銃と少女と紅い百合   作:彼方リカ

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10-7 120%準備完了!

 

 凛々奈は事務所の入り口前にバイクを停車した。雨にずぶ濡れになっている服を不快そうに揺らしながら扉を開く。そして唯牙のデスクの一番下の引き出しを漁ると中に隠されていた鍵を手にする。

 

「あったあった、緊急事態用のスペアキー」

 

 その鍵を手にして凛々奈は部屋の奥へと進んだ。そこには普段の生活では誰も入る事の無い鍵の掛かった部屋がある。凛々奈は手にした鍵で扉を開いた。扉の向こうにはすぐに下りの階段があり、真っ暗な闇へと続いている。扉のすぐ隣にあったライトのスイッチを操作して明かりを点けると凛々奈は階段を下り始めた。

 

「えっと、どこにあったかな?」

 

 この地下は倉庫。武器庫の方が正しいだろうか、荒事に対応する為の武器や弾薬等の道具が保管してある。通常は唯牙以外入る事は禁じられているが、唯牙の居ない時にどうしても武器が必要な場合のみ凛々奈は入る事が許可されていた。

 

「っと、あったあった」

 

 凛々奈は壁に掛けられたナイフと丁寧に畳まれて置いてある衣服を手にする。

 

「久々ね、これ着てガチで殺り合うの」

 

 その場でずぶ濡れになったコートと下に着ていたジャージを脱ぐ。下着姿になった後に手を通したのは凛々奈専用の戦闘服。その腰部のフリルの下にあるベルトにナイフを装着した。

 

「後は・・・・ まあ無いよりはマシか」

 

 ナイフの横にあった拳銃を手にすると、それもベルトのホルスターに入れる。

 

「最後に・・・」

 

 脱ぎ捨てたコートのポケットからシエルに貰ったキャンディと持ち歩いていたキャンディ、合わせて4本のキャンディをフリルの下のポーチに仕舞い込んだ。

 

「さっき1本使っちゃったからな、後二本だけか」

 

 装備を確認し、最後に黒い指ぬきのグローブをギュッと嵌める。

 

「行くか」

 

 今出来る限りの装備を整えて凛々奈は階段を昇る。そして今度は唯牙のデスクの前でパソコンの操作を始めた。

 

「みーちゃん、あれちゃんと持ってたよね・・・」

 

 目的はみいなの居場所の確認。持たせている防犯ブザー型のストラップに発振機が仕込んである。

 

「意味ないぜー、それ」

 

 誰も居ない筈の事務所に凛々奈以外の声が響いた。

 

スチャッ

 

 すぐに凛々奈は声の方へ拳銃を向ける。

 

「おいおい、いつもより血の気が多いじゃねぇか、ええ?」

 

 そこに居たのは武器職人の浅葱乱馬。わざとらしく両手をあげてひらひら動かしている。

 

「武器オタか、なに? いまアンタに構ってる暇はないんだけど」

 

 彼女の姿を確認するとまた凛々奈はパソコンの操作に移る。

 

「ったく、浅葱さんだっつってんだろうが」

 

 浅葱は不服そうに言い捨てると自分のスマートフォンを操作した。すると凛々奈のスマートフォンから聞き慣れた着信音が鳴る。

 

「みいなちゃんはそこ、マップ情報送っといた」

 

「えっ?」

 

「あんな玩具すぐにバレてぶっ壊されてんよ、でもスーパー天才の私がちゃんと居場所は見つけてある」

 

 凛々奈がスマートフォンを確認すると確かに地図情報が送られてきている。

 

「ここって・・・」

 

「一回行ったことあんだろ? ナビはいらねえな」

 

 ニシシッと八重歯を見せて浅葱は笑った。

 

「なんで・・?」

 

 余りの準備の良さに驚く凛々奈。

 

「お宅の大センセに感謝するんだぜ? 私やシエルに色々根回ししてたからな」

 

 どうやら唯牙の指示でこういった事態が起こる事を分かっていた様だ。

 

「あ、ありがと・・・」

 

 これには流石の凛々奈も素直に礼を言う。

 

「じゃあ私急ぐから!」

 

 凛々奈はそう言うと浅葱の横を通り過ぎ、1秒でも早くみいなの元へ駆けつけようと走り出す。

 

「そんな豆鉄砲で行っても死ぬだけだぜ?」

 

 チラリと見えた凛々奈の腰の拳銃を見て浅葱は言う。

 

「ああん? しゃあないでしょ! だって・・」

 

 立ち止まり言いかけた凛々奈に浅葱は何かを投げた。

 

「わっと!! ッ!? これ!!!」

 

 投げられた物を受け取った凛々奈は驚いてから欲しかった玩具を買って貰った子供の様に表情を輝かせた。

 

 白銀に輝く銃身に華麗な金の装飾が施された銃。

 

「パレットバレット!!」

 

 うへへぇと顔を緩ませると手にした銃に頬ずりをする。

 

「あれ? でもちょっと違う?」

 

 しかし手にした銃に何か違和感を覚える。大まかなシルエットは変わりないが、細部の装飾が少し派手になり、少しだけ大きく、重くなっている

 

「俺がただ修理するだけで終わるわけないだろ」

 

 ドヤ顔で浅葱は胸を張る。

 

「パレットバレットver.RM、ガキの頃のお前の夢を叶えてやったぜ」

 

「ガキの頃・・・? あ!」

 

 何を言っているか分からなかった凛々奈だが何かピンと来たらしい。

 

「んで、これがそれ用の弾な」

 

 また浅葱は何かを投げる。キラキラ輝く小さな物を2つ。凛々奈が受け取り確認すると白い弾頭に真っ黒な薬莢をした二色の弾丸。

 

「とりあえずノーマルのって感じだからな、使い方は」

 

「うおお!! ありがと武器オタぁ!!! これであのクソガキぶっ殺してくる!!!!」

 

 帰ってきた愛銃にご機嫌な凛々奈は勢い良く事務所から出て行く。そのままバイクの排煙音を響かせて行ってしまった。

 

「・・・説明書読まずに捨てるタイプだったなアイツは」

 

 一人取り残された浅葱は呟いた。

 

「さて、前金たんまり貰ったからな、もうちょい働きますかね〜」

 

 大きく伸びをしてから浅葱も事務所を後にした。

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