つくもがみん!~え?この召喚陣に素材をおいて付喪神を作れる?じゃあ、何にし──「オ、オエエエェッ…………!(吐瀉物噴射)」──召喚陣「ピカァ…」~ 作:環状線EX
『つくもがみんじゃんけん大会受付締め切りはもうすぐ!』
そんなCMをBGMにして俺とゲロ子はダラダラとリビングで過ごしている。
今日は休日、こんな日こそ、こうしていてもいいじゃないか。
「じゃんけん大会ってこんなに大々的に宣伝するものなの?」
「まあ、世界大会があるくらいだからな」
「たかがじゃんけん大会で?」
「お前、たかがとか言うなよ。ゲロであるお前には挑戦資格すらないんだからな」
「いや、じゃんけんにゲロも人間も関係ないでしょ?」
「お前、聞いてなかったのか?”つくもがみん”じゃんけん大会だぞ、出場できるのはハサミと石と紙を媒介としたつくもがみんだけだ」
場合によってはアイドル級の人気を誇るつくもがみんが生まれるかもしれない大会で一介のゲロが出れるわけがないだろう。
「人形になれるんだから、じゃんけんなら別にその三種にこだわらなくても――」
「お前、見たことないなら見た方が理解が早まるぞきっと」
どうにも納得がいかない様なので去年のアーカイブを見せてやることにした。
聞くより早いだろう。
俺は公式チャンネルから一つ適当に選んで見せてやる。
その試合は暗くなってから開始した。
夜、それは辺りが暗くなり光をより目立させる時間。
眩いくらいのライトがスタジアム中央を照らす。
それと同時に観客は湧き、熱気のせいか気温が上がったように錯覚させる。
『さあ、やってまいりました本日最後の試合!会場は未だ興奮醒め止まぬ中選手たちの入場です!』
ドラムロールが始まり赤コーナに注目が集まる。
『まず初めは去年の準優勝者、チョキと言えばこのつくもがみん、
白い煙が吹き荒れその姿を現す。
ピンク色の髪が目立つ世紀末風、風貌の男。
八方からの光源にサングラスが光る。
『ハッサッミン!!!』
筋肉隆々の大男は腕をハサミのように変形させてポーズをとる。
会場から歓声が上がりハッサッミンはそれへ答える。
『続いては、初出場ながら相手に圧倒的なまでの差をつけての勝利を重ねこの舞台までやってきた!なんと、
先ほどと同じようにして煙が視界を遮る。
そして、煙を切るようにして姿を現す。
例えるなら白。白い折り紙で折られたような乱れることのない風貌。
『紙の美女コート!!!』
女性らしい体つきを持ち人の目を惹きつける。
百八十後半はある身長はよりスタイルを良く見せる。
投げキッスをすると会場が湧いた。(主に男が)
『それではまいります!じゃんけん!』
「「『ポン!』」」
「どうだった?」
途中から画面にしがみついていたゲロ子に聞いてみる。
「ちょっと、嘗めてたわ。これは人気になる理由もうなずける。紙であるコートが降りかと思えば紙による変幻自在の攻撃で相手の刃物を拘束無力化。それにコートはまだ本気でなかったみたいだし他の試合も気になったわ」
随分嵌ったようで熱弁するゲロ子。
「そうだ。前年に優勝したつくもがみんとの試合はないの?」
「ん、ああ。たしか、そのつくもがみんは途中で棄権してたと思うぞ」
俺の記憶だと確かこの試合の前には棄権してたはずだ。
当時はちょっとしたニュースになっていたような。
詳細を調べようとして俺はスマホを取る。
「つくもがみんじゃんけんっと。ん?」
「どうしたの?」
「いや、大会を盛り上げるためにコートがイベントをしてるって」
「コートが!?」
早々にファンになったのかゲロ子は興奮気味に反応する。
ミーハーって奴だろうか。
場所は……
「つーか、ここ、前にアイスフェアやってたとこの近くだな」
「よし、行こう!」
「えーめんどくせーしやめと――おい、引っ張るな。ちょっ、腕もげる!」
つくもがみんは基本人間より力が強く、例え幼女の見た目をしてようがそれは変わらない。
そんなバカなと思うだろうが、ゲロが人間に擬態している時点でおかしいのだ、今更だろう。
