
「え?」
バタンッ!!!
足首を掴まれた凛々奈とバランスを崩したサクラが勢い良く転ぶ。凛々奈に至っては頭から地面に激突した。
「いぎゃああああああ!!!」
そのまま額を押さえながらのたうち回る。
「なにすんのよ!!! 私じゃなかったら死んでるわよ今の!!」
額を真っ赤にして涙目で凛々奈が叫ぶ。
「ご、ご、ごめん・・・」
サクラも起き上がりながら言う。
「てかそれよりみーちゃん!!」
再びみいなの元に駆け寄ろうとする凛々奈だったが。
「あん?」
進む先の光景を見て口をポカンと空ける。
「どうしたの?」
サクラもそちらを見た。そこには対峙していたみいな達と金髪男の間にスーツとミリタリージャケットのグラサン男達が割り込み金髪を睨んでいる。何か会話をしている様だが内容は聞こえない。すると金髪の男が後退りしてから逃げる様に去っていった。その後、神楽と宇佐美が男達と少し会話をするとみいな達三人はゴツイ合計四人の男達に深々と頭を下げると笑顔で手を降って去っていった。男達は微笑みながらその場で小さく手を振り返しそれを見送る。
「あーーーん? どういうこっちゃ?」
その意味不明な光景に目が点になる凛々奈。
「・・・・・分かんない」
時間は夕方五時が近い、帰宅の時間が迫っていた。