銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

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9-5 休日の終わり

 

「それでそれで! 唯牙さんが結んでくれたツインテールも可愛いって言ってくれました!!」

 

 外は日も落ち、もう暗くなっている時間。事務所のソファーに座る唯牙の前でぴょんぴょん跳ねるみいなが、今日の友人との外出であった事を楽しそうに話している。唯牙が迎えに来て車の中からずっとこの調子だった。

 

「ははは、そうかい楽しい一日になって良かったね」

 

「はい! それでそれで!!」

 

 まだ話し足りないとみいなが続けようとするとガチャリと事務所のドアが開く。

 

「ただいま〜」

 

「・・・・えっと、ただ・・いま?」

 

 凛々奈とサクラが並んで入ってくる。

 

「あ! おかえりなさい!」

 

 そちらを向いてみいなが駆け寄る。唯牙はソファーから立ち上がり自分のデスクへ座った。

 

「あれ? 今日はお二人でお出掛けですか?」

 

「え!? ああ、ちょっとね」

 

「・・・なんか、疲れた」

 

 肩を落とすサクラ。

 

「えへへ、私も今日は学校のお友達とお出掛けしてきました!」

 

 みいなが自慢げに言う。

 

「そうか〜 良かったねぇ〜 みーちゃん〜」

 

 その表情を見て凛々奈の表情も溶ける。しかしみいなは凛々奈とサクラが持っていた袋に気付く。

 

「? 何か買ってきたんですか?」

 

「うぇ!? こ、これはあれだよ!あのあの!」

 

 しどろもどろになる凛々奈。中には今日見た映画のパンフレットとグッズが入っている。

 

「お、お仕事の書類だからみーちゃんが見てもおもしろくな」

 

 このままでは今日の尾行がバレるとなんとか誤魔化そうとするが、凛々奈が言い終える前にサクラが袋からパンフレットを取り出してみいなに見せた。

 

「映画のパンフレット・・・」

 

「アホか!!」

 

 サクラの頭に手刀を叩き込んでから手を引いてみいなから離れるように部屋の隅に行き小声で喋り出す。

 

「何見せてんのよ!! 今日の事がバレたら駄目だって最初に言ったでしょうが!!」

 

「・・・・いたい」

 

 サクラは頭を擦る。

 

「私のお小遣いがかかってるんだからね!」

 

「・・・・・うう」

 

「お二人も見に行ってたんですね!!」

 

 こそこそと話している二人の後ろにいつの間にか来ていたみいなが声を掛ける。

 

「うぉ!? そ、そうだよ〜 実は私達もあのアニメのファンなの〜 みーちゃんも見たの〜? すっごーい! ぐーぜんだね!」

 

 白々しく棒読みで誤魔化そうとする凛々奈。

 

「・・・・見る前は子供騙しって言ってたくせに」

 

 ドスッ!

 

小さく呟いたサクラの脇腹にみいなに見えない様に凛々奈が肘打ちをぶち込む。

 

「うぐぁ」

 

「みーちゃん! あっちで座ってお話しようか〜」

 

 脇腹を押さえてうずくまるサクラ置いて凛々奈はみいなの手を引いてソファーに座った。

 

「うう・・・・ 痛い・・ 」

 

 サクラも脇腹を押さえながらよたよたと歩いてソファに座る。

 

「そうだ!今日凄い事があったんですよ!」

 

 みいなが胸の前で手を叩いて言う。

 

「怖い男の人とお友達がぶつかっちゃって、危ない事になる所だったんですけど・・・」

 

 その話を聞き凛々奈とサクラは先程見ていた光景を思い出す。

 

「大きな男の人達が出てきて助けてくれたんです!」

 

「へ、へえ〜 良い人もいるもんだね〜 でもその人達いったいなんなんだろうね〜?」

 

 ぎこちない言い方で探りを入れる。

 

「えへへ、実はその人達は私のお友達のボディーガードでこっそりついてきてたみたいですよ」

 

「ぼ、ぼでいがーどぉ?」

 

「・・・・ああ」

 

 ずっと気になっていた男達の正体が分かり気が抜ける二人。

 

(ああ〜 そういやあの子達もあのお嬢様学校の生徒達だったわ〜 警戒して損した)

 

 力が抜けてソファーの背もたれに大きくもたれかかる凛々奈。

 

「でもその人達が居なくても私! 怖くなかったですよ! 唯牙さんに貰ったこれもあったし!」

 

 ポケットから唯牙に貰った防犯ブザーのストラップをとりだす。

 

「それに、何かあっても凛々奈さんが助けに来てくれるって信じてますから!」

 

 ソファにもたれかかっていた凛々奈がぴくっと動いた。

 

「・・・・みーちゃん」

 

 凛々奈は小さくいうと勢いよく起きあがりみいなに抱きついた。

 

「あったりまえよー! 何があっても私が守ってあげゆわよ〜」

 

 髪を撫でながら摩擦熱で煙が出そうなほど頬ずりをする。

 

「あ、あとみなさんにお土産を買ってきたのでお渡ししますね」

 

 みいなも慣れた物で、もうそんな事にはノーリアクション。

 

「これはサクラさんとハルさんに!」

 

 ソファーの横にあった紙袋をサクラに手渡す。

 

「あ、ありがと」

 

 お礼をいいながらサクラは受け取った。中には缶入りのお菓子の詰め合わせが入っていた。

 

「唯牙さんには珈琲です! お店で挽いてくれる所で買いました! お口に合うかわかりませんが・・・」

 