太陽は上り切り時刻は昼過ぎ。
俺とゲロ子はイベントが開かれるという場所まで来ていた。
人は多すぎず少なすぎずと言ったところか。
人ごみと言うわけでもないが閑散としているわけでもない。
とは言え、人の流れは外に向かっているように見えた。
「こりゃ、ちょうど終わったとこみたいだな」
「……あとちょっとだったのに」
「まあまあ、ちょっと昼飯でも食ってこーぜ」
目的であったつくもがみんのコートのイベントは見逃したが、せっかくだから何か食べて帰ろうと提案する。
ちょうど駅前だし飯屋には事欠かないだろう。
確か、前にいったことのあるラーメン屋があった気がする。
適当に歩いていると目的のラーメン屋を見つける。
「いやマジでラッキーだわ。まさか、サインまでもらえるとか」
「お前、ホントに好きだな。まあ、確かに身長はデカかったけど」
「逆にじゃんけん大会に興味ない奴なんてお前くらいだろ」
ラーメン屋から出てきた二人組の男性の会話が聞こえてきた。
「千草、これって」
「可能性はあるかもな」
先ほどまでこの近くでイベントをやってたこと、じゃんけん大会と言うワード、そして高身長。
これは、確実にコートだろう。確か身長も百八十くらいあったはずだ。
「早く行こう!」
「あ、ああ」
こいつ、そんなにハマったのか?
俺は腕を惹かれるようにして入店した。
そして、一目見て分かった。
他の客と比べても頭一つ抜けた身長、人間離れしたつくもがみんらしいルックス。
そう、ハッサッミン。
「いや、お前かよ」
「ん、なに少年」
俺の言葉に反応したのはハッサッミンの隣に座っていた女性が反応する。
清楚な見た目だが恐らくこの大男の
「あ、すんません」
つい出た言葉に流石に失礼だと思い謝る。
さすがの俺でも初対面の人に軽々しくそんなことを言って何も思わないわけでもない。
「いいよ、気にしないで。そこの子君のつくもがみん?可愛いじゃん。君たちも一緒に食べようよ」
コミュ力と言うか、距離の詰め方やばいな。
「はーやーくー」
やばいなこいつ。
確か、名前は斎藤とか言ったか。
シカトするのは難しいので券売機で金を払ってカウンターの隣に着く。
「君高校生、いや、中学生くらい?」
「ええ、まあ、中三です」
「えーじゃあ、誕生日早い方?」
「六日なんで結構早いですね」
「ふーん。あ、自己紹介してなかったね。私のこと知ってる?」
「えっと、斎藤さんですよね。そこのハッサッミンさんの
俺もそこまで詳しくないがアーカイブを見た時に言っていたはずだ。
「そうそう。フルネームは斎藤理沙ね。やっぱ私有名人だしねー」
「あ、そうすか」
「冷たいねー君。君の名前は?」
「僕は束羽千草です。こっちはゲロ子」
「どうも」
「よろしくね~。それより君ネーミングセンス凄いね」
「よく褒められます」
こいつ、自分のつくもがみんにハサミからとってハッサッミンと名付けてるこの人には言われたくねー。
お前人間だから人間のニンなとか言われたらいやだろう。
「あ、え、うん。ゲロ子ちゃんは何のつくもがみんなの?」
「ゲロです」
ゲロ子は一言そう答える。
「えーと」
「ホントですよ」
一応前回のお姉さんのこともあったし、信じてもらえないと疲れるので俺からも言っておく。
「そうなんだ。でも安直過ぎない?」
「いや、あなたに言われたくないですよ」
「ゲロ子ちゃんの場合は事情が違うでしょ。もっと、連想しにくい名前にしたりとか」
「そうですよね。やっぱそうですよね」
斎藤さんの話にゲロ子が勢いよく同意する。
先ほどまで大人しくなっていた彼女だが思うところがあったらしい。
「やっぱそうだ。こいつがダメなんですよね?」
「こいつっていうな」
「そう!その通りだよ!ゲロ子ちゃん!」
何故か意気投合している彼女たちを横目に見る。
と言うか初対面で何でボロクソにいわれにゃならんのだ。
「それよりハッサッミンさんの格好に僕は驚きましたよ。動画で見た時は何というか世紀末的装いでしたし」
