遠い遠い宇宙にある惑星チキュー、この星は様々な驚異に晒されてきた。しかしこの世界に君臨する王たちの長きに渡る活躍により、世界は平穏を取り戻したのである。
とはいえ脅威となる存在が去った訳では無い。宇蟲王ダグデド・ドゥジャルダンという脅威が居たように、我々の知らない脅威はまだ他にある。まぁ流石に? 宇宙規模の敵に比べれば、これから来るであろう脅威に対して拍子抜けするかもしれないが。
勿論、国に仇なす者や地球の危機に鈍感になった訳ではない。これから6人の王たちが体験する相手は、なんなら別方向でダグデド以上に面倒な敵になるのは確定しているからね。
話は変わるが、これは王様戦隊キングオージャーのお話だ。
始まりの軍事国家シュゴッダムの国王ギラ・ハスティー、遍く叡智を司る技術大国ンコソパの国王ヤンマ・ガスト、絢爛なる医療大国イシャバーナの女王ヒメノ・ラン、実り豊かな農業大国トウフの王殿カグラギ・ディボウスキ、法を司る絶対中立国家ゴッカンの女王リタ・カニスカ。
そしてこの俺、かつては人類の敵であったバグナラク達を纏めている地底国バグナラクの王にして狭間の王ジェラミー・イドモナラク・ネ・ブラシエリ。この6人の王に加えて色んな王が物語の重要人物になっているが……ふと、こんなことを思ったことは無いかい?
魔王が何処にも居ないってことにさ。あぁ、誤解しないでほしい。確かに魔王みたいな悪事を担っていたのは宇蟲王ダグデドだ、それは確かな事実。だが民から魔王と呼称される王は、物語の中には出ていない。邪悪の王? 俺の知る限り、その邪悪にギラは当てはまらないと思うね。
兎も角、このチキューに魔王は居ない。物語で描かれるような勇者に打ち倒される巨悪が居たのなら、6王国が一丸となって倒されているか、俺たちの知らない内に倒されている。だからこれは、新しい続きの物語になる。
その昔、巨悪とされる魔王が居た──とさ。
遠い宇宙の果てにある惑星チキュー。その星はある時、地を揺らした。とても長く大きいものであったが為か、国に住まう者たちにも小さくない被害が出るほどであった。その影響は、チキューにある木々並ぶ鬱蒼とした辺境にも届き、地が裂ける事態を引き起こす。
その辺境の地に出来た地割れの奥深くから、有り得ない事に誰かが這い出てきた。地上に姿を出したその誰かは、次に腹の虫を鳴らす。ゆっくりとした足取りで歩き始め、その者は無機質に零した。
「────お腹、空いた」
そう言って、木に寄りかかった。
チキューで起きた地震からおよそ2ヶ月ほど経った頃、6王国間では地震によって発生した被害対処に対する定期会議が行われていた。当時一番被害の大きかったトウフの復興支援も終わりを迎え、若干の被害も出たンコソパへの支援も恙無く終わりを迎えられそうという話でめでたしめでたし……という事態から1週間後、カグラギの手で緊急会議が開かれる事となった。
いきなりの緊急会議に加えて、既に復興が済んだトウフで一体何が起こったのやら。それを知りたがったのは意外にもリタ以外の4人全員であった。
ただし、会議を申し出た本人がまだ集まっていなかったのでヤンマ、ヒメノ、リタは待つのに飽き始めている。
『おい、もう帰っていいか?』
『私も。待たされるのは嫌なんだけど』
『この後の予定もある。あと3分以内に来なければ執務に戻る』
「お願いだから、もうちょっと待ってみよう?」
『
「えぇ……」
もはや語るべくもない苦労人のギラは、カグラギが映るはずの映像を見やった。
「にしても、何があったんだろう? カグラギが僕たちを呼ぶなんて」
『それは分からないが、こうして集められたとなればチキューの危機に関わることなのはまず間違いないだろう。お前さんがたも、それを理解して今こうしているんだ。気長に待つのも良いじゃないか』
『私は私の時間が減るのが嫌なの、知ってるでしょ?』
『言われなくても分かってんだよタコメンチ』
『あと2分』
『うーん、このまとまりの無さ! いっそ清々しい!』
「そこは引き止める所じゃないの!?」
『お待たせ致しました皆様方!』
ほぼ全員そろそろ帰ろうとしていた頃に、ようやくカグラギが姿を現した。安堵したギラとは裏腹に、ヒメノは1人訝しげな視線をカグラギに向ける。
「カグラギ! 良かった、来てくれなかったらどうなるかと」
『いやはや申し訳ないギラ殿、少し立て込んでおりましてその対処に』
「そっか、とにかくカグラギが無事で良かった。それで──」
『カグラギ、貴方少し痩せた?』
「えっ?」
カグラギの僅かな変化に気付いたヒメノの言葉に全員注視する。それを指摘されたカグラギは、いつもの芝居がかった言動……ではなく、少しばかり真面目な面持ちでヒメノの問いかけに答える。
『やはり美と医療の国イシャバーナの女王、私の違和感に気付かれましたか』
『トウフの国は豊穣の国。その王である貴方が痩せているなんてこと、まず有り得ない。一体何があったの?』
『では、単刀直入に申しましょう。今、我がトウフに未曾有の危機が迫ってきているのです』
「危機?」
『ご大層な言い回しだな、しょうもなかったら帰らせてもらうぞ』
『すぐに分かりますとも、そう焦らず』
ギラたちはカグラギがこれから伝える内容に耳を傾け、聴く態勢を整える。そしてカグラギの口から発せられた未曾有の危機に、集まった誰もが同じ反応を示したのだった。
『実は、あと5ヶ月でトウフの食料が全て無くなります』
「『『『『はぁッ!?』』』』」