 唯牙に言うと立ち上がり近づいてくる。

 

「おや、別にそんな気を使わなくてもいいんだよ?」

 

「えへへ、みなさんの好きそうな物を考えて買うの楽しかったですから!」

 

 紙袋に入った珈琲豆を渡す。

 

「ありがとうみいなちゃん」

 

 唯牙は受け取り机にもどった。

 

「凛々奈さんには・・・」

 

 その間もずっと頬ずりをしていた凛々奈の動きが止まる。

 

「なに!? なに!? なになになに!?」

 

 そして目をキラキラと輝かせる。

 

「凛々奈さんこれ好きですよね? いつも食べてましたし」

 

 みいなは凛々奈に一番大きな紙袋を渡した。

 

「ありがとー!! みーちゃあああん」

 

 ウキウキで凛々奈は袋の中を覗いた。中に入っていたのは、う○い棒。袋に溢れんばかりに入ったう○い棒。

 

「あ・・・ ありがとー!!! みーちゃん!!! 私これ大好きなの!!! 三食これでも良いくらいよ!!」

 

 大げさに喜ぶ凛々奈だったが一瞬表情が曇ったのをサクラと唯牙だけは見逃さなかった。

 

「そんなに好きなんですね! 喜んでもらえて良かったです! あっそうだ! 私そろそろお風呂に入ってきますね」

 

 立ち上がりみいなは部屋から去っていった。それを横目で確認した後唯牙は口を開く。

 

「なんだ、せっかくのみいなちゃんからの贈り物だぞ? 嬉しくないのか」

 

 張り付いた様な笑顔で固まっている凛々奈に言う。

 

「う、嬉しいに決まってるでしょお・・・・」

 

 言ってそのまま顔を伏せた。

 

「・・・・でも一瞬嫌そうな顔してた」

 

「みーちゃんのお土産は嬉しいわ、死ぬほど嬉しい・・・・ でもこれは・・・ この前のお小遣いカット期間で食べたのよ・・・ 死ぬ程・・ これだけ食べたのよ・・・・」

 

「まあ狂った様に食べてたからなお前」

 

「・・・・嫌いになったの?」

 

「いや・・・ 嫌いになった訳ではない・・ でも今年1年分はもう食べた・・・・ これ以上は・・」

 

「食べないのか? せっかくみいなちゃんがくれたのに」

 

「た! 食べるわよ!! だけど、何かしらのアレンジが必要だわ・・」

 

 青ざめた顔で袋の中を覗く。

 

「あー そういうスナック菓子は砕いてサラダにかけたりするとクルトンみたいでいいって何かで見たな」

 

 唯牙のその言葉を聞くと凛々奈は掌を拳で叩く。

 

「それよ!! そうだ!! アレがあったわ!!!!」

 

 凛々奈はそのまま紙袋を持って自分の部屋へ勢いよく走っていった。

 

 一番騒がしい凛々奈が居なくなり部屋の中が急に静かになる。

 

「お、この銘柄は私が気に入ってる所のだ、みいなちゃんセンスあるな・・・」

 

 唯牙は貰った珈琲豆の袋を満足そうにまじまじと見ている。するとソファーのサクラが立ち上がる。

 

「・・・それじゃあ私・・ 帰る」

 

 貰った紙袋を抱えて出ていこうと玄関へ向かおうとすると唯牙に呼び止められた。

 

「もう少しゆっくりしていきな、今日は疲れたろう」

 

 そのまま珈琲豆を持って事務所の奥に消える。

 

「え・・・」

 

 急な事で驚くが無視して帰る事も出来ずにサクラはソファーに戻った。暫くすると湯気の立つコーヒーカップを二つ手にして唯牙が戻ってくる。

 

 

「今日は急に頼んでしまって悪かったな、ありがとう」

 

 サクラの前に唯牙がコーヒーカップを置く。

 

「あ・・・ ありがと」

 

「アイツに振り回されて疲れたろ?」

 

 唯牙は自分のカップに口をつける。

 

「・・・うん、疲れた・・・ でも・・・」

 

「でも?」

 

「楽し・・・かった・・・ かも」

 

「そうか、アイツもお前に懐いてるみたいだからな、良ければこれからも仲良くしてやってくれ、サクラ」

 

「・・・・仕方、ないですね」

 

 サクラはまんざらでもなさそうな顔をしてからカップを手に取りゆっくりと飲む。

 

「・・・にが」

 

 するとうぇえと舌をだして顔を顰める。

 

「おや? ブラック飲めなかったか? なんかイメージ的に平気だと勝手に思ってたよ、ちょっと待っててくれ」

 

 唯牙はサクラのカップを受け取ると砂糖とミルクを入れに事務所の奥へと向かう。

 

「これならどうかな? 結構甘めにしておいたけれど」

 

 もう一度手渡すカップの中は真っ黒だった先程とは違いクリーミーな香りを立てるマイルドな茶色をしていた。おそるおそるサクラそれを飲む。

 

「・・・・甘い、こっちの方がいい」

 

「良かった、サクラは甘党なんだな、覚えておくよ」

 

 静かな一時を唯牙と二人、暖かい飲み物を飲んでゆったりとしてからサクラはハルの元へと帰っていった。

 

 一人残された唯牙は自分の机に座ってぼおーっと天井を見ている。

 

「こんな日常が、何時までも続くといいんだけどな」

 

 そんな独り言を呟いた。

 

 

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