画面越しで見た姿をイカれた世紀末風だとすると今は完全にイケオジだ。
「それはキャラ付けでやっていることだからな。それと俺のことは呼び捨てでいい」
先ほどまで口を開かなかったハッサッミンがそう言った。
ラーメンをすする姿も絵になる。
「じゃあハッサッミンで。意外と寡黙なんですね」
「まあ、あれはさっき言ったようにキャラ付けで本来のキャラはこっちだしね」
俺たちも注文したものが来たので割り箸を割って啜る。
ゲロ子は初めてだが大丈夫そうだ。
「……おいしい」
「ゲロ子ちゃんは初めてか。いいよね、その反応。こいつは私が呼び出したばかりの時、食べさせてもそんな反応はしなかったよ」
「俺が同じ反応しても意味はないだろう」
「まあ、そうか。おっさんだしね」
アハハ!笑いながら、バシバシとハッサッミンの背中をたたく。
麵啜ってる奴の背中叩くとかえげつねーな。ハッサッミンは動じてないが。
「はあ、ご馳走様。じゃあ、お先に失礼するよ」
「もう行くんですか?」
「これから用事があるからね」
「いや、そうじゃなくてハッサッミン追加の餃子頼んでましたよ」
「……」
暫くして、俺たちは解散した。
サインを渡されそうになったがいらないので断った。
ゲロ子も仲良くはなっていたがあくまでコートのファンなので欲しいとは言わなかった。
俺たちはゆっくり歩いて家まで帰った。
斎藤は千草と別れた後、彼の背中を見送り、男たちに向き直った。
ハッサッミンまでとはいかないが筋肉のついたガタイの良い男たち。
それは、先日吉田太郎が遭遇していたゲームセンターを根城にするごろつきだった。
車に乗り込もうとしていたところを呼び止めたのだ。
「君たちもしかしてロリコンって奴?」
「いやだなー。むしろお姉さんみたいな人がタイプですよ」
「えーうれしいけど。君たち食べてるときもずーとあの子のこと見過ぎだよ」
千草が入店してきたときに気付いた違和感。それは彼自身の物ではなく彼らを監視するような視線。
恐らくもっと前から見張られていたのだろう。
少し気になり隣に座らせてみたが明らかにゲロ子を見ていた。
素人ではない為彼らは気付かなかったようだが結局は二流の域を出ない、斎藤の目はごまかせなかった。
「気のせいですよ」
「そうかなぁ?最近多いよねぇー召喚まじかのつくもがみんの拉致。まだ四月で皆が油断してるからってさ」
一年を通してのつくもがみんの拉致事件は四月から五月ごろに集中する。
身近な人がつくもがみんを召喚し、犯罪やトラブルなどを身近に感じることが出来る年度終わりとは異なり、年度初めは学年でもつくもがみんを持つ子供は少数であるため、身近に知り合いなどのその手の話を聞かない。
加えて学校が始まったばかりの四月初めではつくもがみんについての犯罪やトラブルについての学校での時間は設けにくく気が緩むのだ。
こういった時期を狙って犯罪を起こすものが後を絶たない。
恐らく今から車に乗って拉致るつもりだったのだろう。
「君たち柄悪いしゴツい子も多いし、その手の行為には向かないよ。次はブランドものじゃなくてさユ〇クロで服買って減量してから出直して来なよ」
「チッ、舐めやがって。たかがじゃんけんが強いくらいで調子に乗んなよ」
「あれ、知ってんじゃん。でも、あれは行ってみれば格闘技。舐めすぎだよ」
じゃんけん大会の性質上相手のつくもがみんのパターンはそこまで変わらない。
紙かハサミか石しかないのだから。
だから戦い方はそこまで変わるわけじゃないし、セオリーみたいなのが結構多く、次の行動を予想しやすい。
そのため、世の中には選手たちを下に見る人たちが一定層いる。
じゃんけん以外ではそこまで強くないのだろうと。
男たちがつくもがみんを人化させるのと同時に斎藤も鞄から小さなハサミを取り出す。
宙に抛ったそれは一瞬のうちに大男へと形を変える。
「さ、かかってきなよ。じゃんけん大会入賞者との手合わせのチャンスだよ」
斎藤はにやりと笑った。